ワークエンゲージメントとは?必要な3つの要素や高めることで得られるメリット・施策を解説

日付2021.11.20
更新日:2022.02.18
ワークエンゲージメントとは?必要な3つの要素や高めることで得られるメリット・施策を解説

働き方改革に焦点が当てられるようになった昨今、仕事に対するやりがいや働きやすい職場環境づくりに注目が集まっています。そこで覚えておきたいのが、「ワークエンゲージメント」という概念です。

この記事では、ワークエンゲージメントの概念や定義、測定方法、そしてワークエンゲージメントの向上に取り組むことで、企業にどのようなメリットがあるのかを解説します。あわせてワークエンゲージメントを高める方法も紹介します。

ワークエンゲージメントの向上によって生産性を高めたいと考えている方は、参考にしてください。

ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメントとは簡単にいえば、仕事に対して前向きで活動水準が高いメンタルの状態のことです。ここでは、ワークエンゲージメントの定義や3つの要素について解説します。

ワークエンゲージメントの定義

ワークエンゲージメントは、「燃え尽き症候群((バーンアウトシンドローム)」の研究で有名な、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授が提唱した概念です。

ワークエンゲージメントの定義は以下のようなものです。

「ワーク・エンゲイジメントは,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり,活力,熱意,没頭によって特徴づけられる.エンゲイジメントは,特定の対象,出来事,個人,行動などに向けられた一時的な状態ではなく,仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。」

※引用:島津明人.「日本職業・災害医学会会誌第63巻第4号」 http://www.jsomt.jp/journal/pdf/063040205.pdf (参照 2021-11-15)

ワークエンゲージメントの3つの要素

ワークエンゲージメントは、仕事に対して「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素で構成されています。

・活力(Vigor)
仕事から活力を得られている状態です。仕事に取り組むエネルギーが高く、難しい課題へも積極的に取り組めます。

・熱意(Dedication)
仕事にやりがいや誇りがある状態です。仕事に対する強い関心があり、意欲を持って挑戦することができます。

・没頭(Absorption)
仕事に熱心に取り組み、幸福感がある状態です。仕事に夢中になるあまり、時間が早く過ぎるように感じられます。

これらの3つが揃い、仕事に誇りとやりがいが感じられ、活動水準が高く、かつそれが持続的に保たれていれば、ワークエンゲージメントが高い状態です。

ワークエンゲージメントの関係概念

ワークエンゲージメントの関係概念として「バーンアウト」「ワーカホリズム」「職務満足感」というものがあります。これらの概念について知っておくことで、よりワークエンゲージメントへの理解を深められます。ここではそれぞれについて解説します。

バーンアウト

バーンアウト(Burnout)は、日本語では「燃え尽き症候群」として知られています。それまで仕事や特定の物事に没頭していた人が、急激な疲労により意欲を失い、まるで燃え尽きたようになることです。

仕事に多大なエネルギーを費やして献身的に取り組んだにもかかわらず、期待した結果が得られない場合に、バーンアウトが引き起こされます。この状態は仕事への熱意や活動水準が低く、仕事に対する認知もネガティブで社会的活動が困難となります。

バーンアウトは、ワークエンゲージメントとは対極の概念です。

ワーカホリズム

ワーカホリズムとは、仕事への活動水準は高いものの、認知はネガティブである状態を指します。仕事に熱心に取り組んでいるためワークエンゲージメントと似た状態にも思えますが、仕事に対して否定的な感情を抱いている点が異なります。

例えば、ワークエンゲージメントが「仕事を積極的にしたい」という前向きな心理状態であるのに対して、ワーカホリズムは「仕事をしなくてはならない」という強迫観念を伴った状態であるといえます。

職を失う不安や経済的不安、または仕事から離れる罪悪感などを回避するために働かなければならないような状況でワーカホリズムに陥ることがあります。

職務満足感

職務満足感とは、業務や職場における自身の役割に対して認知がポジティブで満足感を得られている状態を指します。仕事に対して前向きである点はワークエンゲージメントと同じですが、活動水準が必ずしも高くないところが異なっています。

仕事に対して熱意を持って挑戦的に取り組んでいなくても、満足度さえ高ければ、職務満足感は高いといえます。

ワークエンゲージメントが仕事に取り組む際の熱心さや積極性に焦点を当てているのに対し、職務満足度は仕事や職場に対して肯定的な感情を持っているかどうかに着目しているのも、異なるポイントといえます。

ワークエンゲージメントの代表的な測定方法

ワークエンゲージメントの水準を測定するにはどのような方法があるのか、代表的な測定方法をいくつか紹介します。

MBI-GS

MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey/マスラック・バーンアウト一般調査)とは、ワークエンゲージメントそのものではなく、その対概念であるバーンアウトを測定する方法です。

質問項目
・疲労感について[5項目]
・シニシズム(冷笑主義)[5項目]
・職務効力感について[6項目]

MBI-GSでの測定結果でバーンアウトの数値が低ければ、反対にワークエンゲージメントは高いことになります。

OLBI

OLBI(Oldenburg Burnout Inventory/オルデンバーグ・バーンアウト表)は、MBI-GSと同じく、バーンアウトを測定する方法です。

質問内容
・疲弊について
・離脱について

こちらも同様に、バーンアウトの数値が低ければ、反対にワークエンゲージメントは高いといえます。逆にバーンアウトの数値が高い結果になれば、ワークエンゲージメントは低いことになります。

UWES

UWES(Utrecht Work Engagement Scales/ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度)は、ワークエンゲージメントを直接測定する方法です。

質問項目
・活力「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じるか」
・熱意「仕事に誇りを感じるか」
・没頭「仕事をしていると夢中になるか」

ワークエンゲージメントの3要素についての質問が行われ、測定が行われます。UWESは、ワークエンゲージメントの測定で頻繁に活用されている方法です。

ストレスチェック

仕事に対するストレスチェックの結果もワークエンゲージメントの指標の1つとなります。

ストレスチェックに使う質問項目としては、従来の57項目による「職業性ストレス簡易調査表」もありますが、「新職業性ストレス簡易調査票」ならワークエンゲージメントを測定するための質問事項も追加されているため、より正確な測定ができます。

ストレスチェックでは、紙の質問表を従業員に配布する他、ウェブでの受検も可能です。結果の測定は、企業の産業医に委ねるケースが多いですが、外部委託を頼むのも一般的になりつつあります。

ストレスチェックによって、従業員のストレスの状態が把握できれば、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐことにつながります。

ワークエンゲージメントを高めることでの企業のメリット

ワークエンゲージメントを高めることは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、4つのメリットを解説します。

企業や個人の生産性アップにつながる

ワークエンゲージメントが高まると、積極的に仕事に取り組む社員が増えます。会社に貢献したい、技術を磨きたいという気持ちも生まれるため社員が自発的にスキルアップをはかるようになるのです。

また、仕事に熱意を持って当たることで新しいアイデアやプロジェクトを生み出しやすい環境になります。困難な業務にも挑戦するモチベーションが湧いてくるため、業務の幅も広がっていくでしょう。

ワークエンゲージメントを高めることは、個人の生産性を高め、結果として企業全体の生産性の向上につながります。

人材の育成や離職率の抑制につながる

ワークエンゲージメントが高いということは、仕事に対する不満が少ないということです。職場への愛着が生まれれば、帰属意識が生じ、より企業に貢献したい気持ちが強くなります。

そして仕事に夢中になれると、従業員の離職率が低下します。社員が意欲的に仕事に取り組むようになるため管理職が部下の育成に積極的になり、人材育成がスムーズになるのです。業務上のストレスが少ないことで、社員全員が生き生きと働けるようになるでしょう。

ワークエンゲージメントの向上に取り組むことで人材の育成が進み、離職率を下げることができるのも大きなメリットです。

顧客満足度が向上する

ワークエンゲージメントと顧客満足度には関連があります。ワークエンゲージメントが高い場合、従業員は働く上で、良い商品やサービスを提供したいという気持ちが強くなるからです。同時に、企業に貢献したいという気持ちも芽生えるでしょう。

従業員が仕事に誇りを感じ全力で取り組めば、顧客に質の高い製品やサービスを届けることができます。ワークエンゲージを高めることで、顧客満足度が向上し結果としてリピーターやクチコミによる新規顧客の獲得にも繋がるのです。

ワークエンゲージメントを高める要素

ワークエンゲージメントを高める要素は「仕事の資源」「個人の資源」の2つがあります。それぞれどのような働きがあり、具体的にどのようなことを意味するのかについて解説します。

仕事の資源

ワークエンゲージメントを高める要素の一つである仕事の資源とは、モチベーションを上げたり、生産性を高めたりストレスを軽減させたりなど仕事においてプラスに働く物理的、社会的、組織的要因のことをいいます。

具体的には、上司からのパフォーマンスや組織の人員からのサポートや仕事を任せられ成果を認められること、業務の多様性、トレーニングやコーチングなどのスキルアップの機会といったものです。

ワークエンゲージメントが高まれば仕事の資源が増加し、それに伴って個人の資源も増えていくので生き生きと働ける職場環境が整います。

個人の資源

個人の資源とは、従業員それぞれが持っている心理的な資源のことをいいます。従業員の周りの環境や仕事をコントロールする能力、自己効力感、楽観性や自尊心、仕事における粘り強さ(レジリエンス)のことです。

前述のとおり、個人の資産と仕事の資産は相互関係があります。個人の資産が高まり従業員一人ひとりの仕事における自己肯定感や根気強さが高まれば、それに伴って仕事の資源も増えていき、従業員同士の連携も強まります。

ワークエンゲージメントを高めることで、組織全体として働きやすい環境が整うのです。

企業のワークエンゲージメントを高める方法

ワークエンゲージメントの向上に取り組むことで職場の働きやすさや個人のモチベーションがアップします。企業のワークエンゲージメントを高めるためには、具体的にどのような施策があるのでしょうか。

自社のワークエンゲージメントの高さを確認する

ワークエンゲージメントを高めるためにまずは自社の従業員の状況を知ることが大切です。スタート地点を正確に把握することで効率的で無駄のない施策を実施できるからです。

現状把握のために役立つのがアンケートの実施です。アンケートの設問として、具体例をいくつか挙げます。

仕事や働き方に関する設問
「今の職場は働きがいがありますか?」
「仕事の成果を認められていると感じますか?」
「仕事を通じて自分が成長していると感じますか?」

職場環境に関する設問
「職場で頼りになる上司や同僚はいますか?」
「職場で自分の意見が尊重されていると感じますか?」
「職場では公平な評価や機会が与えられていると感じますか?」

これらの設問に対する回答を分析することで企業のワークエンゲージメントスコアを測定できます。

社内のコミュニケーション意識を高める

アンケート結果を分析し、ワークエンゲージメントスコアが低いという結果になった場合は、ワークエンゲージメントの向上を目指す必要があります。まず取り組むべき事柄は「社内コミュニケーション意識の向上」です。

施策例
・社内の風通しをよくする
働きやすい職場のためには、組織内のメンバー同士が意見を言い合える環境作りを心がけましょう。同僚はもちろん、上司であってもコミュニケーションが気軽にとれるように社内の風通しを良くしておくことは大切です。

・褒め合う意識づけをする
仕事は複数のメンバーで行うことが多いため、メンバー同士の信頼関係が大切です。お互いに褒め合う意識づけをすることで、初めはぎこちなくても自然に褒め合うことが当然となります。社内のコミュニケーションの活性化のために、企業として褒め合いを推奨するのが有効です。

多様な働き方ができるように職場環境を整備する

従業員はそれぞれ異なるスキルや強みを持っています。ある人が力を十分に発揮できるような職場環境であっても、別の人にとっては全く合わないこともあるでしょう。一人ひとりが長所を発揮するためには、画一的ではなく多様性のある職場環境が必要です。

多様な働き方をする施策として、フレックスタイム制の導入が挙げられます。出社時間や退社時間を自分で決められる勤務形態にすれば、従業員はそれぞれの生活環境に合わせた働き方ができるようになります。

また、社内に仕事と休憩のメリハリをつけやすい環境を用意することも社員の生産性の向上につながります。社内でゆっくりと休憩できるリフレッシュルームなどを設けることで、社員の集中力やモチベーションを維持しやすくなるでしょう。

組織に馴染んでいない従業員へ適切なフォローを行う

組織に馴染んでいない従業員はストレスを感じやすく、周りとの連携も困難なためワークエンゲージメントが低下します。

新型コロナウイルスの影響によってテレワークが普及した現在では、従業員間のコミュニケーションが難しくなっています。特にフォローが必要となりやすいのは、社内での人間関係が構築されておらずスキルを十分に獲得できていない新入社員です。

その他にもテレワークでは、管理職にこれまでのマネジメントのあり方の見直しを迫られます。これまでとは部下との接し方が変容しているため戸惑う管理職もいるかもしれません。そのような場合には、新しい労務管理方法を指導するなどサポートが必要です。

また、テレワークでは会社での何気ないコミュニケーションが取れないため従業員が孤独に陥らないようにする対策なども求められます。

ワークエンゲージメントを高めるには職場環境の整備が必要

ワークエンゲージメントは、従業員のモチベーションをアップさせるため企業の生産性が期待できます。ワークエンゲージメントを高めるには、社内制度の見直しや働きやすい職場環境作り、そして何より従業員の心身の健康が欠かせません。

「株式会社Dr.健康経営」は、メンタルケアに強い「産業医」サービスです。従業員一人ひとりが生き生きと働けるように健康経営のサポートを行っています。

従業員の健康を考えた職場環境作りのためにDr.健康経営の活用をぜひ検討してみてください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。