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2021.01.08.Fri

【勉強会レポート】2020年11月「健康診断」

2020年11月の勉強会テーマは、「健康診断」です。

今回の勉強会では、産業保健スタッフとして、以下のことを学ぶ事が出来ます。
・健康診断、事後措置の基本的な知識の理解
・実践に役立つポイントを身につける

具体的には、以下の事をできるようになります。
・各種健康診断の概要について説明ができる。
・事後措置の流れや就業区分判定の基準、判断時の注意点について説明ができる。
・事後措置面談にて、対象者や事業者へ適切な助言ができる。

 

それでは以下の順に解説していきます。
1.健康診断とは
2.事後措置のポイント
3.ケーススタディ: 事後措置面談での助言

1.健康診断とは
▼健康診断の種類

健康診断には、以下の2種類があります。
・労働安全衛生規則により実施される「一般健康診断(すべての労働者)」
・各種関連法・規則により実施される「特殊健康診断(有害な業務に従事する者)」

その他、行政指導による健康診断や事業者が任意に追加する健康診断もあります。

▼健康診断の実施頻度
健康診断を実施する頻度は以下になります。
雇入時健康診断:常時使用する労働者を雇い入れるとき
定期健康診断:常時使用される労働者に対して1年以内ごとに1回
特殊健康診断:有害な業務に従事する労働者に対して6カ月以内ごとに1回

▼各健康診断の概要
一般/特殊健康診断の概要を以下の図にまとめております。
一般定期健康診断では、対象者により基本検査項目が省略されることもありますので、確認をしておきましょう。
特殊健康診断では、それぞれの根拠法令により、記録の保存年数が異なりますので、注意してください。

 

▼健康診断結果の年次推移
定期健康診断の各種有所見率の年次推移をみると、定期健康診断の有所見率は全体的に漸増傾向です。
特に血中脂質、血圧、血糖などの生活習慣病に係る項目での有所見率が高くなってきています。

また、健康診断の有所見率の平均を事業所の有所見率と比較することで、どの項目を優先的に改善するべきか参考にすることができます。

2.事後措置のポイント
▼健康診断の実施の流れ

健康診断の実施~事後措置までの流れは、以下の通りです。
健康診断の実施後、診断区分を判定します(ほとんどの場合は委託医療機関が実施します)。
その結果を労働者へ通知するタイミングで、産業医は就業区分を判定することが望ましいです。
その後、対象労働者と適宜面談を実施し、最終的に就業上の措置の決定・実施となります。

 

▼就業判定について
就業区分判定については、以下が基準となっています。
・通常勤務:特に就業上の措置は必要なく、通常勤務でよい者
・就業制限:健康の確保のため勤務に制限を加え、勤務による負荷を軽減する必要のある者→必要な事後措置は、作業内容の変更や労働時間の短縮、作業環境の改善や設備の整備、衛生委員会へ報告し審議など
・要休業:療養のため、勤務を休む必要のある者→必要な事後措置は、休業、医療機関の受診・治療の勧奨など

 

▼事後措置について
健康診断の事後措置の具体例を紹介します。
【労働者の就業上の措置】
・就業場所の変更
・作業(配置)の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少

【作業環境や作業方法の改善】
・作業環境測定の実施
・施設・設備の設置または整備

【医師の意見を衛生委員会へ報告・審議】
・事例報告(概要の説明等)
・作業改善、作業環境改善例について提案
・就業区分判定から措置実施、措置解除にあたるフローの提案

 

事後措置は、医師や歯科医師が行うのはあくまで意見や勧告になります。最終的な事後措置は事業者が判断・決定をします。そのため、現場の関係者の意見等も踏まえて検討することが望ましいです。

事後措置で注意しなければならないのは、産業医等の意見が、不適切な措置にすり替えられてしまうことです。
例えば、病気を理由に解雇をすることや、産業医は配置転換で十分と助言したにもかかわらず、事業者側の都合の良いように休業とすることは、労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、その労働者にとって不利益(不合理)な取り扱いをすることになります。
産業医の意見や勧告が、適切に事業者側に伝えられ、妥当な事後措置になっているかどうか、きちんと確認することが重要です。

3.ケーススタディ: 事後措置面談での助言
ある企業で働く52歳男性の定期健康診断結果をもとに、健診の事後措置としてどのような対応をするのか、対象者・事業者へ助言をしましょう。

 

▼事例紹介
52歳、男性。
・身長:170(㎝)、体重:77(㎏)、腹囲:89(㎝)
・血圧:165/98(㎜Hg)
・GOT:38(IU)、GPT:51(IU)、γGTP:89(IU)
・LDL-Chol:151(mg/dl)、HDL-Chol:46(mg/dl)、中性脂肪:245(mg/dl)
・空腹時血糖:130(mg/dl)、HbA1c:8.0(%)、尿糖(±)
・仕事に関すること:営業1課、課長。外回り(主に電車)と事務仕事半分。残業は平均して月30時間程度。
・症状に関すること:時々頭痛、肩こり、胃痛、不眠なし。
・治療に関すること:血圧は健診ではいつも高め。自宅で測定することはない。3年前に糖尿病疑いで精密検査をしたが、経過観察となった。その他、現病歴、既往歴なし。
・家庭に関すること:妻と子供2人(大学生、高校生)。通勤時間片道約45分。
・生活習慣に関すること:喫煙しない。飲酒は機会飲酒(週2回程度)。運動習慣なし。昼は外食。
・その他:体重は20代に比較し15㎏増。ストレスは特に感じていない。

▼対象者への助言
①二次検査・受診の勧奨

・高血圧、糖尿病については医療機関への受診を勧める(紹介)。
・血圧は一旦自己測定または会社等で定期的に血圧測定をしてもらう。その結果を確認後、医療機関紹介でもよい。
・肝機能は脂肪肝?肝炎ウイルス検査は?

②保健指導

・高血圧、糖尿病、肥満、肝機能異常(脂肪肝?)等について生活指導(栄養、身体活動を中心に)を行う(保健師等が行うことも可)。

▼事業者への助言
・通常勤務可。ただし、高血圧と糖尿病については医療機関受診を促す(紹介状を渡す)。

重要なポイントは、対象者が二次検査や受診の必要性を十分理解し、行動変容できるように産業医や保健師等が動機付けを主眼とした保健指導を面談中に行うことです。
そして、事業者は、対象者が継続した医療支援が受けられるよう、その体制を整備し、必要に応じて対象者の上長や総務人事部等の関係部署にも働きかけてチームとして支援をする意識を醸成することが大切です。
また、対象者が二次検査や再検査等を受けているか、その経過や結果を追うことも事業者側の重要な役割です。
このしくみや体制を構築することは現実的に難しいケースが多いですが、徐々にでもよいので、まずは取り組むことが望ましいでしょう。

参考文献:
・厚生労働省:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針
(https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K170417K0020.pdf )
・厚生労働省:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう
~労働者の健康確保のために~(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf)
・厚生労働省:労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000194701.pdf)
・厚生労働省:平成29年定期健康診断結果報告
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/127-1.html)
・中央労働災害防止協会編:令和元年度 労働衛生のしおり
・医療情報科学研究所:公衆衛生がみえる2020-2021,メディックメディア,2020
・医療情報科学研究所:職場の健康がみえる第1版,メディックメディア,2019

 

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