メンタルヘルス・ストレスチェック

管理職必見!職場のメンタルヘルス対策「ラインケア」を徹底解説!

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更新日:2023.01.04

ラインケアとは?

ラインケアとは、職場のライン上にいる直属の上司である部長・課長など職場の〝管理監督者〟が、部下のいつもと違う様子にいち早く気付き、相談対応、職場環境改善などに務めることをいいます。管理監督者は、部下である従業員の健康を守る義務があるため、日頃から部下の健康状態を把握して、相談しやすい環境を作り、部下からの相談などに対応できるようにしておきましょう。特に、長時間労働などで疲労蓄積が見られる従業員からは、話をよく聞き、適切な情報を提供し、必要に応じて産業医や保健師、社外の窓口や医療機関などへの相談や受診を促す必要があります。
ラインケアとは?

【管理監督者とは?】

管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者」をいいます。管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様によって判断します。以下の3点が、管理監督者の定義です。
●労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること。
※ 課長やリーダーといった肩書きがあっても、自らの裁量で行使できる権限が少ない立場の者は、管理監督者とはいえません。
●現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること。
●賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること。

ラインケアの全体像とは?

ラインケアは、以下のような流れで行います。

① 普段の会話、相談体制

日常会話や日頃の気配りにより、部下と良好な人間関係を築き、本人の性格や状態を把握しておくことが大事です。また、健康相談窓口を社内に設置し、従業員や職場へ周知していくことも重要です。

② 部下の「いつもと違う」に気付く

メンタル不調の症状は人によって様々ですが、「いつもと違う」様子がサインとなることが多いためアンテナを張っておくことが大切です。

③ 声掛け・傾聴

「いつもと違う」異変に気付いたら、まずは声をかけてあげましょう。聞き役に徹して、相手の考えや感情を受容する姿勢が大切です。

④ 医療者との連携(橋渡し)

管理監督者や会社で対処が難しい場合、産業医や保健師に相談しましょう。病気かどうか、健康上の配慮などは専門家との連携を図ることが大切です。
ラインケア

ラインケアの具体的な流れを解説!

ここでは、上記のラインケアの全体像に沿って、1つずつ具体的に解説していきます。

①普段の会話、相談体制

普段から部下と会話したり、関心をもって接することで、本人の性格、行動、人間関係などについて把握しておくことが必要です。また、日頃から良好なコミュニケーションをとることで、「この人なら自分の悩みを打ち明けても構わない」という信頼関係を築くことができ、部下が気軽に相談できるようになります。人に話すことはストレスや不安を軽減させ、気持ちの整理や解決へつながる対策となるため、上司に相談しやすい環境づくりや、健康相談窓口を社内に設置して、窓口の存在を周知させることも大切です。
例えば、テレワークにおいては、オンライン会議では顔出しをルールとすることや、上司と部下で定期的な1on1の機会を作ることなどでお互いの様子を確認できるようになります。テレワークは移動や雑談がなくなり業務効率はよくなる一方で、社員同士のつながりは希薄になるため、コミュニティとしての取組みを意識しましょう。

② 部下の『いつもと違う』に気付く

ラインケアで大切なのは、管理監督者が部下の「いつもと違う」様子に早く気付くことです。「いつもと違う」という感覚は、部下がそれまでに示してきた行動パターンからずれた行動のことなどを指し、その異変の背景にはメンタル不調が隠れている場合が多いので注意しましょう。
「いつもと違う」様子は、大きく3つのポイント(心の異変、体の異変、行動の異変)があります。その中でも10のポイントを紹介します。どんな視点でみればよいかを知り、アンテナを張っておきましょう。これらのポイントは本人では気付きにくいことが多いため、周りの人が気付いて報告できる体制を作ることが大切です。

【「いつもと違う」部下の様子10のポイント】
「いつもと違う」部下の様子10のポイント
● 遅刻、早退、欠勤が増える
● 休みの連絡がこない(無断欠勤がある)
● 残業、休日出勤が不釣り合いに増える
● 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
● 業務の結果がなかなか出てこない
● 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
● 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
● 不自然な言動が目立つ
● ミスや事故が目立つ
● 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする
メンタルヘルス

③ 声掛け・傾聴

部下の「いつもと違う」様子に気付いたら、まずは本人へ声をかけてあげましょう。その際は聞き役に徹し、相手の考えや感情を受け入れ共感してあげることが大切です。
「いつもと違う」様子がなかったとしても、長時間労働などにより過労状態または強度の心理的負荷のある出来事を経験したなど、特に個別の配慮が必要と思われる部下に対しては、管理監督者から定期的に声をかけるようにします。さらに、ストレスマネジメントやセルフケアに関する情報を提供をしたり、必要に応じて産業医や保健師、社内の相談窓口への相談を勧めましょう。
部下の話を積極的に聴くことは、本人のケアだけでなく、人間関係や業務の進め方など職場環境を改善する点からも欠かせません。企業は、ラインケアの管理職研修などを実施することで、管理監督者に部下の話を聴く技術を習得する機会を作りましょう。

【「声掛け・傾聴」のポイントや注意点】
●本人の異変について、発言態度や勤怠不良など具体的に客観的な事実をそのまま伝えましょう
【○良い例】「ここ1カ月間、遅刻や欠勤が〇回に増えているけど、心配事があれば相談して欲しい」

病名をいうことを避けるいきなり精神科受診や休養を勧めることはなるべく避ける(明らかに体調不良のときは、本人へ共感しつつ受診や休養を勧めることは問題ありません)。
【×悪い例】「うつ病なんじゃないの?」「精神科いったら?」

●「積極的傾聴」は、何よりもまず「君の話を聞きたい」という思いを伝えることが大切です。その上で、相手の話に耳を傾け、相手の立場にたち共感しましょう。
【○良い例】「どうしてそう考えるのか教えてもらえないかな?」

●本人の話が事実と異なっていたり、間違った判断をしていると感じても、指摘・修正・否定は避けましょう。メンタル不調の場合、判断能力が低下していることが多く、説得では解決が難しいだけでなく、信頼関係を失ないトラブルのもとになってしまうリスクがあります。
【×悪い例】「君の考えは間違っている、甘い」
【×悪い例】「要は〇〇と言おうとしているのでしょ?それはもう分ったよ」

●自分の経験上や独断によるアドバイス、価値観の押しつけは避けましょう
【×悪い例】「私の若いときは〇〇だった」

●相手の苦しみを性格や気持ちの問題にしたり、無理な励ましをするのは避けましょう
【×悪い例】「そんなことは気の持ちようだ」「弱音を吐いてないで、もっと頑張らないと」
【○良い例】「みんなも協力するから、一緒に考えていきましょう」

●相手の考えや気持ちを一般論化し、他の人と比較することは避けましょう
【×悪い例】「普通の人はそこまで気にしない」
【○良い例】「あなたにとっては辛いことで、そんなに悩んでいたんだね」

●気分転換に新しいことを勧めるのは避けましょう。新しいことや環境の変化は、無意識に心の負担になる可能性が高いため、ストレスが大きいときには向いていません。
【×悪い例】「気分転換に旅行でもいってみたら?」「飲みに行って忘れたら?」

●静かに落ち着いて会話ができ、プライバシーが保たれる空間で話しましょう。職場関係者の出入りが多い場所などでは安心して相談することができません。

④ 医療資源への連携(橋渡し)

部下の話を聞いた後は、管理監督者は職務上の何らかの対応をする必要があります。「病気かどうか、職場不適応かどうか」は勝手に判断せず、管理監督者自身で解決が難しい場合、産業医や保健師、人事労務担当者に相談し連携を図りましょう。必ずしも会社だけで問題を解決する必要はありません。働きやすい環境のサポートに向けて、医療機関への橋渡しを早期かつ適切に行っていくことが大切です。

●日常業務に支障がなく、仕事への前向きな意欲がある場合
急いで産業医や保健師、医療機関へつなぐ必要はないと思われます。まずは本人と相談した上で、職場環境や作業の調整(仕事量、仕事の質、役割など)を検討し、しばらくは経過を見てもいいでしょう。もし異変が続くようならば、その段階で産業医や保健師に相談をしましょう。

●精神症状、身体症状、行動の異変などがある場合
メンタル不調の可能性があるので、まずは産業医や保健師に相談し、必要に応じて面談を設定しましょう。面談の結果、医療機関の受診が必要と判断された場合は本人へ受診を勧めましょう。受診の結果、休養が必要と診断された場合、休業の手続きを行いましょう。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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