VDT作業とは?健康に与える影響や新ガイドラインに示された対策方法

日付2022.02.14
更新日:2022.02.14
VDT作業とは?健康に与える影響や新ガイドラインに示された対策方法

近年さまざまな業種で進むIT化により、パソコンやスマートフォンを使ったVDT作業が増えています。長時間の作業によって心身の健康に悪影響が及ぶ事例が増えており、健康被害を少なくするための対策が急務です。

本記事では、VDT作業による健康被害の具体的な症状や抑えるべきポイント、また実際に企業が行える対策について紹介します。従業員が普段の業務でVDT作業を長時間行っているものの、どのような対策を行うべきか悩んでいる企業担当者の方はぜひ参考にしてください。

VDT作業とは?

VDT作業とは、パソコンやスマートフォンといったデバイスを用いて行う作業のことです。具体的には、文書や画像、動画の作成や編集、プログラミング、監視カメラの閲覧などが挙げられます。

VDTの意味

VDTは「visual display terminals」の略です。ディスプレイやキーボードで構成されており、文字や図形、動画を表示するための装置を指しています。コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどがVDT作業で使用される機器となります。

1980年代半ばにコンピュータが普及し始めたのを皮切りとして急速にIT化が進み、業種問わずVDTの導入が急速に進みました。現在ではスマートフォン、タブレットの使用も日常的となり、IoT化などIT技術のさらなる進歩も見られます。こうしたことからVDT作業を行う人は増え続けており、またVDT作業の長時間化も顕著です。

VDTにおけるガイドラインとは?

VDT作業におけるガイドラインは、厚生労働省が2002年に、主にパソコンなどを使用して仕事をする労働者に向けて公表した指針です。ガイドラインの対象となるのは、以下のような作業を行っている人になります。

・データ、文章の入力作業
・コールセンター等での受注・予約・照合作業
・交通等の監視
・文書の作成・編集、メールの受信・送信、窓口での金銭出納
・コンピュータのプログラミング
・画像診断等、ディスプレイを備えた機器による作業

しかし2002年以降、スマートフォンの普及をはじめとしたIT技術のさらなる進歩により、オフィスワークやテレワークが増えるなど業務を取り巻く環境は変わり続けています。そのため、このガイドラインは従来の内容をベースとしつつも2019年にリニューアルされました。

リニューアルにより対象となる作業内容が見直され、スマートフォンやタブレットなどのキーボードがない情報端末を用いた作業も追加されました。

出典:厚生労働省労働基準局「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf

VDT作業が与える健康への影響

VDT作業を長時間行っていると、眼精疲労や首・肩のこりなどの肉体的症状や、疲労感やイライラなどの精神的症状が現れるケースがあります。このようにVDT作業が健康に与える影響をVDT症候群といい、労災につながるリスクもあるのです。こうした健康への影響について解説します。

身体への影響

VDT作業が身体に与える影響には、以下のようなものが挙げられます。

・視覚機能への影響:眼疲労や眼精疲労、ドライアイ、一時的な調節機能低下
・筋骨格系への影響:首や肩のこり、腰痛、背部痛、腱鞘炎、頚肩腕症候群など

視覚機能への影響はディスプレイを長時間見続けていることや、その最中に浴びているブルーライトが原因とされています。また、筋骨格系への影響は長時間同じ姿勢のまま作業を続けていることや、キーボード入力、マウスのクリックといった作業を繰り返し行っていることが原因とされています。

眼疲労や腱鞘炎については、稀ではあるものの労災認定されるケースが存在します。頻繁に労災認定されている脳疾患、心疾患、適応障害といった他の健康問題と比べて軽度だからといって、甘く見ないことが重要です。

出典:上肢障害の労災認定|厚生労働省PDF(参照:2022.01.24)

精神への影響

VDT作業が精神に与える影響としては、疲労感や不安感、イライラ、憂うつ感、不眠症状などが挙げられます。長時間にわたる作業によって知らず知らずのうちにストレスが溜まることが原因でこれらのような症状が起こるとされています。

特に疲労感や不眠を放置すると生産性の低下が引き起こされ、会社の業績悪化にもつながりかねません。

VDT作業の健康被害を抑えるポイント

VDT作業の健康被害を抑えるためのポイントとして、作業環境の改善・作業時間の調整・作業姿勢の改善の3つが挙げられます。ここではこれら3つのポイントについて詳しく解説します。

作業環境

パソコンを長時間使用していると、どうしても眼精疲労に悩まされます。しかし作業環境を改善すれば症状を軽減できます。具体的には以下のような対策が推奨されています。

・照明の明るさ
仕事場では明暗の対照をなるべく防ぎ、まぶしさが感じられることのないようにしましょう。

・太陽光への対策
太陽光を室内に取り入れることはメリットもあるものの、明暗の対照が強調されるため、目にかかる負担が大きくなってしまいます。

・反射防止型ディスプレイの活用、グレア(映り込み)について
太陽光や照明の光が使用している機器のディスプレイに反射し、不快感になるほどの眩しさ(グレア)を感じる場合があります。これを防ぐための対策として、ブラインドやカーテンを設ける、ディスプレイの位置や向きを調整する、反射防止型ディスプレイを活用するなどがあります。

作業時間

VDT作業による健康被害の度合いは、作業時間にも大きく左右されます。厚生労働省が定めたガイドラインでは、以下のような形で適切に労働時間を管理することが、対策として挙げられています。

・連続作業時間は1回につき1時間を超えないようにする
・連続作業と連続作業の間に10~15分間の休止時間を設ける
・連続作業の時間内にも1~2回の小休止を設ける

これらの対策に加え、他の作業を間に組み込んだりローテーションの中に差し込んだりすることで、一日の連続VDT作業時間を短くすることも推奨されています。
出典:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて|厚生労働省(参照:2022.01.24)

作業姿勢

作業姿勢が悪いと、首・肩のこりや疲労の原因となります。以下に挙げる点を意識し、姿勢の改善を行いましょう。

・正しい姿勢
背もたれにしっかり当たるほど椅子に深く腰掛け、履き物の足裏全体が床に接している状態が正しい姿勢です。また、作業スペースは可能であれば広く確保し、ゆとりを持たせることも重要になります。

・ディスプレイと眼の正しい距離や高さ
ディスプレイ画面から眼までの距離が40cm以上になるよう心がけましょう。視力に問題がある場合でも、メガネなどで矯正を行うことでこの距離をキープすることが重要です。

・作業内容にあわせた情報機器や椅子の選び方
情報機器を用いた作業と一口にいってもさまざまなものがあり、求められるスペック、画面サイズが大きく異なります。また、作業を行う人や環境により、負担の少ない明暗差や体勢も違ってきます。ディスプレイの明るさ・コントラストや、キーボードを含めた位置関係が変更しやすい機器(デスクトップ型パソコンなど)を選択することが重要です。

従業員が行うVDT作業のために企業ができること

従業員にVDT作業をしてもらう場合、企業は上記の対策に加えて、従業員の健康管理をしっかり行いたいところです。そのために企業が取り組むべきことを4つに分けてご紹介します。

健康診断や職場巡視を実施する

従業員の健康状態を把握し適切な健康管理を行うため、VDT作業を行う業務への配置前はもちろんのこと、配置後も年に1回は健康診断を行うことが必要です。業務歴・既住歴の調査、自覚症状に関する問診、眼科学的検査や筋骨格系に関する調査などが健康診断の主な内容となります。

また作業時間、作業姿勢や作業環境については、従業員自ら改善を試みていても実際には改善されていない場合があります。産業医や産業保健師などの専門家による職場巡視を利用し、アドバイスをもらうことも重要です。

健康診断の結果や職場巡視の際にもらったアドバイスを受け、必要に応じて作業内容や作業時間を見直しましょう。

健康相談ができる機会を設ける

従業員が自身の健康に関して気軽に話し、アドバイスをしてもらえる健康相談ができる機会を設けましょう。健康相談を通じて、知らず知らずのうちに抱えていた健康問題についていち早く自覚でき対策を立てることができます。また、些細な悩みであっても人に話すことで気がラクになり、メンタルヘルスを改善できる効果も期待できるのです。

ただし健康相談を行う場合には、プライバシーを保護し、契約社員やパート・アルバイトなど、正社員以外の従業員も相談を受けられる体制を整えることが重要です。

VDT作業の健康リスクについて管理者にも周知する

VDT作業がもたらす健康リスクおよび、その防止方法については、作業者だけでなく管理者にも周知しましょう。管理者が従業員への指導・マネジメントを行う上で重要です。

従業員の実際の作業内容や作業内で発生している問題はもちろんのこと、環境整備が必要な部署に対して行うべき指導内容について労務担当が管理者に直接伝えましょう。これによって、職場の環境改善がスムーズに進み、従業員の健康を守ることができます。

産業医を活用する

VDT作業における健康被害を抑えるための対策を解説してきました。しかし従業員・管理者自身で現状の健康問題を把握し、対策を講じるのには限界があります。特に作業環境に関しては常日頃からの点検が重要で、また各従業員の個人差を考慮する必要があります。このため定期的にアドバイスをしてくれる人材が欠かせません。

そこで有効となるのが産業医を活用することです。産業医に職場巡視を依頼することで、専門的な知見のもと部屋の照明・ディスプレイの明るさや作業時間のチェックを行ってもらい、的確なアドバイスを受けられます。また、従業員の健康診断で問題が見つかった場合、適切な措置を講じる上でも産業医のサポートを受けるのが効果的です。

こうしたことから、産業医による指導は職場の安全性や生産性を高める鍵となっており、厚生労働省のガイドラインでも推奨されています。

まとめ

急速なIT技術の進歩により長時間化が進んでいるVDT作業は、肉体面・精神面の両方で健康への悪影響を及ぼすことがあります。作業環境や時間調整・姿勢改善などの工夫で軽減することは可能ですが、健康診断や面談、産業医の活用なども重要です。

株式会社Dr.健康経営は、経験豊富な産業医の紹介を行っており、書類作成などの実務サポートや各種フォーマットの無償提供など手厚いサポートを強みとしています。VDT作業を長時間こなしている従業員の日々の健康管理にぜひご活用ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。