メンタルヘルス・ストレスチェック

テレワークでメンタルヘルス不調?高ストレスのサインや要因とは?企業にできる対策も解説

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更新日:2023.02.27

近年ではテレワークが急速に広まり、自社に取り入れる企業も増えています。しかしテレワークは、従来なかった思わぬストレスを発生させるケースも少なくありません。従業員のメンタルヘルス不調は生産性の低下や退職につながるため、予防や早期発見が重要です。

本記事では従業員の健康を保つために、企業が実施できるメンタルヘルス対策を解説しています。ストレスの具体的原因や従業員の不調のサインの見極め方についても解説するのでぜひ参考にしてください。

テレワーク勤務におけるメンタルヘルスの状況

2020年に株式会社リクルートがテレワークの実態調査を行っています。調査によると全体の59.6%の人が従来にはなかったストレスをテレワークで感じており、そのうちの67.7%はストレスが解消されていません。

また、年代が高いほどストレスが解消できていない傾向があります。テレワークによるストレスを多くの人が感じているという結果になりました。

出典:株式会社リクルート『新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査 テレワーク経験者の6割、テレワーク前にはなかったストレスを実感 仕事中の「雑談」有無の違いでストレス解消具合に14.1ptの差

テレワーク勤務の主なストレス要因とは?

テレワーク勤務の主なストレス要因とは

メンタルヘルスケアでは、ストレスの要因を見極めることが大切です。ここではテレワーク勤務によって従業員が抱えやすいストレスの要因を3つ解説します。

上司や同僚とのコミュニケーション不足

テレワークでは上司や同僚とのコミュニケーション不足が問題になりやすいです。テレワークにおけるコミュニケーションは、主に文字や画像、そして音声によるものとなります。対面で話す時と比べると情報量が少なく、相手の表情や些細な声の調子が読み取れません。

対面であれば雑談などのコミュニケーションが発生しますが、テレワークでは業務上の連絡に終始してしまいます。意思が上手に伝わらなかったり、孤独感を生じたりすることがストレスの発生につながっています。

上司による評価に関する不安

テレワークでは職場の上司や同僚と同じ場所ではなく、それぞれの自宅で作業することになります。自宅での勤務態度が上司の目に見えるわけではないため、適正に評価してもらえるのか不安を感じる従業員も少なくありません。

また、テレワーク勤務・出社勤務の従業員に分かれている場合は、評価に差がつくのではないかと不安になる従業員もいるようです。上司からの信頼や人事評価などが気になり、テレワークに関してストレスを感じるケースもあります。

仕事とプライベートの切り替えが難しい

テレワークの問題の一つは、仕事とプライベートの切り替えが難しいことです。従来の勤務方法なら、出社・退社を経ることで仕事とプライベートの境目がはっきりしていました。テレワークではオン・オフのはっきりした区別がなく、仕事の場と生活の場が同じになってしまいます。

何時でも仕事ができることで残業時間が伸びたり、休日でも仕事をしやすくなったりします。メリハリがないと疲労が蓄積しやすく効率が落ちることもあるでしょう。結果として長時間労働になり、メンタルヘルスの悪化につながります。

【テレワーク】メンタルヘルス不調にみられるサイン

テレワークに限らず仕事の悩みでストレスを溜め込むとメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。ここではメンタルヘルス不調にみられるサインを3つ紹介します。これらのサインを読み取り従業員の異変に早い段階で気付くことが大切です。

心理面

心理面での不調のサインとしては、気分の落ち込みや憂鬱感、不安、イライラなどが挙げられます。内面の不調は具体的に目に見えるものではないため、本人は自覚がない場合があります。また、少しの不調なら放置してしまう人も少なくありません。

しかし心理面の不調は放置すると気付かない内に悪化する危険性があります。また深刻化するとなかなか治りづらいのも特徴です。心理面での不調は早期に発見し、進行しないように治療する必要があります。

体調面

体調面の不調のサインは食欲不振、睡眠トラブル、動悸や息苦しさ、自律神経の乱れなどです。ただし、こういったさまざまな症状はストレスに起因するだけでなく、何らかの病気の可能性もあるため見極めは慎重にしなくてはなりません。

安易に原因をストレスだと決めつけてしまうと深刻な病気を見逃してしまう恐れがあります。企業として従業員が産業医に相談し専門的な知見を得られるよう、環境の整備が求められます。

行動面

行動面での変化はストレスのサインかもしれません。例えば人付き合いが消極的になったり飲酒量や喫煙量が増えたり、身なりに気を使わなくなった場合などは不調のサインの可能性があります。これらの変化は、特にテレワークでは周りから気付きにくいため注意が必要です。

企業として従業員の不調を見逃さないためには、定期的にオンラインで様子をうかがうなどの措置が望まれます。文字のみ・音声のみでなく、映像でのコミュニケーションができればより詳細な状況を把握できるでしょう。

テレワーク勤務において企業ができるメンタルヘルス対策

テレワーク勤務において企業ができるメンタルヘルス対策

テレワーク勤務において企業はどのようなメンタルヘルス対策ができるのか、ここでは6つ紹介します。

従業員が自らメンタルヘルス対策を行えるように配慮する

従業員が自らメンタルヘルスケアができるように、環境を整備することが企業には求められます。メンタルセルフケアについて定期的に情報共有するのも一つの手です。共有方法としてはメールや企業のイントラネットに掲載する他、チャットやビデオ通話による方法もおすすめです。

セルフケアの具体的な内容としては、生活リズムを整えて午前中に日光を浴びる、ストレッチや適度な運動をするなどが挙げられます。家族や友人との定期的なコミュニケーションも欠かせません。

テレワークで不安を感じた時に気軽に相談できる窓口を設置する

テレワーク中は身近に同僚や上司がおらず、不安を感じた場合でも気軽に相談することが難しい状況です。健康やストレスに関する窓口を設置すると、テレワーク中でも従業員が安心して相談できるようになるでしょう。

窓口は設置するだけでなく、存在を従業員に知ってもらうことが必要です。その上で親しみやすい雰囲気作りを心がけ、積極的に活用してもらいましょう。前述のメンタルヘルス対策に合わせて、同時にお知らせするとより利用してもらいやすくなります。

オンライン面談を行う

オンライン面談でもメンタルヘルス対策ができます。たとえ対面で面談ができなくてもオンライン上で適切な面談が可能です。ビデオ通話なら、従業員の表情や身だしなみが確認できます。言動からメンタルの状況を読み取ることもできるでしょう。

リアルタイムのやりとりなら、文字だけのやりとりと比べて詳細な意思疎通が可能です。些細な違和感でも見逃しにくく、メンタルヘルス不調の早期発見につながります。

ストレスチェックを活用する

ストレスチェックとは、質問項目への回答から回答者のストレス状態を測定するものです。常時50人以上の従業員がいる企業ではストレスチェックの実施が義務付けられています。テレワーク勤務者にも従来と同様に、ストレスチェックや健康診断を実施する必要があります。

ストレスを感じやすいテレワークでは、ストレスチェックの頻度を上げるのもおすすめです。オンラインでのストレスチェックなら気軽に受けやすく、価格も比較的安価となります。

ストレスチェックについて詳しくは『ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説』も参考にしてください。

メンタルヘルスケアの教育研修を行う

メンタルヘルスケアの教育研修を実施すれば健康維持に役立てられます。研修対象は従業員・管理監督者・産業保健スタッフとなり、それぞれ研修内容が少し異なります。

従業員の研修内容としては、メンタルヘルスの基礎知識、セルフケアの重要性、ストレスの軽減・対処方法が含まれます。管理監督者ではこれらに加え、メンタルヘルスケアについての企業方針、従業員への適切な対応方法などを学ぶ必要があります。産業保健スタッフに対してはさらに、外部の医療機関との連携方法などの内容も含まれます。

産業医を活用する

企業におけるメンタルヘルス対策は難しい課題であるため専門家の力を借りることが大切です。常時50人以上が在籍する企業では、産業医の設置が義務付けられています。産業医は専門家としての立場から企業や従業員に対して助言することが可能です。

また、ストレスチェックの結果から職場環境改善のアドバイスをしたり、外部医療機関との連携をとったりできます。企業には相談できない従業員も、中立的な立場にある産業医であれば相談しやすいケースもあるでしょう。

産業医の業務内容について詳しくは産業医とは?設置基準や仕事内容、報酬相場や探し方まで徹底解説!も参考にしてください。

まとめ

テレワークは通勤の手間が省けるなどのメリットもありますが、従来の勤務形態では存在しなかったストレスをもたらすことがあります。主なストレス要因は、コミュニケーション不足による孤独や意思疎通の難しさ、不安、仕事とプライベートのメリハリをつけにくいなどです。

メンタルヘルス対策で大切なのは、従業員が自らセルフケアできるよう企業から情報発信することや相談窓口の設置、オンライン面談や研修の実施、そして産業医のアドバイスを受けることです。産業医は医療の専門家として、従業員の健康維持をサポートしてくれるため、積極的に活用しましょう。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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