メンタルヘルス・ストレスチェック
ストレスチェックの対象となる労働者は?業務委託やアルバイトにも実施すべきか対象範囲を解説
ストレスチェックを実施する際に気になるのが、「どこまでの労働者が対象者になるのか?」です。
アルバイト、派遣社員、出向者、業務委託社員、海外勤務の社員など、近年の多様化する雇用形態に、どこまでの労働者がストレスチェックの対象になるのか疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
対象者について少々複雑なこともありますが、意味のあるストレスチェック実施にするためにしっかり認識しておくことが大切です。
今回はストレスチェックの対象者の範囲を解説します。
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目次
ストレスチェック制度について
ストレスチェック制度とは労働者のストレス状態を定期的に調査することで、労働者本人に自身のストレス状態について気づきを促し、ストレスによるメンタルの不調を未然に防ぐための予防を目的とした制度です。
労働者が質問表(調査表)を回答し、その結果を本人に通知します。また集団分析として集めたデータを集団ごとに分析することで職場環境の効果的な改善が期待できます。
ストレスチェック制度では、常時働く労働者数50人以上の事業場に対して、1年に1度の調査実施と結果報告を義務付けています。
対象者については規定があるので制度の目的を把握した上で、ストレスチェックの対象者について理解しておきましょう。
【参考URL】
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
ストレスチェック対象者の基本的な考え方
ストレスチェックの対象となる労働者の基準について、厚生労働省のストレスチェック制度導入ガイドでは、常時使用する労働者の基準を下記の要件を満たす者と定義しています。
「引用」
”
①期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
②週労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
”
【参考URL】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf
この2つを満たす労働者が「常時使用する労働者」になり、常時使用する労働者の人数が50人以上の事業場がストレスチェック義務化の対象です。
法人全体で常時使用する労働者数が50人以上いる場合、各事業場で常時使用する労働者数が50人未満であれば、ストレスチェックを行う義務はありません。
ストレスチェックの対象者はどこまで?
派遣社員・業務委託社員
派遣社員に対してのストレスチェック実施義務は、派遣している企業側(派遣業者)にあるので派遣先の事業場ではストレスチェックを行う義務はありません。
派遣元である企業で50人以上労働者がいる場合、ストレスチェックを実施する義務があります。
例えば派遣先の事業場で働いている社員が40人名、そこに派遣社員を10人追加して働くようになった場合、常時働く労働者の数は50人になるのでストレスチェックを行う義務が生じます。
この時40人分のストレスチェックは派遣先の事業場がもともと働いている社員に対して行い、10人の派遣社員は派遣元の企業がストレスチェックを実施します。
しかし集団分析を行う際には、同じ事業場の部署や課などの単位で行った方が効果的な結果になるため、派遣先の事業場で50人のストレスチェックを行い派遣社員も含めて集団分析をすることが望ましいです。
アルバイト・パート
アルバイト・パートなどの非正規社員でも一定の要件(常時使用する労働者の基準)を満たしている労働者はストレスチェックの対象になります。
期間雇用の社員は、「ストレスチェック対象者の基本的な考え方」の、2つの要件を満たしているか確認しましょう。
例えば、契約期限が1年以上の場合や、契約更新すると働く期間が1年以上になるのであれば契約社員であっても対象者です。
しかし、雇用期間が1年未満の場合や短期での業務遂行を目的にした契約で、通常労働者の4分の3以下の週就労時間数である労働者の場合は対象になりません。
また週に1回しか出勤しないアルバイト勤務の従業員であっても、1年以上継続して雇用している場合は2つの要件を満たすため対象者に含まれます。
【参考URL】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf
出向者
他の支店からきた労働者などの出向者は出向元と出向先どちらがストレスチェックを行うのでしょうか。
ストレスチェックは社員と労働契約関係にある事業者が行うのが制度上の規定です。
したがって出向者が労働契約している事業者と出向先の事業者を、賃金支払いなどの実態から総合的に判断します。
しかし、集団分析を行う際には部署や課などの一定の集団に分けてストレスチェックの結果を集計・分析する方が効果的な数値が現れるので、出向先の事業者がストレスチェックや努力義務の集団分析を行うことが望ましいです。
【参考URL】
https://www.cocomu.co.jp/qatop/stresscheck/employees/
外国人社員
ストレスチェック対象者の一定の要件(常時使用する労働者の基準)を満たしている労働者は国籍を問わず、事業者はストレスチェックを実施する義務があります。
その際に日本語での調査票では正しい検査結果が見込めない外国人労働者は、英語の調査票を準備するなどの配慮が必要です。
ポルトガル語、中国語、ベトナム語など外国語の調査票は厚生労働省からダウンロードできます。
【参考URL】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stress-check_e.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/hourei_seido/_120099.html
長期海外出張者
海外支社に長期出張中の海外勤務者がいる事業場で、ストレスチェックを実施する期間に業務の都合で検査が実施できない場合は、帰国後にストレスチェックを実施する必要があります。
また現地採用の社員は現地法人に雇用されているため、日本の労働法は適応されずストレスチェックの実施義務もありません。
休職者・最近移動してきた社員・雇用予定者
怪我、病気、妊娠などでストレスチェック期間に休職している労働者に対して、事業者は調査の実施義務はありません。
また、ストレスチェックを実施する期間に就労を開始していない社員に対しても実施義務はありません。
職業性のストレスチェック簡易調査票は、直近1ヶ月のストレス状態を調査するものなので、ストレスチェック実施の1ヶ月以上前から就労を開始していない労働者は検査結果が現れにくいです。
実際的な対応をしては、ストレスチェック開始の2〜3ヶ月前から事業場に在籍するなどの方法を検討するのが妥当です。
社長・役員
社長や役員は労働者ではなく使用者に該当します。労働安全衛生法によるとストレスチェックの対象になるのは「労働者」のみで、社員や役員などの使用者にはストレスチェックの受験義務はありません。
ストレスチェック受検義務はありませんが、衛生管理委員会等にて実施方針を審議する際に使用者の受験について決めることはできます。
ストレスチェック対象者が50人未満の場合
対象者50人未満の事業場でもストレスチェックは行うべき?
対象者が50人未満の事業場は実施が義務ではないので実施する必要はありません。
しかし常時使用する労働者が50人未満の職場であっても、労働や職場環境が原因で精神障害を発症することは珍しくありません。
小規模の事業場こそ労働者一人ひとりの心身の健康は円滑な運営に不可欠です。
したがって、努力義務ではありますが、ストレスチェック制度の目的である「メンタルヘルス不調の一次予防」と「職場環境を改善する」ために、ストレスチェック制度を活用していくことが望ましいです。
また「常時使用する労働者数が50人未満」で一定の条件を満たす事業場は、助成金を受け取ることが可能なので、外部に委託するなどして手間を減らし助成金制度を活用しストレスチェックを実施しましょう。
対象者50人未満の事業場で行うストレスチェックは会社独自に行ってもいい?
50人未満の事業場ではストレスチェックは努力義務ですが、調査を実施する際にはストレスチェック制度の指針に従って実施することが求められます。
質問事項には必要な3つの領域が含まれていること、人事権を持つ役員などが実施者をしないこと、労働者に対して調査の目的を事前説明するなど、ストレスチェック制度の目的や基本的な考え方を守って実施することが望ましいです。
ストレスチェック対象者に対する注意点:義務であるが強要することはできない
常時使用する労働者の数が50人以上の事業場では事業者は従業員に対してストレスチェックを行う義務がありますが、労働者に受験を強要することはできません。
ストレスチェックを実施する目的や、調査結果が調査後に労働者に対して不利益にならないことを説明したり、繁忙期を避けて実施するなどストレスチェックを受験しやすいように労働者に対して配慮することが求められます。
ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための一次予防です。
目的を遂げるために労働者一人ひとりがストレスに対するセルフケアを行うとともに、事業者は対象者に対して働きやすい職場作りをしていきましょう。
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