メンタルヘルスにおける産業医面談の流れとポイント

日付2021.07.29
更新日:2021.12.24
メンタルヘルスにおける産業医面談の流れとポイント

メンタル面談における産業医の役割とは?

産業医面談の中で重要になってきているのが、メンタルヘルス関連の面談です。
精神疾患は、精神科の医師の診察では、医学的見地から「通常の生活が可能であるか」診断をし、必要であれば治療を行います。一方、産業医面談では、医学的見地と就労的見地の双方を踏まえて、体調や就労環境を正しく評価し、本人と会社へアドバイスを行います。医療機関ではないため、産業医面談において診断や治療をすることはできません。いわば産業医は〝本人と会社へのコンサルタント的な役割〟を担う立場であり、役割には以下の3つのポイントがあります。

【産業医の役割】

① 「通常の生活が可能である状態」の1つ上の段階として「就業が可能であるか」を評価します。どのようなストレス負荷があるか、どのような症状が起きているか、就労環境は適切かなどを正しく評価します。
生活指導、考え方の指導などを行います。必要に応じて受診を勧めます
③ 必要に応じて、会社へ就業制限、休業判断、復職判断、就労環境の改善などをアドバイスします。
どのような条件であれば就業可能かという「就業制限」の判断、就業が出来る状態ではないため休養が必要という「要休業」の判断、休職中の従業員が職場復帰する際の「復帰可否」の判断、症状を悪化させず(または回復させて)継続して就労するには、職場環境や業務内容にどのような配慮ができるかを判断し、会社へアドバイスします。

メンタル面談の種類

産業医がメンタルヘルス関連の面談を依頼されるケースは、大きく分けて以下の3つになります。
ここでは、上記①の「メンタル不調者面談」について解説をしていきます。
① メンタル不調者面談
② 休職・復職者面談(復職判定面談や、休職中社員の面談・相談など)
③ 高ストレス者面談(ストレスチェック後の医師面談)

メンタル面談に至るまでの流れ

メンタル不調の前兆として、勤怠に影響が出るケースが多くみられます。その際には、まず産業医や保健師へ相談し、必要に応じて面談が設定できるように、職場上司や経営者にも正しいメンタルヘルスを理解し「ラインケア」を実践してもらう必要があります。
メンタル不調者面談に至るケースとして、以下のようなパターンがあります。

●だんだんと年休や遅刻が増える。「頭が痛い」「お腹が痛い」と休む日が増え、会社指示により面談が設定される。

●希望面談の場合は、不眠が続く、人間関係がうまくいかない、不安が強く仕事に全く集中できない、などの悩みから本人希望で面談が設定される。

また、嘱託産業医の場合、企業への訪問頻度が少ないので、不調や業務遂行能力の低下がみられたら、早めに産業医に相談できるような体制を整えておきましょう。

メンタル面談時に確認すべきポイント

以下のような症状がある場合はメンタル不調の可能性があるため、受診や治療を推奨するのが良いでしょう。
・抑うつ気分
・集中力・思考力の低下、仕事の能率の低下
・意欲・気力の低下、倦怠感
・自責感・罪悪感
・希死念慮
・食欲低下
・睡眠障害
・その他の体調不良

※不眠症状は抑うつ状態につながる可能性が非常に高いです。「週に2~3回以上、不眠が1か月継続して出現している」場合には、抑うつ症状がその時点で出現していないとしても、不眠治療のために医療機関を受診してもらうのが良いでしょう。
※希死念慮がある場合には早急に受診が必要な可能性が高いです。
※これらの症状以外にも「日常生活や仕事が通常通り行えていない状況が約2週間以上続いている」と判断できる場合には、早めに医療機関を受診するのが良いでしょう。

メンタル面談をふまえた、就業制限のポイント

メンタル不調の症状が見られた場合、それ以上症状を悪化させないための対策(就業制限)が必要です。代表的な3つの就業制限の方法を紹介します。

①残業制限

長時間労働はストレス負荷がかかるため、メンタル不調を増悪してしまう恐れがあります。とくに医療機関の受診が必要な場合は、原則として長時間労働を禁止にした方がよいでしょう。
産業医がある程度強制的に残業制限するケースもありますが、基本的には本人と会社とが相談の上で制限の程度を決めるようにします。
また、仮に「残業は1日2時間まで、月20時間までは可能」と制限したとしても、業務への焦りなどからかえってメンタル不調が悪化する場合もあるので、実際には本人が負担なく納得できるような制限に調整することも必要です。

②業務量の軽減

残業時間が短くなっても、業務量が同じであれば、かえって短い時間で仕事をこなさなくてはいけなくなったり、仕事を家に持ち帰りしてしまうなどの恐れもあるので、業務量も減らさなければければいけません。業務を振られすぎて常に納期に追われている場合などは、いくら優秀な人でもオーバーフローしてしまいます。業務量の調整には、直属上司との相談も必要になってくるので、本人の同意を得つつ、人事担当者が上司と一緒に職場の体制を整えるようにしましょう。

③業務環境の調整

メンタル不調の原因は、長時間労働や業務量だけでなく、上司や同僚、取引先との人間関係の悪化も大きな要因となります。例えば、同僚や上司の言動や、担当する取引先が無理な依頼を押しつけてきたりなど、その理由はさまざまですが、ストレス源が明らかな場合にはそれから遠ざけるように業務環境を調整しましょう。急な部署移動は無理でも、仕事のグループ分けや席を変えるだけで負担が大きく軽減された例もあります。

また、メンタル不調は、身体疾患と異なり、数カ月以上通院が必要なことが多いので、継続的に通院できるよう、通院の予定を加味しながら勤務時間などの配慮を行いましょう。

メンタル面談後のフォローアップ

メンタル面談は多くの場合一度では終わらず、多くは何カ月も継続することになります。医療機関の受診や業務軽減によって症状が回復し、通常勤務が可能になるまでは、面談頻度を調節しながら適切なフォローアップを行いましょう。
嘱託産業医の場合の面談は、状態が安定するまでは1カ月に1回、状態が安定してくれば2~3カ月に1回のペースに伸ばしていき、就業上の配慮が不要な状態になるまで産業医にサポートしてもらいましょう。

面談情報の取り扱いにおける注意点

産業医面談が終わった後は、就業制限や就労環境への配慮などの「産業医意見書」を共有してもらいましょう。必要に応じて、職場上司などの関係者にも方針を共有し、今後の対応につなげましょう。
産業医面談の詳細な内容については、個人情報の観点から、本人の同意がない限り会社へ共有することは禁止されています。しかし、しかし、本人または周囲の安全健康が損なわれるリスクが高い場合は、それが優先されるため、本人の同意なしに会社や家族に共有が必要となるケースもあります。
産業医面談の際に、産業医から本人へ以下のような説明をしてもらい、情報共有の同意を取得するとよいでしょう。
「この面談の内容は基本的に会社に報告することになりますが、会社に伝えてほしくないことがあれば遠慮せずにその都度教えてください。その場合は会社へはできるだけ伏せて報告します」
「この内容は安全配慮の観点から、会社(または特定の上司)に伝えた方がいいと考えられますが、お伝えしてもよろしいでしょうか?」

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。