メンタルヘルス・ストレスチェック

ストレスチェックの項目数の違いとは?調査票の選び方や含めるべき項目も解説

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更新日:2023.02.20

自社でストレスチェックを実施する際に、調査票は57項目版、80項目版、23項目版のどれを用いたらよいのか悩む方は多いのではないでしょうか。それぞれの調査票は質問数が異なるだけでなく、得られる情報の質や特徴がそれぞれ違うため適切な項目数の調査票を選ぶ必要があります。

今回はストレスチェック調査票の項目の要点や選び方、項目追加時の注意点などを解説します。自社に最適な調査票を選んで、職場環境の向上に役立てましょう。

ストレスチェックとは?

ストレスチェックとは、労働安全衛生法で義務づけられた労働者のストレス状況に関する定期的な調査を指します。労働者のメンタルヘルス不調を予防することがストレスチェックの目的です。メンタルヘルス不調の予防には、一次予防、二次予防、三次予防の3段階があり、ストレスチェック制度の目標は一次予防に当たります。

一次予防の目的は、労働者自身がストレス状態を早期に発見してメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。具体的には、ストレスのセルフケアや自発的なカウンセリング受診などが挙げられます。

二次予防は、すでにメンタルヘルスに不調のある労働者がより重い不調に陥らないよう適切な対処を行うことを目的としています。

三次予防は、メンタルヘルス不調によって休職する労働者の職場復帰や休職後の再休職予防が目的です。

ストレスチェック制度を活用してメンタルヘルス不調を防ぐには、「労働者個人によるストレスマネジメント」と「事業者が職場全体のストレス状況を把握して働きやすい環境作りに努めるストレスマネジメント」の2つが欠かせません。

ストレスチェックについて詳しくは『ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説』も参考にしてください

ストレスチェックの項目で確認すべきこと

ストレスチェックの項目で確認すべきこと
ストレスチェックの調査票は企業・事業場が用意するものであり、調査票の項目は3つの必須領域を含めなければなりません。本章では、質問項目で必須の領域と、含めるべきではない事項について解説します。

必ず含めるべき3領域

調査票には、労働安全衛生規則(第52条の9)で規定される3つの必須領域を含めなければなりません。その3つとは「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」です。

「仕事のストレス要因」は職場での心理的負担の原因に関する項目であり、仕事の多忙さや困難さ、部署内外での対人ストレスなどを調査できます。「心身のストレス反応」は心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目で、イライラや倦怠感、食欲、肩こりなどの有無や程度を質問します。

「周囲のサポート」は上司や同僚、家族などによる支援に関する項目であり、身の回りに頼れる人がいるとストレス軽減につながると考えられています。これら3領域の質問への答えを点数化して各労働者のストレス状態を判定します。

※ 出典:厚生労働省.「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

含めるべきでない項目

厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」には、ストレスチェックに「性格検査」「適性検査」「希死念慮・自傷行為」「うつ病検査」などを含めるのは不適当であると明記されています。

性格検査や適性検査はストレスチェック調査の目的ではないため、労働安全衛生法に基づくチェックと銘打って実施するのは不適切です。また、希死念慮や自傷行為関連の項目は、背景事情なども総合的に評価する必要があり、さらにこれらの項目で自殺リスクを把握した場合には早急の対処を要するため、企業の対応体制が不十分な場合には検査項目にすべきではないとされています。

さらに、うつ病などの精神疾患のスクリーニングをストレスチェックの目的としていないため質問項目に含めません。

※ 出典:厚生労働省.「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

ストレスチェックの57項目版・23項目版・80項目版の違いとは?

ストレスチェックに用いる調査票は各企業が準備するものであり、「57項目版」「23項目版」「80項目版」という3種類があります。それぞれの特徴などを解説します。

57項目版の特徴

「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」は、厚生労働省が推奨する標準的な調査票です。5〜10分程度で回答できる簡単な内容であるため、労働者から回答を集めやすいのがメリットといえます。各労働者が自分自身のストレス状況を把握するのに便利であり、厚生労働省の推奨であるため採用企業が多いのもメリットといえるでしょう。

ただし、57項目版には職場に対する評価項目がないため職場環境によるストレスを把握しづらい点がデメリットといえます。

57項目版の使用が向いている企業は、新たにストレスチェックを導入する企業です。また、採用企業が多いので統計情報が充実しており、同業他社との比較をしたい企業にもおすすめです。厚生労働省の提供している分析ツールを使用したい場合にも57項目版が適しています。

23項目版の特徴

「職業性ストレス簡易調査票の簡略版(23項目)」は、前述の57項目版から一部項目を省いた調査票です。設問数が少ないのでさらに短時間で回答可能ですが、得られる情報が少ない点がデメリットといえます。例えば、57項目版にある「職場の雰囲気」「作業環境」などの質問は、23項目版にはありません。労働者が自身のストレス状況を把握する際、不十分となる場合があります。

23項目版の調査票は、試しにストレスチェックを取り入れてみようと考える従業員50人未満の企業などに向いています。(従業員数50人未満の企業では、ストレスチェックは義務ではなく「努力義務」です。)また、項目数が少ないので高い回答率を得たい場合にも有効です。

80項目版の特徴

80項目版は「新職業性ストレス簡易調査票」とも呼ばれており、基本となる57項目版にハラスメントや上司のマネジメントなどの項目を加えた調査票です。労働者自身のストレスマネジメントだけでなく、人事評価や経営層を含めた職場全体の評価などの項目も豊富であるため、集団分析で詳細な情報を得やすい点がメリットです。

ストレスチェックで得た情報を集団分析して職場環境を改善したい企業には、80項目版をおすすめします。

質問項目が多いため、回答に10〜15分程度の時間がかかることがデメリットといえるでしょう。ストレスチェックを健康経営に生かす余力のない企業にとっては、80項目にわたる豊富な情報を分析・活用するのは困難な場合もあります。

何項目のストレス調査票を使うべき?

何項目のストレス調査票を使うべき?
何項目のストレスチェック調査票を用いるべきか決めるときのポイントを解説します。項目数の変更や外国人労働者のストレスチェックについても説明しているので、併せてご確認ください。

ストレス調査票を選ぶポイント

57項目版、23項目版、80項目版のいずれを選ぶか決める際には、「ストレス状態をどの程度の詳しさで把握したいか」「結果を活かして実際にストレス対策を行えるか」「回答率を下げない適切な質問数か」の3点を考慮しましょう。

80項目版は項目数が多いので各労働者や職場全体のストレス状態を詳しく把握でき、職場の課題を明確にしやすい調査票です。そのため、積極的にデータを活かして職場環境を改善したい企業には80項目版が向いています。

しかし、得られたデータの活用やストレス対策の実行が難しい場合には、57項目版でも十分といえます。項目数が少ない場合、高い回答率を得やすくデータの偏りを防ぎやすくなるでしょう。

自社に適切な項目数を選び、職種や事業場に合う質問を追加するのが理想的です。何項目の調査票を用いる場合でも、ストレスチェック実施後に必要に応じて高ストレス労働者への対応や就業上の措置を行うことが欠かせません。

ストレスチェック項目は増やせる?

ストレスチェック項目は、厚生労働省の57項目簡易調査票を基本として企業独自の項目を増やすことが可能です。項目を増やす際には、前述した必須の3領域の項目を満たしており、一定の科学的根拠を有していることが条件となります。前述の通り、性格検査や適性検査、精神疾患のスクリーニングにつながる質問を加えてはいけません。

ストレスチェックの実施者や事業場の衛生委員会は、ストレスチェックに独自項目を追加するか、実施方法はどうするか、調査結果を誰が(自社あるいは外部委託の業者が)運用するのかなど、ストレスチェック制度に関する一連の事項を審議しておく必要があります。

外国人労働者版ストレスチェックとは?

外国人労働者も条件を満たす場合にはストレスチェックの対象者となります。条件とは期間の定めのない労働契約で使用される者、あるいは有期契約でも1年以上の契約期間(更新含む)のある労働者などであり、かつ労働時間が通常の労働者の4分の3以上であることです。

近年、海外からの労働者は増加傾向にあり、外国人労働者のメンタルヘルス不調を防ぐためにもストレスチェックが重視されています。57項目版の「職業性ストレス簡易調査票」には外国語版があり、厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。

※ 出典:職業性ストレス簡易調査票(57項目)ポルトガル語版、中国語版、英語版、ベトナム語版の掲載(日本語版も掲載)

まとめ

ストレスチェック調査票には、標準的な57項目版の他に職場全体のストレス状況を詳細に把握しやすい87項目版や、簡易的な23項目版があります。自社の状況に適した項目数を選び、必要に応じて独自項目を追加しましょう。

ストレスチェックの実施者には、事業場の状況を日頃から把握している産業医を選ぶのがおすすめです。株式会社Dr.健康経営は、経験豊富な産業医を紹介する産業医紹介サービスをご用意いたしています。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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