HSPとは?うつ病とは違う?向き合い方や特性を解説

日付2022.03.30
更新日:2022.03.30
HSPとは?うつ病とは違う?向き合い方や特性を解説

昨今、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の認識が広まり、自認する人も増えています。HSPの人はその繊細さゆえ、ストレスを溜め込みやすい特性を持っています。HSPの特性が日常生活に支障をきたしていることも少なくありません。

そのため仕事関係にHSPの特性を持つ人がいる場合、向き合い方が分からずに悩んでいる人もいるのではないでしょうか。もしくは、自分自身にHSPの特性があり、悩んでいる人もいるかもしれません。

本記事ではHSPの概要や特性、うつ病との関連性など、幅広く解説します。HSPのセルフチェックも紹介するのでぜひ参考にしてください。

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?

HSPは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字をとったもので、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質を持った人」を指します。アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロンによって提唱されました。

統計的には人口の15%から20%、5人に1人の割合でHSPが存在します。社会的には少数派のため、マジョリティからの共感を得られにくく、生きづらさの原因につながっています。

HSPの主な特性

HSPにはDOES(ダズ)と呼ばれる4つの特性があります。DOESは、Depth of processing、Overstimulated、Emotional reactivity and high Empathy、Sensitivity to Subtletiesの頭文字をとったものです。

ここではHSPの主な特性を解説します。

深く処理をする(Depth of processing)

HSPの人は物事を深く考え、情報を深く処理する傾向があります。相手の話を聞くだけでなく、そこにどのような価値観や人生観があるかなど、話の奥深くまで入り込もうとします。物事を深く掘り下げて考える能力に長けているといえるでしょう。

他の人では気付かないような細かいことにも気がつくメリットがある一方で、深く考えすぎてしまい、なかなか行動に移せないなどの一面もあります。

HSPには石橋を叩いて渡るような性格をした人が多く、良くも悪くも慎重です。自分が行動することで発生するメリット・デメリットなどについて、さまざまな可能性を考慮するため、どうしても決断に時間がかかってしまいます。

過度な刺激を受けやすい(Overstimulated)

HSPの人は、過度な刺激を受けやすい特性を持っています。一般的な人と比較すると、HSPの人は非常に強い感受性があり、悪くいえば「過敏」です。過度な刺激を受け、時には動揺してしまい、思ったようなパフォーマンスが出せない場面もあります。

どのようなことに対して過度な刺激を受けるかは、HSPの人の中でもさまざまです。例えば大きな音が苦手な人や、人混みですぐに疲れてしまう人など、その性質は多種多様といえます。中には他人とのコミュニケーションを上手にとれない人もいるでしょう。

過度な刺激を受けやすい性質は、感受性が豊かととらえることもできますが、いわゆる「過敏な人」という印象を与えることもあります。自分自身が過剰に反応してしまい辛いことに加えて、他人とのコミュニケーションに悩んでしまうなど日常生活に支障が出る場合も多いでしょう。

感情の反応が強い・共感性が高い(Emotional reactivity and high Empathy)

感情の反応が強く共感性が高いのも、HSPの特性の一つです。HSPの脳の研究によれば、ミラーニューロンの活動が一般の人に比べて活発である事実が判明しています。

ミラーニューロンは、感情的な反応・共感に関わる神経細胞で、この働きが強ければ強いほど共感性が高いことになります。

ミラーニューロンの働きが活発な人は、直感が鋭く、感情移入しやすい性質を持っています。そのため不幸に陥っている人の気持ちが分かり、手を差し伸べてあげるなど、共感力の高さを発揮できます。

その一方で非常に正義感が強く、完璧主義な一面もあるため、時には扱いづらい性質でもあるでしょう。相手のちょっとした間違いに強く反応するなど、対人関係のトラブルの原因に繋がるともあります。

些細な刺激にも敏感・感受性が高い(Sensitivity to Subtleties)

前述したように、HSPの人は些細な刺激にも敏感であり、感受性が強いなどの性質があります。相手のちょっとした優しさを感じとる能力に長けている一方、「あの人は自分を馬鹿にしている」など、相手の悪意にも気がつきやすい性質です。

相手の感情や考えの変化が手にとるように分かることがメリットの一つです。相手の声色やトーンもしっかりと観察しているため、「これ以上踏み込むと怒られる」などのラインを見極めやすいでしょう。

しかしちょっとした環境の変化もすぐに感じ取ってしまうため、何事にも不安に陥りやすい性質でもあります。

HSPのセルフチェック

HSPの特性は、本人にとって良い方向に働く場合もあります。しかしデメリットも多く、仕事に影響すると本来の力を発揮できなくなる可能性も少なくありません。「自分はHSPなのでは」「職場のあの人はHSPかもしれない」と気になっている方も多いでしょう。

HSPの特性を詳しく知りたい場合、自分自身や周りの人に心あたりがある場合は、HSPのセルフチェックをしてみると良いでしょう。以下の項目をチェックしてみてください。

・環境の変化に気付きやすく、不安を感じやすい
・仕事をする際に「競争させられている」「観察されている」などの意識があると、とても緊張してしまい本来のパフォーマンスを発揮しにくい
・他人の気分に左右されやすい
・多くのタスクを抱えるとすぐに混乱してしまう
・忙しい日が続くとどこかに逃げたくなる

これらの性質が多く当てはまる場合、HSPの特性を持つ可能性が考えられます。

HSPとうつ病はどう違う?

HSPとうつ病はどう違う?

HSPの方はうつ病の人と似たような特徴があらわれるため、混同されやすいです。

しかし結論からいえば、うつ病は精神疾患であり「病気」であるのに対し、HSPは病気ではなく「性質」です。ここではHSPとうつ病の違いや、その関係性を解説します。

HSPはうつ病ではない

HSPはうつ病ではありません。確かにHSPの人は不安を感じやすく、「眠れない」「気分が落ち込んでしまう」「すぐに疲れてしまう」など、うつ病に似た症状が現れます。しかし医学的な見地からすると、HSPとうつ病はまったくの別物とされています。

HSPとうつ病の一番の違いは、「それが先天的であるが後天的であるか」という点です。HSPは先天的に備わった性質ですが、うつ病は後天的に発生する精神疾患です。また、不調時の体調も、うつ病の方が悪いといわれています。

参考:厚生労働省「うつ病|こころの病気を知る|メンタルヘルス」(参照:2022-02-21)

HSPとうつ病の関係性

HSPとうつ病はまったくの別物とされていますが、この2つには緩やかな関連があります。というのも、HSPの人はうつ病を発症するリスクが高いといわれているからです。

うつ病は後天的に発症する精神疾患で、人間関係や環境に由来するストレスが原因です。そのため、「ストレスを受けやすい人」「ストレスを溜め込みやすい人」が発症しやすい疾患です。

また、HSPの人はその性質上ストレスを溜め込みやすいとされています。HSPとうつ病には、緩やかな関連性があることを理解しておきましょう。

HSS(ハイ・センセーション・シーキング)との違いは?

HSPに似た用語として、HSSがあります。High Sensation Seeking(ハイ・センセーション・シーキング)の略であり、高い刺激を求めると訳されます。

またHSS型HSPなどの人もいるため、HSPを理解しておく上でHSSの知識を整理しておくことは重要です。ここではHSSの概要やHSPとの違い、HSS型HSPについて解説します。

HSSは刺激を探求する

冒頭でも触れたように、HSSはHigh Sensation Seeking(ハイ・センセーション・シーキング)の略で、刺激を求める性質を指します。非常に好奇心が旺盛で、旅行やイベントなどに活発に参加するタイプで、自分が満たされることを望んでいます。

周囲からは「明るく活発な人」と評価されることも多いですが、自分の感情が満たされなければ不調に陥る場合もあります。こうしたHSSは、心理学者のマービン・ズッカーマンによって提唱されました。

HSSとHSPを同じようなものとして捉える人も多いですが、実は両者の神経伝達物質には違いがあります。HSPの脳内にセロトニンが出る一方で、HSSの脳内では、行動を活発化させるドーパミンが分泌されています。

HSS型HSPとは?

HSSとHSPは別ものだと解説しましたが、HSPの中には「HSS型HSP」が存在します。簡単にいえば、HSSの特性を持ったHSPです。具体的には、以下のような特性が当てはまります。

・好奇心旺盛で深くのめり込むが飽きるのも早い
・チャレンジ精神旺盛だが小さなミスを引きずりやすい
・初対面の人と打ち解けやすいが、次第に距離感のとり方が分からなくなってしまい疎遠になる
・イベントは好きだが騒音や人混みが苦手
・周囲から「明るく活発」と評価されることもあるが、過敏で疲れやすい

HSS型HSPの場合は、好奇心や行動が先に出てしまうため、さまざまな工夫が必要です。例えば行動量を制限したり、1人になる時間を確保したりすれば、HSPのデメリットを最小限に抑えられるでしょう。

HSPには4つの型がある

HSPは「HSP(内向型HSP)」「HSE(外向型HSP)」「HSS型HSP(刺激追求型HSP)」「HSS型HSE(刺激追求・外向型HSP)」4つの型に分類されます。4つの中では、HSP(内向型HSP)が最も多いとされています。

HSP(内向型HSP)は、序盤で解説したHSPで、ストレスのない穏やかな生活を目指しています。外向型HSPとは異なり、衝動的な行動は少なく、リスク回避型の性格です。内向的で、ちょっとした出来事でストレスを溜めやすい性格をしています。

これに対しHSE(外向型HSP)は、社交的で人との交流を好むHSPです。HSP特有の繊細さは持っていますが、社交性も高いため、集団の中ではうまく立ち回れます。しかし人知れずストレスを溜めてしまい、後になってどっと疲れが来るケースも多いようです。

HSS型HSP(刺激追求型HSP)は、好奇心旺盛な一方で、繊細さも持ち合わせているHSPです。HSS型HSE(刺激追求・外向型HSP)は、強い好奇心と探究力という特徴があります。

HSPとの向き合いかた

「職場にHSPの人がいる」など、さまざまな悩みを抱えている人も多いでしょう。しかしHSPはあくまでその人の性質であって、うつ病のような精神疾患ではありません。そのため、復職時のような特別な配慮は不要です。

ここでは、HSPとの向き合いかたに焦点を当てて解説します。

刺激が少ない環境を作る

HSPは刺激を受け、ストレスを溜め込みやすい性質を持っています。刺激の多い環境では大きくストレスを感じやすいため、刺激が少ない環境を作ってあげると良いでしょう。

具体的には、「従業員が1人になれるような空間を作る」のがおすすめです。HSPの人が定期的に息抜きできるようなスポットがあれば、ストレスの低減に大きく役立ちます。

ただ、こうした対応は、HSPの人だけでなく従業員全体に行うことが大切です。一部の人を特別扱いする風潮は、他の従業員のモチベーションにも大きな影響を与える可能性があります。

人混みや雑音を避ける

HSPの中には、人混みや雑音によって仕事のパフォーマンスが下がってしまう人も多いです。特にHSPは小さな雑音でも気が散りやすく、ストレスを抱え込みやすい性質があります。

そのため職場全体で、人混みや雑音を避ける工夫をすると良いでしょう。例えば時差出勤を利用して出勤時間をずらしたり、従業員の平均的なスケジュールとは別の働き方に配慮したりするのがおすすめです。

他にもデスクを自由にして空いている場所で仕事ができる環境にする、ノイズをシャットアウトするためにヘッドフォンの着用を認めるなど企業としてさまざまな対策ができます。

産業医に相談してみる

産業医に話を聞いてもらう選択肢もあります。HSPは5人に1人が持っている性質であるため、どうしても他人に理解されづらい側面があります。HSPの人は「他人に理解してもらえない」と不満を抱え、一般的な人も「HSPの人はよく分からない」と考え、慢性的な不和につながるリスクもあるでしょう。

産業医は、健康診断の実施に基づく指導や、労働者の健康管理を行う医師です。HSPについて知識がある産業医も多いため、質の高い面談を行ってもらえる可能性もあります。1人で抱えきれなくなった時の相談場所として、信頼できる産業医を確保しておくのがおすすめです。

まとめ

今回はHSPについて幅広く解説しました。HSPはうつ病のような精神疾患ではないため、復職などに関わる特別な配慮は不要です。しかし、HSPの特性がある人でも気持ち良く働けるように、できるだけ職場環境を整備しておく必要があります。

また、産業医を上手に活用し、従業員の不安を和らげてあげるのも大切です。HSPの性質を深く理解し、向き合えるように準備しておきましょう。

株式会社Dr.健康経営の「産業医コンシェルジュ」は、メンタルケアに強い産業医サービスです。メンタル不調の従業員のケアや企業にメンタルヘルスの専門家がいなくて困っているという方はぜひご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。