ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説

日付2021.11.19
更新日:2022.02.18
ストレスチェック制度とは?

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルスを守るために、年1回の実施が義務付けられている制度です。しかし、比較的新しい制度ということもあり、いまひとつ具体的な内容がわからない企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ストレスチェック制度の概要、メリット、手順や流れ、事業者が負担する費用、実施する際の注意点などを解説します。自社に適したストレスチェックを実施して、離職率低下や生産性向上などにつなげるための参考にしてください。

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは、企業が労働者のストレス状況を調べるために毎年実施しなければならない検査です。

ここでは、ストレスチェック制度の概要、実施者と対象者、健康診断との違いについて解説します。

ストレスチェックの概要

労働者のメンタルケアにかかわる担当者は、まずストレスチェック制度がどのようなものなのか基礎知識を知っておくことが重要です。

ストレスチェックとは、ストレス状況を調べるための質問を労働者に配って回答してもらい、それを集計・分析することです。労働者は結果を聞いて自分のストレス状態を把握でき、企業は必要な対策を取れます。ストレスチェックの手順や流れについては後ほど詳しく解説します。

ストレスチェック制度の目的は、労働者にストレスを溜めすぎないように注意を喚起してうつ病などのメンタルヘルス不調を予防することです。また、労働者のストレスを企業に把握してもらい、業務負担の軽減や職場環境の改善につなげる目的もあります。

ストレスチェック制度は労働安全衛生法の改正により、2015年12月から、労働者50人以上の事務所で実施が義務付けられています。また、50人未満の事業所でも努力義務が定められました。

制度が義務化された背景には、仕事に関係するメンタルヘルス不調が労働災害であるという考え方が定着したことが挙げられます。また、それにもかかわらず、うつ病の発症や自殺などが増加傾向にあったことも理由の一つです。

ストレスチェック制度における実施者と対象者

ストレスチェック制度を実施するには、実施者と実施事務従事者、面接指導を担当する医師の選定が必要です。また、対象者となる労働者を把握しておかなければなりません。

・実施者
ストレスチェック制度を適切に実施できる専門家です。具体的には、医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師または精神保健福祉士です。また、事業者に専任された産業医が担当することもあります。

・実施事務従事者
実施者をサポートする社員です。通常、企業の総務担当者などが実施事務従事者に選ばれます。実施事務従事者になると診断結果の守秘義務が課せられます。なお、人事権がある社員は、実施事務従事者になれません。

・面接指導をする医師
医師の資格を持っていれば誰でも実施できます。ただし、各事業所に専任されている産業医または産業保健活動を行っている医師が推奨されています。その理由は、業務内容や職場環境をよく知っていると考えられるためです。

・対象者となる労働者
企業で働くすべての労働者です。ただし、契約期間が1年未満の労働者と通常の労働時間の4分の3未満で働いている短期労働者は義務の対象外です。

それぞれの対象者を把握して、ストレスチェック制度の実施計画を立てましょう。

ストレスチェックと健康診断の違い

ストレスチェック制度を健康診断と同じように考える人もいますが、大きな違いがあります。

1つ目の違いは、ストレスチェック制度は健康診断と異なり、労働者が拒否できることです。厚生労働省の統計では78%の受検率になっていますがストレスチェックを受けない人もいることがわかります。

※参考:厚生労働省.「 ストレスチェック制度の実施状況を施行後はじめて公表します」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172107.html
(参照 2017-11-13)

2つ目の違いは、ストレスチェックの結果は本人が同意しない限り会社に通知されないことです。ストレスチェック制度では実施者と実施事務従事者に守秘義務があります。企業の上層部や長年在籍する産業医であっても労働者の許可なく会社に報告できません。

こうした違いがあるのは、ストレスチェック制度によって労働者が不当な扱いを被るリスクを減らすためです。

ストレスチェック実施のメリット

ストレスチェックを有効活用すると、企業と労働者双方にメリットが生まれます。ここでは、企業側からの視点で3つのメリットを解説します。

労働者の離職や休職を避ける

ストレスチェックによって労働者のメンタルヘルスが保たれると、結果として離職や休職が減ります。ストレスチェックの結果を分析して職種や部署ごとの問題点を把握して業務負担を減らせるからです。また、各種ハラスメントの禁止の徹底など、働きやすい職場を作ることにも役立てられます。

ただし注意しておきたいのは、ストレスチェック制度の主目的が離職や休職につながりそうな労働者の精神不調を回復させることではないことです。ストレスチェック制度は、不調の発生を防ぐ「1次予防」に位置付けられています。

労働者のモチベーション維持

ストレスチェックは労働者が自分のストレス程度を客観的に理解することを助けます。さまざまな角度からの選択式の質問に答えていくと自分の気持ちがわかることがあります。

また、メンタルヘルスの知見に基づいた分析結果を聞いたり医師の面接指導を受けたりすることで、自分が気付かなかったストレス要因を発見できることもあるでしょう。メンタルヘルスが良好な状態になれば、労働者の仕事に対するモチベーションも高まりやすくなります。

ストレスチェックを実施すると、経営層や管理職が職場に存在する労働者のストレスの程度や要因を把握できます。それらを福利厚生の充実や職場のコミュニケーション活性化などの施策に反映することも可能です。職場環境がよくなれば、労働者の長期的なモチベーションの向上と維持につながります。

企業全体の生産性の向上

ストレスチェックによって貴重な人材の離職や休職が減り、労働者のモチベーションが高まれば、企業全体の生産性向上にもつながります。実際、労働者のメンタルケアに力を入れている企業の多くは最終的にこうした成果を目指しています。

2019年4月から施行された働き方改革では、長時間労働の是正や多様な働き方の推進などが企業に求められています。これからの時代に適した適正な仕事量と責任範囲が守られる働きやすい職場環境であれば企業の魅力も増し、優秀な人材も集まってくるでしょう。

したがって、ストレスチェック制度に取り組む際は、単に義務を果たすだけでなくメンタルケアに強い産業医と契約するなど、ポジティブなスタンスで取り組むことが重要です。

ストレスチェックの手順・流れ

ここでは、ストレスチェックの実施を具体的にイメージするための手順や流れを紹介します。ストレスチェックには実施期限が設けられている項目もあるため、全体の手順を把握して計画を立てておきましょう。

なお、人員が足りない場合やはじめて従業員が50人を超えるなどで担当者の負担が大きすぎる場合は、専門業者を活用する方法もあります。委員会の立ち上げや医者の手配などからサポートしている専門業者もあるため、必要に応じて有効活用しましょう。

1.ストレスチェック導入前の準備

ストレスチェックを実施するには、まず事業者が法や規則に基づいてストレスチェックを行うことを労働者に表明します。つまり、メンタルヘルス不調を予防するために会社がメンタルヘルス制度を年1回実施することを労働者全員に通知するのです。

次に、ストレスチェック制度の担当者は労働者の意見を聞くために、ストレスチェック制度の実施方法の審議(衛生委員会での調査審議)を開きましょう。この審議で、いつ、誰が、どのような方法で実施するのか、質問の内容、調査結果の保管先などの規定を決めて労働者へ再度説明します。

労働者の同意を得られたら、産業医などの実施者および実施者の指示を受けた実施事務従業者がストレスチェック調査票を作成します。

2.ストレスチェックの実施と結果の通知

ストレスチェックの準備が整ったら調査票を労働者に配ります。調査票の内容は厚生労働省が公表している「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」をベースにするのが一般的です。

「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」には、「職場のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域に対して、57の質問があります。例えば、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」の質問に対して、「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4段階で答える形式です。ただし、この調査票は汎用的な内容なので、各事業者に合わせて質問を増やすことも検討しましょう。

※参考:厚生労働省. 職業性ストレス簡易調査票(57 項目)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stress-check_j.pdf
(参照 2121-11-13)

調査票を回収したら、データ入力と評価点の計算をしてストレス状況の評価と医師の面接指導の要否を判定します。

結果が出たら本人に直接通知します。この際、本人の同意なく企業が結果を入手することはできません。また、労働者の同意を得て提供されたデータは、社内規定に基づいて実施者か実施事務従事者が5年間保管します。

3.面接指導

ストレスチェックの結果で高ストレス判定が出た労働者に対しては、面接指導を受けることを勧めます。ただし、面接指導を受けるかどうかは、あくまで本人の意志次第です。労働者から面接指導を受けたい申し出を受けてから実施しましょう。

申し出はストレスチェック結果が出てから約1ヵ月以内にしなければなりません。また、申し出を受けた後は、労働者に配慮して約1ヵ月以内に面接指導を実施することも必要です。なお、面接指導は対面が基本ですが状況によってはICTを活用した面談も認められています。

面接指導を実施後、約1ヵ月以内に事業者は医師から就業時の措置が必要か報告を受けます。必要に応じて労働時間の短縮や配置転換など、適切な処置を実施しましょう。なお、面接指導の結果は5年間保存することが義務付けられています。

4.集団分析

面接指導とともに集団分析も行います。ただし、集団分析の実施は義務ではなく努力義務です。

集団分析とは、職場単位のストレス状況を調べる目的で、原則10人以上のストレスチェックのデータを集計・分析する調査です。集団分析の結果は個人結果と異なり、労働者の許可なく事業者に提供できます。ただし、10人未満では個人を特定しやすくなるため、匿名性が守られる方法を用いるか全員の同意をとらなければ、集団分析を実施できません。

集団分析の結果を検討すると、企業は長時間労働や責任範囲が広すぎることなど職場や部署単位のストレス要因に対処できます。

ストレスチェックにかかる主な費用と事業者の負担

ストレスチェックを実施するにはどれぐらいの費用がかかるのでしょうか。費用の内訳や注意事項、助成金の活用などについて解説します。

ストレスチェックにかかる主な費用は人件費

ストレスチェックの費用で最も割合が高いのは専門家への人件費です。特に費用が大きくなりやすいのは、面接指導と集団分析です。ストレスチェック自体は比較的簡易なテストなので、設備や資材、社内担当者の人件費はそれほどかかりません。

面接指導の費用目安は一概にはいえませんが、1時間あたり3~5万円程度かかるでしょう。面接指導が必要な労働者は、一般的な企業でも1割程度存在するように設計されているため、労働者数が多い事業所ほど、余裕を持って予算を確保することが必要です。面談指導を勧奨することは企業の義務であり、対象者を減らすわけにはいきません。

集団分析は属性ごとに数万円の費用がかかります。例えば、職場単位や性別、年齢などの属性を変えて分析してもらうたびに料金が上がる仕組みです。分析したい集団や要素や多い場合は事前に予算を見積もっておきましょう。

実施費用はすべて事業者が負担する

ストレスチェックは労働安全衛生法によって企業に義務付けられているため、実施費用はすべて事業者の負担です。

すべての作業を専門業者に任せた場合は、1人あたり数百円から数千円になります。費用に幅があるのは、オンラインで対応するか企業に出向いて紙媒体で行うかなど実施形式に違いがあるからです。また、集団分析をどこまで実施するかによっても費用は変わります。内訳の目安は以下のとおりです。

・ストレスチェックの集計・分析:数百円~1,000円
・面接指導:1時間当たり3~5万円
・集団分析:1属性あたり2万円~

実施費用を福利厚生費として損金計上することで、実質的な費用を減らせます。ただし、福利厚生費として計上できるのは、すべての従業員を対象とした施策であり、かつ常識の範囲内の費用であることが条件です。これらを満たすようにストレスチェックを実施しましょう。

ストレスチェック実施の促進には助成金がある

事業者は、ストレスチェック実施促進のための助成金によって費用の助成を受けられます。

この助成金の対象者は、従業員数50人未満で、医師・保健師などによるストレスチェックおよび面接指導を実施した中小企業、事業者です。対象となる実施時期は、2021年 4月 1 日から2022年3 月 31 日までです(2021年11月現在)。

助成金額は以下のとおりです。

・ストレスチェックの実施費用:年1回ごとに1人500円(税込)
・ストレスチェックに従事する医師の活動費用:1事業場あたり1回の活動
につき 21,500 円(税込)。年3回まで

なお、費用が上記を下回った場合は、実費が支給されます。

申請手続きは、独立行政法人労働者健康安全機構に対して行います。2021年5月18 日から2022年6月30 日まで(消印有効)の間に、ストレスチェック助成金支給申請書、医師との契約書、ストレスチェック実施報告書などの必要書類を揃えて提出しましょう。詳しくは、以下の公式ページを参照してください。

※参考:独立行政法人労働者健康安全機構.「ストレスチェック実施促進のための助成金の手引き」
https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:54tjT26DpCkJ:https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/R3/stresscheck/sc_josei_tebiki_R3.pdf+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
(参照 2021-11-13)

ストレスチェックでよくある質問

ここでは、企業のストレスチェック制度の担当者からよく聞かれる2つの質問にQ&A方式で回答します。

無料版の簡易的ストレスチェックでも実施したことになる?

なりません。無料で入手できるストレスチェックは、労働者が自主的、簡易的にセルフチェックするためのものだからです。面談指導の判断や集団分析には使えないため、労働安全衛生法で定めたストレスチェックとして認められていません。

ストレスチェックの調査票に自由記述欄を設けてもいい?

可能です。ただし、セルフチェック全体で「職場のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域を含むことが必要です。

例えば、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」に、独自の自由記述欄を設ければ、正式なストレスチェックの条件を満たします。ただし、実施者のチェックが入るため、科学的根拠が乏しい質問は却下されます。また、偏った考え方が含まれる質問は、衛生委員会での調査審議で労働者から拒否されるでしょう。

なお、自由記述欄の内容提供についても他のストレスチェック結果と同様に労働者の許可を得ることが必要です。

ストレスチェックを行う上での注意点

ストレスチェック制度は労働者の心の健康を守るためのものなので、企業の行動に厳しい制限が設けられています。ここでは、特に注意しておきたい個人情報の取り扱いとストレスチェックに関連した労働者の扱いについて解説します。

個人情報の取り扱いに注意する

企業は労働者のプライバシーを保護しながらストレスチェックを実施する義務があります。実施者、実施事務従事者、面接指導をする医師には守秘義務が発生しているため、労働者の同意なく個人情報を提供したり、入手したりすることはできません。また、情報漏えいがないように十分な注意が必要です。

特に注意が必要なのは、労働者の同意を得て提供されたデータの保管です。5年間保管しなければならないため、情報セキュリティ対策を万全にしておく必要があります。サーバーに管理する場合は、実施事務従事者しかアクセスできないようにするなどシステム上の対策も必要です。

また、ストレスチェック結果を封書や電子メールで個別に伝える際もリスクがあります。封書を直接手渡す、電子メールを暗号化するなどの社内ルールを設けましょう。

労働者に不当な扱いを行うことは禁止されている

ストレスチェックに関連して労働者を不当に扱うことは、法律で禁止されています。例えば、以下のような理由で解雇、配置転換などをすることは許されません。

・ストレスチェックを受けることを拒否した
・面談指導を申し込まない
・ストレスチェックの結果を企業に提出しない
・集団分析を認めない

ストレスチェックは労働者を守るための制度です。ストレスチェックを実施する場合は、すべてのプロセスで労働者への配慮が求められます。

ストレスチェックを適切に行い職場環境の改善を

ストレスチェックは労働者50人以上の事業所で、年1回義務付けられている制度です。費用もすべて事業者側が負担しなければなりません。しかし、ストレスチェックを有効活用すれば、離職や休職の低減や労働者のモチベーション向上、企業全体の生産性向上につながるメリットがあります。

それぞれの職場に合った質問票の作成やメンタルヘルスに強い産業医の雇用などに積極的に取り組み、組織改革のきっかけにしていきましょう。

Dr.健康経営ではストレスチェックサービスを提供しています。メンタルヘルスに豊富な知識を持つ医師が、衛生委員会の立ち上げや質問票のチェックの段階からサポートします。また、単発の面談指導やオンラインによる定期的なメンタルヘルスケアの実施など、柔軟にご活用いただけるサービスも幅広く提供しているのでぜひ一度ご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。