健康経営・職場改善

リワークとは?具体的なプログラム内容やメリット・デメリットを解説

日付
更新日:2023.08.01

リワークは、休職者に向けた支援プログラムです。現在休職中の方や職場に休職者が出た場合、どんなプログラムが受けられるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、リワークの基本を解説しながらリワークプログラムの種類・目的、取り入れるメリットを詳しく解説します。

さらにリワーク施設の選び方も紹介しますので、最後までご覧下さい。

リワークとは

リワークとは、うつ病や抑うつ状態、適応障害といった精神の不調により、休職している人が職場復帰をするための制度です。復職に特化したプログラムが盛り込まれているため、職場復帰がしやすくなる傾向にあります。

またリワークには、職場復帰に加えて再休職防止も目的としており、長く働くためのセルフケアを身につけることが可能。休職を経験している人は、通勤の負担や職場での緊張感(精神的ストレス)が受けやすくなるため、リハビリとしてリワークを取り入れるのが良いでしょう。

仕事のやり方を再度学ぶだけでなく、体力と気力の回復にも繋がるので、ストレス対処法の習得の一環にもなります。

リワークプログラムの種類と目的

リワークプログラムは、基本的に医療機関や公共機関などで行われています。

ここからは、リワークプログラムの種類とそれぞれの目的について紹介します。

リワーク1:医療リワーク

医療リワークは、医療機関で行われるリワークです。主に再休職の防止を目的としており、精神医療の専門家による医学的リハビリテーションがプログラムに組み込まれています。

医療機関で行われるプログラムであるため、健康保険による医療費の自己負担金の軽減ができるのがポイント。また医師の元でプログラムが受けられるので、医師と相談しながら進められるのも医療リワークの利点です。

医療リワークを利用するには、主治医の許可が必要です。許可を得れば、医療リワークを実施している病院を紹介してもらえます。受けたい人は、主治医に相談するところから始めましょう。

またかかる費用は、1日あたりだいたい8,000円程度です。健康保険や国民保険の使用で自己負担額が3割になるのはもちろん、自立支援医療制度の対象者の場合は、1割程度の負担額でプログラムが受けられます。

期間は受けるプログラムによっても異なり、短いもので数週間程度、長いもので1年以上かかる場合もあることを覚えておきましょう。

リワーク2:職リハリワーク

職リハリワークとは、独立行政法人高齢・障害・休職支援機構によって各県に設置されている「地域障がい者職業センター」が実施するリワークプログラムのことです。

休職者本人はもちろんのこと、事業者(雇用主)に対するアドバイスや病状の改善につながるサポートを行います。事業者と共に受けることで、スムーズな復職の実施や職場復帰後の対応などに対する改善も目的とされています。

職リハリワークは、施設によって有料の場合もありますが、労災保険で賄われていることから、基本的に無料です。そのため、気軽に受け入れやすいメリットがあります。

センターに常駐するスタッフは、障害や疾患に関する知識が豊富なので、就労や就職に関するアドバイスも受けられます。

リワークプログラムの実施期間は、平均で3ヶ月程度です。基本的に利用は、3か月までと定められているため、期間に合わせたプログラムが組まれています。

職リハリワークの利用は、説明会の参加や支援の申請が必要です。さらに本人・主治医・事業者の三者による面談を行うことにより、1カ月程度の体験コースを受けられます。

正式利用は体験コース後となるので、お試し期間があるのも職リハリワークの利点です。

リワーク3:職場リワーク

リワークプログラムには、職場リワークと言われる企業内で実施される復職支援プログラムもあります。企業内で行われることにより、リハビリとして職場慣らしができるのがメリットです。

職場リワークの目的は、職場復帰後に安定して就業ができるかを見定めることです。そのため、人によってはプレッシャーを感じたり再休職したくなったりする場合もあるでしょう。そのため、医療リワークや職リハリワークを受けたのち、段階的に行うのがおすすめです。

医療リワークや職リハリワークを受けた人であれば、復職前のリハビリになるので、試し出勤で雰囲気に慣れることができます。

職場リワークの費用は、企業の雇用保険で適応されることにより、無料で利用できることがほとんどです。職場リワークの期間は、4〜8週間が目安ですが、企業や復職者によるプログラムの進め方によっても異なります。

他のリワーク同様に、主治医から復職可能の許可が必要となるので、必ず主治医との相談のもとで行うようにしましょう。

リワークプログラムの主な取り組みについて

リワークでは、具体的にどんなプログラムを行っているのでしょうか。

ここからは、リワークプログラムの主な取り組みについて解説します。

取り組み1:認知行動療法(ストレス対処)

認知行動療法とは、自身が抱えるストレスや問題について分析し、考え方や行動によって解決を目指すことを目的にした心理療法のことです。

どのような場面でストレスを抱えるのかを自分自身が理解することにより、ストレスコントロールができたり対処法を身につけたりすることができるため、復職後のストレス軽減にも役立ちます。

取り組み2:グループミーティング

グループミーティングは、休職者同士がテーマを持って話し合うプログラムです。復職に対する不安や悩みなど、自分と似た悩みを持つ人と話すことで、悩んでいるのは自分だけではないという自己肯定感を生み出します。

また同じ悩みを持つ人の話を聞くことにより、新たな考え方や自己理解を深められるため、復職後の再発防止に繋がります。

取り組み3:SST (ソーシャル・スキル・トレーニング)

SSTは、「ソーシャル・スキル・トレーニング」の頭文字をとって名付けられたプログラム。認知行動療法や社会学習理論を基盤にした内容が組み込まれた支援で、人と人との関わりに必要なスキルが身につけられます。  

また自己対処能力を高めることを目的としたプログラムであり、自立を支援するために実施されています。社会で生きていく中で生まれた困難を抱える人たちに受けて頂きたい支援です。

取り組み4:オフィスワーク(作業課題)

オフィスワーク(作業課題)は、復職後の想定したトレーニングを指しています。職場に近い環境で作業訓練を行うことにより、復帰後の作業がイメージしやすくなったり、集中力や達成感の確認ができたりする取り組みです。

一人ひとりのスピードや体調に合わせてプログラムが組まれるので、読書や資格の勉強から資料作成やプレゼンといった作業まで幅広い内容が揃っています。

取り組み5:レクリエーション

リワークプログラムの中には、ディスカッション形式のグループミーティングのほかに、スポーツやゲームといった身体を動かすプログラムも組まれています。

体力回復やストレス解消に繋がることはもちろん、コミュニケーションの向上も目指せるプログラムです。遊びながら人と関わることにより、打ち解けやすくなるのもレクリエーションの特徴と言えます。

取り組み6:キャリアデザイン

キャリアデザインは、自身の今までのキャリアを振り返るために行うプログラム。職場復帰をするにあたって、今後どのような職業人生を送るかを考える機会です。

プログラムはスタッフと1対1で行うのが基本。今後の生活を明確にすることにより、キャリア設計ができるようになります。さらに長所や短所、スキルの見直しができるので、どんな仕事を自分が求めているのかを確認することが可能です。

リワークを取り入れるメリット

リワークには、さまざまなメリットがあります。

次に、リワークを取り入れるメリットについてみていきましょう。

生活リズムが整えやすい

休職者の中には、生活リズムが崩れやすい人がいます。休職をすると、寝る時間がバラけたり運動不足になったりすることに加えて、人と接する機会が極端に減ることがあります。

特にこれまで通勤をして出社していた時は、決まった時間に出社して決まった時間に帰るという生活のリズムが整っていたことでしょう。

しかし休職をすると、体力・気力の低下を加速させる場合があります。リワークプログラムは、定期的に受けることで生活リズムが整いやすくなります。復職に向けた心身の調子を整える機会にもなるのが大きなメリットです。

復職の負担が軽減しやすい

リワークでは、職場に近い環境に触れる機会を作ることによって、復職の負担を軽減しやすいメリットもあります。作業に取り組む集中力アップや人と接することによる、コミュニケーション力の向上などが見込まれます。

リハビリの一環として取り入れることにより、復職後の負担軽減に繋げることが可能です。

セルフケアを習得が身につく

復職後は、同じことが起きないように再発防止対策を行うことが必要。

リワーク後は、前職の同じ職場で働く方が多いため、同じシチュエーションによってストレスや不安感を抱えやすくなる傾向にあります。そのため、ストレスを溜めないためのセルフケアを身につけることが大切です。

リワークを取り入れないデメリット

職場復帰を臨む人の中には、リワークの実施を辞める人もいるでしょう。しかし職場復帰を目指すなら、リワークの実施がおすすめです。

リワークは、職場復帰をサポートするだけでなく、休職に至った原因が明確になることで、休職の再発防止に繋がります。

また休職に至った原因をそのままにしてしまうと、再度休職が必要になるケースもあります。

また日本産業精神保健学会の調査では、リワークを取り入れずに復職した人のわずか2割程度しか続かないとの調査結果も出ているとのことです。

復職を希望する人は、主治医の判断のもと、必要なリワークを取り入れるようにしましょう。

“出典:特集「第19回日本産業精神保健学会」”

リワークは意味ない?用いられる本当の理由

リワークを実際に受けた人の中には、結果や効果が実感できず、プログラムの必要性に疑問を持つ人もいるでしょう。しかし前述通り、リワークを行わずに復職をしてしまうと、休職しやすい傾向にあると考えられています。

リワークはただ行うだけでなく、受けるべきタイミングを見計らうことも大切です。自分では心身の回復が感じられて職場復帰ができると思っても、まだ準備が整っていない場合もあります。

その場合、リワークの結果が感じられなかったりうまくいかなかったりすることもあるでしょう。リワークは必ず、主治医の判断のもとでベストなタイミングと正しい受け方で行うことが重要です。

リワークがしんどいと感じる理由と対処法

リワークを受ける人の中には、「しんどい」「厳しい」と感じることで挫折してしまうケースがあるでしょう。

リワークは、復職のリハビリとして軽作業をメインに行います。そのため、作業のレベルが自分と合っていなくて、意味がないものと判断してしまう場合があります。

またリワークは、一人で行うのではなく、複数人で行うことがほとんどです。そのため、異なる疾患の人と同じプログラムを受けることで退屈に感じる場合もあるでしょう。

リワークは、施設と利用者の相性もあるので、自分に合わせた施設を選択することが大切。リワーク施設はどこでもいいわけではなく、自分のレベルやスキルに合うことにより、「しんどい」という気持ちが軽減しやすくなります。

自分に合ったリワーク施設の選び方

リワークがしんどいと感じる原因について確認したところで、次に、自分に合ったリワーク施設を選ぶためのポイントを解説します。

選び方1:プログラム内容と方針

リワークのプログラムは、施設によって内容や方針が異なります。特に民間のリワーク施設では、施設によってレベルや、やり方が定められているケースが多いため、施設を決定する前に、施設を利用する疾患を持つ人の例や実績を確認すると良いでしょう。

またリワークの種類によっても目的が異なりますので、自分が今どんな状況で休職しているのか、原因と照らし合わせながら決めるのもおすすめです。

選び方2:アクセスの良さ

リワークの施設へは、自分の足で通う必要があります。そのため、通いやすさを重視することも大切です。特に休職者は、心身にストレスを抱えた人が多いため、後ろ向きになりやすい傾向にあります。

通いづらい場所を選んでしまうと、億劫になって途中で放棄するケースも考えられます。継続のしやすさも施設選びのポイントです。

選び方3:施設の雰囲気

施設の雰囲気は、継続のしやすさや改善への影響も考えられるため、施設選びのひとつとして加えましょう。環境は人の感情を左右するため、居心地の良い雰囲気を感じられる施設を選択するのがおすすめです。

賑やかで前向きになれる施設や静かで落ち着きのある施設など、施設によってもさまざまなので、居心地の良いと思える場所でプログラムを受けるようにするのがポイントです。

選び方4:スタッフとの相性

リワークのプログラムを受ける上で必ず接するのが、スタッフです。施設の雰囲気はもちろんのこと、スタッフとの相性も重要。利用する側とスタッフの考えに相違があると、リワークプログラムの成果が得られにくいケースもあります。

また施設の雰囲気やスタッフとの相性を確認するなら、体験プログラムに参加してみるのも良いでしょう。資料や説明会ではわからない部分が確認できるので、一度リワークプログラムを受けてみるのもおすすめです。

リワークの始め方と流れ

次に、リワークの始め方と流れについてご紹介します。

流れを確認することで、リワークを始めようと考えている人や企業で職場リワークの実施を検討中の人は、ぜひチェックしてみて下さい。

STEP1:主治医への相談

リワークを始めるには、どの種類も必ず主治医への相談が必須になります。

また主治医以外に、ケースワーカーや会社の人事担当者、産業保健スタッフに相談することもできます。経過を見てきた専門医の判断により、リワークの開始や利用先決めを行うようにしましょう。

STEP2:施設の選択と手続き

主治医の許可が出た後は、施設の選択と手続きになります。実際に体験を受けて自分に合った施設を選んだ上で、手続きを行っていきます。

施設によっては、定員が定められているところもあるので、体験プログラムの前に、現段階で受付をしているのかを確認してから利用先を決めるのがおすすめです。

STEP3:復職計画の作成

リワークを受ける準備ができたら、復職計画を作成します。

この復職計画は、本人や主治医、会社、そしてリワークの意向を考慮しながら復職までの計画を行います。それぞれの合意が取れたところで、リワーク制度の利用が開始できます。

まとめ

リワークは、復職を希望する人にとって重要な制度です。

このリワーク制度は、職場リワークという形で産業医がいる企業で取り入れることができます。また産業医を設置することにより、休職に至らないために必要なことや職場の環境づくりを行うことも可能です。

Dr.健康経営では、復職や休職に関する知識を持ったプロの産業医によるサービスの提供を行っています。従業員のストレスや職場環境の改善を希望する場合は、お気軽にご相談ください。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
「ストレスチェックを初めて実施するので不安…」

そんなお悩みを抱える労務担当者の方はいませんか?
Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

関連記事