社員にストレスチェックの受検や面談を拒否されたら?企業側ができる対処方法を解説

日付2022.05.30
更新日:2022.06.30
社員にストレスチェックの受検や面談を拒否されたら?企業側ができる対処方法を解説

事業主にはストレスチェックの実施が義務付けられています。しかし、従業員に受検の義務はありません。ストレスチェックの受検率を上げるにはどうするとよいでしょうか。

本記事では、従業員にストレスチェックの受検や面談を拒否されたときに企業側ができる対処方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

なお、ストレスチェックの内容等については、「ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説」も参考にしてください

ストレスチェックは拒否できる?

事業者は従業員に対するストレスチェックの義務を負います。常時50人以上の従業員を使用する事業場に対し、国はストレスチェックを義務付けています。

一方、従業員にストレスチェックを受ける義務はないため、受検の強要はできません。たとえ従業員がストレスチェックを拒否しても事業者は不当な扱いをしないよう注意しましょう。

厚生労働省の報告によると、ストレスチェックの実施義務がある事業場のうち、2017年にチェックを実施した事業場は82.9%でした。多くの企業が従業員の健康を守るため、ストレスチェックに前向きに取り組んでいると考えられます。

ストレスチェックを実施した事業場の従業員の中で、受検した従業員の割合は、78.0%に留まりました。2割程度の従業員が、ストレスチェックを拒否しています。

※出典:厚生労働省.「ストレスチェック制度の実施状況を施行後はじめて公表します」(参照2022-05-11)

ストレスチェックをしない事業者に課される罰則については、「ストレスチェックについての罰則はある?義務化の背景や注意点を解説」も参考にしてください。

ストレスチェックを拒否する従業員にはどう対処する?

事業主には従業員が安全かつ健康に働けるように安全配慮義務が課されています。ストレスチェックの結果を安全配慮義務に役立てましょう。以下では、ストレスチェックを拒否する従業員に対し、スムーズに受検を促すための方法を解説します。

受けない理由をヒアリングする

従業員がなぜストレスチェックを拒否するのか、まずはヒアリングをしましょう。ヒアリングの結果に応じ、個別のアプローチ方法を考えます。よくある理由には、受検に対して心理的な不安がある、仕事が忙しくて受ける余裕がない、面倒くさいなどが挙げられます。

まずは決められた期間内にストレスチェックを受検してもらい、受検しなかった従業員を抽出しましょう。未受検の人にのみメールや電話などでアナウンスをします。受検の有無に関するデータは、個人情報には該当しません。従業員の同意がなくても事業者は受検の有無を調べられます。

ストレスチェックの必要性を伝える

ストレスチェックを受ける意味を理解しておらず、忙しい、面倒といって拒否している従業員は少なくありません。そのような従業員は、ストレスチェックの必要性を理解すると受検してくれる可能性があります。

ストレスチェックは従業員の不調にいち早く気が付く調査方法です。特に、近年はメンタルに問題を抱える従業員が増加傾向にあります。高ストレス者をいち早く発見するためにはストレスチェックが欠かせません。

また、事業者には従業員の健康を守る義務があることも伝えてください。一人ひとりの受検結果が反映されると、より良い職場環境を実現できます。

ストレスチェックは不利益にならないことを周知する

「ストレスチェックの結果が悪いと自分にとって不都合が起きるのではないか」と不安になる従業員も多いものです。高ストレス者と判明しても、降格や解雇など不当な扱いを受ける心配はありません。従業員の不安を取り除き、安心してストレスチェックを受けてもらいましょう。

また、ストレスチェックの結果は、本人の同意がない限り事業者に報告されないことも周知する必要があります。

ストレスチェックの受検率を上げる工夫

ストレスで頭を抱える男性
ストレスチェックの受検率を上げるために、従業員がストレスチェックを受けやすいように配慮しましょう。受検にはどの程度時間がかかるか、受検結果はどのように扱われるかなど、従業員が知りたい情報をあらかじめ伝えてください。以下では、ストレスチェックの受検率を上げる工夫を紹介します。

実施時期を調整する

事業者には、従業員に対して毎年1回以上のストレスチェックを行うことが義務付けられています。ただし、実施時期は事業所ごとに決めて構いません。事業者と従業員、それぞれ負担のない時期にストレスチェックを実施することが大切です。

例えば、ストレスチェックの受検率を高めるためにも繁忙期は避けたほうがいいでしょう。業務が忙しいとストレスチェックへの意識が薄れて後回しになりがちだからです。

また、年度の変わり目にストレスチェックを行うのもおすすめできません。一般的に異動の時期などは従業員のストレスが溜まりがちになるため、適切な結果を得られない可能性があります。

適切な結果を知るためにも、業務が落ち着いている閑散期などにストレスチェックを実施しましょう。

ストレスチェックにかかる時間を伝えておく

ストレスチェックは時間がかかると思っている従業員も少なくありません。ストレスチェックの所要時間を従業員に伝え、受検への心理的なハードルを下げましょう。

国が推奨するストレスチェックでは、57個の質問が用意されています。また、東京大学大学院医学系研究科が公開するストレスチェックでは、質問数は80個です。直感的に答えられる質問が多いため、実際のストレスチェックにかかる時間は、長くとも10分程度と考えられます。

わずかな時間で職場環境を改善できる可能性があるとわかれば、ストレスチェックを前向きに受けてもらえる可能性が高まるでしょう。

※出典:厚生労働省.「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」(参照2022-05-11)

※出典:東京大学大学院医学系研究科.「健康いきいき職場づくりフォーラム」(参照2022-05-11)

受検結果は開示されないことを周知する

上述したように、ストレスチェックの受検結果は事業者など人事権限のある人には開示されません。安心して受検できる旨を従業員に伝えてください。

ストレスチェックの検査結果は個人情報に該当するため厳重に管理されます。受検結果は実施事務従事者により配布・回収され、医師などの実施者に引き渡されます。

事業者が受検結果を知りたい場合は、回答した従業員本人の同意が必要です。また、受検結果を提供しない従業員に対する、解雇や雇止めなどの不当な扱いも禁止されています。

高ストレス者が面接指導を拒否した場合の対処方法

高ストレス者が面接指導を拒否した場合の対処方法
ストレスチェックの実施者は、高ストレス者に対して産業医による面談を勧奨できます。面談の結果は会社に伝わらない、面談をして不利益を被る可能性はないと説明し、高ストレス者が安心して面談を受けられるよう配慮してください。また、面談は強制ではないため、無理強いは禁物です。

以下では、高ストレス者が面談指導を拒否した場合の対処方法を紹介します。

高ストレスを放置することのリスクを伝える

高ストレス状態を放置しておくと、うつ病などの精神疾患につながるリスクがあり注意が必要です。仕事ができない状態になり、命を落とす恐れもあるため早急に対処しなければなりません。高ストレス者に事態の深刻さを伝え、産業医など専門家による面談をすすめましょう。

高ストレス者が面談を拒否する背景には、事業主に対し、自分が高ストレス者だと知られたくないという気持ちが考えられます。

ストレスチェックの結果を受けて面談を申し出た場合、高ストレス者であると自分から名乗ることになってしまうと考えている従業員も少なくありません。前述したように、面談の結果により降格や解雇などの不当な扱いは受けないと伝え、高ストレス者を安心させることが大切です。

併せて、産業医などの専門家が面談を行うことによって適切なアドバイスを受けられるなど、面談を受けるメリットを高ストレス者に伝えましょう。高ストレス者の中には、自分が抱えているストレスの状況を自覚していない人もいます。専門家と面談することで自分のストレスの状況を把握できるでしょう。

高ストレス者が行える選択肢について伝える

高ストレス者が面談を拒否した場合は、現在の状況を改善するための選択肢を伝えることも大切です。上述したように、高ストレス状態は健康に悪影響をもたらします。産業医などによる面談指導を受ける以外にも、以下の方法で高ストレス状態を改善できる可能性があります。

・外部の相談窓口でのカウンセリング
・任意の医療機関の受診

相談窓口には、厚生労働省委託事業の「こころの耳」や、外部の専門家が相談員を務めるEAP(従業員支援プログラム)などが挙げられます。

かかりつけの病院などで相談すると、高ストレス者自身が病院を選べるため安心して通院できます。社内の人に高ストレス者だと知られるかもしれないという不安も軽減できるでしょう。一方、個人的に医療機関を受診すると費用は自己負担となります。外部の医療機関などをすすめる場合は、費用が必要になる可能性も高ストレス者に伝えておきましょう。

まとめ

従業員にはストレスチェックの受検義務はありません。しかし、安全衛生義務により事業主には従業員の健康を守る責任があります。ストレスチェックの必要性を説明し、受検率を上げましょう。ストレスチェックや面談の結果により不利益を被る心配はないことを従業員に伝えることも大切です。

Dr.健康経営の産業医コンシェルジュは、ストレスチェックサービスを提供しています。経験豊富な産業医が対応し、高ストレス者への面談も可能です。産業医をお探しの際は、お気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。