健康診断の再検査を受けないとどうなる?健康診断後に企業が行うべきこと

日付2022.02.14
更新日:2022.02.14

健康診断は、企業が従業員の健康を管理するために欠かせない取り組みの一つです。
健康診断の結果「要再検査」となった従業員が、再検査を渋るケースに頭を悩ませている企業担当者も多いでしょう。

そこで今回は、健康診断の再検査を受けない従業員に対応しないとどのようなリスクがあるのか、健康診断後に企業が行うべきことや健康診断に関して企業が理解しておきたいポイントに触れながら解説します。記事を読めば、健康診断への理解が深まり、企業が対応すべきポイントや注意点が分かるでしょう。

健康診断の主な種類


健康診断には、主に定期健康診断と特定健康診断の2種類があります。それぞれどのような健康診断なのか、概要や目的を解説します。

定期健康診断

労働安全衛生法第66条では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と定めています。定期健康診断とは、事業者が労働者に対して実施しなければならない健康診断の一つで、労働者の健康保持と増進を目的にしています。

対象となる労働者は、1年以上雇用している人または雇用する予定のある人です。正社員だけでなく、週あたりの労働時間が正社員の4分の3以上ある契約社員やパート、アルバイトも対象となります。

定期健康診断は、基本的に1年以内ごとに1回、定期的に実施しなければなりません。

ただし、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げられた特定の環境下や有害物質を取り扱う業務に従事する場合、特定業務従事者の健康診断として、該当する業務に配置替えになった際と6カ月以内ごとに1回の実施が義務付けられています。

従業員数が50人以上の事業場では、定期健康診断を実施するだけでなく、診断結果を労働基準監督署へ報告しなければなりません。報告は、定期健康診断結果報告書に必要事項を記入して行います。

※出典:厚生労働省.「労働安全衛生法に基づく健康診断の概要」.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0119-4h.pdf,(参照2021-12-08)

特定健康診断

事業者が労働者に対して実施する定期健康診断に対し、特定健康診断は、市町村が国民健康保険の加入者に対して実施するものです。日本人の死亡原因のおよそ6割を占める生活習慣病の予防を目的としており、主にメタボリックシンドロームに関する検査を行います。

特定健康診断の対象となるのは、40歳から74歳までの国民健康保険に加入している人です。対象者は、無料で健康診断を受けることができます。

自身の健康状態を把握するため1年に1回実施されます。健康診断の結果、生活習慣病にかかるリスクが高く、健康保持に努める必要があると判断された場合には、保健師や管理栄養士などによる特定保健指導が実施されます。

健康診断受診後に企業が行うべき内容


健康診断の実施後に企業が行わなければならないことは、主に次の4つです。

1.健康診断の結果を通知する

健康診断を実施した後は、健康診断結果を全従業員に対して文書で通知しなければなりません。

また、健康診断の結果は、健康診断個人票を作成して定められた期間保存しておく義務もあります。保存期間は健康診断の種類によって異なりますが、定期健康診断の場合、保存期間は5年間と定められています。

先述のとおり、従業員数が50人以上の事業場では、健康診断の結果を本人に通知し、定められた期間保管する義務以外に、診断結果を労働基準監督署へ報告する義務もあります。労働基準監督署へ提出する定期健康診断結果報告書には、健康診断を受信した人数の他、何らかの検査で「正常ではない」との所見があった従業員数や、要再検査となった従業員数も記入します。

2.再検査が必要な従業員に対応する

健康診断で「正常ではない」として有所見となった場合、経過観察となるケースの他、要再検査と診断されるケースもあります。要再検査の診断結果があった従業員は、再検査(二次健康診断)を受ける必要があります。

また、企業は要再検査となった従業員に対して、再検査を受けるよう促さなければなりません。労働安全衛生法では、企業が従業員に対して二次健康診断の受診勧奨を行うことを、努力義務として定めています。

二次健康診断は、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定の、4つの検査項目ですべて異常の所見ありと診断された場合、労災からの二次健康診断等給付の対象となり、無料で受診することができます。ただし、労災保険制度に特別加入している人や脳、心臓に疾患のある人を除きます。

再検査が必要な従業員の受診率を上げるためには、健康診断後に企業側から積極的に受診勧奨するだけでなく、日頃から健康管理の大切さを理解してもらうための取り組みを進めておくことが重要です。

3.保健指導を行う

再検査が必要な従業員に再検査の受診を促すとともに、保健指導を実施することも重要です。労働安全衛生法では、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると診断された従業員に対して、企業は医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければならないとしています。

保健指導では、健康診断の結果をもとに、個人の生活習慣や考え方を考慮しながら、健康の維持、増進を図るにはどのようにすれば良いかアドバイスします。生活習慣病の予防や、生活習慣の乱れを起因としたメンタル不調の予防に効果的です。

健康診断後の保健指導は、産業医が対応するのが一般的です。企業で産業医を選任していないケースでは、地域を管轄する産業保健センターの窓口を活用するなどして、医師の保健指導を受ける方法があります。

必要に応じて就業規則の措置を決定する

労働安全衛生法では、健康診断結果に異常の所見がある従業員が健康を維持するために必要な措置について、医師から意見を聞かなければならないとしています。また、医師の意見によって必要があると判断される場合には、作業を転換したり、労働時間を短縮したり、就業場所を変更したりするなどの措置を講じなければならないとしています。

医師の意見や決定した措置は衛生委員会へも報告し、従業員が健康かつ安全に就業できる職場環境作りに活かしましょう。

健康診断の結果を踏まえた適切な措置を取らない場合、企業の安全配慮義務違反となり、損害賠償請求などに発展する可能性もあります。例えば、再検査の受診をあらかじめ就業規則に規定として定めておくなど、企業側が事前に措置を講じておくことも有効な手段です。

再検査を受けない従業員に対応しないとどうなる?

定期健康診断の実施は企業の義務ですが、再検査の受診勧奨は努力義務です。再検査には実施義務も、従業員の受診義務もありません。しかし、再検査を受けない従業員への対応を怠ると、次の2つのリスクがあるため注意が必要です。

安全配慮義務違反になる可能性がある

定期健康診断で要再検査となった場合、何らかの健康上のリスクを抱えている可能性があります。従業員が必要ないと自己判断してしまったり、時間がないことなどを理由にしたりして再検査を受けず、そのまま就業を続けた場合、深刻な病気に罹患するかもしれません。

従業員の罹患は、企業側にとってもリスクになり得ます。企業には、従業員に対する安全配慮義務があるためです。

例えば、健康診断結果で何らかの健康上のリスクが認められていた従業員が病を発症した場合、本人の意思で再検査を受けていなかった場合でも、企業側が健康上のリスクを鑑みた配置転換などの措置を講じていなければ安全配慮義務違反となり、損害賠償責任を負う可能性もあります。

貴重な人材が勤務できなくなるリスクがある

企業が安定した企業活動を行っていくために、人材の確保は欠かせません。離職や休職などで貴重な人材が勤務できなくなることは、企業活動の支障となるだけでなく、損失となる可能性もあります。

健康診断は、従業員が抱える健康上のリスクを把握し、深刻な病に発展することを未然に防ぐために役立ちます。再検査が必要な従業員にはしっかり再検査を受診してもらい、従業員の健康維持に努めることが大切です。

日頃から従業員の健康管理を行い、病気による離職や休職を防ぐことは、人材の確保と安定した企業運営につながります。

健康診断に関して企業が理解しておきたいポイント

最後に、健康診断の実施に関して企業が理解しておきたいポイントを2つ紹介します。

従業員が健康診断を受けている間の賃金

従業員が健康診断を受けている間の賃金の取り扱いに関しては、業務の遂行と関連しているかどうかがポイントとなります。

定期健康診断の場合、従業員の一般的な健康確保を目的としており、業務の遂行とは直接関連がありません。したがって、賃金の支払いに義務はなく、企業側と従業員側の協議によって取り扱いを決めるべきです。しかし、健康診断の実施をスムーズに行うためには、診断を受けている間の賃金を企業が支払う方が望ましいでしょう。

一方、有害な業務に常時従事する労働者が受診する、特殊健康診断の場合、業務の遂行と健康診断の実施は直接関連しているため、特殊健康診断を受けている時間は労働時間として、企業は賃金を支払う必要があります。

健康診断結果の情報提供について

健康診断結果の取り扱いに関して、厚生労働省による「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、従業員の健康情報を関係者に提供する必要がある場合、提供する健康情報は、就業上の措置を実施するのに必要最小限の範囲にとどめることが定められています。

健康情報の提供を受け得る「関係者」とは、健康診断に関する実務に携わる人や職場の管理監督を行う人、人事労務の担当者などです。常時50人以上の労働者がいる事業場の場合、一般的には衛生管理者が健康診断に関する実務を行います。

※出典:厚生労働省.「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/shishin.pdf,(参照2021-12-08)

まとめ

健康診断の再検査には、企業の実施義務も従業員の受診義務もありません。しかし、従業員の健康を維持する目的はもちろん、企業に義務付けられている安全配慮義務を遂行するためにも、企業は再検査が必要な従業員に対して積極的に受診を促す必要があります。

また、従業員の健康管理には、健康診断実施後に保健指導を行うことも有効です。保健指導を円滑に実施し、効果的なものにするには、日頃から産業医と連携しておくことが大切です。

Dr.健康経営が運営する産業医紹介サービスの産業医コンシェルジュでは、質の高い産業医を紹介しています。従業員の健康管理の一環として産業医の選任をする際はぜひご活用ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。