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2021.01.06.Wed

【勉強会レポート】2020年7月「職場のハラスメント対策」

2020年7月の勉強会テーマは、「職場のハラスメント対策」についてです。

今回の勉強会では、産業保健スタッフとして、以下のことを学ぶ事が出来ます。
・ハラスメント対策の基本的な知識の理解
・実践に役立つポイントを身につける

具体的には、以下の事をできるようになります。
・3種類のハラスメントについて説明ができる
・法改正による具体的な強化ポイントについて説明ができる
・実践の場で必要とされるハラスメント対策について提案ができる


それでは以下の順に解説していきます。
1.ハラスメントとは
2.法改正のポイントとは
3.ハラスメントの予防および解決手段
4.ケーススタディ(ハラスメント事例に対する職場への提言)

1.ハラスメントとは
ハラスメントには3種類あるため、一つずつ解説していきます。

1.1パワーハラスメント
▼パワーハラスメントの定義

「職場において行われる、以下①~③までの3つの要素をすべて満たすもの」と定義しています。
①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されるもの

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないので注意が必要です。

▼パワーハラスメントの種類
パワーハラスメントは6種類に分類されています。
1身体的な攻撃
2精神的な攻撃
3人間関係からの切り離し
4過大な要求
5過小な要求
6個の侵害

▼パワーハラスメントの例(動画つき)
「パワハラVR もしも、あなたがハラスメントにあったら」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/movie/9-4

▼パワーハラスメントの件数
統計によると、過去3年間に受けたパワーハラスメントの内容としては、「精神的な攻撃」が54.9%と最も多く、次いで、「過大な要求」29.9%、「人間関係からの切り離し」24.8%となっています。

1.2セクシュアルハラスメント
▼セクシュアルハラスメントの定義

「職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること」をいいます。
事業主、上司、同僚、取引先、顧客、患者、学校における生徒なども行為者になり得ますし、男性も女性も、行為者にも被害者にもなり得ます。また異性に対するものだけでなく、同性に対する性的な言動もセクシュアルハラスメントになります。

 

▼セクシュアルハラスメントの種類
セクシュアルハラスメントは2種類あります
① 対価型セクシュアルハラスメント
経営者から性的な関係を要求されたが、拒否したら解雇された等
② 環境型セクシュアルハラスメント
事務所内で上司が腰や胸等を度々触るので、また触られるのではないかと思うと仕事が手につかず職業意欲が低下する等



▼セクシュアルハラスメントの例(動画つき)

「セクハラVR もしも、あなたがセクシュアルハラスメントにあったら -オフィスにて-」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/movie/9-10

 

▼セクシュアルハラスメントの件数
平成30年度の都道府県労働局相談件数では、セクシュアルハラスメントに関する相談が最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等に関するハラスメントについての相談が多くなっています。

 

1.3妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(マタニティハラスメント)
▼マタニティハラスメントの定義
「上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害される」
ことをいいます。
妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度を利用したこと等を理由として、事業主が行う解雇、減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しない(契約社員の場合)といった行為はハラスメントではなく、「不利益取扱い」となるので注意が必要です。

▼マタニティハラスメントの種類
マタニティハラスメントも2種類あります。
① 出産・育児・介護に関連する制度利用を阻害する嫌がらせ型
② 出産・育児による就労環境を害する、状態への嫌がらせ型

 

▼マタニティハラスメントの例(動画つき)
「マタニティハラスメントの現実」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/movie/9-8

2.ハラスメントの法改正とは
労働施策総合推進法の改正に伴い、2020年6月1日より、パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました。
※中小事業主は2022年(令和4年)月1日から義務化(それまでは努力義務)

▼ハラスメントの法改正のポイント
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発(職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化等について労働者に周知・啓発)
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知等)
・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(再発防止に向けた措置を講ずる等)

 

中でも、事業主による方針の表明は特に重要な取組です。なるべく事業主から労働者に対して、動画や文書によって直接的に周知を行うとより効果的です。
また、相談しやすい環境づくりが必須で、相談窓口の設置や事後のフォローまで、パワーハラスメント防止措置のフローを明確にし、全労働者へ周知を徹底することが重要です。

3.ハラスメントの予防および解決手段
ハラスメント対策には、“5つの予防”“2つの解決”手段があります。

▼“5つの予防”とは
①トップのメッセージ
組織のトップが、職場のハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す
②ルールを決める
就業規則において、ハラスメントの禁止や処分に関する規定を設ける
③実態を把握する
従業員アンケート等を実施する
④教育をする
管理職研修、従業員研修を実施する
⑤社内での周知・啓蒙
組織ルールや相談窓口について周知する

これらを踏まえ、現在実施している取組について、再度確認・評価し、不足している取組は導入を検討しましょう。

 

▼“2つの解決”とは
①相談や解決の場を提供する
企業内・外に相談窓口を設置し、職場の対応責任者を決める
②再発防止のための取組を行う
相談者へのフォロー、職場全体や行為者に対する再発防止対策を行う

相談窓口の周知は、取組の入口として重要なポイントです。担当者を設置し、相談しやすい風土醸成や環境整備を心がけましょう。

これら7つの取組は、一気にすべてを行うのは難しいことです。
安全衛生委員会で年間計画を審議し、適切なタイミングで実施できるよう、関係者と徐々に取り組んでいくことがよいでしょう。

4.ケーススタディ(ハラスメント事例に対する職場への提言)

 

ハラスメント対策の基本をふまえて、ある企業のハラスメント対策を考えるケーススタディを行いました。

ハラスメント対策がまったく行われておらず、また事業主が積極的ではないという設定の企業をケースに、産業医や産業保健師、臨床心理士等の産業保健スタッフで具体的な取り組み方法について話し合いました。
ハラスメント対策の“5つの予防”と“2つの解決”の取組をもとに、より優先度の高い取組について具体的な計画を立案してもらいました。

▼今回の事例はこちら

 

各チームとも活発な議論の中、やはり優先度の高い取組として挙がったのは、トップのメッセージやルールを決める、といった項目でした。ハラスメント対策を一から立ち上げるためには、まずしくみやルールを決め、事業主から労働者へメッセージを発信することがスタートになります。
「積極的でない事業主をいかに説得して行動変容を導くか」が今回のケーススタディの核となる部分でした。

 

もちろん、法令遵守やコンプライアンスを理由として説得することも大切ですが、企業の長期的かつ持続的な成長をめざすために、健康づくりやハラスメント対策がどのように役立つのか、そのビジョンも合わせて説明できるようになると、よりレベルの高いかつ事業主や労働者から信頼される産業保健スタッフになれると考えます。
ぜひ、他職種の声を聞き、チームとしてハラスメント対策を推進していく視点を持ってほしいと思います。

参考文献:
厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル第4版」
(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pwhr2019_manual.pdf)、
WEBサイト:あかるい職場応援団
(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)

 

 

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