産業医の役割・選任

産業医との契約に必要なことは?契約書作成のポイントやフォーマット・注意点を解説

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更新日:2023.02.24

事業場において従業員が50名を超えた場合、産業医を選任する必要があります。また、産業医の選任期間は14日間と短く、選任を怠れば罰則の対象となるなど、契約の際に注意すべきことがあります。

本記事では産業医の選任義務について、産業医の勤務形態や契約の種類、契約書作成のポイントを解説します。また、産業医と契約する際の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。

産業医について詳しくは『産業医の役割とは?事業所で持つ権限や選任義務などわかりやすく解説』も参考にしてください。

産業医の選任・契約は義務?

従業員が50名以上の企業には産業医を選任する義務があります。まずは、産業医選任義務に違反した場合の罰則について解説します。また、産業医を契約する際に理解しておくべき産業医の勤務形態についても解説するので、参考にしてください。

従業員50名以上の企業には義務がある

事業場の従業員が50名以上になると、企業には産業医を選任・契約する義務が生じます。なお、産業医の選任の手続きには期限があり、産業医の選任義務が生じた日から14日以内に完了しなくてはなりません。

産業医の選任を怠ると労働安全衛生法違反と見なされ、50万円以下の罰金が課される可能性があります。また、社会的信用が低下するリスクがあるため注意が必要です。産業医の選任義務が生じた場合には、速やかに手続きを行わなければなりません。

産業医選任の義務と選び方について詳しくは『産業医を選任する義務はいつから?選び方や違反した時の罰則も解説』も参考にしてください。

産業医の勤務形態は2つ

産業医の勤務形態には嘱託(非常勤)産業医と専属産業医の2種類があります。嘱託(非常勤)産業医とは非常勤の産業医のことを指します。企業に常駐するわけではなく、月に1〜数回の訪問時に、面談や労働環境の巡回などを行うことが一般的です。なお、50人以上999人以下の事業場では嘱託(非常勤)産業医の設置が義務付けられています。

専属産業医とは企業に常時勤務する産業医のことです。1,000人以上の労働者を使用する事業場、そして常時500人が有害業務に携わる事業場では、専属産業医の設置が義務付けられています。

産業医に必要な報酬の相場について詳しくは『産業医の報酬の相場はどれくらい?選任する際にかかる費用や人的・時間的コストも解説』も参考にしてください。

【産業医との契約】主な流れと契約の種類

【産業医との契約】主な流れと契約の種類
産業医との契約の主な流れや契約の種類を解説します。産業医と契約する際の参考にしてください。

主な契約の流れ

産業医との契約は、一般的に下記のような流れで行われます。

1:自社の課題を理解する
まずは自社における労働環境や健康管理についての現状の課題を把握します。

2:自社のニーズに合う産業医を探す
自社の課題から産業医に求める役割を洗い出し、ニーズに合った強みや実績を持つ産業医を探します。産業医の探し方には、医師会からの紹介や病院への依頼、産業医紹介サービス会社などの活用といった方法があります。

3:契約を締結
自社のニーズに合った産業医を選任し契約を締結します。

4:必要書類を提出する
産業医と契約した際は産業医選任報告書などの必要書類を、所轄都道府県の労働基準監督署に提出する必要があります。

なお、産業医選任届の提出について詳しくは『産業医選任届を提出するまでを3ステップで解説!』も参考にしてください。

契約の種類は主に2つ

企業と産業医が契約する際は、個別に産業医と契約する直接雇用契約が採用されることが一般的です。なお、産業医との主な契約方法は、直接雇用契約と業務委託契約の2種類です。

直接雇用契約では、従業員を雇用する場合と同じ方法で企業と産業医が雇用契約を交わします。直接契約は、常勤している専属産業医を設置する際に多い契約方法です。なお、従業員規模が大きい事業場では専属産業医を置く必要があるため、産業医と直接雇用契約を締結することが多くなるでしょう。

一方、業務委託契約は企業に常駐せず、月に1回〜数回程度の訪問を行う嘱託産業医との契約でよく見られる方法です。特定の業務を依頼し、その対価を支払う契約が多いため、業務の範囲や報酬面などをしっかりと取り決めておく必要があります。

嘱託産業医の選び方について詳しくは『嘱託産業医とは?専属産業医との違いは?メリット・デメリットや選び方のポイント』を参考にしてください。

産業医との契約書作成のポイント

産業医との契約書作成のポイント
産業医との契約書作成において、契約書に明記すべき事項や契約書のフォーマットについて解説します。

契約書に明記すべき事項

産業医との契約書作成において明記すべき主な項目は、業務内容、報酬面、データの取り扱い、契約期間の4つです。

業務内容の項目については、従業員との面談、作業所の巡回、衛生委員会、ストレスチェックなどといった産業医に求める役割を記載します。報酬面について明記すべき事項は、月の訪問回数や報酬額、報酬の支払日、交通費などの諸経費についてです。

また、データの取り扱いの項目では、面談記録や健康診断結果、ストレスチェックなどで知り得た個人情報の管理について明記します。契約期間の項目については、産業医との契約期間について明記します。なお、産業医契約は1年契約で自動更新となるケースが一般的です。ただし、1〜5年の有期雇用を採用するケースや顧問契約を締結する企業もあります。

契約書のフォーマット

日本医師会や独立法人労働者健康安全機構といった複数の機関のホームページでは、産業医との契約書のフォーマットが公開されています。フォーマットには産業医との契約に必要な項目が盛り込まれているため、活用すれば書類作成の負担が軽減できます。自社に合った産業医契約書のフォーマットを探して活用するのもおすすめです。(※)

※出典:日本医師会認定産業医制度|産業医契約書の手引き

※出典:中小企業のために産業医ができること|独立行政法人労働者健康安全機構

産業医との契約に関する注意点

産業医との契約においては、産業医が希望する働き方を事前に確認することが大切です。また、産業医を変更する際にもいくつか注意点があります。産業医との契約に関する注意点について以下で解説します。

産業医が希望する働き方なども確認する

医師の働き方についての常識と一般企業における働き方の常識にはギャップが存在することがあります。例えば、医師は正職員として勤務していても、別の職場で兼業や副業をすることが珍しくありません。また、フレキシブルな勤務体系も一般的となっています。

一般企業でも社員の副業を認めるケースが増えてきたものの、まだまだ一般的とは言えません。双方の認識のズレがトラブルを引き起こすことも考えられます。産業医と契約する際は自社のニーズだけでなく、産業医が希望する働き方や業務内容を事前に確認した上で選任することが大切です。

産業医を変更する際は注意が必要

産業医と契約を締結したものの、自社のニーズと合わなかったというケースもあります。産業医を変更する場合は、契約や選任期間において注意が必要です。産業医変更に関わるトラブルを防ぐためには、契約書や契約条件の作成について余裕を持って準備しておきましょう。

また、産業医の選任期間は14日と短い点にも留意してください。次の産業医が決まっていないうちから、前任の産業医の契約を解除してしまうと、ニーズに合った後任の産業医を探す時間が十分にとれない懸念があります。産業医を変更する予定の場合は、事前に新しい産業医を決めておくと安心です。

産業医の変更に関して詳しくは『産業医を変更するには?手続きの方法や自社にマッチした産業医の選び方』も参考にしてください。

まとめ

常時50名以上の従業員を使用する事業場では産業医の選任が必要です。産業医の勤務形態には嘱託産業医と専属産業医の2種類があります。また、契約の種類は主に、直接雇用契約と業務委託契約の2つです。産業医との契約では、契約書に必要事項を明記すること、産業医側の希望を把握することなど注意点がいくつかあります。

株式会社Dr.健康経営の産業医コンシェルジュでは、さまざまな産業医が登録しているため自社に合った産業医を見つけられ、産業医の交代にも対応しているため安心です。産業医をお探しの際は、お気軽にご相談ください。

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Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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