産業医の役割・選任
産業医を選任する義務はいつから?選び方や違反した時の罰則も解説
従業員の心身の健康を維持し働きやすい環境を整えるのは、事業者の義務です。
従業員が適切な労働時間で働けるか、ストレスの有無などをチェックし、健全な経営をするために重要な役割を果たす産業医。産業医の選任は、一定の要件を満たしている事業所は義務となっています。
いつから産業医を選任しなければいけないか、違反した場合の罰則についてなど解説します。
目次
法律で決められている産業医の選任が義務の事業所
産業医の選任は義務ですが、産業医を必ず専任しないといけない事業所と、任意の事業所があります。
また、嘱託産業医でいい場合と、専属の産業医を置かなければいけない場合があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
常時50人以上の従業員がいるなら産業医は義務
常時働く従業員が50人以上いる事業所では、産業医を選任しなければいけません。この中には、パートやアルバイトも含まれます。
50人〜999人までの従業員数の規模の場合は、嘱託の産業医でも構いません。
嘱託の産業医は、週に一回または月に一回など契約したペースで事業所で業務を行います。(ただし、500人〜999人の事業所で有害業務を行う場合は専属の産業医が必要です。)
1,000 人以上の事業所は専属の産業医が必要
1,000人以上の従業員がいる事業所は専属の産業医を選任しなければいけません。従業員が3,000人以上になると2人の専属産業医が必要となります。
産業医の選任義務がある事業所で、実際に産業医を選任している確率は以下のようになります。
・50人〜499人の事業所 86.5%
・500人〜999人 98.7%
・1,000人以上 99.8%
【参考URL】
1,000人以上従業員がいる事業所では、ほとんどのところが産業医を選任していますが、500人未満の会社ではおよそ14.5%の事業所が産業医選任が義務にも関わらず選任していません。
産業医を選任しなかった場合の罰則
産業医選任の義務がある事業所が産業医を選任しなかった場合、労働安全衛生規則で罰則が決められています。
従業員が50人に達した場合、または産業医に欠員が出た場合は、事業者は14日以内に産業医を選任し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
違反した場合は、50万円以下の罰金が生じます。また、医師が名義貸しをして産業医を設置したように見せかけるケースも、規定に違反するので注意が必要です。
産業医の事業所での仕事
産業医の仕事は従業員の身体やメンタルの健康維持、事業所や作業場に危険な箇所がなく安全で安心して働ける場所かを定期的にチェックするなど多岐にわたります。
健康診断のチェック
定期的に実施する健康診断の結果を分析します。異常な数値や所見が見られる従業員には、再検査や精密検査を受けるよう促したり、医療機関を紹介したりします。
またストレスチェックの結果の集計や分析も産業医の仕事です。高ストレス者が希望すれば産業医と面接を行い、ストレスの原因を探り、対策やアドバイスをします。
職場の巡視
産業医は最低月に一度、職場を巡視し安全で快適な環境かをチェックします。
部屋の電灯が切れていないか、明るさは作業に適しているか、トイレや休憩室、給湯室の衛生面や消化器の位置、非常口の開閉がスムーズかなど職場内をくまなく確認していきます。
チェックリストはかなりの数になります。危険なところや、不衛生な面などがある場合は、管理者に改善の指示を出します。
休職者のケア
産業医は従業員が、長時間の労働や職場の人間関係など仕事よるストレスで心身の体調を崩しているとき、休職するべきかどうかの判断をします。
また、怪我や病気で休職している従業員の復職を許可するのも産業医の仕事です。産業医は回復の度合いを見るだけでなく、復職して職場で業務をこなせるか判断をします。
そのため主治医の意見と違いがある場合もあるでしょう。事業者は産業医と連携して、従業員の休職や復職を決定します。
衛生委員会の出席
産業医を選任する事業所では、管理者と従業員で構成する衛生委員会を設置しなければいけません。
衛生委員会は労働災害の防止を目的としていて、職場環境の安全について意見を交わします。産業医は出席の義務はありませんが、専門家の立場で出席が望ましいと言われています。
衛生委員会に出席できない場合は、議事録を読まなければいけません。
産業医の必要条件
産業医は従業員の心身の健康チェックをしたり、事業所の安全性や衛生環境などを医学的な専門知識を持った立場で管理するため、医師が行います。
しかし医師免許だけでなく、厚生労働省令で決められた一定の要件を満たす必要があります。
・日本医師会の産業医学基礎研修または産業医科大学の産業医学基本講座を修了した人
・産業医科大学もしくはその他の大学で産業医要請課程と実習を修了した人
・労働衛生コンサルタント試験の保険衛生区分に合格した人
・大学で労働衛生の科目を担当する教授、准教授か講師の仕事をしている(していた)人
上記のいずれかの要件がなければ産業医になれません。
産業医の選任方法
産業医を選任する方法はいくつかあります。
14日以内に選任する必要があるので、事業者が希望する勤務形態や依頼したい業務内容、報酬などに合う産業医を選びたい場合、なるべく産業医を多く抱えているところに依頼するといいでしょう。
医師の人材派遣を利用する
医師の人材派遣会社には登録している産業医がたくさんいます。事業者が希望する診療科目を専門とする医師を選ぶことも可能でしょう。
嘱託の産業医の場合、別の病院勤務や業務と兼任する医師がほとんどです。医師の派遣会社なら、希望する日数や予算に合わせて依頼することができます。
また専属産業医の選任が必要な場合も速やかに紹介してくれるでしょう。
派遣会社の担当者が、勤務日や業務内容の調整などを行い、産業医をマネジメントしてくれるメリットもあります。
健康診断を依頼しているところに訪ねる
事業所で利用している健康診断の機関に問い合わせる方法もあります。健診機関にいる産業医を紹介してもらえる可能性があります。
しかし、産業医派遣を行っていないところもあるうえ、選任できても健康診断の繁忙期は対応ができない場合があります。
事業所の近くの医療機関に問い合わせる
事業所の近くの医療機関に産業医の仕事を依頼できるか聞いてみるのもいいでしょう。ただし、本来の診察の仕事が優先になるので、事業者が希望する曜日や日程で依頼できない場合があります。
また、地域の医師会で産業医派遣を行っているケースもありますが、ほとんどが地元の開業医のため、柔軟な対応ができない可能性があります。
さらに、報酬が人材派遣会社より高い傾向があります。
まとめ
産業医選任は従業員が50人を超えると義務になります。14日以内に産業医を選任し、労働基準監督署に届出なければいけません。
また、産業医が退任した場合や欠員が出た場合も同じく14日以内に新しい産業医を選任する必要があります。選任の義務を怠ると50万円以下の罰金を命じられることもあります。
常時働く従業員が50人近くなったら、産業医選任の準備をしましょう。多くの登録医師を抱える派遣会社なら、希望の条件にあった事業所の特徴に合わせた産業医を紹介してくれるでしょう。
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