ストレスチェックは義務なのか?ストレスチェックの疑問点を解説

日付2020.09.16
更新日:2021.12.24

職場で行われるストレスチェック、なんのために行われているのか、疑問に思ったことはありませんか?
ストレスチェックは実施する側も受ける側も義務があるって本当?と、気になることがいろいろあると思います。その疑問点を見ていきましょう。

ストレスチェックの義務化と罰則


労働安全衛生法が改正され、2015年12月より労働者の数が50人以上いる事業所では、メンタルヘルスの不調を予防するため、年に1度ストレスチェックを実施することが義務となりました。
事業所にとっては負担となることもあるストレスチェックですが、おこなわないことでの罰則はあるのでしょうか。

ストレスチェックの対象となるのは

ストレスチェックの実施が義務となるのは、労働者が50人以上の事業所で、50人以下の事業所はストレスチェックの実施は義務ではなく、努力義務とされています。
ストレスチェックの対象となるのは正社員だけではなく、常時使用していれば、パートやアルバイト社員も対象となります。
常時使用する労働者とは、厚生労働省で以下のように定められています。

「引用」

・ 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
・その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

【参考URL】

https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
この条件を満たしていれば、雇用形態には関係なく、常時使用する労働者とみなされます。

ストレスチェックをしないことによる罰則とは?

ストレスチェックをおこなうことは義務とされていますが、実施しなかった場合にはなにか罰則はあるのでしょうか。
実は、ストレスチェックを実施しないことによる罰則はありません。しかし、ストレスチェックの実施後は労働基準監督署に報告しなければいけません。
この報告を怠ったときには、50万円以下の罰金を科せられることがあります。
ストレスチェックは労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐために欠かせないものです。適切にストレスチェックをおこないましょう。

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ストレスチェックが義務化された理由とは


ストレスチェックはなぜ事業所の義務とされているのでしょうか。ストレスチェックが導入された背景を探っていくと、その理由がわかってきます。

メンタルヘルス不調を訴える人が増えている

日本では毎年2万人を超える自殺者がいると言われており、世界保健機関の統計でも、自殺率の高さは諸外国の中で6番目となっています。
自殺の動機や原因の約半数近くが「勤務問題」「健康問題」とされているほか、20代、30代の死因の第1位が自殺であるなど、働き盛り世代の自殺の多さが目立ちます。
精神障害による労災の請求件数も年々増える傾向にあります。労災請求された精神障害の理由としては、「仕事内容、仕事量の変化」「嫌がらせ、いじめ、暴行」が挙げられています。
こうした背景をもとに、ストレスチェックをおこなうことでメンタルヘルスの不調を予防すること、高ストレス者に対しては医師との面接を勧めていくなどの対策をおこなうことを目的とし、ストレスチェック制度が導入されました。

働く人のメンタルヘルスを守るためには

事業所でおこなわれる労働者に対するメンタルヘルスケアは、労働者自身が自分のストレスに気付きメンタルヘルスの不調を防ぐ一次予防、メンタルヘルスの不調に早期に対応する二次予防、メンタルヘルスの不調により休職していた労働者の職場復帰を支援する三次予防があります。
ストレスチェックは、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ一次予防を目的としています。
定期的にストレスチェックをおこない、その結果を本人に通知することで、労働者自身のストレスを気付かせ、ストレスを軽減できるように努めること、結果を集団で集計・分析することで職場でストレスの原因を把握し、環境の改善をすることが目的です。
ストレスが高いと判断された労働者には、医師との面談を勧め、面接指導をおこないます。
必要があれば、面接した医師から専門の病院への紹介をするほか、就業状態の改善が必要であれば、職場環境の改善をおこないます。

ストレスチェックはどのように実施される?


メンタルヘルスの不調を防ぐために必要なストレスチェックですが、どのような手順で行われるのでしょうか。ストレスチェックの実施方法について、見てみましょう。

ストレスチェックを行う手段は?

ストレスチェックは、事業所の用意した質問票に回答していく形式でおこなわれます。記入後のストレスチェックの要旨は、個人情報の保護のため、実施者以外がその内容を見ることはできません。
質問票の内容はとくに決まっていませんが、
・仕事のストレス要因
・心身のストレス反応
・周囲のサポート
の3つの要因が入っていることが求められます。そのほかの質問内容については、事業所の業務内容に合わせて選定します。

ただし、性格検査や適性検査に関わるような質問内容は、ストレスチェックの意図から外れるため入れることができません。
精神疾患のスクリーニングになるような質問事項も入れることができないので注意が必要です。
ストレスチェックの結果は個人情報として特定されるため、職場環境の改善に活用する際には、個人情報がわからない集団分析をおこなう必要があります。
集団分析の実施は義務ではなく、おこなうかどうかの判断は事業所に委ねられています。
ストレスチェックをおこなうときに、国が推奨している「職業性ストレス簡易調査票」もあるので、そちらを使用してもいいでしょう。
この質問内容に、事業所独自の質問内容を加えることもできます。
ストレスチェックをおこなった後は、忘れずに結果について労働基準監督署に報告しなくてはいけません。
報告を怠った場合には、50万円以下の罰金となることがあるほか、ストレスチェック自体が未実施の場合には、安全配慮義務違反となることもあります。
ストレスチェックは労働者のメンタルヘルスを守るためにおこなうものです。
規則だからとりあえずやっている、というスタンスではなく、よりよい職場環境にしていくために積極的な姿勢で行いたいものですね。

ストレスチェックの実施者とはどのような人なのか

ストレスチェックを実施するためには、「実施者」と「実施事務従事者」が必要です。ストレスチェックの結果は、実施者が集計を行い、労働者に通達します。
ストレスチェックの内容が人事に影響しないようにするため、事業所で人事権に関わる人はストレスチェックの実施者になれないという決まりがあるほか、実施者になるためには、医師、保健師、看護師などの資格を持っている必要があります。
実施事務従事者は、実施者の補助をおこない、おもに事務的な作業を担当します。調査票を配布する、記入後の調査票を回収するなどをおこないます。
実施者には事業所で契約している産業医がなることがほとんどですが、中には実施者を外部に委託しているケースもあります。
実施者はメンタルヘルスに関して専門的な知識が求められるので専門性を考慮して外部委託することもあります。

ストレスチェックは義務とされていますが、「義務だから」というのではなく、本来の目的を理解し、ストレスチェックを有効に活用して労働者のストレスを減らし、働きやすい環境作りをしていくことが望まれます。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。