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大人の発達障害の特徴とは?職場でできる対策方法や配慮が必要なポイントを解説

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更新日:2022.11.21

大人の発達障害については、近年メディアなどでも取り上げられることが珍しくありません。発達障害の特性は仕事をする上で、さまざまな困難を引き起こすケースがあります。活き活きと働き続けるためには発達障害について本人はもちろんのこと、周囲も理解することが大切です。

本記事では、大人の発達障害の種類や職場でできる対策などを解説します。ぜひ参考にしてください。

そもそも発達障害とは?

発達障害とは脳の機能に偏りがある状態のことです。発達障害では学習やコミュニケーション、一つの作業に集中することなどが苦手なケースも多く、日常生活に困難を引き起こすことがあります。

発達障害者支援法において発達障害は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。(※)

※出典:発達障害について|文部科学省

大人の発達障害の主な種類


大人の発達障害の主な種類は、自閉症スペクトラム、注意欠如・多動性障害、学習障害、発達性強調運動障害、読み書き障害、算数障害の6種類です。それぞれについて詳しく解説します。

自閉症スペクトラム(ASD)

ASDとはAutism Spectrum Disorderの略です。自閉症スペクトラムとは、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット症候群、不特定広範性発達障害といった5つの障害の総称です。

自閉症スペクトラムでよく見られる症状は、社会コミュニケーション障害と限定的、反復的な行動です。ただし症状の現れ方は一定ではなく、話すのが苦手な人からむしろ話好きで流暢にしゃべる人までさまざまなケースが見られます。

自閉症スペクトラムには表情や視線、身振りといった非言語的な要素から他者の気持ちを読み取ったり、自身の考えを他者に伝えたりすることが苦手だという特性があります。また柔軟性にも欠ける傾向です。環境の変化への対応につまずくことも多く、合わない環境下では本来の能力を発揮できないケースが多いです。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

ADHDとはAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略です。注意欠如・多動性障害には注意力散漫、多動、衝動的といった3つの特徴があります。

例えば注意欠如・多動性障害だと、1つのことを集中して考え続けるのが苦手で、周囲からは注意力が散漫だとみなされることがあります。反対に、興味のあることに対しては過集中を起こすことも珍しくありません。また、気が散りやすいため複数のタスクを並行してこなすことも得意ではありません。

衝動性があり突発的な行動をとりやすいため、空気を読まず思ったことをそのまま発言してしまったり、感情のコントロールが苦手だったりするなどの側面もあります。ケアレスミスが多く、忘れ物や遅刻が多いのも特徴です。

学習障害(LD)

LDとはLearning Disabilityの略です。学習障害とは読み書きや聞くこと、話すこと、推論、計算などを苦手とする特性です。全般的な能力障害が見られる知的障害と違って、学習障害は大体の能力が平均値であるにもかかわらず、特定の分野を苦手とします。

学習障害では聴覚や視覚からの情報を処理し、短期記憶として保持しておく能力や、物事の順番を認識する能力のバランスが崩れていることが、特定の分野を不得意とすることにつながっています。

読むのが苦手な相手には、文字ではなく音声で伝えることで情報伝達が円滑になるでしょう。反対に聞くのが苦手な相手なら、指示を文字に起こして伝える必要があります。

発達性協調運動障害(DCD)

DCDとはDevelopmental Coordination Disorderの略です。発達性協調運動障害とは筋肉や神経、視覚、聴覚などに異常がないにもかかわらず、協調運動がぎこちなく日常生活に支障をきたすような特性をいいます。

協調運動とは手足の動きや、見たり触ったりすること、身体の姿勢などの複数の動きを同時に行う運動のことであり、日常生活の動作を行う上で協調運動ができることは重要です。

発達性協調運動障害では身体を動かすこと全般や、器用さを必要とする細かい作業が苦手な場合が多く見られます。仕事においては苦手な動作を必要とする業務を避け、得意な作業を任せることや、動作がぎこちなくてもひやかさないことが重要です。

読み書き障害

読み書き障害とは文字どおり、読んだり書いたりすることが苦手な特性のことです。ディスレクシア(dyslexia)と呼ばれることもあります。読み書き障害は知的障害がないにもかかわらず、文字を読むことや書くこと、またはその両方に限定した能力障害が見られます。

読むのが苦手な人は文字の視覚処理や音韻処理に障害があるため、文字の認識が難しいのではないかというのが通説です。また、視覚認識などの偏りによって、文字の形が大勢の人とは違って見えている場合でも読み書きが困難になることがあります。対面でのコミュニケーションには問題がないことが多く、周囲からは気づかれにくいのが読み書き障害の特徴です。

算数障害

算数障害とは計算や推論が苦手な特性のことです。ディスカリキュリア(dyscalculia)と呼ばれることもあります。読み書き障害と同様に、知的障害がないにもかかわらず、数や計算の概念を理解することや推論することに限定して能力障害が見られます。

数を数えることが苦手だったり、「多少」などの抽象的な数の概念が理解できなかったり、少数や分数の計算ができなかったりといった困難が算数障害の特性です。近年では算数障害に対応した専門機関もあり、苦手意識を払拭するための訓練などを受けられます。

大人の発達障害の従業員に職場でできる対策方法


大人の発達障害の従業員に対して職場でできる対策方法を解説します。対象者の状況を受け入れることや、具体的な指示、集中できる職場環境づくり、状況に応じた対応、責めずに褒めることなどによって、発達障害の従業員がより働きやすい環境を整えられます。

対象者の状況を受け入れる

発達障害は育て方や本人の努力が関係しない、生まれ持った特質です。本人がいくら頑張っても、苦手な分野について改善することは簡単ではありません。また、本人のためを思っていたとしても、できないことを指摘し続けるとうつ病などのメンタル疾患につながる恐れがあります。職場に発達障害の従業員がいる場合は、対象者の状況を受け入れることが大切です。

発達障害の従業員の仕事がなかなか進まない場合、急かしたり責めたりするのではなく、サポートを申し出てみましょう。発達障害の特性の現れ方はさまざまですが、仕事のほんの一部を苦手としており、それさえ解決すれば残りの業務は自力でできる場合が少なくありません。また、苦手な作業に関しても、分かりやすく指示を出すことでスムーズにこなせるようになる場合があります。

曖昧ではなく具体的な指示をする

発達障害の従業員の中には、空気を読んで周囲と協力しながら作業することが苦手な人も少なくありません。曖昧な指示では何をすればいいのか分からず、作業が滞ったり孤立してしまったりすることがあります。指示を出したにもかかわらず仕事が進んでいない場合は、サボっているのではなく仕事のやり方で悩んでいるのかもしれません。

指示を出す際はできる限り具体的にすることが大切です。何をどういう手順で、いつまでに終わらせる必要があるのかをはっきりと示してください。また、詳細な業務マニュアルがあれば細かな指示を出さずとも、仕事を円滑に進めやすくなるでしょう。

集中できる職場環境をつくる

発達障害には気が散りやすいという特性があるため、騒がしい環境では仕事に集中できないケースがあります。また、発達障害では感覚過敏であることも珍しくありません。感覚過敏の場合、照明や光、室温といった刺激に対して敏感に反応することがあります。また、職場に不要な物がたくさん置いてあると、視覚情報の多さから注意散漫になることも少なくありません。

快適な職場環境をつくるためには、騒音や室温、証明などについて定期的に従業員アンケートをとる方法も有効的です。また、従業員が集中できる環境をつくるために、個人のデスクをパーテションで仕切るといった施策もあります。

状況に応じた対応をする

発達障害の特性は人によって異なるため、周囲が状況に応じて対応することが求められます。発達障害の場合、自分のやり方へのこだわりが強いことが少なくありません。仕事のやり方で心配に思うようなことがあっても、頭ごなしに否定してしまうと対象者との信頼関係が壊れてしまう可能性があります。

仕事において注意する際は、さりげなくフォローすることが大切です。しかし、曖昧な表現では伝わらないことが多いため、改善点があれば具体的に説明する必要があります。また、メモをとることに時間がかかるケースがありますが、急かしてしまうとプレッシャーで余計に効率が悪くなってしまうことも少なくありません。仕事が遅いと感じる場合でも急かさずゆっくり見守っていた方が、結果的に作業スピードが早くなります。

できないことを責めずにできたことを褒める

発達障害である場合、誰でも簡単にできると思われることでも著しく苦手なケースが少なくありません。できないことを責めても改善するばかりか、従業員が萎縮してしまい、ますます仕事ができなくなる恐れがあります。苦手な作業に関して、本人自身も悩んでいることが多いため、できないことを責めるのは逆効果です。

発達障害の従業員の仕事効率が悪い場合、まずはできることとできないことを洗い出してみましょう。その上でできることに関しては褒め、できないことに関しては改善点を考えるか、他の従業員にサポートを頼むなどの工夫をすることが大切です。個人によって得意不得意は異なります。「一人が全ての業務を完璧にこなすことだけが重要ではない」という周囲の考えも大切です。

まとめ

本人や周囲が大人の発達障害についてきちんと特性を理解していないと、日々の業務で支障をきたす可能性があります。一口に発達障害といってもその分類は多岐にわたり、特性の出方は人によってさまざまです。環境が整っていないと従業員がメンタルヘルスに不調をきたしてしまうこともあります。発達障害について周囲が正しく理解し、サポートすることが大切です。発達障害についての理解やアドバイス方法について迷う場合は、産業医のような専門家に相談する方法もあります。
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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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