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2021.01.07.Thu

【勉強会レポート】2020年10月「ストレスチェック」

2020年10月の勉強会テーマは、「ストレスチェック」です。

今回の勉強会では、産業保健スタッフとして、以下のことを学ぶ事が出来ます。
・ストレスチェックの基本的な知識の理解
・実践に役立つポイントを身につける

具体的には、以下の事をできるようになります。
・ストレスチェック制度の概要について説明ができる
・個人結果を活用し、高ストレス者面談を行うことができる
・集団分析結果を分析し、対策について事業者に提言することができる

それでは以下の順に解説していきます。
1.ストレスチェック制度とは
2.高ストレス者面談における個人結果の活用方法
3.集団分析結果の活用方法
4.ケーススタディ:集団分析結果の分析と提言

1.ストレスチェック制度とは
▼概要
労働安全衛生法の一部を改正する法律において、ストレスチェックおよびその結果に基づく面接指導の実施等を内容としたストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10)が平成27年12月1日施行されました。
ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に労働者が記入し、それを集計・分析することで自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査のことです。

▼実施義務要件
ストレスチェック制度の実施義務には次のような要件があります。
・実施義務のある事業場:常時50人以上の労働者を使用する事業場
・対象者:期間の定めのない労働契約により使用される者
・実施頻度:1年以内ごとに1回

▼実施の事業所割合
平成30年労働安全衛生調査(実態調査)によると、ストレスチェック実施等の事業所割合は、全体の62.9%がストレスチェックを実施していて、そのうちの73.3%がストレスチェック結果の集団分析を実施していました。
50名以下の努力義務の事業所でも約70%が集団分析を実施しており、ストレスチェック制度が徐々に浸透していることがうかがえます。

 

▼ストレスチェック制度の目的
ストレスチェック制度の目的は、労働者側と事業者側でそれぞれあります。
ストレスチェックはあくまで労働者個人のセルフケアを促進するための制度ですが、事業者側には実施の義務もあり、集団分析結果を活用することでその意義も高まると考えられます。
【労働者側】
・ストレスチェックを受けることで自らの状態を知る
・ストレスへの対処(セルフケア)のきっかけにする
・高ストレスの場合、面接指導を受けることで就業上の措置につながる
・ストレスチェック結果が職場ごとに分析されれば、職場改善にも結び付く

【事業者側】
・労働者のメンタル不調を未然に防止できる
・職場の問題点の把握が可能となり、職場改善の具体的な検討がしやすくなる
・労働者のストレスが軽減され、職場の改善が進むことで、休職や離職率の低下、労働生産性の向上など、経営面でのプラス効果も期待される。

▼ストレスチェックの実施手順
ストレスチェック制度の実施手順は大まかに、以下の通りです。
①実施前の準備(実施方法、実施期間、計画書の作成等)
②ストレスチェックの実施
③高ストレス者への面接指導、集団分析結果の活用

ストレスチェックの事前準備から事後措置が終了するまでの期間は、約3~6ヵ月ほどが望ましいとされています。
また、ストレスチェックと面接指導の実施状況は、毎年労働基準監督署に所定の様式で報告する必要があります。

2.高ストレス者面談における個人結果の活用方法
▼ストレスチェック実施~事後措置の流れ
ストレスチェックから事後措置までの流れは、以下の通りです。
ポイントは、高ストレス者本人への面談勧奨や申し出があった場合には、それぞれのステップにおいて1か月以内に対応することです。ストレス状況により緊急に対処すべき場合もあるため、なるべく速やかに、長くても3か月以内には対処を完了させることが望ましいです。

▼高ストレス者の選定方法
高ストレス者の選定方法について、制度上では各事業所にて選定基準を設けてよいことになっています。一般的には、以下の方は高ストレス者と選定した方がよいとされています。
・「心身のストレス反応」の評価点数の合計が一定以上の者、かつ「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」の評価点数の合計が著しく高い者
・高ストレスで医師の面接指導が必要と思われる者

▼個人結果表の活用ポイント
ストレスチェック個人結果表の活用ポイントは、レーダーチャートのバランスをみることです。具体的には、以下のことが重要です。
・ストレス反応が多数または高値ですでにみられている場合は、早急に面談勧奨をする
・申出がない場合は、別手段(面談、情報提供等)で必ずコンタクトをとる
・高値なストレス要因を把握する
・ストレス要因と周囲の支援等の要因に関連があるか確認する

▼高ストレス者面談時の確認事項
実際に高ストレス者面談時に以下の項目を確認するとよいでしょう。
・ストレスチェック結果の確認
・自覚症状等の確認
・病歴(現病歴、既往歴、健康診断の結果など)
・家族等の支援
・生活習慣(喫煙、飲酒、運動、食事、睡眠、生活リズムなど)
・勤務歴(転勤、昇進など)
・勤務状況(労働時間、労働時間以外の要因)
・ストレス要因の認識・自己評価・対処方法

▼高ストレス者面談後の対応
また、面談後の対応としては、以下の項目等を産業医が判断し、他の産業保健スタッフや担当者と連携しながら、ある一定期間(概ね3か月くらいが多い)はフォローをします。
・フォローは必要か
・再面接は必要か 必要なら、いつ、だれが?
・就業上の措置は必要か
・医療機関への紹介は必要か
・職場への介入は必要か
・上司・上長への情報提供は必要か
・家族への情報提供は必要か
・本人(や上司等)へのアドバイスは?

3.集団分析結果の活用方法
集団分析結果の活用ポイントは以下の5つになります。
①「量-コントロール判定図」と「職場の支援判定図」をみる
②プロットされた集団の位置を、仕事のストレス判定図上で標準集団(全国平均)と比較する。
③仕事のストレス要因から予想される疾病や休業などの健康問題のリスクが、標準集団の平均100からどの程度離れているかを確認する。
④ストレスプロフィールの「ストレス要因」、「ストレス反応」、「周囲のサポート」の各因子を全国平均と比較し、特徴的な要因を把握する。
⑤他の情報も考慮して総合的にリスク評価を行う。(健康診断の集計結果、職場巡視、労働者や職場上司からの聞き取り等)
なお、仕事のストレス判定図では、仕事のストレスの4つの側面しか評価していません。判定図にとりあげられていないストレス要因があることも考慮しながら、対象事業所の現状把握のために情報収集し、総合的にアセスメントすることが重要です。

 

4.ケーススタディ:集団分析結果の分析と提言

ストレスチェック制度の基本と実践のためのポイントをふまえて、ある企業の集団分析結果を用いたケーススタディを解説します。
ストレスチェック集団分析結果表をもとに、この会社の特徴と課題を挙げ、事業者への具体的な提言してみましょう。

▼会社情報
・従業員数110名の製造業を営む事業場
・管理本部35名、生産部63名、その他役員等12名

▼集団分析の結果

 

 

 

▼特徴や課題
以下の特徴や課題を、集団分析結果から読み解くことができます。
・総合健康リスク上昇
・受検率の低さ
・ストレス要因(身体的負担度、職場環境、仕事のコントロール、技能の活用)についての現状把握
・生産部の高ストレス状況

▼企業への具体的な提言
具体的な提言として、以下のような点を伝えるとよいでしょう。
・受検率を上昇させるための対策を検討。(安全衛生委員会での審議、ストレスチェック実施に伴う周知方法、事後支援のフロー、プライバシー配慮等)
・ストレス要因の現状について、可能であれば、労働者および管理者との全数面談を検討。(代替案:全労働者からランダムに面談対象者を抽出し面談を実施)
・生産部の高ストレス状況について、現状分析および対策立案を検討。(健康診断結果の集団分析や健康課題の抽出、職場巡視等)
・職場環境改善(職場ドック等)の推奨。(特に生産部)

▼まとめ
集団分析結果と現状を照らし合わせながら、企業や部署の特徴と課題を把握することが重要です。そして、実際に課題を解決するための方法は様々ですので、それらをよく理解し、適切なアドバイス・改善をしていきましょう。
また、一気にすべてを実施する必要はありません。課題への適応能力を判断し、会社の状況に合わせて、徐々にステップアップしていくことが望ましいでしょう。

参考文献:
・厚生労働省:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
( https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html )
・厚生労働省:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
( https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf )
・厚生労働省:ストレスチェック制度導入ガイド
( https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf )
・厚生労働省:長時間労働者、高ストレス者の 面接指導に関する 報告書・意見書作成マニュアル
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/151124-01.pdf)
・厚生労働省:平成30年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況
( https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h30-46-50b.html )
・中央労働災害防止協会編:令和元年度 労働衛生のしおり
・医療情報科学研究所:公衆衛生がみえる2020-2021,メディックメディア,2020
・医療情報科学研究所:職場の健康がみえる第1版,メディックメディア,2019

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