産業医面談の内容と流れのポイント、具体例とともに徹底解説!

日付2021.07.27
更新日:2021.12.24
産業医面談の内容と流れのポイント

産業医面談の種類は6つ!

産業医面談は6種類あり、「長時間労働者面談」「高ストレス者面談」「健康診断後の面談」「メンタル不調者面談」「健康相談」「休職・復職面談」があります。ここでは、どの面談を行う際にも重要となる、基本的な産業医面談の流れを解説します。
会社側が面談経緯や目的を理解していても、面談者である本人は「呼ばれたからとりあえず受けにきた」といったように、面談経緯をあまり理解していないケースもよくみられます。そのため、面談開始前に、面談者へ産業医面談の目的や意義・必要性などを説明しましょう。

産業医面談では、情報共有の同意を必ず確認!

面談が行われるケースには、「会社指示面談」と「本人希望面談」があります。「会社指示面談」は、会社の依頼で行う面談のため、基本的には面談内容を会社に報告する必要があります。「本人希望面談」は、本人の希望で面談が設定されます。
大抵どの種類の産業医面談も会社の指示で行うことがほとんどですが、どちらの場合も、会社や上司に共有してよい範囲など、個人情報の取り扱いには注意しなければいけません。面談終了時には毎回、本人へ以下のように説明をし、情報共有の同意を取得するとよいでしょう。

「この面談の内容は基本的に会社に報告することになりますが、会社に伝えてほしくないことがあれば遠慮せずにその都度教えてください。その場合は会社へは詳細を伏せて報告します」

「メンタル面談」など、本人がナーバスになっている場合は以下のように伝え、本人に同意を求めるようにしてください。

「この内容は安全配慮の観点から、会社(または特定の上司)に伝えた方がいいと考えられますが、お伝えしてもよろしいでしょうか?」

同意の取得が得られない面談内容に関しては、基本的には本人の許可なく会社へ共有してはいけません。しかし、本人または周囲の安全健康が損なわれるリスクが高い場合は、それが優先されるため、本人の同意なしに会社や家族に共有する必要があるケースもあります。

産業医面談の流れ(基本)

産業医面談の基本的な流れについて、以下で解説していきます。

⒈ 面談を始める前に

まず、面談者に以下の事項について説明します。
自己紹介
産業医の立場や役割
面談の目的
面談に至った経緯
面談時間
個人情報を許可なく会社に共有しないことを説明

⒉ 面談を開始

「長時間労働者面談」では
疲労蓄積度チェックリスト」「心身の健康状況、生活状況の把握のためのチェックリスト」を事前に本人に記入してもらいます。その内容に沿って、身体状況(高血圧、コレステロール値など、脳心臓疾患に関係する既往歴、喫煙や飲酒、睡眠時間や食事・運動などの生活状況など)、精神状況(落ち込み、不安、焦燥感、意欲低下、希死念慮などの精神症状、また睡眠障害の有無など)、業務状況(業務内容、通勤時間、職場環境や対人関係、周囲のサポートなど)について確認しましょう。

「高ストレス者面談」では
ストレスチェックの個人結果、事前に記入してもらった「面談者事前記入シート(Dr.健康経営のフォーマット)」の内容を参照しながら、身体状況、精神状況、業務状況の確認を行います。就業制限を検討すべき項目である、睡眠や食事などの生活リズム、労働時間や月の残業時間、勤怠状況(遅刻早退欠席など)、精神症状の有無、職場やプライベートでのストレス要因などの項目を中心に聴取します。

「健康診断後の面談」では
健康診断結果、事前に記入してもらった「面談者事前記入シート(Dr.健康経営のフォーマット)」の内容を参照しながら、身体状況、精神状況、業務状況の確認を行います。就業制限を検討すべき項目である、身体・体重・腹囲、聴力・視力、血圧、胸部X線、心電図、貧血、糖尿病、脂質異常、肝機能などの項目を中心に健診結果を参照し、それぞれの項目に対する症状やリスク因子などを中心に聴取します。

「メンタル不調者面談」では
抑うつ気分、集中力や思考力、仕事の能率の低下、倦怠感や気力低下、罪悪感や希死念慮、食欲低下、睡眠障害、その他の体調不良があるかを確認しましょう。希死念慮の症状がある場合には早急に受診をさせましょう。不眠症状は抑うつ状態に移行する可能性が非常に高いため、「週に2~3回以上、不眠が1カ月継続している」場合には医療機関を受診するよう勧めてください。これらの症状以外にも「日常生活や仕事が通常通り行えていない状況が約2週間以上続いている」と判断できる場合には早めの受診を勧めましょう。

「健康相談」では
基本的には「健康診断後の面談」と同じ内容になります。健康診断結果なども参照しながら、本人の相談内容に合わせて健康状態について聴取しましょう。

「休職・復職面談」では
「休職面談」は、基本的には「メンタル不調者面談」と同じ内容になります。「復職面談」は、通院・治療状況、自覚症状、生活・睡眠リズム、家族からの情報(生活状況など)、業務遂行能力、就業に関する本人の考え、休業に至った本人側の原因は見直されているかなどを確認し、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかを確認してください。また、本人や家族が不安や焦りから職場復帰を急ぎ、回復が不十分なまま職場復帰の希望が出されていないかに注意しましょう。

⒊ 面談が終わったら

以下の事項について説明します。
会社への情報共有
今後の方針、次回の面談予定

産業医面談の流れ(具体例)

上記の産業医面談の流れ①~⑧に沿って、実際の産業医面談の進め方をご紹介します。
長時間労働が100時間を超えた従業員「山田花子」に対し、産業医「佐藤太郎」が面談を行います。

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① 自己紹介
「初めまして、産業医の佐藤太郎と申します。今から産業医面談を行います、本日はよろしくお願いいたします。」

② 産業医の立場・役割を説明
「面談の前に、産業医の役割を説明させていただきます。産業医は主治医とは役割が異なります。主治医は『病気の診断と治療』が役割で、病気の状態から日常生活が可能な状態までの範囲を担当します。産業医は『病気の予防と働けるかどうかの判断』が役割で、日常生活が可能な状態から、フルタイムで働ける状態までの範囲を担当し、必要に応じて就業制限を行います。」
※シンプルに「主治医は病気の診断治療、産業医は病気の予防が仕事です」と伝えてもよいでしょう。

③ 面談の目的を説明
「面談の目的は、さまざまな情報をお聞きすることで、山田さんがこのまま仕事を続けると心や身体の病気になってしまう可能性がないか、また今の状態でしっかりと働けるかどうかを確認することです。」

④ 面談に至った経緯を説明
「今回、山田さんが面談となった理由は、4月の長時間労働が100時間を超えたからです。80時間や100時間を超えたところで、メンタル不調や身体不調となる人が多くなるため、こちらの時間を超えた人に面談を実施するということが法律で決まっています。」

⑤ 面談時間の説明
「面談時間は15〜30分程度になります。ご質問などありましたら適宜聞いてください。」

⑥ 個人情報を許可なく会社に共有しないことを説明
「今からお聞きする情報は個人情報となるため、山田さんの許可なく会社に共有することはありませんので、安心してお話ししてください。面談の最後に会社に情報共有してよいかどうか確認します。それでは、今からいろいろとヒアリングしていきます。」

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〜産業医面談〜
「たくさんの質問にお答えいただきありがとうございました。以上で面談は終了です。」
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⑦ 会社への情報共有について説明
「今お聞きした内容は個人情報になりますが、このまま会社に共有しても大丈夫でしょうか?もしご希望であれば、一部を伏せて共有したり、概略のみを共有したり、全く共有しないことも可能です。」

⑧ 今後の方針・面談予定について説明
「睡眠に症状が出ているため、今週中に一度精神科を受診するようにしてください。次回一カ月後の訪問時に再度面談を実施し、経過に関してお聞きします。」

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産業医面談における注意点

産業医面談の終了後、今後の方針や面談予定をその場で本人と会社へフィードバックすることが望ましいですが、必ずしもその場で判断する必要はありません。判断が難しい場合は、その場で適当に答えてはいけません。「こちらで再度検討してから今後の方針に関して改めてお伝えします」と本人に伝え、今後の方針を検討してください。一度持ち帰って、人事、他の専門職(社労士・弁護士など)、他の産業医の意見を参考にした上で、産業医意見を提出しましょう。また、本人の健康状態、本人の悩みや希望、会社や職場の事情などを総合的に考慮し、本人や上司や会社など各ステークホルダーにとって望ましい形になるよう連携・調整を行うことが重要です。そのためにも産業医にはヒアリング力・コミュニケーション力が重要です。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。