メンタルヘルス・ストレスチェック

高ストレス者への面接指導について解説!ストレスチェック後の流れや注意点も紹介

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更新日:2023.06.24

労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためのストレスチェック制度。調査を実施後、高ストレス者と判定された労働者は、医師による面接指導を申し出ることができます。

労働者からの申し出に対して「どこからが面接指導の対象になるのか?面接指導の前後でやるべきことはあるのか?」と疑問を抱く事業者も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ストレスチェック後の流れや高ストレス者への面接指導、面接指導結果の取り扱いについて解説します。

高ストレス者の面接指導とは

ストレスチェック後の面接指導の目的

ストレスチェック制度における面接指導とは、高ストレス者と判定された労働者に対して、医師が面談を行うことです。ストレスチェック実施者は調査結果を確認して、高ストレス者と判定された労働者に対して、面接指導を受けるようにすすめます。

面接指導の目的は、労働者の心身の健康状態や職場環境を改善したり、勤務内容を見直したりすることです。高ストレス者と判定を受けた労働者は、できるだけ面接指導を申し出て医師による指導を受けるのが望ましいとされています。

対象となる高ストレス者の判定基準とは

面接指導の対象となるのは次のような労働者です。

    • ・「心身のストレス反応」の評価点数が高い者
    • ・「心身のストレス反応」の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ、「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」の評価点数の合計が著しく高い者

心身のストレス反応が高い労働者は、高ストレス者と判定されます。ストレス反応がそれほど高くなくても、仕事におけるストレスが大きい場合や周囲のサポートが少ない場合には、高ストレス者と判定されて面接指導の対象となります。

労働者のストレス反応を評価する際に絶対的な基準はありません。「職業性ストレス簡易調査票」を使用して評価する企業がほとんどですが、独自の項目を用いる企業も存在します。

高ストレス者の面接指導は誰が行う?

高ストレス者の面接指導は、原則として医師との対面で実施すると定められています。ただしICT(情報通信技術)の活用が合理的である場合には、事業者の判断によりICTを活用したオンライン面接指導を行うことも可能です。

厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、職場環境を理解している専属の産業医による面接指導が推奨されています。外部に委託する場合にも、面接指導について理解のある産業医を実施者とすることが望ましいです。

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高ストレス者の面接指導は義務?

ストレスチェックで高ストレス者と判定された労働者には、医師による面接指導を受ける権利があります。高ストレス者から「面接指導を受けたい」と申し出があった場合には、事業者は1カ月以内に面接指導を実施しなければなりません

高ストレス者が面接指導の申し出をできない状況を作ったり、高ストレス者からの申し出を受けたにもかかわらず面接指導を実施しなかったりするのは禁止されています。労働者の権利を侵害したとして処罰の対象となるため注意が必要です。

高ストレス者の面接指導の具体的な進め方

ストレスチェック実施者は、労働者のストレスの程度、高ストレス者判定、医師による面接指導の必要性などを本人に通知します。高ストレス者の判定を受けた労働者が医師との面談を希望した場合、事業者は面接指導を実施しなければなりません。

面接指導をした医師は、労働者の健康や安全に関わる必要な事項のみ事業者に伝えます。事業者は提供された情報をもとに、就業上の適切な措置を講じます。

面接指導で聴取した情報のうち就業上の措置に関わることは、労働者の了解なしに事業者に提供することが可能です。ただし、情報を伝える際は労働者への配慮も必要です。

医師による面接指導の実施後、事業者はストレスチェック受験人数と、面接指導を受けた人数を労働基準監督署に報告します。

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面接指導の際に事業者が準備すること

面接希望者から事前に情報を集める

事業者は面接指導を実施する前に、対象となる労働者から事前に情報を集めて医師に提供しなければなりません。面接指導の際に医師が参考にする情報は下記の項目です。

    • ・対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
    • ・ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィール等)
    • ・ストレスチェックを実施する直前 1 か月間の、労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
    • ・定期健康診断やその他の健康診断の結果
    • ・ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
    • ・職場巡視における職場環境の状況に関する情報

面接指導を行う医師は、事業者から受け取った労働者の情報とストレスチェックの結果が、かけ離れていないか注意しながら見ていきます。

報告書や意見書の用紙を作成

事業者は面接指導の実施後に、医師から意見書をもらわなければなりません。

また、就業上の措置を講じたうえで報告書を作成し、提出する義務もあります。面接指導の実施から報告書の提出までがスムーズに進むように、2種類の用紙をあらかじめ準備しておくと良いでしょう。

厚生労働省が発表した「報告書・意見書作成マニュアル」には、報告書・意見書の雛形と書き方がまとめられています。面接指導を実施する際は、厚生労働省の雛形を参考にしながら用紙を作成するのがおすすめです。

面接指導を行う時間と場所

面接指導は原則として就業時間内に実施します。日時を調整するときは、労働者が選びやすいように複数の選択肢を用意するのが望ましいです。

面接指導を行う場所は、医師と労働者が2人きりになれる場所を選びましょう。他人から見られたり周囲の話し声が気になる場所だと、労働者が安心して本音で話せません。できるだけリラックスして話せる環境を用意するのが大切です。

どうしても都合が合わず、就業時間外や職場以外で実施する場合は、それに伴う費用は事業者が負担するのが一般的です。ストレスで押しつぶされそうになっている労働者に負担をかけないように配慮しましょう。

面接指導で確認する内容とその後の流れ

高ストレス者の面接指導の内容

面接指導を実施する医師は、高ストレス者がどの程度の負担を抱えているのか、面談を通して評価します。不安・疲労・抑うつといった仕事内容におけるストレスや、職場における上司・部下・同僚との人間関係など、さまざまな角度から対象者を観察します。

事業者から提出された面接指導希望者の個人情報・ストレスプロフィール情報と、面談中の様子を比較しながら、相違がないか確認するのも大事なことです。

書類内容と実際の様子をもとに総合的に評価して、労働者に保健指導したり専門機関への受診をすすめたり、医学的な指導を行います。

面接指導後に事業者がやるべきこと

事業者は、医師からの診断書や意見書を参考にしながら、労働者に対する就業上の措置を講じます。就業上の措置の具体例は次の通りです。

    • ・労働時間の短縮
    • ・勤務場所の変更
    • ・業務内容の転換
    • ・療養のための休暇

高ストレス者に対して何かしらの措置を講じるときは、面接指導を実施した医師も同席したうえで具体的な措置の内容を説明することが大切です。職場で働く他のスタッフや社外の関係者からの理解を得るように努めるのも、事業者の仕事といえるでしょう。

面接指導の結果はどこまで共有される?

面接指導の結果は、労働者の個人情報に当たります。基本的には人事労務部門内のみで保有して慎重に取り扱います。

しかし就業上必要な措置を講じるために、面接指導の結果を開示する場面もゼロではありません。特別な場合に限り、職務を遂行するうえで必要な情報のみを、面接指導を受けた労働者の上司に報告するケースもあります。

面接指導の結果記録はいつまで保存する?

事業者は、面接指導の結果を記録して5年間保存しなければなりません。記録には下記の内容を記載する必要があります。

    • ・面接指導の実施年月日
    • ・当該労働者の氏名
    • ・面接指導を行った医師の氏名
    • ・当該労働者の勤務の状況
    • ・当該労働者の心理的な負担の状況
    • ・その他の当該労働者の心身の状況
    • ・当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

面接指導の結果記録は、外部に漏れないよう厳重に保管しなければなりません。就業上の措置を講じる場合に限り、必要最低限の範囲内で利用することが求められます。

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高ストレス者の面接指導での注意点

高ストレス者に面接指導を強制してはならない

面接指導は、高ストレス者が希望を申し出た場合に限り実施されます。医師や事業者が、高ストレス者に対して面接指導を強制することはできません。面接指導を受けられるのは労働者の権利であり、義務ではないため気をつけましょう。

事業者は、高ストレス者が面接指導の希望を申し出やすいように配慮することが大切です。ストレスが限界を迎える前に対処しなければ精神疾患につながるリスクもあるため、労働者が安心して申し出られる環境づくりが求められます。

医師からの意見を就業状況に反映させる

高ストレス者の面接指導を実施後、医師から意見をもらった事業者は、すみやかに就業状況に反映させなければなりません。労働者の仕事量を調整したり、職場環境を改善したり、医師の意見を参考にしながら具体的な対処をする必要があります。

一般的に面接指導を実施してから1カ月以内には、何らかの対策を講じることが求められます。高ストレス者が置かれた状況によっては、より迅速な対応が必要なケースもあるため臨機応変に対処しましょう。

個人情報の取り扱いに注意する

面接指導の結果は大切な個人情報の1つです。原則として、医師・事業者・労働者の間でのみ情報共有することが求められます。面接指導の実施後は、外部に漏れないように厳重に管理しなければなりません。

面接指導を実施する際には、就業上の措置を講じるために必要最低限の範囲で情報を開示する可能性があることも、労働者にあらかじめ伝えておくと良いでしょう。二次的なトラブルを防ぐためにも、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

面接指導を避ける高ストレス者への対処法

高ストレス者と判定されたにもかかわらず、面接指導を避ける労働者も少なくありません。高ストレス者の自覚がなかったり、忙しくて余裕がなかったり、理由は人によってさまざまですが、放置すると悪化する危険性もあるため何らかの対処が必要です。

面接指導を避ける高ストレス者がいた場合、次のような対処法が求められます。

    • ・高ストレス者に面接指導をすすめる
    • ・面接指導を申し出やすい職場環境を構築する
    • ・ストレスチェック後の業務フローを具体的に示す

労働者が安心して働き続けられるような職場環境を目指しましょう。

まとめ

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された労働者には、医師による面接指導を受ける権利があります。高ストレス者からの申し出があった場合には、事業者はすみやかに面接指導を実施するよう心がけましょう。

面接指導を実施するときは面接希望者の情報を整理したり、報告書・意見書を用意したり、日時・場所の調整をしたり、事前準備が欠かせません。面接指導後には医師の意見を就業状況に反映させて、報告書を提出します。個人情報の漏洩に気をつけて記録は厳重に保管しましょう。

Dr.健康経営では、労働者のメンタルケアを目的とした産業医紹介サービスを行っています。働く人の健康を支え、より良い職場環境にするためにも、お気軽にお問い合わせください。 

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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