メンタルヘルス・ストレスチェック

EAP(従業員支援プログラム)とは?メンタルヘルス対策の重要性や導入メリットを解説

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更新日:2023.02.19

従業員のメンタルヘルスケアの強化にEAPが有効と聞いたものの、どのようなメリットがあるのか具体的な運用方法が分からない人もいるのではないでしょうか。

本記事では、EAPの概要や導入によって企業はどのようなメリットを得られるのか、効果的な運用方法などを解説します。最後まで読むことでEAPの概要から運用方法までを網羅できます。自社でEAPを導入する際の参考にしてください。

EAP(従業員支援プログラム)とは?

EAPとは?

従業員のメンタルヘルスケア対策の一つにあげられるEAPとはどのようなものなのでしょうか。本章では、EAPを導入する目的や誕生した歴史などを解説していきます。

EAPの目的と概要

EAPは、メンタル面の不調や悩みを抱えている従業員のケアを目的にしています。EAPとは、Employee Assistance Programを略した用語で日本語では従業員支援プログラムと訳されています。具体的には、仕事などが原因でうつ病などの精神疾患を発症してしまった休職者を対象にした復職支援を行うためのものです。

また、休職者への復職支援に加えて従業員のパフォーマンスを向上させることも目的の一つです。EAPは、厚生労働省のメンタルヘルス対策にも取り上げられており、従業員のメンタルヘルスケア対策を検討している企業から注目を集めています。

EAPの歴史

EAPの歴史は1950年代のアメリカまで遡ります。当時のアメリカでは、アルコールや薬物の依存症が国内に蔓延し社会問題に発展していました。1920年代から続く禁酒法の効果は得られず、医療施設でも依存症患者を回復させることはできませんでした。

1935年に、アルコール依存症の2人の男性によって誕生した自助グループAlcoholics Anonymous(AA)は、EAPの始まりとされています。AAでは、アルコール依存に悩む人同士が集まり、自分の問題や悩みなどを語り合うことで依存症の克服に成功しています。AAの成果がアメリカ国内で認められ、政府機関や民間企業で導入されるようになり、日本を含む海外にも普及していきました。

EAPは厚生労働省が定める4つのケアの一つでもある

厚生労働省のメンタルヘルス対策推進では、4つのケアを重視しています。EAPは4つのケアの一つで事業場外資源によるケアに該当します。以下にあげる4つのケアの特徴を解説します。

・事業場外資源によるケア
・事業場内産業保健スタッフによるケア
・ラインケア
・セルフケア

事業場外資源によるケアとは、社外からメンタルヘルスケアの専門家を招いたり、専門機関の支援サービスを利用したりして実施される支援のことです。一方で、事業場内産業保健スタッフによるケアは、産業医や人事・総務部門などの社内の人材を用いた支援を行っています。

ラインケアは管理職が部下を対象にしたケアを意味します。セルフケアは従業員自身で実践するケア方法です。自社でEAPを導入する場合は、事業場外資源によるケアを参考に取り組みましょう。

EAP導入によって企業にもたらすメリット

従業員のメンタルヘルスケア対策にEAPを導入した場合、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。本章では、EAPの導入で企業が得られるメリットを解説します。

CSR(企業の社会的責任)を果たせる

EAPを導入すると企業はCSRを果たすことができます。CSRとは、Corporate Social Resposibilityの頭文字を取った用語で日本では企業の社会的責任と直訳されています。社会的責任とは、企業が自主的に社会貢献のための取り組みを行うことです。

社会的責任の一例には自社の利益だけを追求するのではなく、社会的なルールを守る、環境問題に配慮する、説明責任を果たすなどがあげられます。近年では、従業員の在り方が、CSRの社会貢献の一つに取り上げられたことをきっかけに企業でEAPが採用されるようになりました。

企業のイメージアップにつながる

EAPを導入するメリットの一つに企業イメージの向上があげられます。従業員のメンタルヘルス対策の一環で取り組むEAPが、なぜ企業のイメージアップにつながるのでしょうか。

企業がEAPを導入すると、従業員のメンタル面を含めたサポートができるため、心身の不調が原因で離職する人材を減らせます。人材の定着率が高くなれば、休職率や離職率につながるため、採用活動などにかかるコストの削減も可能です。

また、企業の従業員満足度が向上すると社外に従業員を大切にしている企業イメージを浸透させやすくなります。さらに、良いイメージがある企業は社会的な信用や評価が高まる、優秀な人材が集まりやすくなるなどの複利効果も得られます。

生産性の向上につながる

従業員は職場環境や職場内の人間関係で悩む期間が長いほど、自身の能力を発揮しづらくなり、業務での生産性の低下を招く可能性があります。企業が従業員のメンタルの不調に対して適切な対応を取らなかった場合、生産性が低下するだけでは済まないでしょう。従業員の集中力の低下によって業務中のケガを含む労災事故などを引き起こすリスクが高まります。

企業が従業員に対して適切な対応を取ることでメンタルの不調を改善できれば従業員のパフォーマンスが向上し、企業全体の生産性を向上させることも可能です。EAPを導入して従業員のメンタルヘルスケア対策に取り組むことでメンタルの不調に悩む従業員にも迅速な対応ができます。

職場の活性化につながる

従業員にとって職場でのストレス要因を放置し続けるとハラスメントなどの問題が発生しやすくなり、職場全体の雰囲気が悪化する可能性があります。また、EAPを導入するとストレス要因を減らすことができ、職場の雰囲気の改善も期待できます。職場内の雰囲気が改善されれば、パワハラやセクハラなどのトラブルを未然に防ぐことも可能です。

さらに、マネージャー以上の管理職を対象にした社内研修などを行うことも大切です。問題が発生した際の適切な対応方法や部下に対するコミュニケーション方法などを学ぶ機会をつくることでスキルアップや次世代のリーダーの育成ができ、組織の活性化につなげられます。

内部EAPと外部EAPの違い

EAPは、大きく分けて内部EAPと外部EAPの2つの方法があります。本章では、それぞれの概要と導入によって得られるメリットを解説します。

内部EAPは自社内で活動すること

内部EAPとは、EAPに関する全ての取り組みを社内のリソースで実施する方法を指します。内部EAPを実施する企業にはEAPを専門に行う産業医やカウンセラーなどの人材がおり、メンタル面の不調に悩んでいる従業員に対し、ストレスチェックやカウンセリングを行える環境が整備されています。

内部EAPを行うメリットは、従業員から相談を受けてから問題を解決するまでの対応が迅速に行いやすいことです。企業文化や社内の事情を把握している人材が窓口にいるため、従業員の悩みなども理解しやすくなります。また、従業員が利用したいときに相談できることもメリットの一つです。

外部EAPは外部機関に相談すること

外部EAPとは、社外の専門機関を相談窓口にする方法です。外部EAPを利用する場合は社外の専門機関と顧問契約や業務委託などの契約を交わす必要があります。具体的な相談方法は、社外の専門機関にある個室への訪問や電話相談、メール相談などがあげられます。

外部EAPを利用するメリットは従業員が気兼ねなく相談できることです。内部EAPは社内の一室に設けられていることが多く、人目が気になって相談しづらいと感じる従業員も少なくありません。

一方で、外部EAPは電話やメールなどの相談方法も選べるため、人目を気にせずに好きなときに相談できるメリットがあります。また、企業は相談員の人件費などのコストを負担する必要がありません。

EAPを効果的に運用するには?

EAPを導入し、効果的な運用を行うためにはいくつか押さえておきたいポイントがあります。本章では、EAPを効果的に運用するためのポイントを解説します。

従業員の理解を得るために社内に周知する

EAPを効果的に運用するためには、社内に周知して従業員の理解を得ることが重要です。経営層が従業員のメンタルヘルスケア対策に取り組むために、EAPの相談窓口を設置しても従業員が窓口の存在を知らなければ誰も利用しないでしょう。

EAPを社内に根付かせ、従業員のメンタルヘルスケアに取り組むためには社内への周知が不可欠です。EAPを社内に周知する方法で有効なのは、説明会や研修の開催や社内の電子掲示板、メールなどを用いた情報発信です。

社内に周知する際はEAPの相談窓口の存在を知らせるだけでなく、設置する目的や具体的な利用方法、プライバシーなどの個人情報の取り扱い方などを説明し、窓口に相談する安全性も合わせて伝えましょう。

従業員が相談しやすい方法を選ぶ

内部EAPや外部EAPのいずれかを選択した場合でも従業員が相談しやすい方法を選ぶことが大切です。また、EAPの相談窓口に置く人材は、カウンセラーや保健師、看護師なども可能ですが中でもメンタルケアの知識が豊富な産業医の導入が有効です。

外部EAPサービスを利用する場合は、24時間365日対応で従業員がいつでも相談できるか、産業医などのメンタルケアの専門家が在籍しているか、メンタル面に加えて身体の健康面も同時に相談できるかなどに該当しているサービスかどうかを確認しておきましょう。

さらに、情報漏洩を未然に防ぐためのセキュリティ対策を徹底しているか、サービス内容に見合った価格が設定されているかなどをチェックしておくことも重要です。

社内体制を整える

外部EAPサービスを利用する場合でも外部の専門家を含めたEAPの運用に向けた社内体制を整えることが大切です。具体的には、社内の担当者を任命し、相談窓口を設置しましょう。

EAPの担当者は、人事・総務部門から人選されるのが一般的です。社内に担当者がいれば、従業員に寄り添うことができ、当事者目線で問題の解決に取り組めるようになります。

また、内部EAPを選択した場合は、外部の専門家と連携を取ることも重要です。社内体制を整備してもリソース不足などによってEAPを継続的に運用できなくなる可能性もあります。例えば、産業医サービスを活用するのも一つの方法です。

EAPを運用する際の注意点

EAPを運用する際の注意点

EAPを実際に運用する際に企業が注意すべきことがあります。EAPを運用する企業がどのような点に気を付ければよいのか、以下の2つの注意点を解説します。EAPを正しく運用する際に参考にしてください。

個人情報の保護を徹底する

従業員が安心してEAPに参加できるようにするために個人情報の保護を徹底させることが重要です。EAPを運用する上で注意すべきことは個人情報の漏洩です。情報管理が徹底されておらず、相談内容や個人情報が社内外に漏れれば、従業員のプライバシーを侵害するだけでなく、EAPを適切に運用していない企業の信用を失いかねません。

内部EAPはもちろん、外部EAPサービスを利用する場合は従業員の個人情報などを守るためにセキュリティ体制の強化を図り、守秘義務に関するルールや取り決めなどを話し合っておくことも大切です。また、EAPに関するシステムを導入する際はセキュリティ機能が充実しているものを選定しましょう。

適正に従業員の評価を行う

従業員の業務態度などを評価する際はメンタルヘルスを判断基準に加えないようにしなければなりません。メンタルヘルスを評価の対象に入れてしまうと評価が下がるのを心配し、従業員はEAPに参加するのを止めてしまいます。

本来、人事評価とは業務上の姿勢や実績、貢献度などを評価するための制度です。業務上の評価とメンタルヘルスに関する問題は切り離して評価する必要があります。企業は従業員を評価する立場にある管理職に対し、適正な評価を行う指導や教育を目的にした研修なども実施しましょう。

今後もEAPが求められると考えられる理由

今後も多くの企業でEAPが求められると考えられているのはなぜでしょうか。企業でEAPの導入の必要性が問われている理由は職場でのトラブルを未然に防ぎ、問題を迅速に解決できるEAPへの関心が高まっているからです。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の増加

厚生労働省の令和2年労働安全衛生調査の結果によると、メンタルヘルス対策を実施している事業所の割合は61.4%でした。前年度の平成30年の59.2%を上回っていることが分かります。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業が増加傾向にある理由は、メンタルに不調を抱える従業員が多くなっていることがあげられます。メンタルの不調を訴える従業員が増加傾向にある要因は企業間の競争が激しくなり、過剰なノルマの設定や長時間労働などの社会問題に加えて、職場での人間関係の悪化などです。CSRを果たすためにも企業は継続的にメンタルヘルス対策に取り組む必要があります。

出典:厚生労働省「令和2年労働安全衛生調査の結果」

職場のハラスメント問題の深刻化

企業でハラスメント対策が実施されていますが、職場でのハラスメントは増加する一方です。ハラスメントは当事者間の人間関係の悪化だけでなく、職場全体に深刻な問題をもたらしています。

厚生労働省が運営する『あかるい職場応援団』で、全国の企業を対象に実施された調査によると、平成28年のパワハラが職場へ及ぼした影響に関する質問に対し、回答者は職場の雰囲気が悪くなる(93.5%)、従業員の心の健康を害する(91.5%)と答えました。

職場でのハラスメントが深刻化すれば従業員や家族が企業を相手に訴訟を起こすなどのリスクが高まります。企業は訴訟などのリスクを未然に防ぐためにも、EAPを適切に運用して従業員のメンタルヘルスケア対策に取り組みましょう。

出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」

コロナ禍によるライフスタイルの変化

新型コロナウイルス感染症の拡大によって働き方はもちろん、ライフスタイルでも新しい様式に順応しなければならなくなりました。企業に対しては、緊急事態宣言などに対応するためテレワークを導入しオフィス勤務から在宅勤務への移行が求められています。

従業員もまた、在宅勤務特有の孤独感が強まるなどの悩みや、人と気兼ねなく会って話せない環境にストレスを感じている人も増えています。

在宅勤務で悩みやストレスを抱えている従業員に対し、企業からのメンタル面のサポートがないためにメンタルヘルスの不調を理由に退職してしまうケースも少なくありません。EAPは、電話やメールなどを用いて従業員のメンタルヘルスケア対策を行うことができます。

まとめ

EAPは、企業が行う従業員のメンタルヘルスケアに有効な対策です。厚生労働省が定めているメンタルヘルス対策の4つのケアの一つにあげられています。EAPを効果的に運用するためには産業医などの外部の専門家との連携が欠かせません。

株式会社Dr.健康経営の産業医コンシェルジュは、従業員のメンタルケアに強い産業医サービスです。従業員を対象にしたメンタルケアはもちろん、休職・復職のサポートとして経験豊富な産業医を紹介いたします。ぜひご相談ください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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