産業保健・健康管理

衛生委員会を設立したら議事録の作成が義務?作成方法や記入例を紹介

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更新日:2023.02.28

常時雇用する従業員数が50人以上の事業場では、従業員が安全かつ健康に労働できるよう、衛生委員会の開催が義務付けられています。衛生委員会は単に開催すればいいわけではなく、話し合った内容を議事録に記録して3年間保存しておかなければいけません

本記事では、衛生委員会の開催時に義務付けられている議事録について詳しく解説します。記載する内容やそのまま使える議事録の無料テンプレートも紹介するので、ぜひ健康経営にお役立てください。

衛生委員会の議事録とは?

労働者50名以上の事業所では、衛生委員会(または安全衛生委員会)を毎月開催する必要があります。そして、そこで話し合われた内容についての議事録を作成して、3年間保存しなければいけません。

産業医の訪問が2カ月に1回の場合でも、事業所における衛生委員会の開催と議事録の作成保存は毎月行う必要がありますので、注意しましょう。

それでは、衛生委員会の議事録はどのような企業で必要となり、誰が作成すればいいのでしょうか。まずは、衛生委員会の議事録に関する基本事項を解説します。

衛生委員会の設立、進め方をプロに相談したい方は、お気軽にDr.健康経営までご相談ください

衛生委員会の議事録を作成する企業とは

衛生委員会の議事録は、労働者が50名以上のすべての事業場で作成しなければいけません。つまり、衛生委員会の開催が義務付けられているすべての企業で議事録を作成する必要があるのです。

なお、令和2年に厚生労働省労働基準局長より出された通達では、オンラインで衛生委員会を開催することも認められています。

オンラインで衛生委員会を開催する場合、動画などで話し合いの内容が記録されるケースもあることでしょう。しかし、このようなケースであっても、衛生委員会の議事録は別途作成しなければなりません

“出典:厚生労働省情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について」”

衛生委員会の議事録を作成するタイミングと担当者

議事録は、衛生委員会の開催時に作成します。衛生委員会は毎月開催する必要があるため、年に12回の議事録作成が必要となります。

議事録を作成する担当者についての規定はありませんが、人事総務担当者や衛生管理者が担当することが一般的です。

なおDr.健康経営では、産業医の訪問後に提出される「産業医報告書」が議事録の内容を網羅しております。会社側で議事録の作成が困難な場合は、この「産業医報告書」を議事録として、保存することが可能です。

衛生委員会の議事録の構成内容

衛生委員会の開催後は議事録を作成することが義務付けられていますが、記載事項について規定はありません。そのため、何を書けばいいのか迷ってしまう企業は多いことでしょう。

ここでは、衛生委員会の議事録に記載される一般的な内容をまとめました。特に1~3は、衛生委員会において毎回確認する項目なので、議事録にも必ず記載しましょう。

1.衛生委員会の開催日時、場所、参加者氏名、人数

まずは、衛生委員会を開催した事実に関する情報を記載します。衛生委員会は「毎月1回以上の開催」が義務付けられているため、日付を明記しておくことでルールを遵守していることを証明できるでしょう。

また、運営状況を振り返りやすくするためにも、開催場所や参加者氏名、人数を記録しておきます。産業医や衛生管理者の氏名も必ず記載しましょう。

2.労災発生状況、私傷病や休職者の状況、職場巡視の報告、感染対策など

事故や労災の発生状況と今後の予防策、私傷病や休職者の発生状況、衛生管理者と産業医による職場巡視の結果報告、その他に感染対策の状況などを記載します。

労働安全衛生規則 第23条4項では、以下の2点を記録に残すことを義務付けています。

  • ・委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
  • ・委員会における議事で重要なもの

つまり意見や事実だけではなく、改善のために講じた措置についても記録を残すことが求められているのです。

なお、従業員個人についての報告があるときは、個人情報の取り扱いに気をつけなければいけません。不要な個人情報を議事録に盛り込むことは避け、プライバシーに配慮することが大切です。

“出典:e-GOV法令検索労働安全衛生規則」”

3.長時間労働者の情報

長時間労働者の人数(45時間・80時間・100時間超)、長時間労働者面談の人数と面談後の就業配慮等について記載します。この際も事実だけではなく、改善のための取り組みについても記載することが大切です。

安全労働衛生法では、「事業者はすべての労働者(管理監督者含む)の労働時間を適正に把握すること」を義務付けています。さらに労働者の健康確保のため、産業医・産業保健機能の強化が求められています。

議事録に、長時間労働の現状や実施している配慮などを記載することで、法令を遵守していることを示せるでしょう。

“出典:日本労働組合総連合会「労働安全衛生法」が改正されました!」”

4.健康診断の情報

衛生委員会の議事録には、健康診断の実施時期と対象人数、産業医による結果判定をした人数、産業医面談の人数と事後措置の有無等についても記載します。

各検査項目の全国平均異常所見率と自社の結果を比較してみると、明確な改善目標が見つかります。事実のみならず具体的な改善目標も設定・記録できれば、衛生委員会を開催する意義や目的が明確化し、活動の活性化を目指せるでしょう。

5.ストレスチェックの情報

ストレスチェックの実施時期と対象人数、高ストレス者の人数、高ストレス者面談の人数と面談後の就業配慮等についても記載します。

また、ストレスチェック制度について話し合った場合も、その旨を記載しておきましょう。実施者や実施するタイミング、質問票の内容などに変更点があるときは、議事録に記録を残します。

6.産業医面談の情報

メンタル不調者面談、休職・復職者面談、健康相談の人数と面談後の就業配慮等について記載します。

加えて、議事録には産業医にコメントと押印をもらっておきましょう。労働災害などが発生したときは、「産業医が定期訪問しているかどうか」を確認するために、衛生委員会の議事録を確認することがあるためです。

産業医の活動状況やコメントがあれば、しっかりと産業医と連携して安全な職場づくりに取り組んでいることを示せます。

衛生委員会の議事録テンプレートと記入例

衛生委員会の議事録には、定められたフォーマットがありません。そのため、どのように議事録を作成すればいいか戸惑ってしまう企業も多いことでしょう。

Dr.健康経営では、衛生委員会の議事録テンプレートを無料で配布しています。ぜひ会社の状況に合わせて、必要な内容を追加してご活用ください。

衛生委員会の議事録は、こちらの記入サンプルを参考にしてみるとよいでしょう。

議事録の作成方法でわからないことがあれば、Dr.健康経営までお気軽にお問い合わせください。

衛生委員会の設立、進め方をプロに相談したい方は、お気軽にDr.健康経営までご相談ください

衛生委員会の議事録が活用できるシーン

衛生委員会の議事録は法律で作成・保存が義務付けられているものですが、ほかにも作成するメリットはあります。

衛生委員会の議事録を活用することで、より働きやすい環境づくりを実現することが可能です。

議事録を通して過去の問題点や改善のための取り組みを振り返れば、リスクマネジメントに役立ちます。労働災害やメンタルヘルスのリスクなどを予測できるようになるため、危険因子をあらかじめ取り除けるのです。

過去の安全衛生に関する記録を残した衛生委員会の議事録は、全社で役立ちます。複数の事業場がある企業では、別の事業場で作成された議事録を活用することも有効です。

「義務だから作成する」のではなく、ぜひ働きやすい職場づくりのために衛生委員会の議事録を積極的に役立ててみてください。

衛生委員会の議事録を取り扱うときの注意点

衛生委員会の議事録を取り扱うときは、3つの注意点に留意することが大切です。ここでは、気をつけたい項目を詳しく解説します。

議事録の保存期間は3年間

労働安全衛生規則 第23条4項では、必要事項を記載した衛生委員会の議事録を3年間保存するように義務付けています。間違えて3年経過していない議事録を処分することがないよう、十分に気をつけましょう。

もちろん、情報活用のために3年を超えて議事録を保存することは問題ありません。また、議事録を電子データとして保存しておいても問題ありません。

“出典:e-GOV法令検索労働安全衛生規則」”

審議事項は従業員に周知する

労働安全衛生規則 第23条3項では、作成した衛生委員会の議事録を労働者に周知することを規定しています。

周知方法についての規定はないため、自社に合った方法で従業員に知らせましょう。たとえば、「社内メールで配信する」「社内システムに保存して各自見てもらう」などの方法が挙げられます。

ただ従業員に見てもらうだけではなく、アンケートを提出するなどのルールを定めておくと、安全衛生への取り組みに当事者意識を持ってもらえるでしょう。

“出典:e-GOV法令検索労働安全衛生規則」”

労働基準監督署の確認に備える

労働基準監督署の立入検査が実施される際、衛生委員会の議事録は必ずチェックされます。そのため、立入検査に備えて適切に議事録を作成・保存しておくことが重要です。

3年間の保存期間を遵守することはもちろん、必要事項の記載や産業医の押印なども忘れずに行ってください。ルールに則って衛生委員会を開催していることが示せる議事録を作っておけば、労働基準監督署から安全配慮義務違反を指摘されることを防げます。

まとめ

衛生委員会の開催および議事録の作成は、法律で定められた企業の義務です。衛生委員会を開催したら、必要事項を記載した議事録を作成し、3年間保存しましょう。

本記事では、議事録に記載すべき内容やテンプレートを紹介しましたので、健康経営にご活用ください。

どのように議事録を作成すればいいかわからない」「議事録の作成を任せたい」という場合は、ぜひDr.健康経営にご相談ください。Dr.健康経営は、経験豊富なプロ産業医が健康管理サポートや書類作成などの実務サポートを実施しております。

衛生委員会や産業医についてのお悩みを抱えている企業様からのご相談を、お待ちしております。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
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Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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