勤務間インターバル制度とは?目的や導入メリット・スムーズに運用する方法を解説

日付2021.11.20
更新日:2022.02.18

働き方改革の推進が活発化し、企業は、労働者の心身の健康に配慮することが求められています。そんな中、労働者の健康的な生活を守るための取り組みとして注目されているのが、勤務間インターバル制度です。聞いたことはあるものの、どのような内容なのか、どのように導入したらよいのかまではわからないという人もいるでしょう。

そこで今回は、勤務間インターバル制度の概要や目的、導入メリットや運用方法まで幅広く解説します。記事を読めば制度への理解が深まり、自社で制度を導入するイメージがわくでしょう。

勤務間インターバル制度とは?

まずは勤務間インターバル制度の基本的な情報について理解しておきましょう。制度の概要と目的、制度を取り巻く昨今の状況について解説します。

勤務間インターバル制度の概要

勤務間インターバル制度の「インターバル(interval)」には、間隔や間合い、劇場などの休憩時間といった意味があります。勤務間インターバル制度とは、その名のとおり、労働者が勤務する時間と時間の間隔について定めた制度です。

具体的には1日の勤務が終了してから翌日再び出勤するまでの間に一定時間以上の休息時間を設け、労働者が家事、食事、入浴などを行う生活のため時間や睡眠のための時間を確保する制度です。


※画像引用:厚生労働省東京労働局.「勤務間インターバル制度をご活用ください」.https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/jirei_toukei/roudoujikan_kyujitsu_kyuka/chowa/1219_001_00001.html,(参照2021-11-11)

一例として、勤務間インターバル制度を導入し、11時間以上の休息時間を義務化した企業の場合で考えてみましょう。仮に従業員が24:00まで残業した場合、定時が9:00始業であっても、翌日の勤務は勤務間インターバル制度により、24:00の11時間後となる11:00になります。このように勤務間インターバル制度を導入すると、義務化した休息時間により、終業時刻によっては翌日の始業時刻が繰り下げられます。

勤務間インターバル制度の目的

勤務間インターバル制度の目的は、勤務時間以外の生活時間、睡眠時間をしっかり確保することで、労働者が健康的な生活を送れるようにすることです。

長時間労働が心身の健康障害リスクを高めることは広く知られていますが、その原因は、度重なる残業で労働時間が長くなるとその分睡眠時間が削られることとなり、疲労回復が困難になるためです。過労死の認定基準の一つである時間外労働時間の指標「過労死ライン」は、「月100時間超」または「2カ月から6カ月の平均で80時間超」とされています。

またストレスやストレスに伴う飲酒、喫煙の増加も心身に悪影響を及ぼします。結果として、うつ病を発症したり、心臓病や脳卒中などの過労死を引き起こしたりする危険性が高まるのです。

労働者のこのようなリスクを回避するため、政府が主導となって勤務間インターバル制度を推進しています。

勤務間インターバル制度は努力義務

政府の勤務間インターバル制度を推進する取り組みの一つが、勤務間インターバル制度の導入を全ての企業に対する努力義務として規定したことです。

働き方改革によって労働時間などの改善に関する特別措置法が改正され、勤務間インターバル制度は2019年4月から事業主の努力義務と規定されました。

努力義務と規定される以前、勤務間インターバル制度の導入状況は芳しくありませんでした。厚生労働省による「平成30年就労条件総合調査の概況」によれば、平成30年1月1日時点の状況について行った調査で、勤務間インターバル制度を導入している国内企業は1.8%、導入を予定または検討していると答えた企業は9.1%にとどまりました。一方、導入予定はなく検討もしていないと答えた企業が89.1%に上りました。

導入予定はなく検討もしていない理由について「当該制度を知らなかったため」と回答した企業が多く、勤務間インターバル制度が努力義務となったことで、今後は制度が浸透することが期待されています。

※参考:厚生労働省.「勤務間インターバル制度」.https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/index.html,(参照2021-11-11)
※参考:厚生労働省.「平成 30 年就労条件総合調査の概況」. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf,(参照2021-11-11)

勤務間インターバル制度を導入するメリット

勤務間インターバル制度には、企業側、従業員側の双方にとってさまざまなメリットがあります。ここでは主な3つのメリットを紹介します。

従業員の健康を確保できる

勤務間インターバル制度の導入は、従業員の心身の健康を保つことにつながります。

勤務間インターバル制度を導入していない企業では、繁忙期や社員の欠員などで業務量が増えた場合、従業員の時間外労働時間は増えますが、どれだけ終業時刻が遅くなっても毎朝同じ時間に出勤しなければなりません。従業員は睡眠時間が削られ、疲労が蓄積し、健康を損なうことも少なくありません。

しかし勤務間インターバル制度を導入すれば、従業員は義務化された休息時間を取った上、出勤時間を柔軟に調整することができるようになり、長時間労働による健康被害を未然に防ぐことができます。

また勤務間インターバル制度を導入すると、従業員の労働状況を把握できることにもつながり、長時間労働を是正するための指導や配慮を促すことも可能です。

継続した取り組みにより、長時間労働による心臓病や脳卒中などの疾患や精神疾患の発症リスクを抑えることが期待できます。

ワーク・ライフ・バランスを実現できる

働き方改革の一環として注目されているワーク・ライフ・バランスの実現にも勤務間インターバル制度は効果的です。

勤務間インターバル制度を導入していない場合、従業員は長時間に渡って時間外労働すると、働いた分だけ仕事以外のことに充てる時間を奪われることになります。

しかし勤務間インターバル制度を導入していれば、従業員は終業後、仕事以外のことに充てる一定の時間を確保できます。睡眠時間だけでなく、生活時間の増加にもつながり、家族と過ごしたり、地域活動に参加したり、自己啓発に充てたりすることでワーク・ライフ・バランスの実現ができます。

私生活の充実は従業員にとってのメリットにとどまりません。結果として労働生産性や従業員満足度が向上し、企業にとってのメリットにもつながります。

優秀な人材が定着し無駄なコストを削減できる

勤務間インターバル制度を導入している職場は、従業員にとって魅力的な環境です。業務過多によって残業を余儀なくされても、決められた休息時間を取って心身を休め、前日の終業時間に合わせた柔軟な時間の出勤が可能です。また仕事に充てる以外の時間が増えることで、ワーク・ライフ・バランスの実現も叶えられます。

魅力的な職場環境は、従業員の会社に対する満足度や働きがいを向上させ、社員の離職率低下や優秀な人材の確保につながることが期待できます。人材の定着率が高められれば、採用や育成にかかる余計なコストを削減することができるでしょう。

勤務間インターバル制度を導入するには?

勤務間インターバル制度のメリットを鑑みて、自社の働き方改革に取り入れたいと考える方も多いでしょう。ここからは勤務間インターバル制度を導入する際に必要な手順を解説します。

導入の流れを理解する

まずは勤務間インターバル制度を導入する際の大まかな流れを理解しましょう。制度の本格導入に至るまでには主に以下の7つのステップを踏むことになります。

1:制度導入の検討
2:労使間での話し合い
3:労働時間の実態の把握
4:実態を踏まえた休息時間の確保と制度設計
5:テスト運用
6:検討・見直し
7:本格導入

勤務間インターバル制度は労働者にとってもメリットの多い制度ですが、制度の導入は使用者だけで即断せず、必要に応じて労働者との話し合いの場を持つことが望ましいでしょう。双方で納得の上導入することで、制度がスムーズに運用できます。

導入を決めたら、具体的な制度設計の準備として従業員の労働時間の実態を把握し、それを踏まえて休息時間をどの程度設けるかなどを決めます。

制度が固まったら、まずはテスト運用から始め、必要に応じて見直しを行いましょう。

インターバルの適切な確保時間を適切に設定する

勤務間インターバル制度は、前述のとおり2019年から努力義務に規定されていますが、どの程度の時間を休息時間として確保すべきかについては、具体的に言及されていません。このためインターバル時間数(休息時間数)は、各企業の裁量によって設定することになっています。

睡眠の他、通勤、食事、入浴などに充てる時間を考慮すれば、8~13時間程度を休息時間として設定することが望ましいでしょう。1990年代初頭から勤務間インターバル制度を取り入れているEUでは、ドイツ、フランス、イギリスで11 時間、ギリシャ、スペインで12時間のインターバル時間数が規定されています。

一律にインターバル時間数を設定する方法だけでなく、職種によって時間数を変更したり、終業時刻が深夜0時を過ぎた場合に翌日の始業時間を繰り下げる措置を取ったりと、時間数の設定が企業にゆだねられている分、さまざまな工夫が可能です。

企業によっては、従業員に休息を義務付ける時間数と健康管理のための努力義務の時間数とをそれぞれ設定しているケースもあります。

就業規則の見直しをする

勤務間インターバル制度の導入に伴い、就業規則の見直しも必要です。具体的には、勤務間インターバル制度に関する規定を盛り込んだ形に就業規則を整備します。

その際、休息時間と翌日の定時の労働時間が重複する場合に、重複した部分を労働とみなす規定か、もしくは休息時間の満了時刻まで翌日の始業時間を繰り下げるとする規定かのどちらかを定めるのが一般的です。

さらに災害などで休息時間を設けることが困難な場合に備えて、例外を設ける規定も追加します。

その他、勤務間インターバル制度の申請手続きや勤務時間の取り扱いなどについても、就業規則を見直し、適宜整備する必要があります。

就業規則の規定モデルは、厚生労働省のホームページにも掲載されています。

※参考:厚生労働省.「勤務間インターバル就業規則規定例」.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000162467.pdf,(参照2021-11-11)

インターバル制度の導入事例

勤務間インターバル制度の導入事例を3つ紹介します。自社で制度を導入する際の参考にしてください。

森永乳業株式会社

森永乳業株式会社は、牛乳、乳製品などの製造、販売を行っており、従業員数は3,000名以上に上ります(2021年3月31日時点)。

同社では、かねてワーク・ライフ・バランスの啓発を推進し、労働組合とも会議を開き時間外労働の削減に取り組んでいました。2013年、労働組合からの申し入れをきっかけに勤務間インターバル制度の導入を検討し、2014年10月から制度をスタートさせました。対象は全労働組合員で、インターバル時間は最低8時間です。

元々ワーク・ライフ・バランスに関する取り組みを行ってきたこともあり、導入による劇的な変化はなかったものの、従業員の意識が変化し、年次有給休暇取得率が伸びるなどのメリットがありました。

※参考:厚生労働省.「森永乳業株式会社 | 導入事例 | 勤務間インターバル」.https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/case_morinagamilk.html,(参照2021-11-11)

株式会社岩田屋三越

株式会社岩田屋三越は、福岡市を拠点に百貨店・小売店を展開しており、従業員数は約1,100名です(2021年1月末時点)。

売り場の大がかりな入れ替え時の残業や接客対応で早番の社員が閉店まで勤務してしまうケースが常態化していたことに、かねて対策を求める声があり、2010年から全社員を対象に勤務間インターバル制度を導入したのです。インターバル時間は10時間でスタートし、2017年4月からは11時間に拡大しました。

インターバル時間の拡大を行った際には、併せて勤務シフトを固定化し、社員一人あたりの実労働時間の短縮に成功しました。制度の導入は、時間管理への意識の高まりや採用面でのアピールポイントとしてもメリットになっています。

※参考:厚生労働省.「株式会社岩田屋三越 | 導入事例 | 勤務間インターバル」. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/case_iwataya-mitsukoshi.html,(参照2021-11-11)

株式会社ユアソフト

株式会社ユアソフトは、岐阜県の本社の他、東京にもオフィスを構え、システム開発、ITサービス事業を行っています。従業員数は約90名です(2021年4月1日時点)。

同社では、繁忙期や納品直前の長時間労働に対し、かねて課題を感じていました。コンサルタントの意見を取り入れた働き方改革に関する宣言の策定やフレックスタイムの導入などを行う中、新たな取り組みとして2017年に勤務間インターバル制度の導入を検討し始め、同3月に制度をスタートさせました。インターバル時間は11時間です。

制度を導入したことで社員の勤務が深夜に及んでも、11時間のインターバルを取って午後出社してもらうこともできるようになりました。健康管理と安全衛生の面で、効果を感じています。

※参考:厚生労働省.「株式会社ユアソフト | 導入事例 | 勤務間インターバル」. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/case_yoursoft.html,(参照2021-11-11)

インターバル制度の導入には産業医との連携が効果的!

勤務間インターバル制度は、従業員の健康を保ち、ワーク・ライフ・バランスを向上させる効果が期待できます。しっかり休んで働くスタイルは、今後ますます多くの企業で取り入れられていくでしょう。

制度を導入する際には、併せて産業医を活用すると効果的です。自社での働き方改革の一環として、産業医との連携も視野に入れながら、制度の導入を検討してみてください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。