健康診断の受診率を上げたい!未受診者への対応や企業ができる対策とは?

日付2022.07.29
更新日:2022.07.29
健康診断の受診率を上げたい!未受診者への対応や企業ができる対策とは?

企業(事業所)が健康診断を実施することは国で定められた義務です。にもかかわらず実施率、受診率ともに100%に満たないのが現状です。健康リスクが高まっている現代では、健康診断の受診率を上げることは従業員の健康を守ることにつながります。

本記事では企業としてできる受診率の上げ方や、従業員が健康診断を受診しない場合の理由別対処法などを解説します。ぜひ参考にしてください。

健康診断の受診率と所見率

まずは健康診断の受診率と所見率の現状を解説します。健康診断の実施・受診は義務であるにも関わらず100%に満たず、所見率は増加している傾向にあります。

健康診断の実施率と受診率

健康診断の実施は事業主の義務であり、受診は労働者の義務です。しかし、厚生労働省『労働安全衛生法に基づく定期健康診断』のデータによると健康診断の実施率は91.9%、受診率は81.5%となっており、ともに100%を下回っています。

また、データによると事業所の規模によって健康診断の実施率や受診率が異なることが分かります。バラつきはありますが、事業所の人数が多いほど実施率、受診率ともに高くなる傾向です。500人以上の事業所では健康診断の実施率が100%となっていますが、それらの事業所でも受診率は80%台に留まっているのが現状です。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」(参照:2022-06-15)

健康診断の所見率は増加傾向に

一般健康診断における所見率(検査項目において異常が見つかった者の率)は増加傾向にあります。平成18年には48.0%だった有所見率は徐々に上昇し、令和2年では63.6%になりました。調査を開始した平成3年の所見率が27.4%だったことを考えると30年ほどで2倍以上に増加していることになります。

厚生労働省「健康診断有所見者の推移」
画像引用:厚生労働省「健康診断有所見者の推移」

新型コロナウィルスの流行にともなった労働環境や生活環境の変化なども、所見率上昇の原因の一つと考えられています。健康リスクが高まる現代、企業はリスクの回避や早期発見のために、健康診断の受診率を高めることが必要です。

健康診断の必要性と従業員が受けない理由と対処方法

健康診断の必要性と従業員が受けない理由と対処方法
企業にとっての健康診断の必要性と、従業員が受けない場合における理由別の対処方法を解説します。健康診断を受診しない理由は従業員によっても異なるため、それぞれの理由に応じた適切な対処を講じることが企業にとって大切です。

健康診断の実施は事業者の義務

労働安全衛生法・労働安全衛生規則第66条によって、事業者は労働者に対して健康診断を実施することが義務付けられています。

事業者が健康診断の実施義務を怠った場合、労働基準監督署からの指導が入ります。事業所が改善しなければ罰金を支払わなければなりません。労働者にも健康診断の受診の義務はありますが、未受診の場合でも具体的な罰則が定められているわけではありません。受診率を上げるためには企業の積極的な働きかけが必要です。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」(参照:2022-06-15)

事業所における健康診断の方法や流れについては『会社が行うべき健康診断の内容と流れを解説!』も参考にしてください。

【理由別】従業員が健康診断を受けない場合の対策方法

厚生労働省の調査によると、従業員が健康診断を受けない理由のうち、特に回答者の割合が高かったものとして以下の3つが挙げられます。

1.時間がとれなかった
健康診断の重要性を理解しており、受診する意思があるにもかかわらず業務が多忙で時間がとれないケースです。
【対策】
企業としては予約時間に融通を利かせる、また当該従業員の上司や同僚などにサポートを依頼することで健康診断の時間を捻出しやすくなります。

2.心配な時はいつでも医療機関を受診できる
わざわざ健康診断を受けなくても自覚症状が現れてから医療機関を受診すれば良いと考えているケースです。
【対策】
企業としては心身の不調は自覚なく進行する場合もあることを指導し、定期的な健康診断による従業員のメリットを強調する必要があります。

3.めんどうだから
健康診断を受けるのがめんどうという理由で受診しなかったケースです。受診しなくても問題がないなど誤った認識を持っている従業員もいます。
【対策】
健康診断の受診は自身の健康保持に必要であり、国で定められた義務でもあることを徹底して周知しましょう。
厚生労働省「特定健診・保健指導の実施率向上について」
画像引用:厚生労働省「特定健診・保健指導の実施率向上について」(参照:2022-06-15)

健康診断の受診率を上げるために企業ができること

健康診断の受診率を上げるために企業ができること
健康診断の受診率を上げるためには重要性を分かりやすく示すこと、企業が費用負担すること、健康課題の見える化、産業医の導入が有効です。それぞれに必要な内容を解説します。

健康診断の重要性を分かりやすく周知する

健康診断の受診案内として、厚生労働省のパンフレットを掲示するだけでは従業員の注意を引けません。他人ごととしてスルーされてしまう恐れがあります。従業員の注意を引き、自分に関係があることとして健康診断を捉えてもらうためには、重要性を分かりやすく周知することが大切です。

公的なパンフレットは情報量が多かったり文字が細かかったりと、内容をしっかりと理解しにくいことが少なくありません。従業員への周知方法として公的なパンフレットを使用する場合、図や表を入れる、内容を分かりやすく噛み砕いて解説し直すなど、見ただけで内容が分かるように工夫しましょう。

健康診断費用を企業が負担する

特殊健康診断の費用負担は企業の義務ですが、一般健康診断では企業側に必ずしも支払い義務はありません。自己負担では健康診断を受けたくないと考える従業員もいます。受診率を上げるためには、健康診断の費用を企業で負担することが望ましいでしょう。

健康診断の再検査・精密検査などについても、誰が費用を負担すべきか法令による定めがありません。費用負担者は労使間の協議や就業規則などで決めることとされています。企業が費用を負担する場合にはその旨も周知しておくことで、従業員にとっての再検査や精密検査のハードルが下がるでしょう。

出典:石川労働局労働基準部健康安全課「*労働安全衛生法に基づく健康診断に関するFAQ」(参照:2022-06-15)

企業の健康課題を見える化する

企業全体の健康課題を見える化することは、それぞれの従業員が健康診断を意識するきっかけとして効果的です。企業全体でどのような健康課題の傾向があるのかを分かりやすく示すことにより、自身の健康状態について具体的な関心を持てるようになります。

ただし、個人情報の保護に細心の配慮が必要なことは留意しなければなりません。心身の健康状態に関する情報はセンシティブな問題であり、管理方法を誤るとトラブルの元になります。取り扱いは慎重に行いましょう。

産業医を導入する

健康診断の実施・受診促進は、企業の人事部門などが担当することがあります。しかし、医療や健康の専門家ではない立場から、健康診断の必要性を伝えるのが難しい場合は産業医を導入する方法がおすすめです。

産業医は豊富な経験を有する労働衛生の専門家です。産業医を導入すれば、定期的な健康診断の重要性についての説明を委ねたり、周知のタイミングの決定などでサポートが受けられたりなど健康診断の実施においてさまざまなメリットがあります。

産業医について詳しくは『産業医とは?医療機関で働く医師との違いや企業にもたらす導入メリットを解説』も参考にしてください。

まとめ

働く人々の健康リスクが高まる現代、定期的な健康診断の受診がますます重要になっています。企業にとって健康診断の実施は義務であり、また従業員の健康を守るためにも大切です。受診率を高める施策としては健康診断の重要性を周知すること、できるだけ受診しやすい環境を整えること、産業医を活用することなどが挙げられます。

産業医は労働衛生の専門家としてさまざまな現場で経験を積んでいます。健康診断の受診率で伸び悩んでいるなら産業医の導入を検討してみてください。産業医をお探しの場合には、Dr.健康経営の「産業医コンシェルジュ」の利用がおすすめです。Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスとして多くの企業に導入されています。まずはお気軽にお問合せください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。