産業保健・健康管理

特殊健康診断とは?検査項目や費用・実施しなかった場合の罰則を解説

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更新日:2023.02.24

業種によっては一定の危険性があるため、通常の健康診断とは別に特殊健康診断を受けなければなりません。特殊健康診断は仕事の特徴によって検査項目などが異なります。

本記事では、特殊健康診断の概要や必要となる業種、違反した場合の罰則について解説します。また、特殊健康診断にどのような種類があるのかについて各対象者や費用目安、検査項目も紹介するのでぜひ参考にしてください。

特殊健康診断とは?

まずは特殊健康診断の概要や特殊健康診断が必要となる業務について解説します。

特殊健康診断の概要

特殊健康診断とは、特定の危険が伴う業種に従事する人に行うことが労働安全衛生法第66条によって定められている健康診断です。厚生労働省の公式サイトによると下記のように説明されています。

“事業者は、一定の有害な業務に従事する労働者に対し、医師による特別の項目について健康診断を行わなければなりません。さらに、このうちの一部の業務については、それらの業務に従事させなくなった場合においても、その者を雇用している間は、医師による特別の項目について健康診断を定期的に(期間は業務の種類により異なる)行わなければなりません。”

引用:厚生労働省『職場のあんぜんサイト』(参照:2022-05-17)

通常行われる健康診断は、入社する際や毎年1回行われることが一般的です。しかし、特殊健康診断には多くの種類があり、業務で取り扱う化学物質や業種などによってそれぞれに実施する回数や実施時期が義務付けられています。

特殊健康診断が必要な業務

労働安全衛生法によって特殊健康診断が必要とされている業務は、高気圧業務、放射線業務、特定化学物質業務、石綿業務、鉛業務、四アルキル鉛業務、有機溶剤業務の7つです。

これらの中でも一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、その業務に従事しなくなった場合でも特定健康診断を実施する義務が残ります。また、情報機器(VDT)作業や振動業務などは義務ではありませんが、特殊健康診断の実施が行政指導により奨励されています。

出典:厚生労働省 静岡労働局『特殊健康診断の健康診断項目』(参照:2022-05-17)

特殊健康診断を怠った場合の罰則

特殊健康診断を怠った場合の罰則
特殊健康診断が必要な業種であるにもかかわらず、実施を怠ると労働安全衛生法違反として労働基準監督署からの指導が入ります。指導を受けてなお改善されない場合には、50万円以下の罰金刑が課されるため注意が必要です。

過去には特殊健康診断の実施を怠ったとして、ある運送業者が岸和田労働基準監督署に送検された例もあります。労働安全衛生法を遵守し、従業員の健康を守るために、特殊健康診断の実施は徹底しましょう。

出典:中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター『労働安全衛生法 第十二章 罰則(第百十五条の三-第百二十三条)』(参照:2022-05-17)

特殊健康診断の検査項目と費用の目安

特殊健康診断にかかる費用は検査項目によって異なり、実施機関によっても費用の差があります。ここでは、特殊健康診断の費用相場を紹介します。ただし、費用の相場はあくまでもの目安ですので、詳しい金額はそれぞれの検診実施期間にご確認ください。

出典:一般財団法人 健康医学予防協会(参照:2022-05-17)

有機溶剤健康診断

法令で定められた有機溶剤業務の従事者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、およびその後6カ月以内ごとに一度、有機溶剤健康診断を実施しなくてはなりません。料金目安は2,000円程度からで、業務で取り扱う溶剤によっても異なります。

検査では業務経歴や既往歴、自覚症状または他覚症状の有無、尿中の蛋白の有無が調べられます。取り扱う溶剤によっては尿中の有機溶剤の代謝物量や、肝機能検査、貧血検査、眼底も検査します。

特定化学物質健康診断

特定化学物質を扱う業務の従事者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、およびその後6カ月以内ごとに一度の特定化学物質健康診断を行います。胸部X線直接撮影による検査なら1年に一度の実施が必要です。料金の目安は2,000円程度からで、業務で取り扱う物質によっても異なります。

検査項目は業務経歴や既往歴、自覚症状または他覚症状の有無、皮膚所見の有無や尿中蛋白です。取り扱う物質によっては血圧の測定や胸部X線直接撮影、GOT、GP、ALP等肝機能検査も実施されます。

じん肺健康診断

粉じん作業に従事する、または過去に従事していた労働者に対しては、じん肺健康診断を実施することが決められています。実施頻度は、じん肺管理区分によって、1年に一度の場合と3年に一度の場合に分けられます。料金目安は4,000円程度からです。

検査項目は業務経歴や既往歴の調査、胸部エックス線写真撮影、胸部臨床検査や肺機能です。胸部臨床検査の結果に異常が見られる場合は、結核精密検査などが実施されます。

鉛健康診断

法令で定められた鉛業務の従事者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、およびその後6カ月以内ごとに一度、鉛健康診断を実施しなくてはなりません。料金目安は7,500円程度からとなっています。

必須の検査項目は業務歴、自覚症状または他覚症状の有無、血液中の鉛の量、尿中のデルタアミノレブリン酸の量などです。医師が必要と判断した場合には作業条件の調査や貧血検査、赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査、神経内科学的検査も実施されます。

電離放射線健康診断

放射線業務の従事者で管理区域に立ち入る者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、およびその後6カ月以内ごとに一度の電離放射線健康診断を実施することが義務付けられています。料金目安は4,000円程度からとなっています。

検査項目は被爆歴の有無、被爆歴を有する者については作業の場所・内容および期間・放射線障害の有無・自覚症状の有無・その他放射線による被爆に関する事項です。また、白血球や赤血球、血色素量、眼、皮膚などの検査も実施されます。

その他特殊健康診断の検査費用と目安

特殊健康診断の検査項目と費用の目安
特殊健康診断には、法的な義務はなくても業務内容から実施が推奨される特殊健康診断もあります。ここでは、それぞれの検診項目ごとに検査費用の目安を解説します。こちらも詳しい費用はそれぞれの検査実施期間にご確認ください。

情報機器作業健康診断

一日4時間以上の情報機器作業を行う従業員のうち、常時ディスプレイを注視または入力装置を操作する者、または適宜休憩や作業姿勢の変更が困難な者に対しては、情報機器作業健康診断を実施することが定められています。情報機器作業への配属前、そしてその後1年に一度実施する必要があります。

なお、検査費用の目安は、7,000円程度からです。検査項目は業務歴、既往歴、自覚症状や他覚症状の有無、眼(遠近視力、屈折検査、眼位、調節機能等)、筋骨格系(首・肩・手指の運動機能、圧痛点等)です。

振動障害健康診断

チェーンソーといった手持ち振動工具を用いる業務の従事者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、および使用振動工具によって、その後6カ月または1年ごとに一度の振動障害健康診断を実施することが義務付けられています。料金目安は7,000円程度からとなっています。

検査項目は使用工具の種類、作業の状況といった職歴、自覚症状の有無、運動機能、血圧、末梢循環機能、末梢神経機能検査、両手関節および両肘関節のX線撮影です。

騒音健康診断

騒音作業の従事者に対しては、雇入れ時、当該業務への配属時、およびその後6カ月以内ごとに一度の騒音健康診断を行う必要があります。料金目安は5,000円程度からとなっています。

検査項目は既往歴や業務歴、自覚症状または他覚症状の有無の他、オージオメーターによる250、500、1000、2000、4000、8000Hzにおける帯域別の聴力検査です。その他、医師が必要と認める検査が行われることもあります。

まとめ

特定の危険を伴う業種では、定期的な特殊健康診断が義務付けられています。特殊健康診断が必要となる業務は高気圧業務、放射線業務、特定化学物質業務、石綿業務、鉛業務、四アルキル鉛業務、有機溶剤業務です。

特殊健康診断の費用は企業負担となり、費用は検査項目や実施機関によって異なります。特殊健康診断は法令によって実施を定められており、怠れば罰則を課される恐れもあります。従業員の健康のためにも、健康診断の実施は徹底しましょう。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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