職場復帰支援における、休職時の手続きと休職中のケアのポイント

日付2021.07.29
更新日:2021.12.24
職業性ストレスモデル

メンタルヘルス対策は「3つの予防」で防ぐ

メンタルヘルス対策の基本として、以下の3段階の予防法があります。
ここでは、三次予防にあたる職場復帰の支援について解説します。

① 一次予防:メンタル不調を未然に防止する。
② 二次予防:メンタル不調を早期に発見し、適切な措置を行う。
③ 三次予防:メンタル不調後職場復帰の支援などを行う。
職業性ストレスモデル

出典:「Selfcare こころの健康気づきのヒント集」(厚生労働省)を加工して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/000561002.pdf

職場復帰支援とは?

職場におけるメンタルヘルス問題は、やがて従業員の休職や離職、ほかの従業員の二次性メンタル不調にまでつながるリスクがあります。メンタル不調は、休業したとしても体調が完全に戻るとは限らず、再発や再休業してしまう確率が高いです。そのため職場復帰は、会社、本人、家族にとって重要なことであり、会社として適切な職場復帰支援体制を作ることが重要です。

職場復帰支援の現状

厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタル不調により連続1カ月以上休業または退職した従業員がいた企業は6.7%で、企業規模が大きいほど高い割合になっています。
また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は59.2%ですが、職場復帰における支援を行っている企業は22.5%にとどまっている現状です。
【メンタルヘルス不調者による休業・退職の状況】
メンタルヘルス不調者による休業・退職の状況メンタルヘルス不調者による休業・退職の状況
出典:「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_gaikyo.pdf

【職場復帰支援の取り組み状況】
職場復帰支援の取り組み状況
出典:「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_gaikyo.pdf

職場復帰支援の流れ

休職者がスムーズに職場復帰するためには、休業開始→休業中→復帰時→復帰後と、通常業務への復帰までの流れを明確化する必要があります。衛生委員会などで必要な事項を調査・審議し、それぞれの企業の現状に適した職場復帰支援の計画「職場復帰支援プログラム」を作成して取り組みましょう。

職場復帰支援の流れ

職場復帰支援の流れ
出典:「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf

従業員が休職する際の手続き

従業員が健康上の理由で休業する際は、休業届に加えて、主治医による診断書(病気休業診断書)を会社に提出する必要があります。それにより、会社は就業規則や職場復帰支援プログラムに従って休業開始の手続きを行い、休業が開始されます。
休職・復職における会社の就業規則を確認し、詳細に明記されていない場合には、就業規則の見直しを労務管理関係者と検討しましょう。

一般的な休業開始の流れ

1.本人から管理監督者に対して、休業を希望する旨を伝える。
2.管理監督者から本人(または家族)に対して、主治医から「病気休業診断書」をもらうよう指示をする。
3.本人(または家族)から管理監督者に対して「休業届」と「病気休業診断書」を提出する。
4.管理監督者から人事に対して「休業届」と「病気休業診断書」を提出する。
5.管理監督者から本人(または家族)に対して、休業可能の報告をし、休業中の手続きや職場復帰支援の手順などについて説明をする。
一般的な休業開始の流れ

病気休業診断書の見方のポイント

●記載してもらうべき内容
病名、病気休業を必要とする旨、必要な療養期間の見込み、療養に際し必要な配慮を記載してあることが望ましいです。可能であれば、診断書の取得前に必要項目について主治医へ依頼するとよいでしょう。もし診断書の取得後に足りない情報がある場合は、受診した際に追加で記載してもらう項目を含めた診断書を再発行してもらうとよいでしょう。

●療養期間の見込み
メンタル不調の場合、療養が必要な期間は個人差が大きく不確定なことが多く、主治医によっても、長めに記載する医師や短めに記載する医師とさまざまです。そのため、記載された療養期間は実際に回復に必要な期間というよりは「休業手続きを何カ月間取得するか」という事務的な意味合いが強くなります。まずは1、2カ月単位で期間を設定してもらい、回復の状況に合わせて療養期間の延長や早めの復帰調整をするのがよいでしょう。大抵メンタル不調による休業平均は5、6カ月と言われています。

●病名
診断書に記載される病名は、正式な病名でなく、メンタル不調の状態を表していることが多くみられます(例:うつ状態)。その背景として、診断書発行時点では病名が確定していない、または本人の受け止め方などを考慮し主治医が正式病名を記載することを避けているなどの理由があります。また、メンタル疾患は同じ病名であっても個人によって症状や回復状況はさまざまなので、病名にとらわれず「本人がどのような体調で、生活や就労においてどのような配慮が必要か」に焦点を置いて職場復帰に向けたサポートをしていくことが大切です。

休職になった従業員への説明事項

メンタル不調の従業員が安心して休養に専念できるよう、また休業中・復職時にトラブルが起きないよう、あらかじめ従業員(と家族)に対して休業手順と注意事項の説明を行いましょう。

本人は休業が必要な状態のメンタル不調のため、会社からの説明内容を十分に理解できない可能性があります。また、休業中は家族の支援がとても重要になってくるため、トラブルがなく安心して療養に専念してもらうためにも、本人と家族を交えて説明を行うとよいでしょう。
本人が説明を聞けないほど体調が悪い場合は、家族に説明をしましょう。
また、家族も対応ができない場合は、文書化したものや必要書類一式を郵送し、後程本人と家族に説明をするとよいでしょう。本人の状態が回復してきた際に確認できるよう、また「言った言わない」のトラブル防止のためにも、文書など記録が残る形で、会社から本人や家族へ情報提供をしましょう。

休業開始時には、以下の事項を説明しましょう。

会社との連絡について

●本人と親族の連絡先
特に一人暮らしの場合、本人と連絡が取れない場合に安否などを確認する方法がなくなってしまうため、親族の連絡先を聞いておきましょう(親族に休業を知られたくない労働者もいますが、安心安全に療養に専念してもらうためにも、本人へ説明しなるべく確認しましょう)。会社から本人に連絡する場合どこに連絡したらよいか、本人と連絡がつかない場合はどこに連絡してよいかを明確にしておくことが大切です。

●会社の連絡担当者
休業中は書類の申請や提出、定期的な体調報告などが発生します。連絡の窓口が毎回異なると適切に情報共有されない可能性があるため、会社の窓口は一本化して担当者を決め、必要に応じて担当者から人事スタッフや産業保健スタッフへと連携できるようにしておきましょう。担当者には、管理監督者や職場の上司がなるケースが多いです。

●会社との定期連絡
本人への説明や安否確認のために2週間に1回~月1回の頻度で、定期的に連絡を取り、療養の状況や復職の意思について確認をしましょう。定期連絡については事前に本人へ伝えておきましょう。本人の体調を確認するために、連絡手段は、対面>電話>メールの順に優先しましょう。本人が話すのもつらい状態であればメールで連絡をとったり、しばらく会社から連絡をしないことも検討しましょう。

休業期間について

●休業期間の考え方、休業可能な期間、復帰時の簡単な流れ
有給休暇(有給でどこまで休めるのか)、病気欠勤(有給消化後、病気欠勤扱いはいつまで可能か)、病気休暇、休職期間 (休職満了日はいつか)など、会社の就業規則を確認しましょう。(※詳細は以下に記載)。休業期間満了後に雇用契約を解除する場合などは、あらかじめ就業規則に定めて周知しておく必要があります。

経済面について

●休業中の身分
長く療養していたり休職するとクビになってしまうのではないかと不安になり、安心して療養に専念できず、焦って回復していない状態で復職しようとしてしまうケースも多くみられます。就業規則などで休職中は身分保障されていることを説明し、安心して療養に専念してもらいましょう。
ただし「休職期間=解雇のための猶予期間」でもあり、各企業にて就業規則で以下のことを定めておくとよいでしょう。
・会社として認めている休職期間
・再休職時の休職期間:復職後に同一の理由で再休職した場合、どこまでが同一の理由として認められるか、前回の休業期間を算入するか、どの程度経過すれば前回の休業期間がリセットされるか(クーリング期間)
・休職満了日以降はどの程度身分保障するのか
・休職満了後に雇用契約の解除を行う条件や流れ

●傷病手当金
最長で1年6カ月間支給されます(※詳細は以下に記載)。主治医より証明書を発行してもらい、傷病手当金の申請をすることを本人へ伝えましょう。

●労災保険
休業中に相談や手続きなどのために本人が来社することもあります。これは出勤には該当しないため、来社中の事故・ケガは労災保険の適用になりません。そのため以下のことを本人に説明しておきましょう。
・来社中の事故・ケガは労災保険の適用にならないこと
・状態が不安定な時は無理して来社しないこと
・来社時の交通費を会社で負担するかどうか決めておくこと

●社会保険料の支払い
就業中は、従業員は労働保険(雇用保険、労災保険)と社会保険(健康保険、年金保険)の保険料を企業と本人折半で支払っており、本人の支払い分は給与天引きとなっています。
一方、休業中は「労働義務を免除されている状態」のため、社会保険のみを企業と本人の折半で支払う必要があります。しかし、休業中は給与が発生していないため給与天引きができないため、休業中に支払ってもらう方法として、以下のどちらがよいかを本人と相談する必要があります。
・毎月支払う
・復職後(または退職後)にまとめて支払う
ただし、休業中は金銭的に余裕がないことが多く、本人に安心して休養してもらうためにも、復職後にまとめて支払う方法が一般的です。

相談先について

●不安・悩みなどの相談先の紹介
企業内の相談体制、EAP(※1)など外部の相談機関、地域の相談制度などの情報提供をしましょう。
(※1)EAP…メンタルヘルス対策として高い評価を得ている「従業員支援プログラム(Employees Assistance Program)」

●公的・民間の職場復帰支援サービスの紹介
医療機関や地域障害者職業センターで行われているリワークプログラム(※2)などの情報提供や紹介をしましょう。
(※2)リワークプログラム…return to workの略。メンタル不調が原因で休職している労働者に対して、職場復帰に向けたリハビリテーションを実施する機関で行われているプログラムのこと。「復職支援プログラム」や「職場復帰支援プログラム」ともいいます。

休職中のケアのポイント

休業中のケアは、以下のようなことがポイントとなります。

人事から職場への対応

同じ職場の社員へは、本人が休養が必要になった事実とその期間のみを伝え、診断名や病状などの詳細を伝えるのは控えましょう。また、会社の休職・復職制度が整備がされているか定期的に見返すとよいでしょう。

診断書の再発行

主治医による休業診断書は、とりあえずの休業期間を記載されていることが多いので、本人の回復状況によって、さらに継続して休業が必要な場合は、主治医より休業診断書を再発行してもらうように告げ、会社へ提出してもらいましょう。

重大な決断の延期

休業すると申し訳ない気持ちから「会社を辞めたい」と思うことがあります。メンタル不調の場合、正常な判断力が低下しているため、重大な決断は回復後まで延期するように促しましょう。

会社から本人への定期連絡

前途したように、本人と連絡する担当者を決め定期的な連絡をとりましょう。

●定期連絡の際に確認する事項
手続きや申請など
主治医から証明書をもらい、傷病手当金の申請が実施されているか確認しましょう。休職満了日まで残り数カ月の場合は、本人と家族同席の上、復職手順や復職に必要な条件などを説明し、満了日を念頭に今後について相談しましょう。
本人の悩みなどについて傾聴
安否確認や体調の回復
体調が回復し復帰が近くなってきた場合、生活リズムの調整、社会機能回復への調整を指導し、また本人に休業に至った原因について考えてもらいましょう。また、復職手順の説明もするようにしましょう。
休業期間中の指導目標

休職期間の4つの考え方

メンタル不調の従業員の休業期間中については、以下の4つの考え方がポイントになります。

① 年次有給休暇(失効年休積立制度の利用)

基本的に年次有給休暇(以下、年休)の範囲内で療養が完了するのであれば欠勤(病欠)や病気休暇、休職をする必要はなく減給もないため、短期療養の場合は理想的です。ただし「年休のとれる間で治す」という考え方は、メンタル不調が問題の場合、焦りなどが療養に影響を与える可能性が大きいので、あらかじめ病気休暇あるいは休職にするのがよいでしょう。
また、前年度までに失効した年休を積立て病気療養に使える「失効年休積立制度」を導入している企業もあります。

② 欠勤(病欠)

年休を使い切ると、欠勤期間に移行します。この際に診断書の提出があれば病気欠勤となります。病気欠勤では給与は発生しませんが、待期期間(※3)が完了すれば、傷病手当金の申請が可能です。長期欠勤はボーナス算定や社員評価に響くため、長期の場合は病気休暇や休職を活用する方がよいでしょう。
(※3)待機期間…連続して仕事を休んだ日から3日間。休日、年休を含む。

③ 病気休暇

病気休暇制度を導入している会社では、年休を使い切っても診断書の提出があれば、年休と同様の長期の有給休暇をとれるため、制度を利用することが理想です。その期間は会社の定めによりますが、最長1年6カ月の場合が多くみられます。

④ 休職

欠勤が「労働の義務があるのに休んでいる状態」なのに対し、休職は「労働の義務が免除された状態」となります。ただし欠勤と同じように傷病手当金を申請することができ、労働不能な期間であるため、ボーナスや社内で規定された社員評価に響くことはありません。

傷病手当金とは?

傷病手当金は、次の1から4の条件をすべて満たしたときに、最長で1年6カ月間支給されます。また、1日当たりの支給額は標準報酬日額×約2/3が支給されます。

1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
※業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外となる。
2. 仕事に就くことができないこと
※判定は、被保険者の仕事内容を考慮して判断される。
3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
※下記の待機3日間(あくまで連続して休んでいる事が必要。休日も年休も含む)の考え方に注意。
4. 休業した期間について給与の支払いがないこと
※給与の支払いがあっても、傷病手当金の額より少ない場合はその差額が支給される。

【待機3日間の考え方】
待機3日間の考え方
【手当金が支給される期間】
手当金が支給される期間

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。