産業医面談を上手く活用するには?義務や目的・企業側が配慮すべきことを解説

日付2021.11.20
更新日:2022.04.12

産業医を導入したものの、うまく活用できていない会社も多いでしょう。産業医面談がうまくいかない理由の一つに「従業員の心理的ハードルが高い」点が挙げられます。

この記事では、産業医面談について解説します。最後まで読めば、従業員が相談しやすい環境作りの方法が理解でき、メンタルヘルス不調や突然の休職を未然に防げるようになるでしょう。ぜひ参考にしてください。

そもそも産業医とは?

そもそも産業医とはどのような医者なのでしょうか。「通常の医者とどう違うの?」「産業医がうまくいかない理由は?」という疑問を持っている方も多いでしょう。ここでは産業医の概要や産業医面談がうまくいかない理由を解説します。

産業医と医師との違い

産業医は会社の従業員が健康的に業務を行えるよう、専門的立場から指導やアドバイスを行う医師です。常時50人以上の従業員を使用する事業者は、産業医を選任する必要があります。産業医は会社に属する存在ですが、あくまで従業員と会社の中立的な存在です。

一般的な医師は病院やクリニックなどに在籍(もしくは自分で開業)し、治療や診療を行う存在です。一方で産業医は、あくまで専門的見地からアドバイスを行うだけで従業員に具体的な治療を施すことはありません。

産業医は従業員の健康状態を診断し、治療が必要な場合は医療機関の紹介を行います。「病院・クリニックに属し、具体的な治療行為をするかどうか」が、産業医と医師の大きな違いです。

産業医の義務

ある程度の規模の会社であれば、特定の産業医が属しています。しかし産業医の面談がなかなかうまくいかないことも多いです。従業員が産業医に相談しにくい理由の一つとして、「相談内容を企業側に共有されるのではないか」と思い込んでいることが挙げられます。

産業医には大きく分けて「守秘義務」と「報告義務」の2つの義務が課されています。守秘義務は業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない義務です。一方で報告義務は、労働者に健康上の問題があることを知った場合、事業者にこれを報告する義務です。

守秘義務と報告義務は、一見相反するように見えますが、基本的には守秘義務が優先されます。産業医に相談をしたとしても、その相談内容すべてが会社に共有されるわけではありません。

産業医面談とは?

従業員50人以上の職場では、産業医を導入しなければなりません。産業医がいる職場では、従業員と1対1で面談を行います。ここでは産業医面談の目的やその強制力について解説します。

産業医面談の目的

産業医面談の目的は、従業員が健康に働けるようサポートすることです。

産業医面談は産業医の重要な業務の一つです。従業員と1対1で健康面に関する面談を行い、従業員の状態をチェックします。例えば長時間労働が続くような職場であれば、従業員の過重労働が問題になるでしょう。たとえ労働時間に問題がなくても、上司との人間関係などでメンタルヘルスの状態が悪化している人もいます。

産業医の面談では、このような過重労働やメンタルヘルスに関するアドバイス、ストレスチェックなどを実施します。従業員にメンタルヘルス上の問題が認められるようであれば、会社側に執行措置のような対応を提案する場合もあります。

産業医面談の強制力は?

産業医の面談の実施には、法的な強制力はありません。基本的に従業員の申し出によって行われ、健康状態がチェックされます。しかし従業員からの自主的な相談は心理的ハードルが高く、会社からある程度働きかける必要もあります。

例えば忙しかったり、人事評価に悪影響を及ぼすのを嫌ったりして、産業医面談を拒否する従業員も少なくありません。先ほども少し触れたように「相談内容がすべて会社側に共有されるのでは」という思い込みも根強くあります。

しかし産業医面談を拒否し、労災事故が起きた場合は、会社側が大きな責任を問われます。「労災が起こる前に産業医面談を行ったかどうか」は、企業が安全配慮義務を果たしたかどうかの基準にもなるため、非常に重要です。

産業医面談の種類

産業医面談にはいくつかの種類があり、従業員の状態によって相談内容が若干異なります。従業員が高ストレス者になっていたり、メンタルヘルス不調状態に陥ったりしているときは、産業医面談を検討してみましょう。ここでは産業医面談の種類を解説します。

健康診断の高リスク者

健康診断を実施した結果、異常な所見があると診断された従業員がいる場合、就業上の措置として医師の意見を聞く必要があります。主に生活習慣や治療中の病気についての相談を行い、必要があると認められた場合は、従業員の作業内容や労働時間の見直しなどを行います。

産業医面談で実施されるのは、従業員への具体的なアドバイスと、会社側への就業上の指示です。会社は産業医の指示に従って、企業側は該当の従業員に対して必要な措置を行います。

健康診断の高リスク者に対しては、3カ月以内に対応しなければならない(労働安全衛生規則第51条の2)ため、迅速な対応が求められるでしょう。

※出典:・労働安全衛生規則(◆昭和47年09月30日労働省令第32号)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74003000&dataType=0&pageNo=1

ストレスチェック後の高ストレス者

ストレスチェック後の高ストレス者も産業医面談の対象です。面談の結果、「緊急性がある」と産業医が判断すれば、本人の同意がなくとも企業側に内容が共有されます。厚生労働省はストレスチェック後の面談を希望した時点で「結果の通知に同意したとみなして良い」としています。

もちろん従業員本人が「結果を共有しないでほしい」と考えている場合もあるため、事前の説明が重要です。従業員と相談の上、どのような情報を企業に通知するか決めるのもいいでしょう。産業医は従業員本人にアドバイスを行い、会社に適切な対応をするよう指示します。なお「ストレスチェックの結果を受けて会社が従業員に対して不当な扱いをする」行為は禁じられています。

長時間労働

産業医は長時間労働をする従業員の相談も行っています。長時間労働の面談対象となるのは、以下の2つの条件を満たした従業員です。

・時間外労働や休日労働時間が1カ月当たり80時間を超えている
・長時間労働によって疲労の蓄積が認められる

本来、条件を満たす従業員全員と話すのが望ましいですが、面談が義務付けられているわけではありません。そのため要件を満たしており、なおかつ従業員から希望があった場合に面談をします。

他のケースと同じように、面談では従業員に対して具体的なアドバイスをします。その後、就業判定や必要な措置に関しての意見書を作成しなければなりません。昨今、長時間労働を削減する風潮にはなっていますが、いまだに労働時間に関する相談は多くあります。

メンタルヘルス不調者

長時間労働に従事していない場合でも、職場での人間関係やその他の事情で、メンタルヘルス不調に陥る従業員もいます。このような人も産業医面談の対象者です。メンタルヘルス不調を抱える従業員と産業医が面談し、医療機関への受診のアドバイスや、意見書作成など必要な措置を行います。

本格的なメンタルヘルス不調でなくとも、ストレスの原因となる悩みについて聞き、アドバイスを行うケースもあります。

先ほども少し触れたように、「面談の内容は本人が希望すれば会社に共有されることはない」など、従業員にとって重要な情報を周知することが大切です。従業員が気軽に相談できる環境になっていれば、メンタルヘルス不調を未然に防げる可能性もあります。

休業や復職に関する相談・その他健康相談等

産業医は休業や服飾に関する相談、その他の健康相談も受け付けています。例えば休職願いを出している従業員と産業医が面談を行い、意見書を作成します。ここで主に見られるのは、主治医の診断書や休職への意思、就業能力の評価などです。

現在休職中で復職を検討している従業員とも面談を行います。こちらも休職のケースと同様、配慮や必要な措置に関する意見書を作成します。ここで主に見られるのは、従業員の復職への意思や就業能力の評価などです。

産業医は、あくまで「復職する準備ができているかどうか」「対象従業員が復職するための環境が整っているかどうか」に焦点を当てます。そのため「病気の治療」を優先する主治医とは意見が異なるケースもあります。

産業医面談を行うにあたり企業側が配慮すること

産業医への偏見や間違った思い込みは、今も根強く残っています。産業医面談を実施するには、気軽に利用できる環境を整えるのが重要です。こちらの項目では産業医面談を行うにあたり企業側が配慮することを解説します。

従業員が利用しやすいように周知方法を工夫する

ここまで見てきたように、産業医面談を行うためには対象従業員本人が面談を希望しなければなりません。そのため産業医面談の開始目的や日程などの情報をすべての従業員に対して周知する必要があります。周知方法は社内掲示板やポスター、パンフレットなどさまざまです。社内システムがあれば、より効果的に周知できるでしょう。

産業医面談は特別なイベントではなく、従業員が健康的に働くために実施するものです。本人が希望すれば相談内容が公開されることはなく、人事評価に悪影響を及ぼすこともありません。周知方法を工夫し、従業員の心理的ハードルを下げてあげるのが、相談しやすい環境作りの第一歩になるでしょう。

社外相談窓口を置くことも

高いストレスを抱えている人やメンタルヘルス不調に陥っている人は「特に社内の人に知られたくない」気持ちを持っているケースが多いです。そのため産業医の面談を社内で開始しても、面談を希望しない従業員もいます。

社内で相談しやすい環境作りも重要ですが、社外相談窓口を設けるのもおすすめです。社内の産業医面談では本人の希望がない限り、相談内容を共有されることはありません。しかしどうしても不安を覚えてしまう方もいるでしょう。

社外相談窓口を設置することで、産業医面談に至るまでの心理的ハードルを下げられます。また会社としては、社員を重視する姿勢をアピールできます。

適切な産業医面談を行い快適な職場環境を

産業医は治療や処方をする医師とは異なり、医療機関の紹介や具体的なアドバイスを行います。会社や従業員にとってとても重要な存在ですが「相談内容を企業側に共有されてしまうのではないか」と考える従業員も多くいます。

産業医を活用するためには、相談しやすい環境作りが大切です。産業医面談の心理的ハードルを下げさせることで、従業員メンタル不調や突然の休職を未然に防げます。

Dr.健康経営が運営する産業医紹介サービス『産業医コンシェルジュ』では、産業医をさまざまな業種・規模の事業所へ紹介しています。産業医の選任をお考えの方は、ぜひ利用をご検討ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。