燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?企業ができる予防や対策を解説

日付2022.04.25
更新日:2022.05.10

従業員の休職につながる症状の一つとして、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」というものがあります。燃え尽き症候群は仕事に熱心な人ほどなりやすく、うつ病と似た症状が現れます。

本記事では燃え尽き症候群についての概要やうつ病との違い、具体的な症状などを解説します。企業ができる燃え尽き症候群の予防施策や休職者に対しての職場復帰支援についても解説するのでぜひ参考にしてください。

燃え尽き症候群とは?

まずは、燃え尽き症候群とはどのようなものなのか、その概要やうつ病との違いを解説します。

燃え尽き症候群の概要

燃え尽き症候群はバーンアウト(burn out)とも呼ばれ、それまで高い意欲を持っていた人が、まるで火が燃え尽きたように熱意を失ってしまう症状を指します。心理学者のハーバート・フロイデンバーガーによって、1970年に定義された概念です。世界保健機関(WHO)では「国際疾病分類」において、燃え尽き症候群を正式な疾病として認めています。

高かった仕事のモチベーションが突然下がり、無気力になって遅刻や欠勤が増えた場合、それは燃え尽き症候群の症状かもしれません。燃え尽き症候群は職業にかかわらず発症するリスクがあります。より具体的な症状については後述します。

燃え尽き症候群とうつ病の違い

燃え尽き症候群に似た病気としてうつ病が挙げられます。うつ病とは不眠・食欲不振・慢性疲労などの身体症状に加え、無気力で気分が落ち込むといった精神症状を伴う疾患です。大きな身体的・精神的ストレスが続くとうつ病になり、脳がうまく働かなくなることで考え方が否定的になります。

症状だけ見ると燃え尽き症候群とうつ病は同じように思えますが、これらの病気の大きな違いは発症する原因にあります。うつ病は悲観的な考え方から慢性的なストレスを感じ、発症することが多い病気です。一方燃え尽き症候群とは、完璧主義であるため無理な努力を続け、自分を追い込んでしまった場合になりやすい病気です。

とはいえ、燃え尽き症候群を経てうつ病になるケースも少なくないため、この2つの病気は全く関係がないともいえません。

燃え尽き症候群3つの主な症状

燃え尽き症候群3つの主な症状

ここでは燃え尽き症候群の3つの主な症状、情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成感の低下について具体的に解説します。

情緒的消耗感

情緒的消耗感とは、情緒(感情)を消耗しきって、精神のエネルギーが枯渇してしまった状態を指します。身体的な疲労ではなく、精神的な疲労を指すのが特徴です。努力の仕方に無理があったり自分の限界を超えてしまったりした場合、情緒的消耗感に陥ってしまう場合があります。

情緒的消耗感を発症すると、それまで意欲的にこなしていた仕事がつまらなく思え、心身が疲れ果てたと感じます。また、この症状は情緒を消耗した対象(例えば仕事)に対して現れますが、その他の事柄ではあまり現れないことも特徴の1つです。

脱人格化

脱人格化とは、例えば会社の上司や同僚、クライアントなど、周囲の人間に対して攻撃的・事務的な態度を取ってしまう症状を指します。人は精神エネルギーを使い過ぎると、それ以上心が摩耗することを防ぐため、相手の状況や感情に配慮しない冷たい振る舞いをすることで、心を守ることがあります。

脱人格化が起こると、周囲の人を疎ましく感じ、相手と接したくない・話したくないと感じられます。トラブルを全て人のせいにしたり、他人への悪口が増えたりする場合もあります。脱人格化は特に、医療職や教職といった人をサポートする仕事で起こりやすく、患者や生徒などに対して現れるケースが多く見られます。

個人的達成感の低下

個人的達成感の低下とは、仕事などでのやりがいや成果を感じられなくなる症状を指します。個人的達成感の低下が発生すると、やる気がなくなることでパフォーマンスが悪化し、さらに個人的達成感が低下していくという負のスパイラルに陥ります。個人的達成感の低下は個人だけでなく職場全体のパフォーマンスにも悪影響を与えるでしょう。

個人的達成感の低下の症状では、自分にはこの仕事が向いていないと考え始め、仕事の結果がどうでもよくなります。それまでの目標やモチベーションが喪失し、自己否定的な気持ちが生まれることもあります。症状が進むと絶望感に苛まれ、虚無感を抱くようになります。

燃え尽き症候群になりやすい人とは?

性格や職種によっては、燃え尽き症候群になりやすい場合があります。ここでは、どのような人が燃え尽き症候群になりやすいのか、タイプ・職種別に解説します。

燃え尽き症候群になりやすいタイプ

燃え尽き症候群になりやすいタイプ(個人要因)は、仕事熱心で真面目な人です。仕事に対して高い理想を掲げていると、うまくいかない場合に挫折感を味わい、心が折れやすくなります。また、経験が浅いと仕事への期待が大きくなりやすく、現実とのギャップから燃え尽き症候群に陥ることもあるでしょう。

その他、仕事とプライベートを分けるのが苦手な場合は、業務上の役割と自分の人格とを分けられず、必要以上に仕事のプレッシャーを感じてしまうことがあります。仕事で他者に対して思いやりを持ち、丁寧に接している場合も、情緒的に消耗し、結果的に燃え尽き症候群を発症しやすくなります。

燃え尽き症候群になりやすい職種

燃え尽き症候群になりやすい職種(環境要因)は、看護師や介護士、ソーシャルワーカー、教師、サービス業といった仕事です。これらの職種では他者と密接に関わり、丁寧な対応や笑顔が求められるため、情緒的に消耗しやすいといえます。ノルマなどが課されている場合は、さらに負担が増えます。

また、これらの業種は人手不足などにより長時間労働に陥りやすい傾向です。特に医療・福祉の仕事は、緊急時の対応を求められることも少なくありません。こうした労働環境によって負荷が蓄積していくことで燃え尽き症候群が引き起こされます。

燃え尽き症候群かも?チェックしてみましょう

自分や周りの人が、燃え尽き症候群(バーンアウト)かもしれないと思う場合は、「バーンアウト尺度」でチェックできます。

バーンアウト尺度

仕事をやめたいと感じることがある
我を忘れて仕事に取り組むことがある
気配りが面倒に感じることがある
仕事が自分に合っていないと感じることがある
同僚やクライアントの顔も見たくないと感じることがある
仕事がつまらなく思えることがある
1日の仕事が終わるとホッとすることがある
出勤したくないと感じることがある
仕事を終えて、良い1日だったと感じることがある
同僚やクライアントと何も話したくないことがある
仕事の結果がどうでもいいと感じることがある
仕事によって心のゆとりがなくなったと感じることがある
心から仕事に喜びを感じることがある
仕事に意味がないと感じることがある
仕事で知らないうちに時間が過ぎることがある
心身ともに疲れ果てることがある
仕事がうまくいったと感じることがある

※引用:久保 真人、同志社大学「サービス業従事者における日本版バーンアウト尺度の因子的,構成概念妥当性」PDF

企業が行うべき燃え尽き症候群を予防するための取り組み

企業が行うべき燃え尽き症候群を予防するための取り組み

企業が行うべき従業員の燃え尽き症候群を予防する取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。2つの施策を紹介します。

休憩に関する時間管理も行う

燃え尽き症候群になる原因の1つは、無理なハードワークです。従業員が適度に休憩を取り、リフレッシュして業務に戻るためには、安心して休憩できる環境作りが大切です。

長時間労働や休日出勤を減らし、業務を円滑に進めるために勤務時間を管理している企業は多いでしょう。しかし、燃え尽き症候群を予防するには勤務時間の管理に加え、休憩時間の管理体制も整えて従業員に無理をさせない環境づくりが必要です。

社員の変化に気付ける体制を整える

燃え尽き症候群を予防するには、従業員の心身の変化に素早く気付き、不調があれば早期治療することが大切です。具体的な施策としては、上司と部下との一対一のミーティングを定期的に設けることやメンター制度の導入が挙げられます。メンターとは「指導・助言」する者という意味で、対話を通じてメンタルの成長や安定をサポートする役割があります。

その他、従業員が自分で燃え尽き症候群の予兆に気付けるようにセルフチェックの機会を設けることも大切です。日頃から燃え尽き症候群についての情報を共有しておくことで、従業員が自身のメンタルについて意識的にケアできるようになります。

燃え尽き症候群を抱える従業員への対応

従業員が既に燃え尽き症候群を発症している場合の対応はどうすればいいのでしょうか。そこで、休職者に対して企業がするべき対応を解説します。

休職中に窓口になる担当者を明確にする

休職中の従業員がいる場合、主に対応するのは人事担当者や産業医などが一般的です。休職者に対しては、窓口になる担当者を明確にしておくことが大切です。担当者が決まっていない場合、休職者は企業とやりとりする度にこれまでの事情や経緯を初めから説明することになります。

また企業側でも情報の共有がうまくいかず、混乱してしまう恐れがあります。休職者と企業の行き違いをなくし休職者の負担を減らすためにも、休職中に窓口になる担当者をはっきりとさせておきましょう。

職場復帰支援をする

燃え尽き症候群で休職している従業員が復職する場合は周囲のサポートが大切です。職場復帰支援として産業医と連携した燃え尽き症候群の治療を行うことで休職者の状況改善をはかりましょう。医師が職場復帰可能と診断すれば、従業員は復職可能です。

復職では本人の合意を得た上で無理のない職場復帰プランを遂行することが求められます。初めからフルタイムで働くと負担が大きく症状が再発する恐れもあります。少なめの業務をこなしながら徐々に仕事量を増やせるような働き方を提案するなど、無理なく職場復帰できるサポートをしましょう。

職場復帰後の配慮を行う

職場復帰後も、企業として配慮を怠らないことが復職者の燃え尽き症候群再発を防ぐことにつながります。個人要因における燃え尽き症候群をケアするには、仕事の成果をしっかりと評価する、休みたい場合は無理せず休んでもいいことを伝えるなど、従業員が疲弊してしまわないようサポートすることが大切です。

環境要因における燃え尽き症候群のケアでは、労働時間に制限を設け、従業員がきちんと休憩を取っているかチェックすることが必要です。ノルマなどがある場合には、実情に合わせて軽減する必要もあるでしょう。

いずれの要因の場合でも、企業が産業医といった医療機関と連携して従業員が治療を受けられているか把握することが大切です。燃え尽き症候群が完治する前に復職した場合、症状が再発してさらに深刻な状態になる恐れもあります。医療の専門家による診断に基づいて、治療の方針や復職時期を決めましょう。

まとめ

燃え尽き症候群とは、仕事に熱心で真面目な人ほどなりやすい傾向です。無気力感やモチベーションの低下を引き起こします。うつ病と症状が似ていますが、うつ病は悲観的な考え方から発症するのに対し、燃え尽き症候群は仕事への高い理想や完璧主義から発症します。

企業として従業員の燃え尽き症候群を予防するには、休憩がきちんととれる環境を整備するとともに、社員の変化に気付ける体制づくりが求められます。また、燃え尽き症候群で休職している従業員がいる場合には、産業医などの医療機関と連携した復職サポートが大切です。専門家の診断を受けることで早期治療や再発防止に取り組むことができます。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。