うつ病で休職する社員に必要な対応は?休職中や復帰する際のポイントも詳しく解説

日付2021.11.19
更新日:2022.02.18

うつ病と診断された社員が休職を申し出てきた場合、企業はどのような対応が求められるのでしょうか。特に人事担当者は、うつ病で休職する社員と面談する機会があるため適切な対応の仕方を把握しておく必要があります。

この記事では、人事担当者に求められる具体的な対応、対象社員の休職中や復職する際に気をつけておくべきことを解説します。

また、復職面談の確認事項や企業の事例なども紹介しているので、うつ病で休職・復職する社員へ対応する際に役立ててください。

うつ病などによる休職・退職者の現状

うつ病の社員への対応の仕方を知る前に現状を把握しておくことで、実際にどのような対応が求められているのかを理解しやすくなります。以下では、うつ病などによる休職や退職者の現状を解説します。

精神疾患に悩まされる人の増加

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が平成23年に実施した職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査によると、精神疾患などの問題を抱えている社員数は増加傾向にあることがわかっています。

調査に参加した事業所の6割弱が、メンタルヘルスに問題を抱えている社員がおり、社員数は増加していると回答しました。

また、メンタルヘルスに悩む社員が現れる原因に関する質問では、約6割の事業所が本人の性格の問題や職場の人間関係と回答しています。

本人の性格の問題と回答した事業所のうち、1,000人以上の規模で減少しており、小規模な事業所ではメンタルヘルスを個人の問題として捉えられる傾向が見られます。

※参考:労働政策研究・研修機構.「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査結果」. https://www.jil.go.jp/press/documents/20110623.pdf
(参照 2021-11-13)

精神疾患に関する企業の対応

メンタルヘルスの悩みを抱える社員数が増加傾向にある中で、メンタルヘルスケアに取り組んでいると回答した事業所の割合は約5割でした。

中でも、1,000人以上の規模の事業所での割合が7割以上と高く、メンタルヘルスケアに積極的に取り組んでいる姿勢が読み取れます。

一方で、調査に回答した事業所の半数はメンタルヘルスに悩む社員がいることを認識しながら何も対策を実施していないことがわかります。そのうち、約4割はメンタルヘルスケアの必要性を感じないと回答しました。

メンタルヘルスケアを積極的に実施している事業所では、社内に相談窓口を設置する、管理監督者を対象にした研修の開催や情報提供するなどの取り組みが行われています。

※参考:労働政策研究・研修機構.「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査結果」. https://www.jil.go.jp/press/documents/20110623.pdf
(参照 2021-11-13)

うつ病で休職する社員への対応や確認すべきこと

うつ病を抱える社員が休職を申し出た場合、企業はどのような対応を行う必要があり、対象の社員に何を確認すればいいのでしょうか。以下では、人事担当者が確認すべきことや具体的な対応を解説します。

1.医師の診断書の提出を確認する

社員がうつ病を理由に休職を希望している場合は、医師による診断書が会社に提出されているかどうかを確認しておきましょう。

一般的に、社員の休職は本人の希望や会社の意向で決まるのではなく、医師が発行する診断書に基づいた判断によって休職が決定するからです。

そのため、診断書には病名だけでなく、休業の必要性の有無や休業が必要な場合の具体的な療養期間などが記載されている必要があります。

うつ病などの精神疾患はケガなどに比べて外見から判断しづらく、仮病の可能性を否定できません。診断書があれば、医学的な見地から社員に必要な休業日数を判断する上で有効です。

社員とのトラブルを避けるためには、就業規則に受診の義務化や受診先の医療機関の指定に関する項目を設けておくことが重要です。

2.休職期間を確認する

休職期間は企業によって異なるため、自社の就業規則を確認しましょう。就業規則の休職期間を確認しておけば社員との面談の際にスムーズに説明できます。

診断書に記載された休養期間を根拠に同等の休職期間を社員から求められることがあるかもしれません。その場合、診断書にある療養期間は休職期間を決める際の目安の一つであり、会社としては就業規則に定めた休職期間で対応する旨を説明しておくことが重要です。

さらに、休職期間が満了したときに復職が困難な状況である場合は、退職の手続きが必要になることも伝えておきましょう。

休職期間満了時の自然退職について事前に社員の理解を得ておかなければ、後々トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。

3.休職中の給料支払や社会保険について説明する

休職期間中は給料の支払い義務は発生しないため、必ずしも会社側が社員の給料を保証しなければならない決まりはありません。

法律上では、休職中の給与を支払う義務は定められていませんが、就業規則に休職中の給与を支払うと記載がある場合は自社の就業規則に基づいて対応しましょう。

また、社会保険料についても確認しなければならないことを社員に説明しておく必要があります。休職中でも、社会保険料の支払いの義務は変わらず発生するため、会社と社員は折半して支払う必要があることも伝えておくことが大切です。

通常であれば社会保険料は給与から天引きになりますが、休職中に給与が支払われない場合は支払方法についても確認しておきましょう。

一般的に、社員が毎月社会保険料を会社の口座へ振り込む方法や会社が立て替えて支払い、復職後に給与などから天引きして徴収する方法があります。

4.給付金についての説明をする

うつ病などで休職する場合は、傷病手当金が支給されることも社員に説明しておく必要があります。傷病手当金とは、ケガや病気が理由で勤務できなくなった際に、支払われる給付金のことです。

傷病手当金を受け取るためには社会保険への加入や、休業日数が連続4日以上で休職中に給与を受け取っていないなどの条件を満たしている必要があります。

傷病手当金の支給額は、休職前の1年分の給料に基づいて算定された金額の3分の2を最長18ヵ月受け取ることができます。また、うつ病での休職が労災と認められた場合は、労災保険と障害年金を受け取れる可能性があることも説明しましょう。

5.休職中の連絡方法を決める

休職中に連絡を取る必要が出た場合の連絡方法を決めておくことも大切です。例えば、社員が会社に連絡するときの社内の連絡窓口や連絡するタイミング、頻度、連絡する内容が挙げられます。

また、連絡手段として、電話なのかメールでのやり取りにするのか、具体的に決めておきましょう。ただし、休職する社員に頻繁に連絡をしたり求めたりすれば、心身を休めることができません。

ゆっくり療養させるためには、連絡の頻度を控えて休職中の社員に負担やプレッシャーを与えないように配慮する必要があります。

うつ病で休職中の社員への対応ポイント

うつ病で休職している社員に対してどのように対応すればいいのかわからないケースもあるでしょう。以下では、うつ病で休職中の社員への具体的な対応ポイントを解説します。

休職期間中の関わり方

うつ病で休職する社員との距離感にも配慮しましょう。社員がゆっくり休養できるように連絡を控えることも大切ですが、放置し続けるのはおすすめできません。

休職中の社員は会社から距離をとるため、社会的に孤独を感じる傾向にあります。孤独が療養の阻害要因にならないためにも、会社側は定期的に連絡を取り、社員が孤立しないように配慮しましょう。

休職する社員には、事前に定期的な連絡を取る必要があることも説明しておくことが大切です。説明の際は、傷病手当や給与の受け取り、社会保険料の支払いなどの手続きで確認が必要になる場合もあると伝えておくことをおすすめします。

会社側は、休職する社員の負担を減らすために、連絡の頻度などの取り決めに従って連絡を取るようにしましょう。

復職準備期間の対応

休職中の社員が仕事への復帰を希望する場合、会社側では復職できるように準備しておかなければなりません。ただし、休職中の社員が復職できる状態かどうかを事前に確認しておく必要があります。

復職の判断は主治医や産業医との面談結果に基づいて、事業主が決めましょう。一般的に、次の条件を満たしている場合は復職できる可能性があります。

例えば、主治医が復職可能と記載した診断書の提出や、体調が悪化する原因、悪化した際の具体的な対策を把握しているなどが挙げられます。

復職面談で確認するポイント

休職中の社員が仕事への復帰を希望した場合、復職面談を行う必要があります。以下では、復職面談の際に休職中の社員へ確認すべきポイントを解説します。復職面談を実施する際に役立ててください。

就業意欲の有無

復職は、会社側の判断だけでは決められません。何より大切なことは、休職中の社員が就業意欲を持っているかどうかです。本人が働けないと主張している場合、会社側は無理に働かせることはできません。

就業意欲の有無は、積極的な意思表示があるかどうかを見極めることが重要です。働きたい気持ちはあっても体調に不安があるなど、就業意欲が弱い場合は復職を見送る必要もあるでしょう。

ただし、就業意欲を確認する際は、休職中の療養を労う言葉や現在の体調の様子を伺う言葉を用いて優しく質問するようにしましょう。

生活リズムの確認

復職するにあたって、休職前の生活リズムに戻せるかどうかを確認することも大切です。休職中の社員に規則正しい生活を送れているか質問しましょう。

また、起床・就寝時間や食事の摂取状況、食事の時間、外出の有無など、簡単な生活記録表を記載してもらうと、生活リズムの確認をしやすくなります。

休職中の生活リズムだけでなく、復職後3~6ヵ月間は規則正しい生活を送れているか、体調は安定しているかなどの確認も行うようにしましょう。

体力の回復

療養で体力が減っていることも考えられるため、体力が回復しているかどうかの確認も忘れずに行っておきましょう。体力の回復を判断する場合、睡眠時間が一つの目安になります。

生活リズムを確認する際に、睡眠時間の長さや起床時の疲労具合なども合わせて記録をつけてもらい、面談時に確認しましょう。

生活リズムや睡眠時間などの記録は、面談時の復職の判断に用いるだけでなく、社員が自分の行動に対して客観的に把握できるようになることも狙いの一つです。睡眠を充分に取れていない場合は、休職の延長を検討する必要があります。

職場への適応力の確認

復職する場合、休職前に所属していた部署に戻れるかどうかの確認が必要です。うつ病で休職した社員がいる場合、うつ病の発症理由によって元の職場に戻るのが難しい可能性があります。

例えば、休職中の社員が元の職場環境に適応できない、元の職場での人間関係で問題やトラブルが起きたなどが考えられます。メンタル的に元の職場に戻れない場合は、人事担当者が他の部署への配置を検討しましょう。

通勤できるかどうか

休職中の社員が復職する場合、通勤が必要になることも考慮しておかなければなりません。

うつ病やその他の精神疾患を抱えている人の症状の一つに、人混みに出るのが苦手と感じることがあります。そのため、交通機関を利用して通勤するのは可能かどうかを確認しておきましょう。

本人は通勤できると主張しても、実際に通勤できるかは人混みに入ってみなければわかりません。復職の許可を出す前に、実際に通勤時間と同じ時間帯に自宅からオフィスまで移動してみて問題がないか確認しておくことをおすすめします。

休職者を復職させる際のポイント

実際に休職者が復職する場合、どのような点に配慮すればいいのかわからないケースもあるでしょう。以下では、休職中の社員を復職させる際に考慮すべきポイントを解説します。

場合によっては配置転換や業務転換を検討する

休職者を仕事に復帰させる場合、休職前に所属していた部署へ戻すのが原則です。しかし、人事異動が原因でうつ病などを発症した場合は、元の部署へ戻すのではなく配置転換や業務転換を検討する必要があります。

復職面談を実施する際に本人の症状や意向を聞いた上で、適している職場へ復帰させるようにしましょう。復職直後は、休職前のようにスムーズに業務を進められない可能性があるため、無理なく働ける環境を整えてあげることが大切です。

例えば、フルタイムではなく短時間勤務から始める、残業や出張を制限する、軽作業やルーティンワークに従事させるなどの方法が挙げられます。

産業医との連携が必須

うつ病などで休職した社員が業務に復帰する場合、産業医と連携を取れる仕組みを整備しておきましょう。

本人の希望で復職した場合でも、業務に復帰したことで症状が悪化し、医学的な視点から療養が必要になると判断される可能性があります。

休職前や休職中だけでなく、復職できるかどうかを判断する際は産業医の診断を基に決めることが大切です。産業医は会社の体質などを把握しているため、社員にとって適した治療法や復職時の注意点などを提案します。

対象の社員だけでなく、他に休職者を出さないためにも産業医と連携を取り、社員のメンタルヘルスケアに取り組むようにしましょう。

休職期間が終了しても復職が難しい従業員への対応

休職期間が満了となった場合でも仕事への復帰が難しいケースもあります。休職者が復職できない場合の対応について検討しておくことが大切です。

休職期間を満了して復職できない場合は、就業規則が定めている規定に基づいて自然退職を促す場合が一般的です。

しかし、休職者本人は復職を希望しているものの、産業医の診断などから復職は認められないと判断して退職させた場合、不当解雇を理由に訴えられる可能性があります。

訴訟などの問題を避けるためには、あらかじめ就業規則に会社へ医療情報開示同意書の提出を求める旨を記載しておくことをおすすめします。

社員のうつ病と休職・復職に関する事例

うつ病の社員を抱えている企業の成功事例を把握しておけば、自社の社員に対応する際に役立てることができます。以下では、うつ病の社員の休職・復職に関する事例を紹介します。

復職後の対応やフォローが効果的であった事例

従業員数が600人の製造業の事例を紹介します。休職の対象となったのは、うつ病の既往歴がある30歳代の男性です。

業務上の注意を受けたことがきっかけで体調不良を訴えるようになり、うつ病であることが発覚しました。2ヵ月間の休職後復職しています。

会社側が行った支援は、対象者に対応する担当者への助言です。例えば、復職後は担当者が毎日対象者に声をかけて体調などを確認する、疲労感や体調不良を訴えた場合は本人が希望すれば早退させるなどが挙げられます。

特に、毎日の声かけによって対象者の体調などを把握できたため迅速かつ柔軟に対応できたと評価しています。

※参考:労働者健康福祉機構 福井産業保健推進センター.「事業場における うつ病従業員への対応事例集」https://www.fukuis.johas.go.jp/pdf/utsu_jirei2303.pdf
(参照 2021-11-13)

主治医との連携が効果的であった事例

1,000人以上の小売業の事例を紹介します。支援の対象者は40歳代の男性で、店長職2年目に適応障害と診断されました。

主治医から提供された意見書に基づいて、休日を増やしたり残業なしにしたりして様子を見ましたが、状況は変わりませんでした。

会社側は対象者と担当者を含めた面談を実施した他、本人の同意を得て担当者が主治医から意見をもらうなどの対応を取りました。

効果的であった支援は本人の同意を得た上で主治医と連携できたことです。主治医から病状や治療経過などの情報を得られたことで配置転換などの適切な対応が取れるようになりました。

※参考:労働者健康福祉機構 福井産業保健推進センター.「事業場における うつ病従業員への対応事例集」https://www.fukuis.johas.go.jp/pdf/utsu_jirei2303.pdf
(参照 2021-11-13)

再休職の判断に関する事例

従業員数が100人の情報通信関連業の事例では、うつ病と診断された30歳代男性が再休職に至るまでの会社側の対応を紹介しています。

会社側は産業医と対象者の面談を実施し、本人の同意を得て産業医と主治医間で対象者の情報交換を行いました。

主治医と産業医の意見を基に人事担当者と協議した結果、会社側は再休職を判断しました。対象者には根拠を示した上で、再休職を判断した経緯を説明しています。

効果的であった支援は、産業医と主治医間での情報提供や会社にとって必要な人材であることを伝えて対象者を安心させられたことです。

※参考:労働者健康福祉機構 福井産業保健推進センター.「事業場における うつ病従業員への対応事例集」https://www.fukuis.johas.go.jp/pdf/utsu_jirei2303.pdf
(参照 2021-11-13)

うつ病による休職者の対応やケアを大切に

うつ病を抱えている社員がいる場合は、産業医や主治医の意見に基づいて休職や復職を判断しましょう。特に、対象者の対応にあたる人事担当者は、産業医と連携を取ることが大切です。

産業医と連携すれば、対象者への対応や必要なケアを把握しやすくなります。休職者へのケアや産業医の選定に迷っている場合は、経験豊富な産業医を紹介する産業医コンシェルジュの導入を検討してみてください。

https://dr-hpm.co.jp/service/

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。