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【2023年最新】育児介護休業法の改正内容は?企業がするべきことや育休成功事例

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更新日:2023.02.19

子どもを育てやすい環境づくりや男性の育児参加を推進するために、2022年(令和4年)4月1日から、新たな育児介護休業法が施行されました。就業規則の改訂や社内への周知徹底が必要になることから、企業担当者はその内容やスケジュールを把握しておきたいところです。

この記事では、段階的に実施される育児介護休業法について、5つの項目を施行時期別に解説します。また、企業が取り組むべきことや企業の成功事例なども紹介します。自社施策を準備する参考にしてください。

育児介護休業法が改正される主な背景

2021年(令和3年)6月、育児介護休業法(正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)が改正されました。

そもそもこの法律は、2つの制度を強化し、労働者の仕事と生活の調和を促進するためにつくられたものです。2つの制度は下記のとおりです。
・育児休業:子が1歳(最長2歳)まで法律に基づいて取得できる休暇
・介護休業:2週間以上、常時介護が必要な家族を介護するための休暇

また、今回の改正の背景には主に次の要因があります。

1.少子高齢化、出生率の低下
2.男性の家事・育児参加が乏しい

具体的な問題としては以下のような内容が挙げられます。

・約5割の女性が出産・育児により退職して労働人口が減っている
・職場復帰しにくいため子どもを産みにくい環境である
・2020年度の育休取得率は女性81.6%に対し、男性12.65%程度と低水準
・夫の家事や育児関連時間は1時間ほどで諸外国と比べてとても短い

このため子どもを育てやすい環境づくり、男性の育児休業取得の促進などを盛り込んだ以下の改正が3段階で実施されます。

項目 実施時期
1 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 2022年10月1日
2 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け 2022年4月1日
3 育児休業の分割取得 2022年10月1日
4 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 2023年4月1日
5 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 2022年4月1日

出典:厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要

それでは次項から、施行時期ごとに各項目の内容を説明していきます。

【2022年4月1日】育児介護休業法の改正内容

2022年(令和4年)4月1日に施行された改正は以下の2つです。

・雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化(項目2)
・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(項目5)

ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

この改正のポイントは大きく2つに分けられます。

1つ目は企業労働者が育児休業を取りやすいような環境を整えなければならないことです。従来の法律では特に規定がありませんでしたが、改正によって義務化されました。

具体的には次の内容を満たさなければなりません。

・育児休業などについての研修制度、相談窓口など、複数の選択肢のなかからいずれかを整える
・長期育児休業を支援することを企業方針に盛り込む

2つ目は妊娠、出産を申し出た労働者に対して、育児休業などの制度を周知し、休暇取得の意向を確認することです。こちらは努力義務から義務になりました。

具体的には以下の周知事項を、指定された方法で実施します。

画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者について育児休業前の雇用期間に関する要件が撤廃され、無期雇用労働者と同じになります。パート・アルバイト、契約社員などが、育児休業を取得しやすくなりました。

条件
改正前 ・引き続き雇用された期間が1年以上ある
・子が1歳6カ月までに契約満了になるかわからない
改正後 ・子が1歳6カ月までに契約満了になるかわからない

ただし労使協定の締結によって、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を、育児休業の対象から除外できます。

また、企業側は雇用を継続しない旨を明示していなければ原則として育児休業を認めなければならないことに注意が必要です。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

【2022年10月1日】育児介護休業法の改正内容

育児介護休業法の改正内容
2022年10月1日に施行される改正は以下の2つです。

・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(項目1)
・育児休業の分割取得(項目3)

それぞれの内容について解説します。

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

産後パパ育休(出生時育児休業)とは、出生後8週間以内に4週間の休暇を取れる新たな制度です。取得条件は以下の図とおりです。
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

なお、改正後の新制度でも、産後パパ育休と育児休業制度は区別され、どちらかのみを取得することも、両方を組み合わせて利用することもできます。

産後パパ育休は、従来の『パパ休暇』に代わる制度です。その違いは以下のように取得回数です。

パパ休暇(従来) 産後パパ育休
取得回数 子が1歳になるまでに連続した期間で1回のみ 子が1歳になるまでに、2回まで分割取得可

これによって、例えば出生時に1回、退院時+妻の負担が大きそうなタイミングで1回などのように2回に分けて育児休暇を取得するなどが可能になります。ただし事前にまとめて申し出ることが必要です。

ただし、産後パパ育休を取得した労働者に対しては、以下の就業条件があるので注意しておきましょう。

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満

具体的なケースは、以下の図を参考にしてください。
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

育児休業の分割取得

育児休業制度も原則分割不可だったのが、分割して2回取得できるようになります。現行制度との違いは以下のとおりです。

改正後 改正前
対象期間取得可能日数 原則子が1歳(最長2歳)まで
申し出期限 原則1カ月前まで
分割取得 分割して2回取得可能 原則分割不可
休業中の就業 原則就業不可
1歳以降の延長 育休開始日を柔軟化(1~2歳の間で取得可能) 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
1歳以降の再取得 特別な事情がある場合に限り再取得可能 再取得不可

画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)
改正前と改正後での働き方・休み方のイメージは、次の図をご覧ください。
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

以前よりも柔軟なスケジュールを立てられるため、育児負担の軽減やスムーズな職場復帰に役立てられるでしょう。

【2023年4月1日】育児介護休業法の改正内容

2023年(令和5年)4月1日に施行される改正は、『育児休業の取得の状況の公表の義務付け(項目4)』です。

これは従業員数が1,000人以上の企業を対象に、育児休業の取得状況を公表しなければならないという義務です。具体的には、次の条件が設けられています。

公表するデータ 男性の育児休業等の取得率、または育児休業等と育児目的休暇の取得率
公開回数 年1回
公開方法 自社のホームページ、厚生労働省運営のウェブサイト「両立支援のひろば」など、一般の人が確認できる方法

なお取得率を算出する際は、公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度が対象です。

画像引用:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(参照:2022-06-16)

育児介護休業法の改正に向けて企業がするべきこと

育児介護休業法の改正に向けて企業がするべきこと
ここでは、改正にともない企業が準備しておきたいことや注意するべきことを解説します。単に法律を順守するだけでなく、自社に合った方法や体制を構築できれば、社員の満足度向上や離職防止、生産性アップなどにもつながります。

就業規則を育児介護休業法の改正後の内容に変更する

改正にともない、就業規則を変更する必要があります。主な項目は以下のとおりです。

・育児休業期間の追加
・育児休業の分割取得の記載
・育児休業の申し出期限の変更
・育児、介護休業の「雇用期間に係る規定」の撤廃
・育児休業中の就業日、就業時間の変更

厚生労働省では、改正後の内容に対応した「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を公開しています。就業規則を変更する際はテンプレートのように活用できるため、以下のサイトを参考にしてください。

参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」(参照:2022-06-16)

育児介護休業制度について従業員に周知する

育児介護休業制度について従業員に周知し、理解を促す必要があります。繰り返しになりますが、個人への周知は努力義務から義務に変わったため、忘れずに実施しましょう。

さらに、今回の改正にともない特に注意したいのは、妊娠・出産の申し出をした労働者本人だけでなく、男性労働者や職場全体への周知を徹底することです。

育休取得の選択肢が増えた男性社員に対しては、育児休業制度について基礎知識を持っていないことが多いため、積極的な情報発信を心がけましょう。研修やセミナーを実施している企業も多くあります。

また、マネジメント層や人事部をはじめとした社内の啓もう活動も、マタニティーハラスメントやパワーハラスメントを予防するうえで大切です。

育児介護休業制度についての相談窓口の設置

育児介護休業から復帰する際やトラブルがあった際の相談窓口を設置しておくことも大切です。今回の改正では社内研修や相談窓口設置など複数の方法のなかから、いずれか1つを実施すればよいことになっています。しかし、相談窓口があるほうがよいことは間違いありません。

実際、男性が育児介護休業を取得した際に、「仕事に対する責任感がない」「家庭のことは女性に任せておけばよい」などといった考え方を持つ人や社風によって、不利益を被るケースが多く報告されています。

相談窓口があれば、ハラスメント被害や育休取得者のメンタル不調などの大きな問題に発展する可能性が低くなります。

育児介護休業に関する体制整備

育児休業を取りやすい体制を整えることも大切です。このプロセスでは、以下の2つがポイントとなります。

・業務の引き継ぎ
・職場復帰の体制づくり

業務の引き継ぎが重要なのは、「業務が忙しくて休めない」というケースが多いためです。特に男性の場合、取得をためらってしまう場合がよくあるようです。このため例えば「引き継ぎ業務を優先する社内ガイドラインを設ける」「属人化しにくい業務分担にする」など総合的に対策を行います。

また、職場復帰できる体制づくりは特に女性の離職を防ぐうえで大切です。安心して子育てできる環境があれば、優秀な人材を失う可能性を減らせます。キャリア形成制度を見直すほか、テレワークや短時間労働など、育児と両立しやすい働き方を導入するのもよいでしょう。

男性の育児休業取組事例

ここでは、厚生労働省『イクメン企業アワード2020』受賞企業のなかから、4社の取組事例を紹介します。

株式会社技研製作所

株式会社技研製作所では、女性主体のチームを組織し、テーマのひとつとして男性育休取得推進に取り組みました。同社における男性の育児休業取得率は、2008~2018年度で0%という状況だったからです。

男性社員のヒアリングの結果わかったことは、収入面の不安から取得を断念している社員が多かったことです。そのため、給与データを入力すると収入の変化がわかるシミュレーターを提供し不安解消につなげました。

また育休説明会を実施するほか、『健康経営と男性育休取得を推進する』企業宣言をするなど社内の意識改革も進めます。

こうした施策の結果、2019年度の取得率は30%まで上昇しました。

出典:厚生労働省「イクメン企業アワード2020受賞企業の取組事例集」(参照:2022-06-16)

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は「イクメン休業100%」という高い目標を掲げている企業です。この目標達成のために同社は、育児休業を強化する独自の制度を設けました。

具体的には、

・取得可能期間を0~3歳までに拡大し、1カ月以上の育児休業取得を推進
・独自に4回までの分割休暇に対応

などです。

また、家事や育児の役割分担を決めるためのミーティングシートや育児休業のガイドブックを作成するなど、取得者と、その家族へのフォローも手厚くしました。

こうした取組みによって、2019年2月以降の取得率は100%を維持しています。

出典:厚生労働省「イクメン企業アワード2020受賞企業の取組事例集」(参照:2022-06-16)

双日株式会社

双日株式会社は仕事と生活の両立を支援する、多様な働き方実現の取り組みが特徴的です。

一例を挙げると、以下のような多方面の取り組みがあります。

・育児負担を軽くするベビーシッター補助制度、育児コンシェルジュサービス
・プライベート充実を応援するファミリー休暇制度
・職場復帰をスムーズにするための短時間のテレワーク業務

同社によると、こうした取組みは、社員の満足度向上につながるだけでなく、キャリア形成や生産性向上などにも効果があったということです。

出典:厚生労働省「イクメン企業アワード2020受賞企業の取組事例集」(参照:2022-06-16)

江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社は、核家族化や地域の助け合い文化の希薄化などに対処した独自のコミュニティー構築がユニークです。

例えば、以下の活動によって、育休取得者が助けを求められるコミュニティーをつくり出しました。

・妊娠から1,000日間をサポートする活動「Co育てPROJECT」を整備
・パパ、ママ、祖父母をつなぐコミュニケーション、子育てアプリを無償提供
・健康無料電話相談室の設置
・オンラインでのミルク調乳指導や子育て講座の提供

同社の各種取り組みはモデルケースとなり、企業や自治体などに取り入れられています。

出典:厚生労働省「イクメン企業アワード2020受賞企業の取組事例集」(参照:2022-06-16)

まとめ

子どもを育てやすい環境づくりや男性の育休取得の促進を目的として、育児介護休業法が改正されました。今後、育児休業の枠組み変更や、周知・意向確認の措置の義務化などが段階的に施行されていくため、準備を進めていきましょう。

また、新たな育児介護休業法に対応するだけでなく、独自の体制整備に取り組む企業も増えています。成功事例を自社の施策に取り入れることも検討してはいかがでしょうか。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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