健康経営・職場改善

企業の転倒災害の状況を解説!会社ができる予防方法とは?

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更新日:2023.02.24

今回の衛生講話では、転倒災害とその予防について解説します。

1.転倒災害の状況

職場でこんなことありませんか?

皆さんは職場でこんなことがありませんか?
「床が水で濡れていて滑った」、「階段を踏み外した」、「電源コードにひっかかって転んだ」、これらは製造業や建設業等ではよく発生する転倒原因ですが、オフィスワーカーでも発生するリスクはあります。
仕事中に発生する転倒は、すべて労働災害にあたります。

転倒災害の状況

厚生労働省によると、労働災害の発生状況において、休業4日以上の死傷災害で最も発生が多い災害は「転倒」です。転倒は全体の約30%も占めています。

男女別・年齢別 転倒災害の発生率

男女別・年齢別 転倒災害の発生率では、男性と比べて女性で高く、かつ高年齢となるほど高くなる傾向がみられます。
高年齢になると、平衡機能(バランス)の低下、俊敏性の低下、視認性の低下(加齢による水晶体の弾力性や光の透過率の低下により、視力や暗い場所での視認性が低下)がみられることが大きな原因です。
業種では、製造業、建設業、陸上貨物運送事業、商業(特に小売業)、保健衛生業(特に社会福祉施設)、接客・娯楽業、清掃・と畜業が多い傾向にあります。

2.転倒災害の特徴と原因

転倒災害の特徴

・職場転倒災害は最も多い労働災害
職場転倒災害は、最も多い労働災害です。
休業4日以上の労働災害が約12万件ありますが、そのうち転倒災害は約2.8万件と最も多く発生しています。近年増加傾向です。

・特に高年齢者で多く発生
高年齢者ほど転倒災害のリスクが増加し、55歳以上では55歳未満と比較してリスクが約3倍に増加しています。

・休業1か月以上が約6割
転倒災害による休業期間は約6割が1か月以上となっており、長期化しやすいのが特徴です。

・冬季に多く発生
降雪の多い地域では、冬季に多く発生します。それ以外の地域でも、冬季は筋肉や関節等が固まりやすいので注意が必要です。

転倒災害の原因

転倒災害は、4つの要因によって発生します。これらの要因が重複した時に発生しやすくなります。
・内的要因(運動機能、視覚機能の低下、疾患、服薬状況等)
・外的要因(床面摩擦や凸凹、段差、照明等)
・社会・管理的要因(整理整頓、焦りや規則違反、職場風土等)
・傷害増幅要因(身体強度・耐性、回避能力等)が挙げられます。

転倒災害の3大要因

転倒災害は、「滑り」「つまずき」「踏み外し」が主な原因となります。
産業医や衛生管理者が職場巡視をする際には、床の状態や荷物の状況等も確認するとよいでしょう。

・滑り:床が滑りやすい素材、床に水や油が飛散している、ビニールや紙など、滑りやすい異物が床に落ちている
・つまずき:床の凸凹や段差がある、床に荷物や商品などが放置されている
・踏み外し:大きな荷物を抱えるなど、足元が見えない状態で作業している

3.転倒災害の予防方法

チェックリストでリスクを確認

転倒災害防止のためのチェックリストです。1~9まで、順にチェックしてみましょう。
問題のあったポイントが改善されれば、作業効率も上がって働きやすい職場になります。
衛生委員会でどのように改善するかのアイディアを出し合うといいでしょう。

予防方法① 4Sを意識する

転倒災害を予防する方法①は、「4Sを意識する」ことです。
4Sとは、整理・整頓・清掃・清潔のことです。
作業現場では、常にこれらを意識して、定期的に点検を行うことが望ましいです。
・整理:ごみなどの不要な物を撤去
・整頓:台車や荷物など必要な物を収納・整列
・清掃:床(水・油・粉など)を取り除く
・清潔:職場や作業者自身の服装をきれいな状態を維持する

▼予防方法② 転倒しにくい作業方法

転倒災害を予防する方法②は、「転倒しにくい作業方法」を身につけることです。
・時間に余裕を持って行動
・滑りやすい場所では小さな歩幅で歩行
・足元が見えにくい状態で作業しない

また、KY(危険予知)活動をうまく活用することもポイントです。
【KY(危険予知)活動】
・業務を始める前に「どんな危険が潜んでいるか」を職場で話し合う。
・危ない点について合意をした上で対策を決め、設定された行動目標や指差し呼称項目一人一人が実践する。
・過去の災害事例を基にしたKY(危険予知)活動を積極的に進める。

予防方法③ 作業靴

転倒災害を予防する方法③は、「移動や作業に適した靴を着用」することです。
特にサイズや屈曲性、つま先部の高さは、日ごろ日常生活の中でも注意できるポイントですので、靴選びの際は意識をしましょう。

予防方法④ 職場の危険マップの作成

転倒災害を予防する方法④は、「職場の危険マップの作成」です。
職場の危険マップを従業員参加のもとで作成し、定期的にその内容を見直しながら、危険情報を共有・注意喚起をすることで、組織として転倒災害を予防することが重要です。

【職場の危険マップ】
1.従業員の参加のもと以下を洗い出す
・過去に災害が発生した箇所
・ヒヤリ・ハット事例の多い箇所
・危険予知活動で注意が必要とされた箇所
・リスクアセスメントで作業場の注意が必要とされた箇所や作業
2.職場内の危険箇所、危険作業、遵守事項、禁止事項を検討
3.危険マップを従業員が集まる休憩室等に掲示し、危険情報を共有
4.危険場所にステッカーを貼り、注意喚起

参考文献

・厚生労働省:STOP!転倒災害プロジェクト パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000416941.pdf
・厚生労働省:転倒災害防止対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111055.html
・中央労働災害防止協会:STOP!転倒災害プロジェクト 特設サイト
https://www.jisha.or.jp/campaign/tentou/index.html
・厚生労働省:平成31年1月から令和元年12月までの労働災害発生状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11510.html
・厚生労働省:平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/dl/s19-16.pdf
・厚生労働省:高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000623027.pdf
・中央労働災害防止協会編:令和元年度 労働衛生のしおり
・医療情報科学研究所:公衆衛生がみえる2018-2019,メディックメディア,2018
・医療情報科学研究所:職場の健康がみえる第1版,メディックメディア,2019

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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