メンタルヘルス・ストレスチェック

ストレスチェック助成金とは?受給対象の条件や申請から支給までの流れを解説

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更新日:2023.02.20

自社でストレスチェックを行うことを検討しており、全ての従業員を対象に行った場合の費用について知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、ストレスチェック実施に必要なコストについて知りたいと思っている方に向けて、ストレスチェック助成金の概要を詳しく解説します。また、ストレスチェック助成金以外にも受けられる助成金の種類や対象要件なども紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

本記事を最後まで読めば、ストレスチェック助成金の概要を把握でき、自社が助成金の対象かどうかを見極めた上で会社に助成金の申請を提案できます。

ストレスチェック助成金とは?

ストレスチェック助成金とは国からの助成金のひとつで、ストレスチェックを行った小規模な事業場に、ストレスチェックで発生した費用の一部を補填する制度になります。ストレスチェック助成金を申請するための要件などを以下で詳しく解説します。

ストレスチェック助成金の対象となる事業場

50人未満の小規模の事業場では、必ずしもストレスチェックを実施する必要はありませんが、努力義務が定められています。50人未満の小規模な事業場でストレスチェックを実施した場合は多額のコストがかかり、経営を圧迫する恐れがあります。

ストレスチェック助成金を活用すれば費用の負担を減らすことも可能です。ただし、助成金を受給するためには事業場の要件などを満たす必要があります。例えば以下のような要件が定められています。

・労働者を雇用している法人や個人事業主
・労働保険に加入している事業場
・派遣社員を含む常勤の社員が50人未満

ストレスチェック助成金を申請するためには、上記の3つの要件をクリアしなければなりません。労働者を雇用していれば、法人だけでなく個人事業主も申請を行えます。

助成金の申請は、派遣社員などの常勤の社員が50人未満の小規模な事業場に限られています。

出典:独立行政法人労働者健康安全機構.令和 3 年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引」(参照:2022.01.24)

ストレスチェック助成金の対象要件

事業場に関する要件だけでなく、取り組みに関する要件も満たす必要があります。取り組みに関する対象要件は、大きく分けて以下の2つが定められています。

・ストレスチェックの実施および面接指導者などの実施者
・ストレスチェックに携わる医師の活動内容

助成金の申請時には、実施者が誰かを明確に決めておかなければなりません。ただし、医師や精神保健福祉士、保健師などの医学の専門知識を持つ有資格者のみが実施者になれます。

また、高ストレス者の診断や面接指導などは医師が行う必要があり、医師と連携できる体制の整備も不可欠です。さらに、外部の医師に実施や面接指導などを依頼するように定められているため注意が必要です。

ストレスチェック助成金の額

ストレスチェックにかかった費用の全額が対象になるわけではなく、上限額が定められています。

ただし、ストレスチェックの実費額が助成金の上限額を下回っている場合は、実費の全額が助成の対象になります。助成金の対象になるのは以下の費用のみです。

・ストレスチェックを実施する際に支払った費用(1年に1回の実施が必須)
・実施および医師の活動費用

ストレスチェック助成金の上限額は、従業員一人につき500円(税込)です。医師の活動費用は1事業場での1回の活動当たり21,500円(税込)となっており、上限回数は3回までです。

ストレスチェック助成金の申請から支給までのステップ

助成金の要件を満たしていることが確認できたら、助成金を申請しましょう。以下では、ストレスチェック助成金を申請する前の準備段階から助成金の支給を受けるまでの流れを4つのステップに分けて解説します。

1.ストレスチェック実施前の準備をする

ストレスチェックは、助成金を申請する前に実施しなければなりません。ストレスチェックを実施するための準備から進めていきましょう。ストレスチェックを行うための準備は、以下のとおりです。

・ストレスチェックの実施方法
・産業医、実施者の選定
・産業医との契約の締結

ストレスチェックをスムーズに行うためには、どのように実施するのか具体的な方法を自社で決めておくことが大切です。また、社外からストレスチェックを実施してくれる産業医などの人材をあらかじめ探しておかなければなりません。

例えば、事業場がある地域の医師会や地域産業保健センターで産業医を紹介してもらいましょう。また、産業医の紹介サービスを利用するのも一つの方法です。

産業医が見つかったら、ストレスチェックでの医師の活動に関する内容を定めた契約を交わします。契約の締結はストレスチェック助成金を受給する条件のため、忘れずに行いましょう。

2.ストレスチェックを実施する

事前準備が終わったら、実施方法に沿ってストレスチェックを実施します。ストレスチェックの実施後は、従業員本人に結果を伝える必要があります。

医師が行う面接指導は高ストレス者のみが対象となっており、対象者から申し出があった場合に実施される仕組みです。

高ストレス者と診断された従業員が医師との面接指導の希望を申し出てきた場合は、事業者は面接指導の場をセッティングし、面接結果をもとに適切に対処します。

ストレスチェック助成金を申請する場合は、助成金の申請期間より前にストレスチェックを実施しておかなければなりません。

例えば、2021年度に助成金を申請する場合は、2021年(令和3)4月1日〜2022年(令和4)3月31日の間にストレスチェックを実施しましょう。

上記の期間中にストレスチェックを実施しなかった場合は、ストレスチェック助成金の対象から外れ、申請できないため注意が必要です。

3.ストレスチェック助成金を申請する

全ての従業員のストレスチェックを終えた後に、助成金の申請を行わなければなりません。助成金の申請書類は、ストレスチェック助成金支給申請書に必要事項を記載し、独立行政法人労働者健康安全機構の窓口に提出します。

申請時は以下に挙げる添付書類も必要になるため、忘れずに準備しておきましょう。

・医師と交わした契約書の写し
・医師免許証などの医師の資格を証明できる書類の写し
・ストレスチェック実施報告書
・ストレスチェックの実施者へ支払った費用の領収書の写し
・労働保険概算・確定保険料申告書等の写し など

他にも、ストレスチェックの実施者の要件を満たしていることを証明する書類の写しや、ストレスチェックに係る医師による活動報告書など、該当する場合のみ添付が求められる書類もあります。

4.審査の結果通知が届き、助成金が支給される

助成金の申請後は、労働者健康安全機構で審査が行われます。申請書類や添付書類に不備がなければ労働者健康安全機構から助成金の支給決定通知が届き、後日助成金が支払われます。

ただし、申請書類に不備などがあった場合は、助成金不支給決定通知書が送付されるため、支給決定通知が届いたと勘違いしないようにしっかりと中身を確認しましょう。

申請後の審査から支給決定・助成金の支給までにかかる期間の目安は、約2~3カ月です。審査に時間を要する場合は約半年かかるケースもあります。

助成金の支給後の注意点は、助成金の申請や受給に関する書類を保管しておかなければならないことです。書類の保管期間は、助成金の受給年度から5年間と定められています。

ストレスチェック助成金の申請様式や助成金申請に関するチェックリストは、独立行政法人労働者健康安全機構のホームページからダウンロードできます。

独立行政法人.労働者健康安全機構「申請様式とチェックリストのダウンロード(ストレスチェック)」
https://www.johas.go.jp/tabid/1953/Default.aspx

ストレスチェック以外の助成金

ストレスチェック助成金の他にも、企業が推進する産業保健活動に活用できる助成金制度がいくつかあります。以下では、ストレスチェック以外で利用できる助成金制度を3つ紹介します。

職場環境改善計画助成金【事業場コース】

職場環境改善計画助成金【事業場コース】は、ストレスチェックの実施後に集団分析し、職場環境を改善する目的で医師や保健師などの専門家の指導を受けた際の指導費用を助成する制度です。

助成金の支給要件や上限額は、以下の表のとおりです。

事業場の要件 ・労働者を雇用している法人や個人事業主

・労働保険に加入している事業場

取り組みの要件 ・ストレスチェックの実施後に集団分析を行っている

・2017年度以降に専門家と職場環境改善指導に関する契約を交わしている

・集団分析の他に、専門家や管理監督者、労働者、産業保健スタッフの職場巡視などで得た情報も踏まえた評価・指導を受けている

・専門家の指導内容を基に職場環境改善計画を作成した上で、全部もしくは一部を改善している

・職場環境の改善の実施を専門家が確認している

助成金の上限額 1事業場当たり100,000円(1回限り)

出典:独立行政法人労働者健康安全機構.「令和 3 年度版 職場環境改善計画助成金【事業場コース】の手引」(参照:2022.01.24)

小規模事業場産業医活動助成金

小規模事業場産業医活動助成金【産業医コース】は、小規模な事業場で半年以上、産業医活動が継続的に行われた場合に限り、活動費用を助成するための制度です。

産業医活動に含まれる内容は、職場巡視や健康診断の異常所見者への意見聴取、保健指導などが挙げられます。助成金の支給要件や上限額は以下のとおりです。

事業場の要件 ・常勤の従業員が50人未満の小規模事業場

・労働保険に加入している事業場

取り組みの要件 ・2017年度以降に、産業医と産業医活動に係る契約を交わしている

・契約を締結した産業医は、社外の者である

・産業医活動の全てもしくは一部を産業医が行っている

助成金の上限額 半年当たり100,000円(1事業場当たり2回限り)

出典:独立行政法人労働者健康安全機構.「令和 3 年度版 小規模事業場産業医活動助成金【産業医コース】の手引」(参照:2022.01.24)

心の健康づくり計画助成金

心の健康づくり計画助成金は、メンタルヘルス対策の促進員からの助言や支援に基づき、従業員のメンタルヘルス対策を実施した場合に受けられる助成金制度です。

メンタルヘルス対策の促進員は、各都道府県の産業保健総合支援センターに所属しています。助成金を受けるための具体的な要件や、助成金の上限額は以下に示すとおりです。

事業場の要件 ・労働者を雇用している法人や個人事業主かつ、事業場に労働者が在籍している

・労働保険に加入している事業場

・法人:登記上、本店もしくは本社の機能を持つ事業場である、個人事業主:開業届を届出済み

取り組みの要件 ・メンタルヘルス対策促進員の訪問・助言・支援に基づき心の健康づくり計画を作成している

・計画を従業員に周知している

・対策を実施し、メンタルヘルス対策促進員が確認している

助成金の上限額 1法人または1個人事業主当たり100,000円(1回限り)

出典:独立行政法人労働者健康安全機構.「令和3年度版 心の健康づくり計画助成金の手引」(参照:2022.01.24)

まとめ

小規模な事業場でストレスチェックを実施する場合は、ストレスチェックの助成金制度を利用すれば費用の負担を軽減できます。ただし、産業医を探して契約を交わす必要があります。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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