健康経営・職場改善

健康経営の目標設定で大切な3つのポイントとは?企業の成功事例も紹介

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更新日:2023.02.23

健康経営に取り組む企業が増えています。従業員の健康を守る健康経営は、企業にとっても大きなメリットをもたらします。しかし、健康経営の目標設定に悩む企業は少なくありません。

ここでは、健康経営の概念や、目標設定の方法や大切なポイントを解説します。健康経営に成功した企業の事例も紹介するので、自社の目標設定にお役立てください。

そもそも健康経営とは

健康経営とは、ロバート・ローゼン氏が提唱した「ヘルシーカンパニー」という概念に基づく取り組みです。ロバート・ローゼン氏はアメリカの学者で、臨床心理学に深く貢献しています。健康経営の目的は、企業側が従業員の健康管理を戦略的に実施することです。

健康経営に取り組むと、企業は保険料や医療費の負担を削減でき、休職者や退職者の発生を抑えられます。労働時間の短縮や職場環境の改善に取り組めば、従業員満足度の向上が可能です。従業員を大切にする企業だと世間から評価されると、優秀な人材が集まることも期待できます。

一方、健康とは抽象的なものであるため、成果の確認や目標を決めることが難しいと言えるでしょう。

健康経営における目標設定の前に確認すべきこと

健康経営は企業にとってメリットが多い一方、取り組み方が難しいといった一面もあります。健康経営では特に目標設定が重要です。目標設定の前に経営者がやるべき内容について以下で解説します。

経営者が健康経営の重要性を認識する

健康経営の目標を掲げて従業員に行動を促すためには、経営者や経営陣が自ら率先して活動に取り組む必要があります。トップが動くと、従業員は健康経営の意義を感じられるためです。

健康経営に取り組む姿勢を取引先や世間に発信するためにも、トップの動きは重要です。健康経営を絡めた内容を経営理念として明文化することで、多くのステークホルダーにメッセージを伝えられます。

また、従業員の健康保持・増進を推進するに当たって、就業ルールの見直しが求められるケースがあります。健康経営の企画立案の段階から、役員会で討議して体制を整えておくことが大切です。

従業員の健康に向けた組織体制づくりを行う

健康経営の目標設定を行うには、従業員の健康保持や増進を重視する組織体制が必要です。専門組織は既存の部門から適切な人材を選抜して構築します。

社内の人間が専門組織を担当することによって、組織の課題や取り組むべき内容が明確になる可能性があるからです。啓発される従業員側としても、身近な存在からの言葉なら受け入れやすいと考えられます。企業規模にもよりますが、専任が難しければ兼務でも構いません。

目標設定後の取り組み効果をさらに高めるなら、健康経営アドバイザーなどの専門資格を持つ従業員を組織に加えることも有効的です。専門資格を持つ従業員がいない場合は、担当者を外部研修に参加させたり、外部の成功事例の資料を集めたりして健康経営の知識を深める必要があります。

さまざまな主体が連携する

従業員の健康保持・増進を推進するには、経営者や経営陣に加え、産業医や健康保険組合、労働組合、従業員などさまざまな人材やグループとの連携が必要です。所属の異なる大勢で活動することで、現時点の健康に関わる取り組みを把握でき、健康経営の目標設定を進めやすくなります。

健康経営に詳しいコンサルタントやアドバイザーなど、外部からのアドバイスも有益です。専門知識があれば、根拠に基づく目標設定ができるでしょう。

従業員の健康状態を把握しておく

健康経営における目標を立てる前提として、従業員の健康状態を把握しておく必要があります。新しくデータを取得するよりも、まずは企業や健康組合などが保有するデータを使いましょう。

企業が保持する定期健康診断やストレスチェックの結果、長時間労働の状況に関する情報、健康保険組合が保有する特定健康診断の結果や処方箋などに関するレセプト情報などを入手し分析します。医療費の情報や、労働時間、従業員の年齢や性別などの属性を考慮すると高度な分析が可能です。

分析の結果、企業全体や部門ごとの健康課題を把握できます。分析結果を基に、メンタルヘルス不調者が多い、医療費が多いなどの課題を見つけ、目標設定に反映させてください。

健康経営目標設定のポイント

健康経営目標設定のポイント
健康経営における目標値の決め方や、目標達成までの期間を設定する重要性などを以下で解説します。健康経営の目標設定を行う際は、進捗状況に応じてレベルアップしていくことが大切です。

目標設定は数値化する

健康経営における目標設定は数値化する必要があります。曖昧な目標では、健康経営の効果を十分に得られません。数値を取り入れることで目標を捉えやすくなり、健康経営の効果を可視化できます。可視化により進捗を把握しやすくなると従業員のやる気も促せるでしょう。

曖昧な目標設定の具体例としては、以下のような内容が挙げられます。

・医療費を削減する
・喫煙者数を減少させる
・有給休暇取得率を向上させる
・時間外労働時間を減らす

また、数値化した具体的な目標設定の具体例としては、以下のような内容が挙げられます。

・現在の医療費を基準とし、翌年は10%削減する
・現時点の喫煙率が25%であるので、2年後までに喫煙率を5%にまで減らす
・有給休暇取得率が現在は70%であるので、翌年は75%にまで向上させる
・現時点の時間外労働時間が月20時間であるので、翌年は15時間以内にまで減らす

目標ごとに期間を定める

健康経営の目標は小刻みに設定することがポイントです。本格的に取り組むためには、小刻みに期間を定め、適時施策を見直す必要があります。数年後の数値を設定しただけでは、予定どおりに施策が進行していなくてもなかなか気がつきません。

例えば「5年後の喫煙率10%以下」を目標にしたとします。現時点で喫煙率が25%の場合、毎年3%ほど喫煙率を抑えていけば5年後には目標を達成できていると考えられます。

また、目標は細分化すると数値化しやすくなります。「高ストレス者の減少」を課題とするならば、「時間外労働時間の短縮」「ストレスチェック受検率向上」などの小さな目標を設けて管理することが大切です。

目標設定は徐々に高くしていく

健康経営は、長期間持続して取り組むものです。したがって、初めから過酷な目標を設定しても、従業員の反発を生む可能性があります。また一時的に目標を達成できても、すぐに元の状況に戻ってしまうことも考えられます。健康経営の基本的な目的は、従業員に健康への意識を芽生えさせ、健康的な行動の習慣化です。

まずは取り組むべき課題に応じて実現可能な目標を掲げ、達成できたら、徐々に高い目標にシフトしてください。

例えば、従業員に運動する習慣を取り入れてもらいたいとします。お昼休みに5分間ストレッチを取り入れるなど実現できそうな目標であれば、取り組みやすいと考えられます。

また、目標達成をサポートするため、運動管理アプリを導入する、運動の時間や内容に応じてポイントを付与するなどの施策を取り入れると、モチベーションを高められるでしょう。

健康経営目標設定の事例

健康経営目標設定の事例
健康経営の目標は企業によっても異なり、運動習慣定着率の向上、喫煙率の抑制などさまざまです。健康経営を推進する企業の事例を以下で紹介します。健康経営における目標や得られた効果を知り、自社の目標設定の参考にしてください。

ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社では、健康の土台となる8つの指標をつくりました。従業員は、各自で取り組む指標を宣言して改善に取り組みます。8つの指標は以下のとおりです。

・貧血改善
・喫煙率0%
・8000歩早歩き20分
・健全年齢<実年齢
・30分週2回以上の運動
・適正飲酒量
・睡眠時間6.5時間以上
・メタボ脱出

8つの目標は2017年に制定され、2023年を期限としてそれぞれ目標値が決められています。

喫煙率は、2020年4月の時点で喫煙していない従業員が99.9%に到達しました。また、メタボ脱出については、改善に取り組んだ全員が自身で掲げた目標を達成しています。(※)

※出典:健康経営における2023年に向けた健康目標値を設定 | ロート製薬株式会社

サントリーホールディングス株式会社

サントリーホールディングス株式会社は、2016年に健康経営宣言を行いました。「サントリー健康白書 2021」では、2025年の目標値として以下の課題が掲載され、2020年時点での状況も報告されています。

・喫煙率
・運動習慣定着率
・生活習慣改善取り組み率
・特定保健指導基準対象者率
・ストレスチェック結果 非高ストレス判定率

喫煙率は2019年の実績が22.1%であったのに対し、2020年は20.1%まで減少しました。また、運動習慣定着率は2019年の実績が24.4%であったのに対し、2020年は26.3% にまで向上したそうです。2025年に向け、同社では引き続き健康経営が続けられます。(※)

※出典:サントリーグループの健康経営 サントリーグループのサステナビリティ│サントリーホールディングス株式会社

株式会社三菱ケミカルホールディングス

株式会社三菱ケミカルホールディングスでは、2017年4月より「KAITEKI 健康経営」を推進してきました。KAITEKI 健康経営とは、健康支援と働き方改革を両立すべく、ICTとIoTを活用しながら従業員を支援する取り組みです。

同社では、「いきいき活力指数」・「働き方指数」・「健康指数」の3つの課題をベースに、2020年度の目標を以下のように定めています。

・いきいき活力指数:健康サーベイでポジティブな選択を15%以上高める
・働き方指数:健康サーベイでポジティブな選択を10%以上高める
・健康指数:健康基準の10項目において、従業員全員が項目を1つ以上増やす

また、同社は「三菱ケミカルは決めました」で健康経営の施策を「33の宣言」にまとめて発表しています。(※)

※出典:ステークホルダーとともに:従業員とともに|KAITEKI健康経営の推進

株式会社ベネフィット・ワン

株式会社ベネフィット・ワンは、健康診断、生活習慣、メンタルヘルス、休養関連を課題とし、健康経営に取り組みました。

同社では、従業員が自身の健康状態を可視化できる健康ポータルサイトの開設や、ゲーム感覚で健康を推進する健康ポイントの導入、就業時間内の禁煙などの施策を実行しています。

取り組みの結果、定期健診後の精密検査受診率が2019年度に20.10%であったのに対し、2020年度には41.40まで向上しました。また、血圧リスクを抱える従業員の割合が、2018年度には1.00%であったのに対し、2020年度には0.60まで減少しています。(※)

※出典:健康経営-benefit-one|健康経営への取り組み

まとめ

健康経営に取り組むことで従業員はもちろん、企業も多くのメリットが得られます。健康経営のポイントは、適切な目標を設定して継続することです。企業の成功事例を基に目標設定を行い、健康経営に取り組んでください。なお、健康経営の専門組織をつくる際は、産業医の活用も有効的です。

Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスとして、多くの企業に導入されています。ご相談やお見積りは無料ですので、お気軽にお問合せください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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