健康経営・職場改善

リテンションマネジメントとは?メリットや実施に必要な要素・企業の取組み事例も紹介

日付
更新日:2023.02.27

リテンションマネジメントとは企業が人材を定着させて活用するための手法です。人手不足が深刻化する現代では、リテンションマネジメントによる労働力確保が注目を集めています。リテンションマネジメントを実行することで、企業は生産性を向上させ、採用や育成のコストを抑えられます。本記事ではリテンションマネジメントの意味や背景、企業にとってのメリット、実施するため必要な要素を解説します。ぜひ参考にしてください。

リテンションマネジメントとは

まずは、リテンションマネジメントの意味や必要とされる背景を解説します。

リテンションマネジメントの意味

リテンション(retention)とは維持や保持、引き留めるといった意味です。人事の分野で使われる場合には人材の確保といった意味合いになります。マネジメントとは資産や資源、リスクなどを管理し、ビジネスにおける効果を最適化することです。2つを合わせたリテンションマネジメントとは、人材の定着や活用のための管理手法を指すます。

リテンションマネジメントは企業に人材を長く定着させ、従業員が個々の能力を発揮できるよう促すことが目的です。場合によってリテンションマネジメントは、優秀でハイスキルな人材に限定して定着や活躍を促す方法と定義されています。

リテンションマネジメントが必要とされる背景

リテンションマネジメントが必要とされる背景には、少子高齢化による人材不足があります。少子高齢化が進んでいる現代、全体における労働人口は減少傾向です。全体的に若年層が少ないため新規採用者は減少し高齢従業員が退職していけば、人材不足はますます深刻な問題になるでしょう。

また、就職後すぐに離職する従業員も少なくありません。一度就職したら定年まで働き続けるのが当たり前だった終身雇用の時代は終わりを迎え、若年層が早期離職することが一般的になっています。就職した企業とのミスマッチがあれば、転職すればいいと考えている人も少なくありません。コストをかけて育成した従業員が離職すると企業にとっては損失です。人材を定着させる方法としてリテンションマネジメントが注目されています。

リテンションマネジメントによる主なメリット

テンションマネジメントによる主なメリット
リテンションマネジメントによる主なメリットは、採用や育成コストを抑えられること、事業計画が立てやすくなること、労働生産性や顧客満足度の向上につながること、企業イメージアップにつながることの4点です。それぞれ解説します。

採用・育成に必要なコストを抑えられる

従業員の採用や育成にはコストがかかります。採用活動や研修、業務指導といった人材育成では取引先や売上が増えないため利益が発生するわけではなく、採用や育成は企業にとって未来への投資です。入社した従業員がすぐに辞めてしまえば、企業にとっては赤字となってしまうでしょう。また離職によって人手が減ると、再び人材を採用する必要があります。

リテンションマネジメントによって人材が定着するようになれば、採用活動を頻繁にする必要がなくなり、育成にかけた費用も無駄にはなりません。採用や育成にかかるコストを抑えるためには、リテンションマネジメントが有効です。

事業計画を立てやすくなる

リテンションマネジメントによって労働力が安定すると事業計画が立てやすくなります。長期的な戦略を考えることは、事業の持続的な発展に欠かせません。しかし、人材の出入りが激しいと労働力が一定でなくなり、計画通りの人員配置ができないため事業の見通しが立ちません。

リテンションマネジメントがうまくいけば人材の入れ替わりが少なくなり、従業員それぞれの得意不得意を見極められます。人材を適材適所に配置することは業務効率の改善であり、企業の競争力の強化につながります。従業員が長く勤務することで自社をよく理解でき、仕事も円滑に行えるでしょう。

労働生産性・顧客満足度の向上につながる

リテンションマネジメントを実践することは、労働生産性や顧客満足度の向上にもつながります。仕事に慣れ効率的に業務を進められる従業員が多いほど、企業の労働生産性の向上につながるでしょう。反対に人材の入れ替わりが多いと引き継ぎや教育といった本業には関係のない仕事が増えてしまい、全体的な業務負担が増加します。

また、人材が定着することで顧客からの信用の獲得が期待できます。いつも同じ従業員が接客することで親しみが感じられるため、顧客は企業に対して安心感を得られます。従業員としても長く勤務することで顧客満足度の高い接客ができるようになるでしょう。

企業のイメージ向上につながる

リテンションマネジメントによって従業員が長く働き続けるようになれば、企業のイメージアップに役立ちます。例えば離職率が高い企業は、待遇が悪い、体質が古いなど、従業員を大切にしないブラック企業のようなイメージを持たれやすいです。売り手市場の現代において、就職活動中の学生などからも人気を得られません。一方で離職率が低ければ企業は良いイメージを持たれやすく、就職活動を行っている若年層に注目されやすいです。

なお離職率が低い企業は、消費者からも良いイメージを持たれる傾向があります。消費者は利益ばかり追求する企業に対して反感を覚え、その企業の商品への購買意欲が低下することも少なくありません。社員を大切にして社会貢献をしている企業は、消費者の支持が得られるため売上を伸ばせるでしょう。

リテンションマネジメントを実施する際に必要な要素

リテンションマネジメントを実施する際に必要な要素
リテンションマネジメントを実施する際に必要な要素は、従業員エンゲージメントを高めること、職場環境を整備すること、人材育成に注力すること、従業員の健康管理をすることの4点です。それぞれ詳しく解説します。

従業員エンゲージメントを高める

リテンションマネジメントを行うには従業員エンゲージメントを高めることが必要です。従業員エンゲージメントとは、従業員の企業に対する貢献意欲ともいえます。例えば、従業員の企業に対する愛着やモチベーション、積極性、理念やビジョンに共感しているかなどのことです。

それらを実現するには、企業側から従業員へどのようなアプローチをするかが重要です。従業員が見える場所を利用して、社内制度や取り組みの背景、社内で活躍している人材の共有などを行うと良いでしょう。そのためには、社内ポータルやイントラネットの掲示板などを活用し、従業員がいつでも閲覧できる環境を整えることが大切です。

また、従業員エンゲージメントが高い企業では顧客に対するサービスの質も良くなります。従業員が仕事に意欲的に向き合うことで、アイディアが生まれることも多く、効率改善に効果的です。その他、福利厚生の充実を図ることも従業員エンゲージメントを高めることにつながります。

職場環境や制度を整備する

リテンションマネジメントのためには職場環境や制度の整備が大切です。従業員にとって職場が快適だと、仕事への満足感が向上し定着率アップにつながります。例えば、リモートワークを取り入れることや、時短勤務など柔軟な働き方を認めることで、従業員は個々に合った働き方を選びやすくなるでしょう。

また、近年ではワーク・ライフバランスを重視する労働者が増加傾向です。ワーク・ライフバランスがとれている職場とは、労働時間が長すぎず休暇が取りやすく、育児中の従業員への支援に積極的で副業を認可していることなどが挙げられます。要するに従業員が仕事だけでなく生活も大切にできることがポイントです。

人材育成や能力開発に注力する

従業員の離職を防ぎリテンションマネジメントにつなげるためには、人材育成や能力開発に注力することも効果的です。従業員の育成に力を入れることは、企業だけでなく従業員にとってもメリットが大きいものです。従業員が成長を通してやりがいを感じることで、モチベーションアップにつながるでしょう。

企業は従業員の目標管理を行うとともに、キャリアプランに沿ったジョブローテーションなどを実施することが大切です。従業員が希望するキャリアプランやスキル、強みなどを把握するためには、企業の上司と部下との間でのコミュニケーションが活発で、信頼関係が築かれている必要があります。メンター制度を導入したり面談の機会を設けたりすることなどで、組織内の意思疎通が活発になるでしょう。

従業員の健康やメンタルヘルス管理をする

リテンションマネジメントを実行するには、従業員の健康やメンタルヘルスの管理が大切です。心身に不調を抱えて働き続けることは難しいため、体調不良を抱えた従業員は離職を選択しやすくなります。従業員の健康管理のためには、定期的な健康診断やストレスチェックの実施が重要です。従業員の健康状態やメンタルの状態が可視化されるツールを導入するのも一つの方法といえます。

また、産業医を導入することで、企業は職場環境改善のためのアドバイスを受けられます。従業員は産業医による健康相談を受けられ、健康管理やストレスコントロールに役立てられます。産業医の導入によって従業員の健康管理がしやすくなるでしょう。

ストレスチェックや産業医に関して詳しくはこちらを参考にしてください。

【ストレスチェック】
https://dr-hpm.co.jp/column/column_tag/stress-check/
【産業医】
https://dr-hpm.co.jp/column/column_tag/sangyoui/

【事例】リテンションマネジメントに取り組んでいる企業

リテンションマネジメントに取り組んでいる企業の事例を2つ解説します。

クックパッド株式会社

クックパッド株式会社では従業員の主体的な活動を支援し、リテンションマネジメントにつなげています。また、コアタイムの設定がないフルフレックスタイム制を採用しているため、自由な働き方が実現できます。

同社では他の部署を約2カ月間体験できる社内留学制度や、グローバル人材育成のための海外研修制度が利用可能です。

また、毎日新鮮な食材がオフィスに届き、設置されたキッチンで自由にまかないが作れたり、社内コミュニケーションの活性化をサポートする部活動があったりなど特徴的です。なお、部活動を行う際には活動費用のサポートを受けられます。

※出典:クックパッド株式会社|採用サイト

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社では、100人いたら100通りの働き方があってもよいという考えのもと、多様な働き方を推奨しています。かつては人材の採用や定着に課題があった同社ですが、多様な働き方ができるようワークスタイルを変革したところ、離職率を低下させることに成功しました。

例えば働き方宣言制度では、働く時間や場所を従業員が決められます。子連れ出勤制度によって、育児中の従業員でも働きやすい環境が整っているのも特徴です。また、副業が許可されており、報告する必要もありません。

※出典:ワークスタイル|サイボウズ株式会社

まとめ

リテンションマネジメントとは人材の定着や活用のための管理手法のことです。リテンションマネジメントを実行することで企業は離職率を低下させ、人材育成のコストを抑えたり、長期的な事業計画立案が可能になったりなど労働生産性を上げられます。

リテンションマネジメントを成功させるには、自社の課題を把握し施策を考えて改善していくことが大切です。取り組み企業の成功事例を参考に、自社に合った施策を取り入れてみてはいかがでしょうか。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
「ストレスチェックを初めて実施するので不安…」

そんなお悩みを抱える労務担当者の方はいませんか?
Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

関連記事