メンタルヘルス・ストレスチェック
うつ病だと自分で言う人への対応方法は?判断ポイントや注意点も解説
自分がうつ病だと従業員から言われたら、人事担当者としてほとんどの人が対応に迷うのではないでしょうか。
うつ病はとてもデリケートな問題で、誤った対処をしてしまうと最悪のケースの引き金になりかねません。それでは、うつ病と自分で言う人には、どう接すればいいのでしょうか。
この記事では、そんな時に慎重に対応できるよう、うつ病か判断する際のポイントや具体的なNG行動、人事担当者が実施するべき事項などについて、徹底解説します。
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目次
うつ病とは
うつ病とは、脳のエネルギーが欠乏した状態のことを指す、気分障害の1つです。
気分が強く落ち込む、憂うつ、やる気が出ないなどの精神的症状や、眠れない、体がだるいなどの身体的症状が現れるケースが一般的です。
原因となり得ることは様々で、仕事の失敗、家族との死別などの大きな出来事や、日々の積もったストレスでも発症すると言われています。また、結婚や妊娠、昇進など、本人にとって嬉しい出来事でも、環境変化によるストレスがうつ病の原因になり得ます。その他、原因が明確に見つけ出せないこともあります。
そして、もしうつ病の原因となった問題が解決したとしても、なかなか落ち込んだ状態が回復せず、日常の生活を送ることに支障が生じてしまうのが特徴です。
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うつ病の種類
まず、気分障害は大きく「うつ病性障害」と「双極性障害(躁うつ病)」に分けられ、いわゆる「うつ病」はうつ病性障害のなかの「大うつ病性障害」を指しています。
気分障害 | うつ病性障害 | 大うつ病性障害(いわゆるうつ病) |
小うつ病性障害 | ||
気分変調性障害 | ||
双極性障害(躁うつ病) | 双極Ⅰ型障害 | |
双極Ⅱ型障害 | ||
気分循環性障害 |
※参考:米国精神医学会の気分障害の分類
主なうつ病の種類を6つ紹介します。
-
- 1.メランコリー型うつ病
- 2.非定型型うつ病
- 3.季節型うつ病
- 4.産後うつ病
- 5.仮面うつ病
- 6.微笑みうつ病
1.メランコリー型うつ病
メランコリー型うつ病は、典型的なうつ病と言われています。数ヶ月気分が落ち込んだ状態が続き、眠れないことがあります。
何に対しても意欲が出ず、食欲もなくなり、自分が無価値であると思い込んでしまいます。また、自殺願望が出ることもあります。
2.非定型うつ病
非定型うつ病は、「新型うつ病」とも呼ばれています。メランコリーうつ病に比べて、20〜30代の女性に発症が多く、好きなことをする時には気分が晴れるのが特徴です。
食欲があり体重が増加する傾向があります。また、体が鉛なまりのように重く、過眠することもあります。
3.季節型うつ病
季節型うつ病は、特定の季節に発症することを指します。特に、冬に発症して春になると回復する人が多い傾向があります。
これは日光を浴びることで生成されるメラトニン不足が原因だと言われています。食欲が増し、炭水化物をよく食べます。
4.産後うつ病
産後うつ病は、出産後に発症するうつ病のことで、出産後の女性のうち10-15%に起こると言われています。
子育てに慣れず、慌ただしい日々の中で「自分は母親として失格だ」というような感情になり、落ち込み、自死を考えることもあります。
5.仮面うつ病
仮面うつ病とは、正式な診断名ではありませんが、身体症状のみがあらわれるうつ病です。
内科を受診しても異常がないのに、倦怠感や疲労感が2週間以上続く場合は、仮面うつ病である可能性があります。
6.微笑みうつ病
人前では明るい「微笑みうつ病」。こちらも正式な診断名ではありません。
心身ともにうつ状態であるにもかかわらず、人前では笑顔で振る舞ってしまう状態のことを指します。周囲からの目が特に気になる方や若い女性に多く、周りに気付かれづらいことが特徴です。
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うつ病ではない場合もある
そもそもうつ病は、自分で気づくことができるものなのでしょうか。
今は情報が多いので、うつ病のチェックリストなどで「うつ病」の可能性に自分で気づけるケースも多くあります。ただ、うつ病だと自分で言う人が、必ずしもうつ病であるとは限りません。
ここでは、うつ病ではない可能性についてお伝えします。
ただの疲れ
うつ病の症状として、気分の落ち込みや無気力がありますが、これはただの疲れの場合もあります。
見分け方として、通常の疲れは十分な睡眠や2〜3日の休みをとることで回復しますが、うつ病の場合、最低でも2週間以上気分の落ち込みが一日中続くと言われています。
最近の4〜5日など、比較的短期間の場合は、ただの疲れの可能性もあるでしょう。
うつ病以外のメンタル不調
自分でうつ病だと言っていても、うつ病以外のメンタル不調の場合もあります。
ここではうつ病に似ていると言われている、4つの症状を紹介します。
双極性障害
双極性障害は、気分が高まる躁状態と、気分が落ち込むうつ状態を繰り返す脳の病気です。
うつ病との大きな違いは、躁状態があることです。躁状態の時には、積極的に人との予定や外出などの予定を入れ、過ごすことができます。一方、うつ状態になると無気力になり、何もしたくなくなります。
現在では、双極性障害のうつ状態なのか、普通のうつ病なのかを明確に区別できる方法はなく、専門家であっても診断が難しいと言われています。
適応障害
適応障害は、うつ病と症状が似ていますが、発症の引き金となる原因が明確にある部分で違いがあります。原因となるストレスにさらされるとすぐに発症して、その原因となるストレスから離れると気分が回復することが特徴です。
一方うつ病は、原因がわからない場合もあり、原因となるものを取り除いても回復しないことがあります。
自律神経失調症
自律神経失調症は、不規則な生活習慣やストレスなどにより、自律神経のバランスが乱れて起こる心身の不調を指します。症状である慢性的な疲労、だるさなどはうつ病の症状と似ています。
自律神経失調症は、精神的な落ち込みはあまりありませんが、うつ病はひどく気分が落ち込んだり、やるせないほど悲しい気持ちになったりします。
全般性不安障害
全般性不安障害は、不安神経症とも呼ばれます。日々の生活でずっと漠然とした不安や心配を感じることで落ち着きがなくなり、心身ともに不調が出るものです。全般性不安障害とうつ病は密接な関わりがあり、お互いが引き金となり併発するケースも多いことが知られています。
その他、最近ではテレワークが原因となってメンタル不調が現れるケースもあります。詳しくは下記の記事をご参照ください。
嘘をついている
稀に、自分がうつ病だと嘘をついていることもあるでしょう。休職したいために感じている症状について嘘をつき、精神科から診断書をもらう人もいます。
ただ実際は全く症状がないので、精神科での治療や薬は拒否をする場合もあるようです。
そこで以下では、うつ病か判断するために有効なポイントをご紹介します。
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うつ病か判断するためのポイント
本当にうつ病かどうかを判断するには、どの部分を見れば良いのでしょうか。
実際診断を下せるのは専門医のみですが、人事担当者として知っておきたい知識をご紹介します。
うつ病の主な行動特徴
うつ病の人によく現れる行動の特徴を、場面別に紹介します。
職場でわかる行動の特徴
職場では、以下のような特徴が見られるでしょう。
-
- ・身だしなみに気を遣わなくなった
- ・急に体型が変化した
- ・遅刻や欠席が多い
- ・いつもイライラしている
- ・ずっと眠たそうにしている
- ・「絶望」「死にたい」などの発言を多用する
- ・「~しなければいけない」という表現を多用する など
家庭でみられる行動の特徴
ご家族に、家庭で見られる特徴に心当たりがあるか確かめることも有効です。
-
- ・過眠、過食をする
- ・家族と会話をしなくなる
- ・急に物忘れが多くなる
- ・長期間掃除をせず、部屋が汚い
- ・お酒の量が一気に増える など
うつ病を見抜く質問
うつ病を見抜くためのチェックポイントを質問形式でご紹介します。
3つとも当てはまった方は、うつ病である可能性が高いでしょう。
-
- ・ここ1ヶ月、何ごとにも興味がわかず、楽しくない
- ・ここ1ヶ月、気分が重く憂うつで、絶望的な気持ちだ
- ・ここ1ヶ月、疲れているのに、眠れない夜がある
特に、「寝ようとしても眠れない」「真夜中に何度も目がさめる」などの睡眠障害は、うつ病の方に多い事象です。睡眠を十分に取れているか、深掘りして聞き出すことも有効でしょう。
うつ病の人の表情の特徴
うつ病の人によく見られる代表的な表情をご紹介します。
-
- ・よく無表情になる
- ・ぼんやりしている
- ・作り笑いをしている
- ・よく悲しげな表情をする
- ・顔色が悪い など
表情は他人からも目に見えてわかりやすいため、職場での顔つきで周囲から気付けることもあります。
うつ病になりやすい人の性格傾向
うつ病になる人によく見られる性格があります。
-
- ・まじめ
- ・責任感が強い
- ・完璧主義
上記の3つの特性を持つ人は、その真面目さによって周囲からは高く評価されがちですが、自分の中にストレスや疲れを溜め込んでしまいます。
また、完璧主義であることも関係して、周囲の環境の変化に対して大きなストレスを感じてしまいます。
うつ病の本人が感じる意外な症状
うつ病には気分の落ち込みや倦怠感のみでなく、以下のような症状もみられます。
本人が感じる意外な症状として、11個お伝えします。
-
- ・急に会社を辞めたいと言う
- ・焦りでキャリアアップを考える
- ・当たり前のことが難しくてできない
- ・世界に一人になったような孤独を感じる
- ・自分が自分でないような感覚(離人感)
- ・誰にも会いたくない
- ・音楽が聴けなくなる
- ・映画やテレビが見られなくなる
- ・テレビをつけていないと不安
- ・眠るのがこわい
- ・すぐにのどが渇き、水が手元にないと不安
今まで問題なく実施していた簡単な仕事が、急にできなくなったり、ミスが増えたりします。
うつ病が進むと、音楽やテレビ、読書、入浴、食事をするのでさえも億劫になります。
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うつ病と自分で言う人との接し方
では、うつ病だと自分で言う人に対して、人事担当者はどのように接すれば良いのでしょうか。
やってはいけないNG例と、おすすめの対応をご紹介します。
【注意点】うつ病の人にやってはいけないこと
頭ごなしに否定しない
うつ病と主張する人の話を聞かず、頭ごなしに否定することは辞めましょう。
「一般論に〇〇だから」「だからあなたは〇〇なんじゃないですか」など、一般論を押し付けた説教などは、うつ病の人にとっては悪影響となり、最悪のケースの引き金にもなりかねません。
うつ病だと言う従業員からの相談には、誠意を持った態度で、真剣に対応するようにしましょう。
「がんばれ」と励まさない
うつ病の社員に対して、「がんばれ」「もうひとふんばりだ」「あきらめるな」などと励ますこともNGと言われています。
「自分が頑張っていないから周囲に迷惑をかけている」と自分を責め、うつ病を悪化させてしまう可能性があります。十分がんばっていることを認めるような声かけをしましょう。
無理に働かせない
心身の調子を崩しているのにも関わらず、無理に働かせることは辞め、適度な休息をとってもらいましょう。
休職せず、様子を見ながら継続的に働く場合は、夜勤やシフト制の業務には入れない、通院に配慮した勤務時間にする、など個々に対応するのがおすすめです。
うつ病と言われた時、人事担当として実施すること
うつ病という従業員への対応は、センシティブな問題のため迷うケースが多いかもしれません。
大きな問題が起きないよう、冷静に適切な対応をしていきましょう。
秘密保持とプライバシーの確保
うつ病のような精神的な病気は特に、プライバシーの確保が重要です。提供された情報は、むやみに口外せず、関係者間でのみ共有し、個人情報保護に十分な配慮を払いましょう。
従業員へ理解と共感を示す
うつ病は、誰でもなり得る病気です。従業員がうつ病と伝えてきた際、その時の気持ちや状況に対して、理解と共感を示しましょう。
うつ病である従業員に真摯に対応し、適切なサポートを提供することが人事としての使命と言えます。
産業医と面談してもらう
従業員がうつ病と言う場合、まず産業医との面談を設定しましょう。
産業医面談では、産業医が従業員が「このまま業務遂行できるか」、「就業上の配慮が必要か」などについて判断します。そして必要に応じて、アドバイスをしたり、専門医を紹介したりするなどの対応がとられます。
産業医面談を実施すると、最近の残業時間や職場での人間関係、仕事の状況、就業可能かどうかなどの概要を、人事としても把握することができます。
ただ、企業側は、従業員に産業医面談を強制することはできませんので、従業員が拒否をする場合は別の方法を考えましょう。
医師の診断書の提出を求める
医師でないと、うつ病の診断はできません。社員がうつ病であると伝えてきた場合は、専門医の診断書があるかどうかを確認しましょう。
また、うつ病を理由に休職を希望する場合は、診断書に「うつ病であること」「休業の必要性があること」「必要な休職期間」などが記載されている必要があります。診断書をもらった後は、必要事項が書いてあるかどうかも確認しましょう。
休職制度について説明する
医師の診断があり、休職が必要な場合は、休業規則や休職中の取り扱いについて、必要な情報をしっかりお伝えするようにしましょう。
うつ病の平均休職期間は、約半年。短くて1ヶ月以内〜長くて1年を超えます。
後からトラブルにならないためにも、その間の給与の取り扱いや、手当など、以下の5点を詳細にお伝えするようにしましょう。
-
- ・休職可能な期間
- ・給料の支払い
- ・社会保険料
- ・傷病手当金などの給付金
- ・休職中の連絡方法
実際うつ病で休職するとなった際は、人事担当者として書類の手続きを進めます。
休職をするために必要な書類は、以下の3点です。
-
- 1.うつ病診断書:専門医が従業員に渡すもの
- 2.休職届:従業員から人事に提出するもの
- 3.長期休務報告書:上司が人事に提出するもの
下記の記事では、うつ病で休職する社員に必要な対応をより詳しく解説しています。
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まとめ
自分がうつ病だと従業員から伝えられた時、持っておくと嬉しい知識や人事担当者としての対応方法についてお伝えしました。一口にうつ病と言っても、様々な種類があり、様々な症状があります。
うつ病は精神にかかわるとてもデリケートな問題なので、無理に一人で対応しようとせず、うつ病の知識を持った担当者や、産業医、専門医の意見も聞き入れながら、冷静に慎重に対応を進めていきましょう。
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