トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)とは?得られる効果や進め方・取り組み企業の事例を紹介

日付2021.11.19
更新日:2022.03.30
トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)とは?得られる効果や進め方・取り組み企業の事例を紹介

トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)とはどのような取り組みを指すのか詳しく知りたい人もいらっしゃるでしょう。

本記事では、トータル・ヘルスプロモーション・プランの概要や企業で取り組みが進められている背景、得られる効果などを解説します。

本記事を読めば、トータル・ヘルスプロモーション・プランの進め方や実際に取り組んでいる企業の事例なども把握できるためぜひ参考にしてください。
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トータル・ヘルスプロモーション・プランとは?

トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)は、厚生労働省が策定した健康保持増進措置のことで、労働者の心身の健康づくりをスローガンとして掲げています。以下では、概要や背景などを詳しく解説します。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの概要

トータル・ヘルスプロモーション・プランは、Total Health promotion Planの頭文字を略してTHPとも呼ばれています。

1988年に労働安全衛生法が改正され、厚生労働省は職場内の健康保持増進の指針としてトータル・ヘルスプロモーション・プランを提示しました。

トータル・ヘルスプロモーション・プランは、中高年層だけでなく若年層の労働者の健康保持増進を図る目的があります。

労働者の健康保持増進のための取り組みは義務化されていないものの、厚生労働省は企業に対し努力義務として課しています。そのため、企業は労働者の健康づくりに配慮した取り組みに努めなければなりません。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの背景

トータル・ヘルスプロモーション・プランが策定された背景には、主に3つの傾向が挙げられます。以下で詳しく解説します。

・労働者の高年齢化
・業務の複雑化や人員不足
・運動不足や偏った食事

まず労働者の高年齢化による健康不安が背景の一つです。定期健康診断を実施する中で、診断結果に所見ありと記載される労働者が増加傾向にあります。

次に、業務の複雑化や人手不足が要因で仕事や職場に対するストレスの度合いが増えつつあります。そして、労働者個人が運動不足や栄養の偏った食事をとっていることです。

3つの傾向は労働者の健康状態の悪化を招く恐れがあり、企業が安定した事業運営を行う上で重要な課題となり得ます。

トータル・ヘルスプロモーション・プランは、企業が労働者の健康保持増進に積極的に取り組むことで病気を未然に防止する一次予防を重視しています。

労働者の健康をめぐる状況

厚生労働省の平成19年労働者健康状況調査によると、定期健康診断の所見率は年々上昇傾向にあることがわかっています。1991年は27.4%でしたが、2008年には51.3%まで増加しました。

また、年齢別の職業生活でのストレス等の状況では、40~49歳が63.1%と高く、次いで30~39歳が62.2%、29歳以下が55.4%でした。

60%を超える30代、40代は企業内で中間管理職と呼ばれるポストに就いている人も多く、上司と部下に挟まれる難しい役回りを担っています。他の年代よりもストレスを強く感じやすいことが考えられます。

実際にストレスを感じている要因で多いのが、職場の人間関係の問題(38.4%)であることからも納得できるでしょう。次いで多かったのは、仕事の質の問題(34.8%)と仕事の量の問題(30.6%)でした。

※参考:厚生労働省.「働く人の心とからだの健康づくり」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/mental/hatarakuhito_006.pdf
(参照 2021-11-13)

トータル・ヘルスプロモーション・プランで得られる効果

企業がトータル・ヘルスプロモーション・プランに沿った取り組みを実施した場合、いくつかの効果が得られます。実際に、どのような効果が得られるのか以下で解説します。

職場の活性化と生産性の向上

トータル・ヘルスプロモーション・プランの実施により、職場の活性化と生産性の向上につながります。

例えば、定期健康診断の実施や必要に応じて特定保健指導を行うことで労働者の健康状態が改善されれば、仕事でパフォーマンスを発揮しやすい労働環境を整備できます。

仕事がしやすい労働環境になれば、職場内の人間関係によるストレスの軽減につながり、病欠の減少や作業効率の向上も期待できるでしょう。

労働者が適正に評価される人事評価制度の実施により、個人のモチベーションを高めることも可能です。

企業イメージの向上

トータル・ヘルスプロモーション・プランを実施している企業は、社会的な評価が高まるため企業イメージの向上につなげることも可能です。

利益追求だけでなく、労働者の健康づくりに配慮している企業は消費者や求職者からの印象も良くなり、製品が売れる、優秀な人材が集まるなどの効果も期待できます。

企業としての取り組みが評価されれば、経済産業省の健康経営優良法人認定制度で認定を受けやすくなり、社外から高い評価を受けられるでしょう。健康経営優良法人認定制度とは、優良な健康経営を実践している企業を顕彰するための制度です。

離職防止や人材不足の解消

トータル・ヘルスプロモーション・プランの実施が、離職率の低下や人材不足の解消につながる場合があります。健康的な職場環境の整備により、ストレスや過労が原因の離職を軽減させることが可能です。

社内の離職率が低下すれば、離職に伴う人材不足の解消にもつながります。また、若年層の労働者が不足している企業であれば、高齢者の雇用によって人材を確保できるでしょう。

医療費負担の減少

トータル・ヘルスプロモーション・プランの実施により、労働者の医療費負担を軽減できます。労働者の健康に配慮した取り組みを行うことで、医療機関を受診する頻度が減れば、企業が負担する医療費を減らせます。

また、協会けんぽや健康保険組合で導入しているインセンティブ制度の恩恵も受けられるでしょう。インセンティブ制度とは、生活習慣病予防検診や被扶養者を対象にした特定検診の受診率によって健康保険料を増減する制度のことです。

活力のある社会づくりに貢献する

トータル・ヘルスプロモーション・プランによって上記の効果が得られる企業を目指すことで活力のある社会づくりの一員として貢献できます。

労働者の健康づくりだけでなく、パラレルワーク(複業)や家庭との両立、地域活動への参加などがしやすい環境を整えることができれば、社会全体の活力アップに結びつけられるでしょう。

さらに、労働者個人のワークライフバランスを充実させることも可能です。

トータル・ヘルスプロモーション・プラン5つのステップ

トータル・ヘルスプロモーション・プランを実施する前に、具体的な方法や手順を把握しておくことが大切です。以下では、5つのステップに分けて解説しているため、実施する際の参考にしてください。

1.健康測定

トータル・ヘルスプロモーション・プランの第一段階は、健康測定専門研修を修了している産業医による健康測定が実施されます。健康測定とは、問診や生活状況調査、診察、医学的検査などを総称する用語です。

健康測定は、産業医が労働者の健康状態を評価して具体的な指導票を作成する目的で行われます。健康測定を実施すると、定期健康診断よりも詳細にデータを集めることができます。

例えば、血液検査の実施項目が多くなる上に肺活量、皮下脂肪厚、筋力や体の柔軟性などを詳しく把握できる運動機能検査などの測定も可能です。

ただし、3カ月以内に実施した定期健康診断や生活習慣病予防検診結果を提出すれば、一部の測定項目を省略できます。

2.運動指導

第二段階では、運動指導担当者(ヘルスケア・トレーナー)によって組まれた運動プログラムをもとに運動指導が行われます。運動プログラムは、生活状況や趣味、本人の希望などを考慮して作成されます。

運動プログラムの作成者と実践の担当者は異なり、実践時は運動実践担当者(ヘルスケア・リーダー)のサポートを受けながら実施されるのが一般的です。

運動指導の目的は、健康的な生活習慣を目標に労働者が自分に合った運動習慣を身につけることです。

基本的に個人によって年齢や体力差があることから個別指導が行われますが、個別指導だけでなく、禁煙や肥満などに関する集団指導も実施される場合があります。

3.メンタルヘルスケア

第三段階で実施されるのはメンタルヘルスケアです。第一段階の健康測定の結果から精神面のサポートが必要と産業医が判断した場合に、心理相談担当者(心理相談員)によるメンタルヘルスケアが提供されます。

メンタルヘルスケアは、産業医の指示だけでなく労働者が希望すれば受けられます。メンタルヘルスケアを実施する目的は、労働者の健康づくりをメンタルヘルスの分野からサポートするためです。

上述した厚生労働省の調査結果からストレスを感じている労働者は多く、病欠や離職につながりやすいことがわかっています。メンタルヘルスケアを実施すれば、労働者は自分でストレスに気付き対策を講じられるようになります。

具体的に学べるケアは、ストレスを感じた際にセルフケアや心身をリラックスさせる方法などです。

4.栄養指導

血液検査の結果や食生活の聞き取り調査から食生活上の問題が見つかれば、産業医が栄養指導を指示することがあります。栄養指導の目的は、生活習慣病を予防するため、栄養面からアプローチすることです。

労働者の食生活上の問題として多いのは、朝食を抜く、栄養バランスが偏った食事、過剰な間食、無理なダイエットなどです。

栄養指導では、労働者が抱えている食生活上の問題を解消するための内容がプログラムに盛り込まれています。実際に栄養指導にあたるのは、栄養学の専門知識が豊富な産業栄養指導担当者です。

具体的な指導内容は食生活や食習慣に関する評価を行い、評価に基づいて栄養バランスがとれた食事のとり方などが挙げられます。栄養バランスのとれた献立を提案してもらうことも可能です。

5.保健指導

第五段階で実施されるのは、産業保健指導担当者による保健指導です。保健指導とは、心身の健康増進を目的としています。

具体的には、心身の健康のために必要な睡眠時間の確保や中高年層の発症が多い歯周病予防のための口腔ケアなどが挙げられます。

睡眠は仕事や人間関係などで疲労した心身を癒す上で不可欠な要素で、歯周病予防は歯の健康だけでなく食事をおいしく味わうなど健康的な生活を送る際に重要です。

近年に実施されている保健指導では、喫煙やアルコール飲料による生活習慣の乱れや健康被害を取り扱うケースも増えています。保健指導の実施により労働者は健康的な職業生活を送り続けることができるでしょう。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの事例

自社でトータル・ヘルスプロモーション・プランに取り組む際、他社の事例が参考になります。以下では、トータル・ヘルスプロモーション・プランを継続的に取り組んでいる企業の事例を紹介しているため参考にしてください。

機械器具製造業

労働者数が約11,000人の機械器具製造業の事例では、健康保持増進サービス機関を利用してトータル・ヘルスプロモーション・プランを実施したことで労働者の疾病休業日数率が減少しました。

創業50周年を迎えたことを機に健康づくり委員会を発足させた背景があります。

具体的な取り組みは、健康保持増進サービス機関を利用した年1回の健康測定の実施です。さらに、生活習慣の見直しや改善のために運動指導や栄養指導、保健指導をすべての労働者に行いました。

また、希望者やストレス度の高い労働者には心理相談も実施しています。トータル・ヘルスプロモーション・プランに取り組んだ結果、6年間の労働者の疾病休業日数の推移を2.06%から0.89%まで減少させることに成功しました。

小売業

労働者数が約800人の小売業の事例では、健康づくりに関する取り組みを行ったことで、労働者の休業日数が減少しました。

毎年実施している健康状況調査結果や定期健康診断結果から、労働者の睡眠時間の短さや運動習慣の少なさ、若年者において所見率が増加傾向にあるなどの課題が浮き彫りになったのです。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの具体的な取り組みとして、労働者の生活習慣の見直しや運動を始めとする17種類の健康づくりコースを設けました。労働者は、自分の生活習慣における課題に合わせて、コースを選ぶことができます。

取り組みを継続したことで労働者は健康的な生活習慣が身につき、体調や健康診断結果の改善につながりました。さらに、年間の延べ休業日数は大幅に減少しています。

機械部品製造業

労働者数が約7,000人の機械部品製造業では、トータル・ヘルスプロモーション・プランの取り組みの実施が労働者の欠勤や医療費の減少につながった事例が報告されています。

取り組みの背景は、定年制度の延長によって高齢化に対応できる体制や労働環境を確保する必要性が出てきたためです。また、定期健康診断の結果により高血圧症や高脂血症などの生活習慣病の診断を受ける労働者が増えていることも挙げられます。

取り組みの一例は、THP推進委員会の設置やヘルスケア・リーダーなどを養成する体制づくり、健康教室やウォークラリーの実施などです。

結果的に労働者の健康づくりへの意識が高まり運動習慣が身についたことで、傷病による欠勤日数や医療費の減少につながりました。

電子部品製造販売

労働者数が約2,000人の電子部品製造販売業の企業は、ウォーキングなどの取り組みを実施したことで労働者の健康づくりの推進に成功しています。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの取り組みを実施した背景は、中高年層の労働者が多く、生活習慣病や運動不足への対策の必要性が高まったことでした。

まず取り組んだことは、産業医や看護師、産業保健指導者、ヘルスケア・リーダー、現場の代表者を集めた健康づくり委員会の設置です。

次に、労働者ごとに改善指導を実施してウォーキングキャンペーンや歩こう会、講習会などを積極的に開催しています。結果として、労働者の健康状況が改善し、診療費などの医療費の削減につながりました。

機械器具製造業

約11,000人の労働者を雇用する機械器具製造業の事例では、会社や健保組合、労働組合が協働して健康づくりを推進する仕組みを作ることに成功しています。

トータル・ヘルスプロモーション・プランに取り組むきっかけは、健康診断結果で所見ありと記載された労働者が増加したためです。また、メンタル面に課題がある労働者の増加や健康保険財政の圧迫も取り組みを実施した背景の一つです。

取り組み内容は、職場ごとにヘルスリーダーを配置するための人材を養成する体制を整えて労働者向けに健康に関する講習や体力測定の実施、メンタルヘルスに関する相談室の設置を進めました。

結果的に労働者の健康意識が高まり、生活習慣の改善や体力の向上を図ることに成功しました。

トータル・ヘルスプロモーション・プランで健康経営を

トータル・ヘルスプロモーション・プランの取り組みによって、労働者の生活習慣の改善や体力の向上などにつなげられます。

企業側は、労働者の健康保持増進を図れるだけでなく、企業イメージのアップや社会的な評価の向上などのメリットを得ることが可能です。

トータル・ヘルスプロモーション・プランの取り組みを実施して効果を得るためには、健康づくりに関する専門知識を持つ優れた産業医との連携や関連機関の活用が大切です。

「株式会社Dr.健康経営」は、メンタルケアに強い「産業医」サービスです。従業員一人ひとりが生き生きと働けるように健康経営のサポートを行っています。健康経営をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。