産業医の役割・選任

産業医報酬の勘定科目とは?源泉徴収・消費税の取り扱いについて解説

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更新日:2023.06.24

会計や仕訳の際には勘定科目の記入が重要ですが、産業医に支払う報酬の勘定項目は、どのような取り扱いになるか詳しくわかっている人は少ないと思います。

本記事では、法人医師と個人医師で勘定科目が異なる理由や源泉徴収税・消費税の取り扱いなどについて解説しています。

産業医に対する報酬勘定科目について確認したい場合は、ぜひ参考にしてください。

産業医報酬の勘定科目

そもそも勘定科目とはどのようなものなのでしょうか。勘定科目の概要や産業医に対する勘定科目の分類について解説します。

なお、産業医の基礎知識や設置基準については以下の記事で詳しく解説しています。

産業医とは?設置基準や仕事内容、報酬相場や探し方を解説

そもそも勘定科目とは

勘定科目とは、企業で発生する費用などを帳簿に記載する際に使う分類の総称です。勘定科目を設定し、帳簿などに用いるのは、社内の金銭の流れを明確にする目的があります。

一般的に使用されている勘定科目の例は以下です。

勘定科目の主な5グループ 勘定科目の例
1 資産 現金、売掛金、建物、土地
2 負債 買掛金、支払手形、借入金
3 純資産 資本金、新株予約権
4 収益 売上、受取利息、雑収入
5 費用 仕入、水道光熱費、給料、事務用品費、旅費交通費、福利厚生費

勘定科目は、経営判断の材料としても重要です。年度末には、決算として財務諸表を作成します。

決算書として必要なのが、資産状況をまとめた「貸借対照表」や経営実績を把握するための「損益計算書」です。これらの決算書を作成する際の計算材料として勘定科目には重要な役割があります。その他、確定申告の計算材料としても勘定科目が必要です。

産業医報酬の勘定科目の2つの分類

産業医には、医療法人に勤務する法人医師と開業医の個人医師が存在します。

そして、法人医師と個人医師のどちらかによって、勘定科目の分類が異なります。

法人医師の場合:「福利厚生費」

産業医として働く法人医師に支払われる報酬の勘定科目は、福利厚生費として処理します。

これは、医療収入の一部として扱われるためです。

企業が法人医師の報酬を支払う場合、企業から法人に報酬を支払い、医療法人から医師に報酬が支払われるのが一般的です。企業は法人医師に直接報酬を支払うわけではないため、給与では計上しません。

個人医師の場合:「給与」

一方、個人医師の報酬は、給与として処理します。

個人医師への報酬は企業から個人医師へ直接支払われるため、給与として捉えられます。

法人医師と個人医師の勘定科目を間違えると、自社での源泉徴収の処理に影響を及ぼす可能性があるため注意してください。

産業医報酬は源泉徴収が必要?

源泉徴収とは、事業者が前年度の所得税を目安に、従業員の給与から所得税を事前に徴収することです。

勘定科目が福利厚生費か給与かによって、源泉徴収の扱いは変わります。

法人医師と個人医師それぞれの報酬に対して源泉徴収が必要なのか、以下で解説します。

法人医師は源泉徴収が不要

企業側は消費税を含む報酬額を医療法人に支払うため、法人医師の源泉徴収は不要です。

医療法人側が派遣した産業医が受ける報酬は「その他の医業収入」となり、消費税の課税対象になります。したがって、法人医師の源泉徴収は医療法人側で行い、企業の対応が不要であることが一般的です。

個人医師は源泉徴収が必要

個人医師に対して報酬を支払う場合は、原則として企業側で源泉徴収が必要です。

企業側で個人医師に支払う際、勘定科目は給与となるため、一般的には源泉徴収税額表の「乙欄」で源泉徴収をすることになります。

企業側は他の従業員と同じように年末に源泉徴収票を発行し、産業医が自分で確定申告を行うことが一般的です。

勘定科目の取り扱いや源泉徴収などへの対応を間違えないようにしましょう。

産業医報酬の源泉徴収税額の計算方法

「給与所得の源泉徴収税額表」を使った、給与に対する源泉徴収税額の計算方法を採用します。

こちらの源泉徴収税額は、計上額や扶養家族の人数などによって、計算方法が変わります。また、月払いの場合、日払いの場合でも、それぞれ計算方法が決められているので、不安な場合は国税庁のホームページで確認しましょう。

※参考資料:国税庁 給与所得の源泉徴収税額表(令和 5 年分)

※参考資料:国税庁 令和5年給与所得の源泉徴収税額の求め方

産業医報酬は消費税がかかる?

前述で、源泉徴収を見てきましたが、消費税はどうでしょうか。

こちらも法人医師と個人医師のどちらかによって、消費税の課税・非課税が異なります。

法人医師は消費税がかかる

「法人」及び「医療法人」から、派遣された産業医に支払う報酬は、源泉徴収が不要な一方で、消費税は課税対象となります。こちらは「医療法人のその他の医業収入」となるためです。

個人医師は消費税がかからない

一方、個人医師に対する消費税は不課税となります。

原則として給与収入に分けられるため、源泉徴収が必要ですが、消費税はかかりません。

このように、法人医師と個人医師のどちらを産業医に選定するのかによって、報酬の勘定科目の処理方法や消費税の課税の有無、源泉徴収の対処方法が異なります。

ただ、状況や条件によって、別の課税関係が発生する場合もあります。

※参考:産業医の報酬|国税庁

【表あり】産業医の勘定科目に関する注意点

産業医が個人経営の医師にもかかわらず、勘定科目を福利厚生費で計上してしまうなどのミスが起こりやすいため、企業の担当者は注意が必要です。

産業医の勘定科目をまとめた下記の表を参考にしてください。

法人医師 個人医師
勘定科目 福利厚生費 給与
源泉徴収 不要 対応が必要
消費税 課税あり 課税なし

産業医の勘定科目に関する注意点をまとめると、以下の通りです。

【法人勤務医】

    • ・医療法人に支払った法人医師の報酬は福利厚生費で計上する
    • ・法人医師の源泉徴収は医療法人側で処理されるため企業側での対応は不要
    • ・医療法人に報酬を支払う際は消費税を含む

【個人医師】

    • ・個人医師に支払う報酬は給与で計上する
    • ・支払った報酬は企業側で源泉徴収の対応が必要
    • ・個人医師への報酬に対する消費税は不課税となる

まとめ

産業医の報酬の勘定科目は、法人に所属する医師なのか個人経営の医師なのかによって異なります。

勘定科目を間違えると源泉徴収税や消費税の取り扱いが変わってきます。

勘定科目を適切に処理するためにも、それぞれの特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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