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労災隠しは罰則の対象!?疑ったときに取るべき行動を解説

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更新日:2023.07.27

労災隠しとは、労災が起きたにもかかわらず適切な報告を行わないことです。労災を隠ぺいすると企業には重い罰則が課せられるため、未然に防ぐことが大切です。

そこで本記事では、労災隠しが疑われる際に取るべき対処法を紹介します。

労災隠しを行うことで労働者本人が受けるデメリットも解説しているので、併せて参考にしてください。

労災隠しとは?

労災隠しとは、労災(労働災害)が起きたにもかかわらず労働基準監督署への報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりすることです。

業務中に起きた災害だけではなく、通勤中や業務が原因で発症した疾病なども労災に該当するため、必要に応じて適切な手続きを行わなくていけません。

まずは、労災隠しを行ったときの罰則について解説します。

労災隠しは罰則の対象

労災隠しは、労働安全衛生法に違反するため罰則の対象です。そもそも労災が起きた場合、企業を管轄している労働基準監督署長に労働者死病報告の提出が義務付けられています。

そのため、この報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりする行為は法律違反に該当し、50万円以下の罰則が課せられます。

さらに、労災隠しを行うと厚生労働省のホームページに公表されるため、企業のイメージダウンにもつながるでしょう。

“参照:e-GOV法令検索「労働安全衛生法」

労働者本人に対する罰則はない

労働者本人が労災隠しを行った場合、基本的に罰則はありません。しかし、労災が起きた場合は、事情や状況などを企業に報告しておきましょう。

たとえ会社に迷惑をかけたくないと考えて自主的に労災隠しを行ったとしても、その事実を企業が把握していれば企業側は罰則の対象となります。企業に迷惑をかけないためにも、労災が起きた場合は速やかに報告しておくと安心です。

企業が労災隠しをする理由

企業が労災隠しを行うのは、主に以下のような理由が考えられます。

    • ・労災保険を利用すると保険料が上がる
    • ・行政の処分を恐れている
    • ・企業の業績悪化につながる
    • ・手続きがめんどくさい
    • ・労災に加入していない

それぞれの理由について詳しく解説します。

労災保険を利用すると保険料が上がる

労災隠しをする理由の一つに、労災保険を利用すると保険料が上がることがあります。

労災保険はメリット制を導入しており、労災の発生状況によって労災保険料が増減します。そのため、労災が発生しても報告せずに保険料の増額を阻止しようと考える企業が存在するのです。

しかし、労災が起きたとしても必ずしも労災保険料が上がるわけではありません。保険給付などに関する収支率が85%を超えるときに保険料が増額し、75%以下では減額される仕組みです。

たとえ労災保険料が上がったとしても、その後の罰則や社会的なダメージを考慮すると、隠すことなく労災の事実を報告すべきでしょう。

“参照:厚生労働省「労災保険のメリット制について」

行政の処分を恐れている

労災隠しを行う企業は、行政の処分を恐れているかもしれません。

労災を労働基準監督署に報告すると企業に監査が入る可能性があり、その際に重大な違反行為が見つけると書類送検される場合があります。そのため、企業は労働基準監督署からの監査や処分を免れようと、労災自体を隠ぺいしようを考えるのです。

企業の業績悪化につながる

労災の事実が発覚すると、企業の業績悪化につながる可能性があります。なぜなら、労災を知った取引先が、今後の取引を停止されるケースがあるためです。

反対に、下請け企業が元請け企業に迷惑をかけないように労災隠しを行う場合もあり、企業の業績に大きな影響を与えるでしょう。

手続きがめんどくさい

労災が発生した場合さまざまな手続きが必要となり、その煩わしさから逃れるために労災隠しをする企業が存在します

例えば、労災保険の手続きがめんどうであることから、健康保険証を利用して受診してほしいと依頼するケースもあります。すると、そのまま労災がうやむやになり、結果的に労災隠しに発展する場合も少なくありません。

労災に加入していない

企業が労災保険に加入しておらず、その事実を隠ぺいするために労災隠しを行うケースがあります。企業は労働者を1人以上雇っている場合、労災保険の加入が義務付けられており、未加入の企業に対しては費用徴収制度が適用されます。

また、労災保険未加入の期間に労災が発生した場合は、遡って保険料を徴収するだけではなく、給付金を徴収する仕組みです。そのため、労働者を雇う場合は必ず労災保険に加入しておかなければいけません。

“参照:厚生労働省「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます」

労災隠しした場合の労働者本人のデメリット

労災隠しをした場合、労働者本人には罰則がないものの、以下のようなデメリットがあります。

    • ・医療費が自己負担になる
    • ・仕事を休んでいる間の手当を受けられない

それぞれのデメリットについて解説します。

医療費が自己負担になる

労災隠しを行うと、医療費が自己負担になります。

健康保険は業務以外の疾病に使用できるため、労災の場合は利用できません。そのため、治療費や入院費などをすべて自分で負担しなければならず、高額な医療費がかかってしまうでしょう。

労災隠しをせず、労災保険を活用すると自己負担額を軽減できます。

仕事を休んでいる間の手当を受けられない

労災保険を利用しないと、仕事を休んでいる間の手当は受け取れません

労災保険は治療費だけではなく、休業補償給付や傷病年金などの給付も行っています。そのため、労災によって仕事ができなくなった場合でも、金銭面の心配は最小限に抑えられます。

しかし労災隠しを行うと、これらの給付金は受け取れないため、生活に困窮する人もいるでしょう。特に、大きな怪我などによって長期間の休業を余儀なくされる場合は、給付金を受け取れると安心です。

労災隠しを疑ったときの対処法

企業が労災隠しをする恐れがある場合や、実際に労災隠ししようとしている場合は、以下の対処法を実践しましょう。

    • ・健康保険を使用しない
    • ・労災指定病院に行く
    • ・労働基準監督署や弁護士に相談する

それぞれの対処法を詳しく解説します。

健康保険を使用しない

労災で病院を受診する場合は、絶対に健康保険を使用しないようにしましょう。

先ほども紹介したとおり、健康保険は労災以外で使用できる保険制度です。たとえ会社に健康保険を使用して病院を受診するように指示されていたとしても拒否しなければいけません。

万が一、労災に健康保険を使用してしまうと、治療費の全額を一時的に自己負担する必要があります。めんどうな手続きも発生してしまうため、必ず労災保険を使用するようにしましょう。

“参照:厚生労働省「お仕事でのケガ等には、労災保険!」

労災指定病院に行く

労災に合った場合は、労災指定病院を選んで受診するのがおすすめです。

労災指定病院は、窓口で労災であることを伝えると無料で診察を受けられます。代金は労災保険から直接病院へ支払われるため、医療費を自己負担する心配がありません。

また、労災指定病院を利用すると、その後の労災請求の申請もスムーズに行えるため、めんどうな手間を省けるでしょう。会社に労災隠しの疑いがあったとしても、まずは労災指定病院で受診するのが最善です。

“参照:厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」

労働基準監督署や弁護士に相談する

企業が労災隠しをする恐れがある場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

企業を管轄している労働基準監督署には相談窓口が設けられており、労災に関する相談にも対応してくれます。専門機関に相談することで、企業に適切な対応を心がけるように訴えることも可能でしょう。

また、弁護士に相談して企業との間に入ってもらうと適切な対応を求めてもらえるほか、必要に応じて損害賠償請求を行えます。労災に実績のある弁護士に依頼すれば、より有利な条件のもと問題を解決してくれるはずです。

専門的な知識を持った有識者を頼ることで、労災隠しを防げるでしょう。

労災隠しを予防するためには産業医との連携がおすすめ

労災隠しを未然に防ぐためには、産業医との連携がおすすめです。

産業医とは、労働者が健康でいきいきと働けるように専門的な立場から助言やサポートを行う医師のことです。労働者が50人以上いる企業では産業医の選任が義務付けられており、健康診断のチェックや職場の巡視などを行っています。

産業医と連携すると、労災を防ぐために必要な情報を提供してもらえます。労災が起こりにくい職場環境を整備できるため、労働者にとっても働きやすい環境となるでしょう。

なお、産業医の設置には、Dr.健康経営が提供する産業コンシェルジュサービスの利用を検討してみてください。経験豊富な産業医を紹介しており、労働者の健康管理や感染対策など多岐にわたってサポートしてもらえます。

専門家のアドバイスを受けられるため、労災が起きたときの対処法も学べるでしょう。産業医の導入を検討している場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

労災隠しとは、労災が起きたにもかかわらず適切な報告を行わないことです。労災が起きた場合は管轄する労働基準監督署への報告が義務付けられているため、隠した場合は企業に対して罰則が課せられます

労働者本人には罰則の規定はないものの、企業が労災の事実を把握していれば罰則されてしまうため、隠さずに申告することが大切です。

なお、労災隠しの疑いがある場合は健康保険を使用せずに、労災指定病院を受診しましょう。窓口で労災であることを伝えておくと、スムーズに手続きを行えます。

企業が労災隠しを試みている場合は、労働基準監督署や弁護士などに相談することも一つの方法です。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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