衛生推進者とは?選任の要件や職務内容・安全衛生推進者との違い

日付2022.02.14
更新日:2022.02.14

従業員が安全かつ健康に働ける職場環境を整備するため、中小規模の事業場では、衛生推進者を選任する必要があります。

しかし、衛生推進者の役割や必要性をよく理解できていない経営者や企業担当者もいるのではないでしょうか。

今回は、衛生推進者とはどのような存在なのか、選任の要件や職務内容、報告義務の有無などを解説します。記事を読めば、衛生推進者を選任する意義に関する理解が深まり、自社の職場環境を整えるためにすべきことがわかるでしょう。

衛生推進者とは?

まずは衛生推進者の基本を理解するために、どのようなケースで選任義務が発生するのか、衛生推進者を選任する必要性とともに解説します。

衛生推進者の選任義務

企業は従業員が健康を害さずに働けるよう、職場の衛生管理を行わなければなりません。したがって衛生管理の責任者を選任することが法律で定められています。どのような責任者を選任しなければならないかは、事業場(所)の規模や業種などによって異なります。

衛生推進者とは、常時10人以上50人未満の従業員を使用する事業場を対象とした衛生管理の責任者のことで、労働安全衛生法に基づいて選任が義務付けられています。従業員が増えるなど対象要件に当てはまる状態になった日から14日以内に企業は衛生推進者を選任し、職場に周知する必要があります。

職場に周知さえすれば、労働基準監督署へ報告したり届け出たりする義務はありません。このことから選任をおろそかにしてしまうケースもありますが、衛生推進者の選任自体は労働安全衛生法に基づいて定められた義務なので、できるだけ早く選任し周知することが大切です。

衛生推進者の必要性

常時10人以上50人未満の従業員を使用しているにもかかわらず、衛生推進者の選任をしない場合、企業が行うべき衛生管理を怠ったとみなされる可能性があります。

事業場の規模および業務区分に応じた衛生管理者を選任することは、労働安全衛生法第12条に明記されています。また、労働安全衛生法第120条では、この規定に違反した場合、50万円以下の罰金に処すると明記されています。

※出典:e-Gov法令検索.「労働安全衛生法」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057,(参照2021-12-05)

法律による罰則の対象になるだけでなく、例えば従業員が業務に起因する何らかの疾患を心身に発症した場合など損害賠償請求される可能性もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、衛生推進者は必要要件を満たしたらすぐに選任する必要があります。

また、衛生推進者を選任し、従業員が安心して働ける職場環境を整備することで、従業員の仕事に対する意欲やパフォーマンスが上がる、離職者を減らせる、企業イメージが向上し優秀な人材の確保につながるなど、副次的なさまざまな効果も期待できます。

衛生推進者の要件と職務内容

衛生推進者は、従業員から選任するのが一般的です。ただし選任は、衛生推進者としての職務を行うのに必要な能力を持っている人物に対して行う必要があります。衛生推進者になるための要件と、職務内容を解説します。

衛生推進者選任の要件

衛生推進者選任の要件はいくつかあります。具体的には、次のいずれかの要件を満たしている従業員であれば、衛生推進者に選任できます。

大学または高専卒業後、1年以上衛生に関する実務に従事している人
高等学校または中等教育学校卒業後、3年以上衛生に関する実務に従事している人
5年以上衛生に関する実務に従事している人
安全管理者の資格と衛生管理者の資格、両方を持っている人
安全管理者もしくは衛生管理者の資格を持っている人で、資格取得後に1年以上安全もしくは衛生に関する実務に従事している人
労働安全コンサルタントもしくは労働衛生コンサルタントなどの資格を持っている人
衛生推進者養成講習を修了した人

1~6に挙げた実務経験や資格保有の要件を満たす従業員がいる場合、要件を満たす人を選任するとスムーズです。

該当する従業員がいない場合には、7の講習を受講してもらう方法があります。衛生推進者養成講習は、都道府県労働局長の登録を受けた団体が主催しており、学歴や経験にかかわらず、誰でも受講することができます。

※出典:厚生労働省.「職場のあんぜんサイト」.

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo31_1.html,(参照2021-12-05)

衛生推進者の職務内容

厚生労働省が定める衛生推進者の職務内容は以下のとおりです。

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること 等

ただし、上記の職務には「安全衛生推進者」が担当する職務も含まれており、衛生推進者は、衛生にかかる職務のみを行います。安全衛生推進者と衛生推進者との違いは次項で解説します。

衛生推進者は、従業員が健康に働ける職場環境を整えるため、さまざまな職務を行う必要があります。職務内容は衛生推進者当人が把握することはもちろん、その他の従業員にも周知する必要があります。

出典:厚生労働省.「安全衛生推進者(衛生推進者)について」.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09980.html,(参照2021-12-05)

衛生推進者と安全衛生推進者の違いは?

衛生推進者と安全衛生推進者の違いを整理しておきましょう。どちらも似た名称のため、違いがわからない人や、自社の場合どちらを選任すべきか改めて確認しておきたいという人もいるでしょう。

衛生推進者も安全衛生推進者も、労働安全衛生法に基づいて選任が義務付けられている責任者の名称です。また、どちらも常時10人以上50人未満の従業員を使用している事業場を対象としたものであるという共通点があります。

一方で、衛生推進者と安全衛生推進者で異なるのは、対象となる業種です。具体的には、以下の19業種の事業場では、安全衛生推進者を選任しなければなりません。

安全衛生推進者の選任が義務付けられている業種

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業

以上の19業種では、職場の衛生管理だけでなく安全管理も徹底して行われる必要があるため、安全衛生推進者を選任する必要があります。

19業種以外の業種の事業場では、衛生推進者を選任します。

衛生推進者・安全衛生推進者選任の報告義務は?

ここからは、衛生推進者および安全衛生推進者を選任した後に行うべきことを解説します。

報告や届け出の必要はない

前述のとおり要件を満たした事業場では、衛生推進者も安全衛生推進者も法律による選任義務があります。しかし選任後は、事業場の所在地を管轄するハローワークや労働基準監督署に対して、報告したり届け出したりする必要はありません。

従業員に周知する必要がある

報告や届出の必要はないものの、衛生推進者や安全衛生推進者を選任した場合、事業場の従業員に周知する必要があります。

厚生労働省では周知方法について「氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する」としています。以下のような掲示を事業場に貼り出すのが一般的です。

工場や作業場などでは、腕章や帽子で周知する場合もあります。

※出典:藤沢労働基準監督署 .「安全衛生推進者及び衛生推進者の選任について」.https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/2705/20153410711.pdf,(参照2021-12-05)

<h2>衛生推進者だけで充分な対応ができない場合の対処方法</h2>

衛生推進者の選任は、従業員の健康の保持および増進を目的として法律で定められています。講習の修了などを経て、しかるべき知識を持った従業員を衛生推進者に選任し、衛生管理についてその他の従業員にも周知することは、従業員がより安全で健康に働ける環境整備につながっていくでしょう。

ただし、衛生推進者ができることには限界があり、通常業務も抱えながら衛生管理に関する職務を行うことが従業員の負担になることもあります。衛生推進者だけでは満足に対応できない場合に備え、産業医などの専門家との連携も視野に入れるのがおすすめです。

産業医とは、労働者が健康かつ安全に働けるように、専門的見地から指導や助言を行う医師のことです。

産業医は、事業場の規模が従業員50人以上になると選任する義務があります。衛生推進者を選任する必要が出てきたタイミングで産業医と連携すれば、将来的な職場の衛生管理にも、余裕を持って臨むことができるでしょう。

まとめ

衛生推進者の選任は、従業員が健康を保ちながら働くことができる職場環境を整備することにつながります。事業場の規模によって選任が必要になったら、速やかに対応しましょう。

衛生推進者を選任する際には、併せて産業医と連携すると効果的です。Dr.健康経営が運営する産業医紹介サービス『産業医コンシェルジュ』では、数々の中小規模の事業場へ産業医を紹介し、高いサービス満足度を得ています。衛生推進者の選任と併せて、ぜひ利用をご検討ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。