産業保健・健康管理

コロナ感染後の仕事復帰目安は?陰性証明の必要性・企業が配慮すべきポイントを紹介

日付
更新日:2023.08.31

令和5年5月8日をもって、新型コロナウイルス感染症における感染症法上の位置づけが5類へと移行になりました。それにともない、新型コロナウイルスに感染した従業員へ企業がとるべき対応も変更する必要があります。

もし、従業員のなかに新型コロナウイルスに感染した人がいる場合、企業はどのように対処すればよいのでしょうか。

本記事では、コロナ感染後の仕事復帰目安や企業の対応ポイントを解説します。従業員の健康を守り感染症の拡大を防ぐためにも、適切な知識を身につけておきましょう。

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新型コロナウイルス感染後の仕事復帰目安

新型コロナウイルスに感染した従業員や濃厚接触者と判断される従業員がいる場合、企業はどれくらいの期間を目安に仕事復帰させればよいのでしょうか。

ここでは、以下の4パターンに分けて仕事復帰の目安時期を解説します。

    • ・陽性者(有症状)の場合
    • ・陽性者(無症状)場合
    • ・濃厚接触者と判断された場合
    • ・帰国・入国者の場合

各項目を詳しくみていきましょう。

陽性者(有症状)の場合

新型コロナウイルスの症状があり、検査で陽性が出ている従業員を職場復帰させる時期は、発症後1週間を目安にするとよいでしょう。

厚生労働省は、新型コロナウイルス陽性者の療養期間および外出を控えることが推奨される期間について、次のようにガイドラインを出しています。

令和5年5月7日まで 令和5年5月8日から
新型コロナ陽性者
(有症状)
発症後7日間経過し、
症状軽快から24時間経過するまで
発症後5日間経過し、
症状軽快から24時間経過するまで

※発症日を0日目とする。

新型コロナ感染者が鼻や喉からウイルスを排出する期間の長さには個人差がありますが、発症後3日間は排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少するといわれています。また、症状軽快後も一定期間はウイルスを排出するとされているため、最低でも発症の翌日から5日間+1日は出社を控えさせたほうが安心だと考えられます。

なお令和5年5月8日以降、新型コロナ患者に対して感染症法にもとづく外出自粛や就業制限は求められなくなり、外出するかどうかの判断は個人にゆだねられるようになりました。しかし、さまざまな従業員が働く企業において、新型コロナ陽性者を出社させることのリスクは高いと考えられます。

詳細な日数は企業にゆだねられますが、感染の拡大を防ぐためにも、発症してから1週間程度は従業員に自宅療養もしくはテレワークをしてもらうことを推奨します。

“参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」

陽性者(無症状)場合

陽性でありながら咳や味覚障害などの症状がまったく出ていない場合は、検査をした日から数えて6日目以降に仕事復帰させることが望ましいでしょう。

厚生労働省では、無症状者の療養期間と外出を控えることが推奨される期間について以下のように言及しています。

令和5年5月7日まで 令和5年5月8日から
新型コロナ陽性者
(無症状)
・5日目の抗原定性検査キットによる陰性確認
・検査を行わない場合は7日間経過するまで
検査採取日を発症日(0日)として、5日間経過するまで

ただし、上記の療養機関を経過したあとでも、ウイルスが排出されている可能性は考えられます。仕事復帰させる際は、数日間のマスク着用や手指消毒の実施など、周囲への配慮を呼び掛けておくと安心でしょう。

“参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」

濃厚接触者と判断された場合

従来、濃厚接触者に対しては5日間の外出自粛が呼びかけられていましたが、令和5年5月8日からは濃厚接触者の特定そのものが廃止されました。したがって、濃厚接触者の就労を制限する必要はありません

ただし、なかには濃厚接触者に対して不安を抱く従業員や、基礎疾患をもつハイリスク者がいることも事実です。そのような同僚へ配慮するために、マスクの着用や作業場の一時的な変更など、必要な措置を講じるべき場合はあります。

帰国・入国者の場合

海外出張などで帰国・入国した従業員がいる場合も、前項までと同じように判断します。つまり、症状がある陽性者は1週間以降、症状がない陽性者は6日以降からの仕事復帰を目安にするということです。

現在、日本に入国する際に次のような手続きは不要だとされています。

    • ・有効なワクチン接種証明書
    • ・出国前検査証明書
    • ・到着時検査
    • ・入国後待機
    • ・陽性判明時における施設等での療養

“出典:厚生労働省「水際対策」
“出典:内閣官房 法務省 外務省 厚生労働省 国土交通省「今後の水際措置について」

そのため、帰国・入国者であるからといって特別な手続き・待機期間は発生しないということです。

他の従業員と同様に健康状態をよく観察し、必要に応じて検査や自宅療養を実施すれば問題ありません。

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新型コロナウイルスからの仕事復帰に陰性証明は必要?

企業は、そこで働く従業員の健康に配慮することが義務付けられています。そのため、陽性者を仕事復帰させる際に、「陰性証明」を提出させたほうがいいのではと考える企業は多いかもしれません。

果たして、新型コロナウイルス陽性者が仕事復帰する際は陰性証明が必要なのでしょうか。企業が押さえておきたいポイントを解説します。

原則、陰性証明は不要

厚生労働省は、職場復帰の際に治癒証明書や陰性証明を提出する必要はないと明言しています。また企業に対して、療養終了時に陰性証明などの発行を求めないように要請しています。

したがって、「陰性証明がなければ職場復帰させない」などの規則を設けることは不適切です。

さらに厚生労働省は、定められた療養期間を経過した場合には、療養を終了するように定めています。このことから、企業は従業員に対して不必要な自宅待機や検査の強制を行わないように注意する必要があります。

“参考:厚生労働省「職場復帰する際に職場等に対する陰性証明等の提出が不要であることについて(再周知)」

企業の都合で陰性証明が必要な場合は、費用を負担する

医師が必要だと判断したときや法令等で定められた場合以外で企業が陰性証明を必要とするときは、事業者都合での発行だと判断されます。そのため、どうしても陰性証明が必要となる場合は、検査にかかわるすべての費用を会社側で負担する必要があります。

とはいえ、前項で述べたようにそもそも陰性証明の提出は不要です。担当者の不安や恐怖心から不必要な措置をとらないよう、厚生労働省のガイドラインにもとづいた対処を心がけましょう。

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コロナから仕事復帰する従業員への安全配慮

新型コロナウイルスに感染していた従業員を仕事復帰させるときは、本人や周囲の従業員の安全や健康に配慮するためにも、以下の2点に注意しましょう。

主治医や産業保健スタッフと連携する

療養後の仕事復帰についての判断は、主治医や産業医などの産業保健スタッフと連携しながら進めることを推奨します。

新型コロナウイルス感染後の回復状況や心身に与える負担の大きさは、従業員によって異なります。本記事で紹介した仕事復帰までの期間はあくまで目安であり、ひとり一人の状況に応じて判断することが欠かせません。

安心して仕事に復帰してもらうためにも、従業員の自己判断や上司の独断による仕事復帰は避けましょう。従業員に対しても、産業医などと相談しながら復帰時期を決めることを伝えておくことが大切です。

衛生対策や健康観察を徹底する

現在政府は、新型コロナウイルス対策としてマスクの着用や手指消毒、換気、三密の回避などを一律に求める指針は出していません。そのため、各対策法の実施は個人や企業の判断にゆだねられています。

しかし、従業員に安心して働ける環境を提供するためにも、可能な範囲で衛生対策や健康観察を実施することを推奨します。マスクの着用(咳エチケット)や手指消毒、体温測定、咳の有無の観察などを実施しておくと、本人の体調管理になりますし、他の従業員への配慮にもなるでしょう。

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コロナ後に仕事復帰する従業員への対応ポイント

新型コロナウイルスに感染した従業員が仕事復帰するときは、本人はもちろん、周囲の従業員もさまざまな不安を抱えることになります。従業員が抱えている不安を取り除くためには、企業が主体となって適切な対応をすることが欠かせません。

ここでは、コロナ後に仕事復帰する従業員への対応ポイントを紹介します。

体調や後遺症に配慮して業務時間・内容を決める

政府が定めた期間を経過したあとであっても、人によっては息切れや味覚障害などの後遺症が残ってしまうことがあります。仕事復帰時は、従業員が抱える体調不良や後遺症に配慮して、ひとり一人に適した業務時間や内容を決めることが重要です。

企業としては以前と同様の仕事量をこなしてもらいたいと考えるかもしれませんが、業務により体調が悪化してしまえば、企業の責任問題となります。無理はさせず、少しずつ業務に戻ってもらうように配慮しましょう。

たとえば、時短勤務や自家用車通勤、テレワークの実施、不特定多数と接触する業務の回避などが有効です。本人や産業医と相談しながら、復帰スケジュールを立てていきましょう。

周囲の従業員に向けたメンタルケア

新型コロナウイルスに感染した従業員本人のみならず、周囲で働く人々のケアをすることも企業の重要な役割です。とくに、基礎疾患がある人や高齢者、妊娠中の人は新型コロナウイルスに対して強く不安を抱く傾向にあります。

他の従業員が必要以上に不安を抱くことがないよう、コロナに対する正しい知識の周知を実施しましょう。また、職場全体で感染症対策に取り組んだり、従業員が気軽に相談できる窓口を設置したりする対策も有効です。

コロナハラスメントの防止

新型コロナウイルス感染後に注意したいのが、コロナハラスメントです。感染を理由に、感染者や家族が不当な差別や偏見を抱かれたり、不確かな情報をもとに嫌がらせ行為をされたりすることがないよう、企業は注意しなければいけません。

このような行動の背景には、知識不足や不安な気持ちが隠されている場合がほとんどです。正しい知識の周知や感染症対策を実施することは、コロナハラスメントの防止にも効力を発揮してくれるでしょう。

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まとめ

新型コロナウイルスに感染した従業員を仕事復帰させるまでの期間の目安は、厚生労働省のガイドラインを参考に決定しましょう。令和5年5月8日以降は、療養期間や外出を控えることが推奨される期間が大きく変更になっているため、その内容にあわせた判断が重要となります。

ただし、今回紹介した仕事復帰までの期間はあくまで目安であり、具体的な療養日数は体調に応じて判断することが重要です。ひとり一人に最適な復帰時期は、産業医と相談しながら見極めることを推奨します。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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