ヒヤリハットの原因や防ぐ方法は?業務中に起こった事例も紹介

日付2021.11.17
更新日:2022.03.30
ヒヤリハットの原因や防ぐ方法は?業務中に起こった事例も紹介

ヒヤリハットは重大な事故を未然に防ぐために大切です。しかし思うように定着せず、悩みを抱えている企業担当者も多いのではないでしょうか。

ヒヤリハットを定着させるためには、その目的の明確化や報告の徹底などさまざまな試みが必要です。

今回の記事では、ヒヤリハットの概要から活用するステップまで、幅広く解説します。この記事を最後まで読めば、ヒヤリハットの事例や活用のポイントが分かり、定着に役立てられるでしょう。ぜひ参考にしてください。
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ヒヤリハットとは?

ヒヤリハットは、重大な事故までは至らなかったものの、それに直結しうる出来事を見つけることです。『ヒヤリとする・ハッとする』が由来になっています。ここではヒヤリハットの原因や、それと関係が深いハインリッヒの法則を解説します。

ヒヤリハットが起きる主な原因

ヒヤリハットが起きる主な原因としては、設備などの不具合があります。例えば「設備の点検を行っており、危うく重大な事故につながるところだった」というケースがあります。こうした場合は、普段のメンテナンスをしっかり行うことで対処可能です。

ヒヤリハットが起きるもう一つの原因としてよく挙げられるのがヒューマンエラーです。ヒューマンエラーは人為的なミスを指します。例えば重機の誤運転などです。もし重機の運転を誤り、他の作業員にぶつかるようなことがあれば、重大な災害や事故につながる可能性があります。

ヒューマンエラーも事前に対策を施すことで、ある程度は対処可能です。ヒヤリハットの具体的な事例については、後の項目で詳しく取り扱います。

災害防止の指針となるハインリッヒの法則

ヒヤリハットに関係が深いものとして、ハインリッヒの法則があります。ハインリッヒの法則は「重大な事故1件の背後には29件の軽事故があり、さらにその背景に300件のヒヤリハットがある」というものです。

発見者のハーバート・ウィリアム・ハインリッヒの名前が由来となっており、発見から100年以上経った現在でも事故防止に役立てられています。『ハインリッヒの災害トライアングル定理』『傷害四角錐』『1:29:300の法則』と呼ばれることもあります。

重大な事故と軽い事故、そしてヒヤリハットのピラミッド型になっており、取り返しのつかない重大な事故の背景には、いくつもの軽い事故やミスが存在することがわかるでしょう。逆に言えば、どれほど些細なミスでも、結果として重大な事故につながる恐れがあるということです。

ヒヤリハットの事例

ここまでヒヤリハットの概要やハインリッヒの法則を見ていきました。ヒヤリハットは建設業で起こりやすいイメージがあるものの、他の業種でもさまざまな事例があります。ここではヒヤリハットの事例を業種別に分けて解説します。

倉庫業

倉庫業では、特定の商品をピッキングする作業があります。配送商品をピッキングする際、高いところにあるものを手に取る場合は、オーダーピッキングリフトを使用するのが一般的です。倉庫業でよく起こるヒヤリハットとしては、ピッキング時に商品に手が届かず、オーダーピッキングリフトから落下しそうになったという事例です。

安全帯の不使用や、安全教育が行き届いていないなどの原因があります。オーダーピッキングリフトを運転する場合は、従業員に安全帯を装着させ、普段から研修をしっかり行うなどの対策が必要です。

建設業

建設業の業種は幅広く、それぞれ固有のヒヤリハットがあります。例えば造成工事のヒヤリハットとしては「ダンプトラックで人を轢きそうになった」という事例があります。特に事故が起こりやすい状況は、ダンプトラックに積んできた土を下ろそうと車を止め、バックしかかったところです。

原因としては、運転者の不注意やダンプトラックの後方視界の悪さなどがあります。対策として、なるべく広い場所でダンプトラックを使用したり、誘導者を配置したりするのがいいでしょう。また運転者に対して安全確認などの教育を徹底するのも有効です。

製造業

製造業のヒヤリハットとしては、食器の洗浄作業中に指を挟まれそうになった事例があります。洗浄機から次々に食器を取り出している途中、回転中のコンベアチェーンに指を挟みそうになるケースは多いです。もし指を挟んでしまえば、重大な事故につながる恐れがあります。

製造業はベルトコンベアなどさまざまな機械を使用するため、軽微なものを含めて事故が発生しやすいです。ヒューマンエラーが原因になる場合が多く、安全教育をしっかり施す必要があります。具体的なヒヤリハットの事例を紹介し、注意喚起をするのも良いでしょう。

保健・衛生業

保健・衛生業のヒヤリハット事例としては、点滴の針を手首に刺しそうになった例があります。例えば手術患者が使用した点滴用具を廃棄する際に、誤って自分の手首に針を刺しそうになるケースです。もし従業員の手首に刺さっていれば、大きな怪我を負っていたかもしれません。

保健・衛生業は従業員本人だけでなく、患者に被害を与える可能性もあります。患者に危害を加えるようなことがあれば、会社にも大きな影響が発生するでしょう。普段から安全教育を徹底し、なるべくヒューマンエラーが起こらないような環境作りが重要です。

社会福祉施設

社会福祉施設もヒヤリハットが起こりやすい職場です。例えば介護の現場では、介護職員が被介助者を抱えた際に、腰を痛めてしまうケースがよくあります。従業員本人が怪我をするのはもちろん、被介助者を誤って落としてしまう可能性もあります。

このようなヒヤリハットの原因は、被介助者に体を近づけず、不自然な体勢で介護作業を行ったことです。車いすからベッドまで移乗をするときは、車椅子と介護ベッドの高さを合わせ、横に滑らせるように移動させます。新人研修の際に説明するのはもちろん、仕事に慣れてきた職員に対しても、継続的に注意喚起しましょう。

ビルメンテナンス業

ビルメンテナンス業のヒヤリハットとしては、手すりなどがない通路を使用し、吹き抜けに落下しそうになったなどの事例があります。オフィスビルの清掃作業をするとき、特定の場所を道具置き場にし、作業員がその道具を使います。道具置き場に近道で行くために、通路ではない道を使用し、危ない目に遭うケースは多いです。

原因は、作業の効率性を追求するあまり無意識に安全性を軽視したヒューマンエラーです。対策としては、作業道具を取りに行く際に、必ず既設の通路を使うことです。道具置き場を作業員にとってアクセスしやすい場所に設定するのもいいでしょう。

警備業

警備業も危険の多い仕事で、ヒヤリハットの事例も多いです。例えば湾岸を自動車で巡回中に、海に転落しそうになった事例があります。原因としては、長時間労働で疲労が蓄積し、集中力が低下していたことなどが挙げられます。特に深夜に巡回作業を行う場合は、周囲の見通しも悪いため、思わぬ事故につながるリスクがあります。

ヒヤリハットの原因が疲労による集中力低下であれば、会社側の働きかけにより、長時間労働を是正しなければなりません。具体的には、時間外労働や休日労働時間を1カ月あたり45時間以内に削減するのが良いでしょう。

商業

商業には幅広い業務があり、例えば運搬作業ではヒヤリハットが発生しやすいです。例えば3段積みの手押し台車で運搬作業を行っており、台車を片付けようとしたところ「代車が転倒して体に当たりそうになった」などの事例があります。3段積みの手押し台車は高さもあるため、大きな事故に直結する可能性もあります。

簡単にできる対策は小さい(低い)台車で少しずつ運搬作業を行うことです。作業の効率は落ちてしまいますが、その分安全性が高まります。また台車の定期的なメンテナンスも、安全に運搬作業を行うためには必須です。

ヒヤリハットを活かして重大な事故を防ぐ4つのステップ

ここまで業種別のヒヤリハット事例を見ていきました。もしヒヤリハットを発見した場合は、原因と対策を考え、重大な事故防止に役立てましょう。ここでは、ヒヤリハットを生かして重大な事故を防ぐ4つのステップを紹介します。

1.ヒヤリハット対策の目的を理解する

ヒヤリハットを役立てるためには、まず従業員全員がヒヤリハット対策の目的を理解しなければなりません。ヒヤリハットの目的を確認するためには、危険予知訓練を行うのが有効です。

危険予知訓練は「作業や職場に潜む危険性を発見し、解決する能力」を高める手法です。特に安全衛生の分野で活用されている訓練法で、KYTとも呼ばれています。KYTは「危険のK」「予知のY」「トレーニングのT」をつなげたものです。危険を察知する能力の向上や安全な業務を習慣化する意義があります。

危機予知訓練は4つのラウンドに分けられています。
1つ目のラウンドでは、どのような危険が潜んでいるかを想定し、チームで共有します。
2つ目のラウンドで確認するのは、危険のポイントです。見つけた危険の中でも、特に重要と思われるものを共有します。
3つ目のラウンドでは、具体的な対策案を出し合います。
最後のラウンドは、具体的な対策案の決定です。チームの合意で1つの案に絞り込み「私たちはこうする」という結論を出します。

2.ヒヤリハット報告を徹底させる

従業員にヒヤリハット対策の目的を理解してもらったら、報告を徹底させましょう。従業員の危険察知能力がどれだけ高まっても、事例が会社に報告されなければ意味がありません。ヒヤリハットは、報告、共有されて初めてその価値を発揮します.

ヒヤリハット報告は、まず発生した日時を記録します。例えば夏と冬を比べてみると、同じ時間であっても外の明るさがまったく違うでしょう。日時を詳細に記載することで、検証や分析の精度が向上します。

他にも発生場所や作業内容、状況について詳細に記載させましょう。発生場所や作業内容は、簡潔かつ詳細に記録します。ヒヤリハットを記入する場合は、起きていたかもしれない事故(最悪な場合)を想定しましょう。

ヒヤリハットはその状況や原因を分析し、事故防止に役立てることに意味があります。原因や改善策の記入はなるべく詳細に行いましょう。「作業中の倉庫内を明るくしてほしい」など具体的な要望を記入するのも重要です。

3.ヒヤリハットを共有する

従業員がヒヤリハット報告を作成できるようになったら、それを共有し、会社全体で問題を考えます。報告書の提出だけで終わりにするのではなく、社内に周知したり、対策を取ったりしてヒヤリハットを活用しましょう。

ここで注意しておきたいのは、ヒヤリハットを共有する目的はミスを責めるためではない点です。ヒヤリハットは、ミスを犯した人間を晒し上げるのではなく「それを通して今後の重大な事故を未然に防ぐこと」に意義があります。個人のせいにするのは簡単ですが、そうするのではなく根本的な原因を考えるようにしましょう。

ヒューマンエラーでヒヤリハットが発生した場合、必ずその原因となる従業員がいます。従業員を責めてしまうと、次に何か起こっても報告されないリスクがあります。「この従業員のせいでヒヤリハットが発生した」のではなく、「従業員のおかけで事故防止のヒントが得られた」と考えるといいでしょう。

4.ヒヤリハットを定着させる

ヒヤリハットの目的や重要性の理解は重要ですが、それを定着させるのも忘れてはいけません。最後にヒヤリハットを定着させる方法を簡単に解説します。

ヒヤリハット定着の第一歩は、報告の徹底です。従業員にヒヤリハット報告書を作ってもらうのが手っ取り早いでしょう。報告のための時間がない場合は、朝礼や終礼、会議の議題に盛り込むと効率的です。なるべく業務中に報告するための時間を作りましょう。

またヒヤリハットを定着させるために、報告することで不利益を被ることはない旨を明言しておくのも重要です。従業員の中には、ヒヤリハットの報告をすると懲罰の対象になったり、人事評価が下がったりしてしまうと考える人もいます。

従業員がこのように考えてしまうと、人事評価の低下を恐れて、ヒヤリハットが報告されない恐れもあります。ヒヤリハットを活用して重大な事故を未然に防ぐためにも、従業員に不利益は生じないことを必ず伝えておきましょう。

ヒヤリハットを報告・共有し安全な職場環境づくりを

ヒヤリハットの報告を徹底し、定着させることで、重大な事故のリスクを軽減できます。ヒヤリハットが定着してくると、従業員の危機察知能力の向上やノウハウの蓄積が起こり、ヒヤリハット自体が減っていくでしょう。

また安全(衛生)管理者が産業医と連携しながら職場巡視を定期的に行い、職場環境の安全を維持するのも大切です。産業医コンシェルジュは、プロ産業医が健康メンタルを広くケアし、健康経営の実現をサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。