職場復帰支援における、復職プロセスと復帰判断のポイント

日付2021.07.29
更新日:2021.12.24
試し出社の流れ

職場復帰における流れ

休職中の従業員が復帰する際には、大きく分けて以下の流れとなります。ここでは、流れに沿って1つずつ解説していきます。

① 本人による復職の意思表示
② 本人へ復職手順の説明
③ 主治医による職場復帰可能の判断
「復職診断書」の提出
④ 職場復帰の判断に必要な情報の収集
生活リズムの確認、本人の健康状態の確認「産業医面談」、業務遂行能力の回復状況、職場環境(職場側の休業要因が改善していること)、就業に関する本人の考え(休業に至った本人側の原因が見直されていること)
⑤ 職場復帰可否の判断(最終的な職場復帰の決定)

① 本人による復職の意思表示

メンタル不調で休職している場合、体調の回復とともに前向きな気持ちや意欲が増加し、仕事に復帰したい意欲も自然と湧いてきます。そのため、まずは従業員本人が「元気になってきたから仕事に復帰したい」という意思表示や「復職願」の届け出が必要となります。ここで注意しなければならないのは、「復職をしたい」のか、「復職しなければならないと焦っている」のかを区別することです。

「復職したい」場合

意欲が改善してきている1つのサインであり、復職を検討してよいでしょう。

「復職しなければならないと焦っている」場合

「休職してしまって申し訳ない」「将来が心配だ、自分はどうなっていくのだろう」「経済面が心配だから早く仕事をしなければ」などと従業員本人は焦ってしまうことが多々あります。この焦燥感から復帰を希望している場合、体調が十分に回復していない可能性が高いため復帰の検討は要注意です。上司による面談や産業医面談など行い、慎重に判断しましょう。

② 本人へ復職手順の説明

本人から復帰の意志表示があった際は、人事担当者から本人へ、以下のような復職手順の説明を行います。本人は、復帰を希望すればすぐに復帰できると思っていることが多いため、後々のトラブル予防のためにも会社としての流れやルールを説明しておきましょう。
復職手順や手続きの方法
復職に必要な条件と、復職するためにはその条件をクリアする必要があること。
●主治医による「復職診断書」、産業医面談、「試し出社」などの結果を総合的に判断し、会社が最終的な復職可否を決定すること。(「復職診断書」の提出後は、復職の諸手順を経て、復職に必要な条件をクリアできた際に、会社が総合的に判断して復職可否を決定します。)

③ 主治医による職場復帰可能の判断

休職中の従業員が復帰意欲を持ち、主治医が職場復帰可能と判断した場合、主治医による「復職診断書」を本人から会社へ提出してもらいます。その際には、主治医による「復職診断書」は、復職プロセスの1つであり、復職判断材料の1つだという点に注意しなければいけません。
その背景として、主治医は、職場環境や勤務内容を詳しく把握することは難しいため、「復職診断書」は病状が回復してきていることだけを判断している場合が多く、勤務が可能なレベル(仕事の負荷でも体調が悪化しないレベル)まで回復したかどうかを判断していないケースが多いからです。
また、主治医は患者個人のみとやりとりしているため、本人の体調が回復していなくても、焦りや本人の事情から復帰を強く希望する場合は、復職を許可して「復職診断書」を発行してしまうケースも見られます。
そのため、本人の同意を得た上で、あらかじめ主治医へ、職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報(復職に必要な条件、社内勤務制度や職場環境など)を提供するとよいでしょう。それにより、本人が職場で求められる業務が行える状態まで回復しているかどうかを、より具体的に主治医にも理解してもらうことができます。その上で、主治医へ「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」を渡し、より詳しい意見を記入してもらいましょう。
職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報
※知り得た情報は評価に影響しないこと、また労務管理上必要な担当者間でのみ共有・利用することなどを本人へ説明し、同意を得るとよいでしょう。
※主治医に対しては、本人を通じて、会社として適切な配慮をするために、情報や意見を提供してもらいたいことを説明しましょう。主治医が情報提供を拒否する場合はセカンドオピニオンも検討しましょう。
※主治医の一方的診断や本人の希望通りの診断書の作成を防ぐためにも、あらかじめ就業規則には「セカンドオピニオンとして会社の指定する医師の面談を受けさせることができる」などの記載をしておくとよいでしょう。

④ 職場復帰の判断に必要な情報の収集

人事担当者は、管理監督者、産業医や保健師、本人や家族から必要な情報を収集し職場復帰の可否を総合的に判断します。本人による復職の意思表示があり、主治医による「復職診断書」が提出された後、必要な情報は以下になります。

生活リズムの確認

休職中は、原則的に上司が1カ月に1回以上定期連絡を取り状況確認を行いましょう。症状がほとんど消失し本人に意欲や復職意思が見られてきたら、まずは復職に向けて生活リズムを整えることが必要となります。本人に毎日「生活リズム記録票」を記入してもらい、上司との定期連絡や産業医面談の際に共有してもらいましょう。復職の条件として、一般的に生活リズムが2週間以上安定していることが必要です。

本人の健康状態の確認 「産業医面談」

2週間以上の生活リズムの安定が見られたら、産業医による復職面談を設定し職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかを確認してもらいましょう。産業医は、従業員と会社の中立の立場で、職場環境や業務について理解があるため、専門家として、復帰に向けた適切な意見を提供してくれます。また、必要に応じて、本人や産業医だけでなく、人事担当者、職場上司を含めた面談も設定しましょう。

【確認事項】
・通院・治療状況・・・治療状況の概要、今後の通院の必要性、内服薬と薬の副作用(主治医からの情報提供書も参考に)
・自覚症状・・・症状の回復状況、業務遂行に影響を及ぼす症状の有無
・生活・睡眠リズム・・・睡眠リズム(就寝時間と起床時間)、昼間の眠気
・家族からの情報・・・病状の改善程度、食事・睡眠・飲酒などの生活習慣
・業務遂行能力・・・通勤安全性、注意力・集中力、疲労の回復具合、趣味など1日の過ごし方、日常生活における業務と似た行為の実施状況(散歩、読書、パソコン操作などが持続できる時間)
・就業に関する本人の考え・・・希望する復帰先、希望する就業上の配慮内容・期間
・休業に至った本人側の原因は見直されているか・・・対人関係能力、ストレス対応能力の向上、家庭の支援など

業務遂行能力の回復状況 「試し出社」

主治医の「復帰診断書」、「生活リズム記録票」、産業医面談からだけは、職場での業務遂行能力を見極めるには限界があります。そこで、厚生労働省の手引きでは、正式な職場復帰決定の前に「試し出社制度」を設けることを勧めています。試しに勤務してみることで、職場復帰にむけた業務遂行能力の回復を段階的に見極めることができ、本人にとっても復帰に向けた練習となります。
本人との面談の結果、仕事に耐えられる体調の回復が確認できれば、復帰前に「試し出社」を一定期間(一般的には2週間程度)行います。
「試し出社」を実施する際は、必ず本人による「復職願」のほかに、「試し出社申請書・同意書」の記入、主治医による許可が必要です。

試し出社の種類

通勤訓練
自宅から職場までの通勤経路を移動し、職場付近へ模擬出勤してもらいます。例えば行き先を図書館に設定した場合、まずは電車の往復だけから試み、次に図書館に1時間滞在し、1~2週間かけて8時間滞在まで伸ばすことを目指します。その後は実際に会社へ訪問し上司と会ったり、会社に滞在していきます。
模擬出勤
就業する時間帯に、近くの図書館やリワーク施設に滞在し、仕事に関連がある軽作業を試みたり、仕事に関係する資格取得に向けた勉強をするなど、仕事に戻れるような準備をします。
試し出社
実際の職場に滞在します。就業ではないので労務の提供ができないため、仕事に関係のある資料を読ませたり、勉強や器具のセットアップなどをしてもらったりしましょう。出勤時間は始業時間から始め、終わりを早めるようにし、徐々に滞在時間を長くしていきます。調子のよいときのみ出勤するのではなく、短時間でも毎日始業時刻に出勤することが重要です。

試し出社の流れ

試し出社の流れ
1. 上司から本人へ「試し出社」の日程、出勤条件、作業内容、評価内容などを説明し試し出社申請書・同意書を提出してもらう。
2. 「試し出社」当日は、上司が本人に「試し出勤実績票」を渡し、本人の健康状態を確認して、問題がなければ当日の作業内容の確認や指示をする。
3. 作業内容は内勤でできる単純作業で、毎日実施状況が確認できるものにする(メールや資料の閲覧など)。
4. 体調不良を感じたら、人事や産業保健スタッフに相談し、プライバシーに配慮するため個室などで直接本人の様子を確認する。
5. 本人は、人事や上司に適宜状態を報告する。
6. 勤務終了後は、作業内容の実施状況、健康状態を「実績表」に記入し上司に提出する。
7. 上司は内容を確認・押印し保存する。
※2~7を10日間繰り返す
8. 10日目の勤務が終わったら「試し出社」を評価する。

※「試し出社」中は、産業医や保健師が本人と定期的に面談を行い、体調がすぐれないときは中止指示を出します。
※「試し出社」は就業状態ではないため、給与や本人の業務責任はなく、福利厚生や労災保険は適応されません。交通費はどうするか、通勤災害や業務災害が発生した場合の対応、指示した業務ミスの責任の所在をどうするかなど、あらかじめ労使間で検討しルールを定めておくとよいでしょう。ルール作成に困った場合は、地域産業保健センターなど専門家の相談して決めるとよいでしょう。

試し出社の評価内容

・出勤率・・・復職可と判断するためには、10日間の連続出勤で90%以上の出勤率(遅刻すると加算なし)が必要。
・業務遂行能力・・・指定作業の実施状況、勤務姿勢(日中の眠気なし、注意力・集中力あり、頻回・長時間の離席なしなど)。
・協調性・・・職場での対人関係に問題がないかどうか。

※業務遂行能力や協調性に問題がある場合、なるべく当日に本人の体調を確認し、人事、上司、産業医などに共有して対応法を検討しましょう。

業務遂行能力の回復状況 「リワークプログラム」

「リワークプログラム」とは、精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。

【リワークの目的】
・病状を回復、安定させること
・復職にむけた準備
・再発防止のためのセルフケア能力向上

【リワークの種類】
リワークの種類

出典:一般社団法人日本うつ病リワーク協会ホームページ

https://utsu-rework.org/rework/index.html

【リワークの内容】
・プログラムに応じて決まった時間に施設へ通うことで、会社へ通勤することを想定した訓練です。
・リワーク施設では、模擬勤務を安全な環境で行える。仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業(ノルマのある作業プログラム)、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法、集団を中心とした心理社会プログラムなどが行われる。
・利用期間は一般的には3~6カ月間。
・リワーク施設では、個々の会社の状況まで考慮していないことに注意。

職場環境(職場側の休業要因が改善していること)

本人の体調の回復度合いを確認する一方で、同時に復帰を受け入れる職場側も見直す必要があります。本人や上司、そのほかの職場スタッフへのヒアリングなどを行い、人事総務、上司、産業医で職場環境の改善を検討しましょう。

【確認事項】
・業務内容
業務の具体的な内容、業務量(作業時間、作業密度)、業務の質(要求度、困難度)、業務の管理や指示系統
・業務や職場との適合性
本人の能力、意欲・関心、人間関係など
・職場による支援
職場の雰囲気やメンタルヘルスに関する理解度、上司や同僚の支援や相談体制、不測の事態への対応策、就業上の配慮(業務内容や業務量の調整、配置転換や異動、勤務制度の変更など)

就業に関する本人の考え(休業に至った本人側の原因が見直されていること)

本人の体調の回復、職場環境の見直しができたら、次は、休業に至った本人側の原因が見つめ直されているかどうか産業医面談や上司との面談などを通して確認しましょう。本人が原因を理解し、今後の対応策を考えることができればメンタル不調の再発を予防することができます。

⑤ 職場復帰可否の判断(最終的な職場復帰の決定)

必要な情報の収集と評価を行った上で、会社が最終的な職場復帰の可否を判断します。判断は産業医・保健師を中心に行いますが、職場環境などに関する事項については管理監督者などの意見を考慮する必要があります。
復職可の場合、職場復帰が決定したこと、復職日「試し出社」などの復職支援プランについて、本人と家族に説明しましょう。復職日までは「試し出社」を継続し、生活リズム表も継続して記載してもらうとよいでしょう。復職日までに不安が強まるなど変化が起きたら、主治医や産業医へすぐに相談するよう伝えましょう。

復職可能な判断基準 例

・労働者が十分な意欲を示している
・通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
・決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
・業務に必要な作業ができる
・作業による疲労が翌日までに十分回復する
・適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
・業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している   など

主治医への情報提供

復職決定について、本人を通し主治医に伝えておきます。復職後もしばらくは通院を継続するケースが多いため、情報共有することで復帰後の適切な治療につなげてもらいましょう。

職場への説明

上司から受け入れ先の職場に対して、復職日「試し出社」などの業務配慮内容について説明しましょう。病名や詳細は公言してはいけませんが、メンタル不調は体調の波があること、一定期間(6カ月~最長1年間)は就業上の配慮が必要であることなどを説明し職場の理解を得るようにしましょう。また一方で、同じ職場のスタッフに業務や心理的負荷がかかり過ぎないよう、周囲の協力を得ながら支援体制を作ることも大切です。

復帰先の職場

原則は元の職場への復帰が望ましいでしょう。新しい環境への適応は心理的負担がかかるため、再発につながる可能性があります。ただし、元の職場の人間関係や仕事内容がメンタル不調の原因となっている場合は、配置転換を行うことを検討しましょう。

主治医の診断書と異なる判断をした場合、復職不可の場合

その合理的理由と復職に必要な条件を、本人や家族、主治医にしっかりと説明し、認識してもらいましょう。その際、家族や主治医への連絡には本人の同意が必要です。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。