職場のストレスとメンタルヘルスの考え方を徹底解説!

日付2021.07.28
更新日:2021.12.24
ストレスとは

そもそもストレスとは何?

ストレスとは、外から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。
ストレスは、ボールとそれを押す力で表現されます。

心(精神)=ボール
ストレス要因=外界からの刺激
ストレス反応=外圧による心(ボール)の歪み
ストレス耐性=ボールが指を跳ね返す力
ストレスとは

ストレス要因(外からの刺激)は、それ自体は悪いことではありませんが、一方で、ストレス反応が強い場合やストレス耐性が弱い場合は、心(ボール)が強く歪んでメンタルヘルス不調につながってしまいます。

ストレス要因

ストレス要因は以下の4種類に分かれます。特に、社会的要因は心理的負荷がかかりやすくストレス反応を生じやすいといわれています。

物理的要因:温度、光、音など。
化学的要因:化学物質、薬物、たばこなど。
生物学的要因:ウイルス、細菌など。
社会的要因:人間関係、家庭問題、経済的問題など。

ストレス反応

ストレス反応とは、外界からの刺激に対する心身の反応のことで、以下の3種類に分かれます。心理的反応・身体的反応は、自分で異変に気付きやすく、周囲からは気付きにくい傾向にあります。一方で、行動的反応は、自分では気づくにくく、周囲が異変に気付く傾向にあります。周囲が異変に気付いて早期にケアすることを「ラインケア」といいます。
心理的反応:抑うつ感、意欲や集中力の低下、億劫感、イライラ感・怒りっぽくなる、不安感、緊張感など。
身体的反応:高血圧、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病、首や肩のこり、動悸、息切れ、下痢、便秘、吐き気、頭痛、めまい、眠れない・何度も目がさめる、食欲不振、だるさ・疲れやすい。
行動的反応:遅刻や早退が増える、酒量やたばこが増える、食事の量が増えるまたは減る、作業効率の低下、作業場の事故、ミスが増えるなど。

ストレス耐性

ストレス耐性とは、ストレス要因によって起こるストレス反応を軽減させる要素のことです。ストレス耐性を高めるには、ストレスやメンタルヘルス不調に対する正しい知識を知り、定期的に心のリフレッシュをしたり、体調を振り返ることが大事です。定期的なストレスチェックの実施などにより、自分のストレスの原因や症状の有無等を早めに振り返るとよいでしょう。

ストレスが溜まるとどうなる?

「ストレスが溜まる」と表現されるように、ストレスは蓄積されていくものなので、よくダムに例えられます。ストレス反応として心の歪みが蓄積されていく(ダムに水が溜まる)と、ある一定までは心は耐えることができますが、それ以上のストレスが蓄積されると心身の症状が出て(ダムから水が漏れだす)メンタルヘルス不調につながってしまいます。

メンタルヘルス不調とは?

メンタルヘルス不調は、厚生労働省の指針では「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」と定義されています。つまり、メンタルヘルス不調とは精神疾患のみを指すのではなく、悩みや不安を抱えている社会的な状態も含みます。
厚生労働省の調査では、仕事に関して「強いストレス」を感じる働く人の割合は、2018年には58.0%となっています。

人は、外界からの刺激としてストレスがかかる(ストレス要因)と、それに抵抗するようにアドレナリンなどが分泌されて、ストレスに適応しようとします(ストレス耐性)。最初のうちは抵抗力が上がり、ストレスがかかる状況でも心身の症状が出ることなく活動をすることができますが、抵抗がある一定以上続くと、車のガソリンがなくなっていくように、頑張るためのエネルギーが枯渇していってしまいます。やがては、頑張りたくても元気が出ない、頑張る意欲自体がでないという状態になってしまいます。
メンタルヘルス不調から回復するためには、安心できる環境で時間をかけて休養することが大切です。抵抗力が下がり、メンタルヘルス不調が悪くなればなるほど回復には時間がかかるので、メンタルヘルス不調は予防が重要となり、特に早期発見・早期対応がポイントとなります。

ストレスとメンタルヘルス不調の一連の流れとは?

仕事におけるストレスとメンタルヘルス不調の関係を示した図に、米国労働安全衛生研究所 (略称:NIOSH)で提唱された「職業性ストレスモデル」という有名な図があります。これは、ストレスチェックで使用される「職業性ストレス簡易調査票」の元にもなっている考え方です。
職場において「どのようなストレスの原因があり、何がストレスを高めメンタルヘルスを悪化させるのか、逆に、どのようなサポートがあればメンタル不調にならずにいきいきと働けるのか」などが一連の流れに沿って示されています。
ここでは、その「NIOSHの職業性ストレスモデル」を元に、ストレスとメンタルヘルス不調の関係を解説していきます。
【NIOSHの職業性ストレスモデル】
NIOSHの職業性ストレスモデル

出典:「Selfcare こころの健康気づきのヒント集」(厚生労働省)を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/000561002.pdf

ストレスの原因は、(A)仕事上のストレス要因、仕事以外のストレス要因、個人要因の3種類があるとされます。一方で、ストレスを緩和させる要素の(C)緩衝要因として、上司・同僚・家族や友人など周囲からのサポートがあります。緩衝要因が加えられてもなおストレスが蓄積されていくと(B)ストレス反応として心身の症状がでます。そして、心身の症状が続いてしまうと、やがて精神疾患として疾病の状態になってしまいます。その状態になると、仕事を継続することが難しく、休職となり、さらには離職してしまうリスクもあります。
そのため、会社として適切にメンタルヘルス予防に取り組むことで休職・離職を予防し、生産性の向上や人材の損失防止につなげることが重要となります。

ストレスの原因のうち、会社や職場では「仕事以外の要因」「個人要因」に対してアプローチをすることは限界があるため、会社におけるメンタルヘルス予防としては、いかに(A)仕事のストレス要因を軽減し、(C)緩衝要因としての周囲(上司・同僚)のサポート体制を構築するかがポイントとなります。また、セルフケアにより(B)ストレス反応を軽減・予防することも重要となります。

メンタルヘルス対策は3段階!

メンタルヘルス対策の基本として、予防には「一次予防」「二次予防」「三次予防」と3つの段階があります。

● 一次予防:メンタルヘルス不調を未然に防止する。
● 二次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う。
● 三次予防:メンタルヘルス不調後職場復帰の支援などを行う。

前途の「NIOSHの職業性ストレスモデル」において、仕事におけるストレスとメンタル不調の一連の流れを、一次予防から三次予防に分けると下記のようになります。
メンタルヘルス対策
出典:「Selfcare こころの健康気づきのヒント集」(厚生労働省)を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/000561002.pdf

一次予防から三次予防を適切に行えるよう、セルフケア(コラム:「職場のメンタルヘルス対策「セルフケア」の考え方と具体例をご紹介!」参照)、ラインケア(コラム:「管理職必見!職場のメンタルヘルス対策「ラインケア」の考え方と具体例をご紹介!」参照)という考えを理解し、メンタル不調に対するケアを適切に行なっていく必要があります。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。