衛生講話シリーズ 「職場環境改善について~快適職場づくりをめざして~」

日付2020.11.24
更新日:2021.12.24
衛生講話シリーズ 「職場環境改善について~快適職場づくりをめざして~」

今回の衛生講話では、職場環境改善について解説します。

1.職場環境改善とは

職場環境改善の考え方

  • 職場の物理的レイアウト、労働時間、作業方法、組織、人間関係などの職場環境を改善することで、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調を予防しようとする方法です。
  • 職場環境等の改善には、専門家の指導、職場上司や労働者による自主的活動など、さまざまな進め方があります。
  • 産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフだけでなく、人事・労務担当者、管理監督者、労働者に参加してもらうことで効果的に対策が実施できます。

補足:職場環境改善は、メンタルヘルス対策が確立し、セルフケアやラインケア等がある程度浸透した後に、次のフェーズとして実施すると効果を発揮しやすいです。

カラセックの「仕事の要求度‐コントロール度モデル」

ストレス予防で有名な、カラセックの「仕事の要求度‐コントロール度モデル」という理論があります。

  • する仕事のストレスに関する代表的な理論である「仕事の要求度-コントロールモデル」では、仕事の要求度(仕事量や責任など)と仕事のコントロール(裁量権)のバランス、特に仕事の要求度に見合うように仕事のコントロールを与えることが重要とされています。

NIOSHの職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイント

米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントとして、以下の7項目を挙げています。

  1. 過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
  2. 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
  3. 仕事の役割や責任が明確であること
  4. 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
  5. 職場でよい人間関係が保たれていること
  6. 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされていること
  7. 職場での意志決定への参加の機会があること

特に、赤字にフォーカスして改善すると効果が高いです。

2.職場環境改善の効果

職場環境改善の有用性

職場環境改善は科学的にも有効であると証明されています。
2015~2017年に川上らが実施した日本人労働者約4,000名を対象としたインターネット調査では、ストレスチェック後に職場環境改善を経験した労働者のみ、心理的ストレス反応の有意な改善と生産性の有意な増加がみられました。
ストレスチェック後の集団分析結果を活用した職場環境改善は有効であるといえます。
集団分析結果を効果的にいかに活用ことができるかがポイントです。

の研究では、職場環境改善と個人向けストレスマネジメント教育(セルフケア)の1人あたりの便益はほぼ同じであるが、1人あたりの費用から考えると、職場環境改善のほうが費用対便益効果が高いといえます。

3.実践のポイントと好事例

ストレスチェック結果の取り扱いと職場環境改善へのつなげ方

職場環境改善は、事業場全体で集団分析結果を活用して着手する場合や高ストレス職場へのアプローチを主とする場合等が考えられます。
また、分析結果の返却対象や場面も、経営者や人事部門の場合(① : 経営者・人事主導型)、管理職研修(②: 管理職主導型)、職場訪問での管理職への返却(② :管理職主導型)、グループワーク(小集団討議)で活用(④ : 従業員参加型)するなど多様です。
また、職場環境改善は集団分析結果を使わなくても行うことは可能です(⑤)。この場合、結果は現場に返却せず、事業場全体や各職場の幹部と産業保健スタッフのみで結果を分析把握し、経年変化をみるというモニタリングに活用する場合もありえます。
また、EAP などの外部資源や内部専門家の活用(③)も想定されます。

職場環境改善成功の秘訣

職場環境改善には、成功の秘訣がいくつかあります。

良好ツール:参加型職場環境改善 「職場ドック」

参加型職場環境改善「職場ドック」は、非常に効果が高いことが研究で示されています。職場のコミュニケーションや相互支援が活性化され、働きやすい労働環境は生産性に直接的・間接的に有用性をもたらすことが最新の研究で明らかとなりました。

職場ドックとは

  • メンタルヘルス一次予防策としての職場環境改善に有用なツール。
  • 自分たちの働く職場環境を職場メンバー全員と一緒に見直す参加型アプローチ
  • 職場の強みと職場の働きにくさをチェックリストから洗い出し、従業員同士で意見交換する場面を作り、課題解決のための改善実施計画を策定。それに基づき、改善策を実行。
  • 職場のコミュニケーションや相互支援が活性化され、働きやすい労働環境は生産性に直接的・間接的に有用性をもたらすことが最新の研究で明らかとなった。

補足:
実際に実施するためには、工数や人員が必要となるためなかなかハードルが高いことが現状ではありますが、徐々に職域において浸透してきているようで、実施している事業場も増えてきています。

良好事例

職場環境改善に取り組んだ実際の事業場での良好事例を紹介します。

メンタルヘルス対策では、一個人へのアプローチには限界があります。集団(=職場全体)へのアプローチも合わせて行うことで、より効果的かつ結果が出やすいです。ぜひ、職場環境改善に取り組み、快適な職場づくりを会社全体で行ってみてください。

参考文献

・厚生労働省:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 職場環境改善ツール
https://kokoro.mhlw.go.jp/manual/
・厚生労働省:いきいき職場づくりのための参加型職場環境改善の手引き 改定版
https://kokoro.mhlw.go.jp/manual/
・厚生労働省厚生労働科学研究費補助金 労働安全衛生総合研究事業 ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究 平成27~29年度総合研究報告書.主任研究者 川上憲人
・吉村健佑,川上憲人,堤明純ら.日本における職場でのメンタルヘルスの第一次予防対策に関する費用便益分析.産衛学雑誌.55(1).11-24(2013)
・中央労働災害防止協会編:令和元年度 労働衛生のしおり
・医療情報科学研究所:公衆衛生がみえる2018-2019,メディックメディア,2018
・医療情報科学研究所:職場の健康がみえる第1版,メディックメディア,2019

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。