健康経営・職場改善

高度プロフェッショナル制度とは?メリット・デメリットや条件・導入方法を解説

日付
更新日:2023.02.23

高度プロフェッショナル制度は効率的な働き方の一つとして注目されています。従来の所定時間労働と異なり、高度プロフェッショナル制度では時間ではなく成果によって仕事を評価します。

本記事では高度プロフェッショナル制度の概要、対象者や対象業務、裁量労働制との違いなどについて解説します。あわせてメリットやデメリット、導入するための条件や方法などについても紹介するのでぜひ参考にしてください。

高度プロフェッショナル制度とは?

高度プロフェッショナル制度の概要や対象者、対象業務を解説します。

高度プロフェッショナル制度の概要

高度プロフェッショナル制度とは、一定の要件を満たした労働者の労働時間や休憩・休日、深夜の割増賃金といった労働法の規定を除外する制度です。2019年4月に施行された、働き方改革法の一つとなっています。アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションという制度を参考にし、効率的な働き方の実現を目指すものです。

高度プロフェッショナル制度では労働賃金に関して仕事の成果で評価します。仕事の量より質が評価されるため、成果を出せば残業をせずに済むというメリットがあります。高度プロフェッショナル制度の導入には、労使委員会の決議と労働者本人の同意が必要です。導入のために必要となる一定の要件に関しては次項で詳しく解説します。

高度プロフェッショナル制度の対象者

高度プロフェッショナル制度の対象となるのは、高度で専門的な知識・技術を要するオフィスワーカーです。労働従事時間と成果との関連性が高くない職種である必要があります。年収1,075万円以上が見込まれる労働者でなければ対象となりませんが、勤務成果による賞与や業績給等、支給額があらかじめ決められていない賃金は含まれません。

高度プロフェッショナル制度を導入するには、使用者と労働者との間で書面等による個別の合意が必要です。書面には同意した場合に労働基準法第4章の規定が適用されなくなることや同意の対象期間、期間中に支払われる賃金額の見込みなどの必須事項を明記します。
出典:厚生労働省「高度プロフェッショナル制度の創設について」(参照:2022-07-18)

高度プロフェッショナル制度対象業務

高度プロフェッショナル制度の対象となる職種や業務は限定されています。例えば使用者から従事時間の具体的指示を受けて行う業務は、高度プロフェッショナル制度の対象にはなりません。

高度プロフェッショナル制度の対象になるのは、金融商品の開発業務・投資判断に基づく資産運用の業務、有価証券の売買その他の取引業務・投資に関する助言業務・顧客の事業の運営に関する調査、分析、考案、助言の業務・新たな技術、商品または役務の研究開発業務の5つです。
厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」
引用:厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」(参照:2022-07-18)

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制との違い

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制との違い
高度プロフェッショナル制度と似たものに裁量労働制があります。裁量労働制とは労働時間を労働者の裁量に任せる形の労働契約です。基本的に出退勤の時間に制限がなく、成果を上げればいつ働くか自由というメリットがあります。高度プロフェッショナル制度と同様、裁量労働制では労働の質や成果によって報酬が決定されますが、労働基準法の適応や残業代・年収要件の有無や、対象職種などが異なります。

高度プロフェッショナル制度 裁量労働制
労働基準法 休憩・休日の規定がない 休憩・休日の規定がある
残業代 無し 深夜手当有り
年収の要件 1,075万円以上 無し
対象の職種 有り 無し

裁量労働制では労働基準法の規定が適用され、年収の要件もなく職種も限定されません。労働時間については事前にみなし時間が設定され、22時から5時までの労働では深夜手当が付与されます。

高度プロフェッショナル制度のメリット


高度プロフェッショナル制度は生産性の向上、過労の防止、ワーク・ライフ・バランスの実現による離職率低下といった3つのメリットにつながります。

生産性が向上し企業の業績アップが期待できる

高度プロフェッショナル制度を導入することで、生産性が向上し企業の業績アップが期待できます。所定時間が決まった働き方ではたとえ同じ成果を上げたとしても、時間をかけた労働者に残業代が発生し賃金が高くなります。つまり残業代が発生するシステムでは短い時間で効率的に業務を進めるモチベーションが阻害されるのです。

高度プロフェッショナル制度では残業代が出ませんが、代わりに短時間で成果を上げる意欲が高まります。賃金が労働時間に左右されないため残業代目当ての業務がなくなり、メリハリをつけた働き方が重視されるようになるでしょう。効率的に働くためのモチベーションが高まれば、生産性が向上し企業の業績アップにつながります。

労働時間の調整がしやすく過労の防止につながる

高度プロフェッショナル制度を導入することで、労働時間の調整がしやすく過労の防止につながります。職務と求められる成果が明確に決められている高度プロフェッショナル制度では、労働者が自身で労働時間をコントロールできるからです。

決まった時間に労働に従事する必要がないため、成果を上げられる見込みがあれば労働時間を短縮することも可能です。労働者が労働時間を自身で調整しやすければ、それぞれに合ったペースで働けます。無理なく仕事を進められるため大きな負担が発生しにくく、過労の防止にもつながるでしょう。

ワーク・ライフ・バランスの実現により離職率の低下につながる

ワーク・ライフ・バランスは仕事と趣味や休養、育児といったプライベートな生活の両方の充実を目指す考え方のことです。高度プロフェッショナル制度なら労働者の裁量で働く時間が決められるため、それぞれに合わせたプライベートの時間が確保できます。

育児や介護といった家族に関わる事柄は時間の負担が大きく、仕事を続ける妨げとなる場合があります。プライベートの時間がしっかり確保できる環境なら仕事と生活が両立でき、離職の防止にもなるでしょう。また、ワーク・ライフ・バランスがうまくいっていると心にゆとりができ、仕事のパフォーマンス向上につながるのも一つのメリットです。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

高度プロフェッショナル制度には、労働時間が増える可能性や健康管理が難しいケース、導入条件や手続きの存在といったデメリットも存在します。

労働時間が増える可能性がある

高度プロフェッショナル制度では場合によって労働時間が増えることがあります。所定時間が決まっている労働形態では、たとえ成果が出なくても決まった時間に退勤が可能です。一方、成果を重視する高度プロフェッショナル制度では、求められる成果が上がらなければ労働時間が増加します。なかなか思うように仕事が進まなければ、休憩や休日なしで働かなければならないかもしれません。

使用者は労働者が休みなく働き続けないように休日の確保をすることが必要です。高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、年間104日以上で4週間を通じ4日以上の休日を付与することが求められます。

健康管理がうまくいかず体調不良を招くケースがある

高度プロフェッショナル制度では健康管理がうまくいかず、体調不良を招くケースがあります。成果が出せずに働き続けなければならない場合や、仕事とプライベートにメリハリをつけられない場合では、労働者は健康管理を疎かにするかもしれません。無理な長時間労働を続ければ体調を崩すことにつながります。

使用者は勤怠管理システムなどによって出退勤時刻を確認し、客観的な方法で労働者の健康管理時間を把握することが求められます。健康管理時間とは労働者がオフィスにいた時間に合わせ、オフィス以外の場所で働いていた時間も合わせた合計時間です。

高度プロフェッショナル制度を導入するには?

高度プロフェッショナル制度を導入するには、導入条件や手続き内容をクリアする必要があります。それぞれを解説します。

導入条件

高度プロフェッショナル制度を導入するには、対象労働者への健康確保措置の実施が必要です。使用者は客観的な方法によって健康管理時間を把握します。
また、高度プロフェッショナル制度には労働基準法の休日規定が適用されないため、労使委員会の決議によって休日取得の手続きを明らかにすることが求められます。使用者は一年間に104日以上、かつ4週間を通じて4日以上の休日を付与しなくてはなりません。

そして選択的措置として、健康管理時間の上限措置または勤務間インターバルの確保、連続二週間の休暇付与、臨時の健康診断の実施のいずれかの1つ以上を実施する必要があります。労働者の健康管理時間が一定を超えた場合は、産業医など専門家の面接指導も実施しなければなりません。

出典:厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」(参照:2022-07-18)

手続き内容

高度プロフェッショナル制度の導入では、職務内容や制度適用について職務記述書などの書面に署名をもらい労働者本人の同意を得ることが必要です。その上で労使委員会を設置し、対象業務や対象労働者の範囲、健康管理時間の把握、休日確保、選択的措置、健康福祉確保措置、同意撤回の手続き、苦情処理処置、不利益取扱の禁止、その他厚生労働省省令で定める事項について決議していきます。決議内容は労働基準監督署に届け出なくてはなりません。

出典:厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」(参照:2022-07-18)

高度プロフェッショナル制度の導入には職場環境改善の見直しを

高度プロフェッショナル制度の導入は生産性向上や労働時間の調整、ワーク・ライフ・バランスの実現といったメリットがある一方、労働時間の増加から体調不良の懸念が発生するというデメリットも考えられます。高度プロフェッショナル制度の対象労働者がいる場合は、職場環境改善やメンタルヘルスケアが必要です。

株式会社Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスです。『産業医コンシェルジュ』では、メンタルヘルス問題に対応できる経験豊富なプロ産業医の紹介をしています。職場のメンタルヘルスケアをお考えの方はお気軽にご相談ください。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
「ストレスチェックを初めて実施するので不安…」

そんなお悩みを抱える労務担当者の方はいませんか?
Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

関連記事