産業保健・健康管理
職場巡視とは?法律や目的、頻度とやり方をわかりやすく解説【チェックリスト付】
職場巡視とは、従業員の作業や職場環境を見て回り、問題を改善する取り組みです。安全かつ健康に働ける職場環境を整えるために、従業員が50名以上の事業所では職場巡視を実施することが義務付けられています。
職場巡視では具体的にどのようなポイントをチェックする必要があり、どのような流れで実施されるのでしょうか?
この記事では、職場巡視の目的や実施頻度、やり方などの基本的な知識を解説します。すぐに活用できるチェックリストもご用意しているので、ぜひご活用ください。
職場巡視は労働者の働き方を知るためのよい機会です。職場巡視で現場の状況をしっかりと把握し、充実した職場環境を整えていきましょう。
目次
職場巡視とは
厚生労働省によると、職場巡視とは「作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態が働く人に有害な影響を及ぼすおそれがないか確認して行く行為」と定義されています。つまり、従業員の作業や職場の環境を巡回して安全確認する作業を指します。
職場巡視を実施する目的は、職場における安全衛生上の問題点を見つけ出し、より安全かつ健康的に働ける環境へと改善していくことです。50名以上の事業所では、職場巡視を定期的に実施することが義務付けられています。
職場巡視についてより理解を深めるためにも、まずは基本的な知識を身につけておきましょう。
“出典:厚生労働省「職場巡視」”
職場巡視は法律で定められた義務
職場巡視は、労働安全衛生規則によって定められた企業の義務です。同法では、以下のように衛生管理者と産業医の職場巡視について定めています。
第11条 衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
第15条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則では単に職場巡視を行うだけではなく、作業方法や労働環境に問題があるときは、それを是正するための措置を講ずることを義務付けています。
職場巡視は誰がおこなう?
職場巡視を行うのは、主に衛生管理者と産業医です。
衛生管理者は頻繁に職場巡視を行って、日ごろの職場環境を知る役割をもっています。産業医よりも現場に近い立場であるからこそ、衛生管理者による職場巡視には次のようなメリットがあります。
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- ・従業員が相談しやすい
- ・より現場に適した改善策を考えられる
- ・事業場内外の資源や連絡を調整しやすい
一方で産業医には、専門的な知識を活かして助言や指導、面談などをする役割があります。
産業医は専門知識をもっていますが、現場をすべて知っているわけではありません。そのため、衛生管理者と協力することでスムーズな職場改善を目指すことが大切なのです。
職場巡視の目的
産業医の職場巡視の目的は、大きく分けて2つあります。
1つ目の目的は「健康な従業員が労働により健康状態を悪化させてしまうことを未然に防ぐ」ことです。そして、2つ目の目的は「病気を持っている従業員が労働により、その病気を悪化させてしまうことを未然に防ぐ」ことです。
職場巡視は、作業方法や衛生状況のなかから心身に有害のある要因を見つけ出し、問題が生じる前に改善する役割を果たしています。
また職場巡視には、現場で働く従業員の健康状態や業務内容、職場の雰囲気に直に触れて確認できるという利点があります。衛生管理者や産業医が、従業員達とコミュニケーションを図る大切な機会でもあるのです。
職場巡視のメリット
職場巡視を実施して職場の問題を発見・改善できれば、次のようなメリットが生じます。
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- ・労働災害の防止
- ・離職率・休職率低下
- ・生産性の向上
- ・モチベーションアップ
- ・帰属意識の向上
いくら管理者が従業員の健康や安全のための取り組みを実施しても、その施策が現場の状況に即したものでなければ効果は現れません。反対に、従業員から「意味がない」「手間が増える」と不満を抱かれる可能性もあります。
そのような状況を防ぐためにも、職場巡視で労働環境を熟知し、本当に必要な取り組みを見極める必要があるのです。
職場巡視によってしっかりと現状や課題に沿った改善策を実施できれば、上記のように、従業員のみならず企業にも多くの利益がもたらされます。
職場巡視の頻度・回数
職場巡視は、次の頻度・回数で行うことがルールとして定められています。
担当者 | 職場巡視の頻度 |
衛生管理者 | 週に1回以上 |
産業医 | 月に1回以上
(条件付きで2カ月に1回以上) |
職場巡視の頻度は、法律で決められています。企業の衛生管理者は週1回以上、産業医は原則毎月1回以上(条件付きで2カ月に1回以上)の頻度で職場巡視を実施しなければいけません。
とくに、頻繁に行われる衛生管理者の職場巡視は非常に重要度が高いといえます。常に職場や従業員に関する最新の情報を保持しておけば、スムーズに産業医と連携して職場改善に取り組めるでしょう。
また、法令で定められている頻度のほか、労働災害の発生時にも職場巡視を行う必要があります。
職場巡視を実施しない場合の罰則
産業医が職場巡視を実施しなかった場合は、労働安全衛生規則 第15条の義務違反だとみなされ、50万円以下の罰金もしくは6カ月以下の懲役を科されるおそれがあります。
産業医が定期的に企業を訪問していても、「職場巡視といいつつ、実際は雑談をしているだけ」という場合は、産業医の義務を果たしているとはいえません。
たとえ罰則を科されなくても、職場巡視を怠ったことが理由で労災や事故が起きれば、企業は「安全配慮義務」を怠ったとみなされ、法的な責任を問われる可能性があります。安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康に働けるように配慮しなければならない、企業に課された義務です。
安全配慮義務違反が発覚すれば、会社の信頼は大きく低下してしまいます。罰則の有無にかかわらず、職場巡視は適切に実施する必要があるのです。
職場巡視の実施方法
実際に職場巡視を行うときは、以下のような流れで巡視を進めていくことになります。
-
- 1.事前準備
- 2.流れや工程の確認
- 3.職場巡視の実行
- 4.衛生委員会における報告・共有
各プロセスの詳細をみていきましょう。
1.事前準備
職場巡視のときに重要なのは、事前準備です。
1回の職場巡視で、全ての職場環境を確認することは難しいでしょう。そのため、事前に「毎月の職場巡視でどこをどのような順番で巡視していくのか」についての計画を立てておくことが大切なのです。
また、事業所の特徴や職場環境に合わせて、毎月の職場巡視でどのような点に気をつけて確認すべきか事前に把握しておくとよいでしょう。
これを実現するためにも、衛生管理者や職場の統括者は、産業医とともに以下の内容をまとめた資料を作成しておく必要があります。
-
- ・毎月の職場巡視計画(どのような順番で巡視するか)
- ・職場巡視チェックリスト(どこを重点的に確認するか)
さらに、スムーズに職場巡視を進めるために以下の準備も行っておきましょう。
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- ・職場巡視チェックリストの印刷
- ・デジタルカメラ
- ・必要な測定機材(温度湿度計、照度計、騒音計など)
- ・保護具(作業着や安全靴)
2.流れや工程の確認
次に、衛生管理者と産業医間で、職場巡視の流れや工程を共有しておきましょう。
また、衛生管理者や職場の統括者は、産業医に対して作業工程や職場環境について説明したり質問に答えたりしておいてください。事前に情報を共有しておくことで、産業医がより正確に現場の状況を把握できるようになります。
3.職場巡視の実行
ここまでの準備が完了したら、実際に職場巡視を行いましょう。
職場巡視を行う際は、職場巡視チェックシートに記載した「見るべきポイント」を意識して、各職場を確認していきます。巡視が終わったあとに、改善に向けた意見交換がスムーズにできるよう、チェックシートには気になった点をすべて記載しておきましょう。
また、衛生管理者と産業医が職場巡視を実施する際は、従業員と積極的にコミュニケーションをとるよう心掛けてください。従業員に対して、「作業や職場環境において、何か困っていることや気になることはありませんか?」など、積極的に声掛けをするとよいでしょう。そうすることで、新たな改善点が見つかることもあります。
ときには、従業員に相談や質問をされることもあるでしょう。その場合は即答せず「後で確認してみますね」とお伝えし、衛生委員会などの場で議論してから結論を出してください。
従業員への声掛けをしているなかで、自身の健康や悩みの相談を持ち掛けられることもあるかもしれません。この際も、後日相談に乗ったり産業医面談の日程を設定したりしてください。そのほうが、安心して個別相談できる環境を整えられます。
4.衛生委員会における報告・共有
職場巡視のあとは、実施メンバーで会議を開いて内容をまとめましょう。チェックリストの結果確認や気になったポイントなどをまとめ、記録作成やリスク評価などを行います。
衛生委員会では、職場巡視の結果や改善すべき点、よかった点などを報告・共有します。単に事実を報告するだけではなく、改善するために必要な措置について話し合い実行することも大切です。
職場巡視のときはチェックリストを活用しよう
ポイントを押さえて効率よく職場巡視を行うためには、事前にチェックする項目のリストを作成しておくことがおすすめです。
ここでは、どのようなポイントに着目してチェックリストを作成すればよいのか、具体的にみていきましょう。
職場巡視チェックリストの使用は義務?
職場巡視の際にチェックリストを使用することは、法律で定められた義務ではありません。そのため、チェックリストを使用せずに職場巡視を実施することも可能です。
ただし、チェックリストを使用すれば、チェックポイントを明確化できたり改善の過程を振り返ったりできるようになります。職場巡視を確実かつ効率的なものにしてくれるため、可能であれば活用することがおすすめです。
また、チェックリストを保管しておけば、職場巡視を適切に行っていることを示す資料になります。労働災害などが発生したときは、企業が従業員の安全を確保するために適切な措置を講じていたことを証明してくれるでしょう。
職場巡視のチェックリストは、無料で配布されているものをダウンロードするほか、Excelなどを使用して自作しても問題ありません。自社にとって使いやすいものを活用してください。
チェックリストを作成するときのポイント
職場巡視チェックリストの内容は、IT企業や製造業、運送業、病院、学校など業種によってさまざまです。
まずは、以下のように「どの企業においても共通して見るべき基本部分(事務所・トイレ・休憩所など)」のチェックリストを作成しましょう。その後、企業ごとに各現場で必要な部分(製造・作業現場など)を適宜加えていくことがおすすめです。
-
- ・企業の基本情報(何を作っているのか、どういうサービスを提供しているのかなど)
- ・労働者の作業内容・作業工程はどうなっているのか
- ・有害物の取り扱いはないか
- ・特に注意すべき作業や職場環境 など
ただし、初回の職場巡視で完璧なチェックリストを準備するのは難しいものです。産業医と協力して職場巡視を毎月重ねていくなかで、適切な職場巡視の工程や、事業所に合った職場巡視チェックリストを作り上げていくことが肝心です。
衛生管理者や職場の統括者は、産業医とともにチェックリストの内容を事前に話し合い、見るべきポイントをお互いに共有しておきましょう。とくに複数人で職場巡視をする場合は、全員が職場巡視チェックリストを共有しておくと、その後の意見交換を行いやすくなります。
チェックリストの参考資料とテンプレート
職場巡視における「共通して見るべき部分」というのは、ほとんどすべての企業にある事務所、つまりオフィス環境のことです。
このオフィス環境については、「事務所衛生基準規則(以下、事務所則)」というルールが定められています。
「事務所則」は、基本的に有害物や危険物を取り扱わない作業場(主にオフィス)に適用される規則です。ここには事務所やトイレ、休憩所や喫煙所、救急用具などほとんどの企業で共通する事項が含まれています。
職場巡視チェックリストを用意するときは、この「事務所則」を参考に考えていくとわかりやすいでしょう。
事務所衛生基準規則(事務所則)の詳細はこちら
Dr.健康経営では、職場巡視チェックリスト(事務所用)のテンプレートを提供しております。こちらを使用することで、初めて職場巡視を実施する企業でもすぐに基本のチェックリストを作成できます。
※Dr.健康経営が提供するテンプレートはこちら
また、厚生労働省が配布しているチェックリストも役に立ちます。
“参考::厚生労働省「安全衛生巡回チェックポイント(例)」”
工場や製造業、オフィスにおける職場巡視のチェックリストは、こちらの記事をご参照ください。
職場巡視で見るポイントの例
職場巡視において見るべきポイントは、企業や業種ごとに異なるのはもちろん、場所によっても大きく変わってきます。
ここからは、職場巡視でとくに注目してチェックしておきたい点を場所ごとに解説します。
事務所内の作業環境
事務所内の作業環境は、労働安全衛生法に基づいて衛生基準が定められています。事務所内の空気の性質や温度、含まれている粉塵、明るさなど、事業所衛生基準規則により定められている基準は多岐にわたります。
従業員が作業するのに適した具体的な基準は、次の通りです。
<空気環境>
気積10㎥/人以上
CO濃度:50ppm以下
CO2濃度:5000ppm以下
温度:10度以下の時には暖房等の措置を行います。また、冷房を使用するときは、外気温と比較して、著しく低下していないかに注意しましょう。
<採光・照明について>
精密な作業:300ルクス
普通の作業:150ルクス
粗な作業:70ルクス
<空気調和設備等による調整>
浮遊粉じん量0.15mg/㎥以下
一酸化炭素10ppm以下
二酸化炭素1000ppm以下
ホルムアルデヒド0.1mg/㎥以下
気流0.5m/s以下
室温17度以上、28度以下
相対湿度40%以上70%以下
清潔さ
清潔さでは、給水や排水、清掃等の実施、労働者の清潔保持義務、便所、洗面設備などを評価します。
事業者は、水道法に則った水質の維持に努め、さらにネズミや昆虫などの害虫がいないかの調査・防除を、6カ月に一回以上行わなければいけません。
また、男女別のトイレを人数に応じて設置すること、洗面設備や更衣室の設備を設置することが求められます。
休息施設
休息施設、睡眠または仮眠が取れる準備、休養室等、立ち作業のための椅子なども、職場巡視で確認すべき点です。産業医は、必要に応じて設備が整えられているのかどうかを確認します。
たとえば、夜間労働がある事業所には、男女別の睡眠・仮眠のための設備を設けることが求められます。また、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者がいる場合は、横になって休める休養室を設置しなくてはいけません。
救急用具
負傷者の手当に必要な救急用具や材料を整えて、場所や使用方法を周知できているのかどうかを確認します。たとえば、「AEDや消火器がどこにあるのか従業員に周知されているか」というポイントをチェックしましょう。
避難経路や非常口についても確認が必要です。緊急事態のときに非常扉の前に大きな荷物があったら、非常扉の役割を果たすことができません。避難経路や非常扉が緊急時に正常機能できるように、扉の前に邪魔になるものが置かれていないかを確認します。
VDT作業
VDT(Visual Display Terminals)作業とは、パソコンなどの入力端末を使用する作業のことです。
VDT作業の環境も、職場巡視におけるチェックポイントのひとつです。不適切なVDT作業は、視力や姿勢の悪化の原因となります。
厚生労働省の調査によると、68.6%の労働者が症状(主に目の疲れや痛み・首、肩のコリ・痛み)を訴えていることがわかっています。平成15年と比較すると改善傾向にあるようですが、依然としてVDT作業が多くの労働者に影響を与えていることが判明しました。
産業医の職業巡視では、VDT作業を行うときの適切な作業姿勢、作業環境、連続作業時間などに注目して、作業内容や作業環境の改善が行われます。
“出典:厚生労働省「平成20年技術革新と労働に関する実態調査結果の概況」”
過重労働
残業や出張を含む過重労働の状況を直接管理者に確認できることも、職場巡視における意義のひとつです。
最近のストレスチェックや過重労働面談などの結果を事前にまとめておくと、現場でしか知れない“生きた声”を反映した意見交換ができるようになるでしょう。
安全衛生における5Sを意識しよう
5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つの頭文字を取った言葉です。安全で健康な職場を作り、生産性の向上を目指す取り組みを「5S活動」といいます。
職場巡視の際は、5Sの考え方が非常に役立ちます。ぜひ、以下の5つのポイントを踏まえて職場巡視を進めてみてください。
- 1.整理
会社にとって必要なものと不要なものをきっちり区別し、
必要なものだけを残しているか
- 2.整頓
必要なものが必要なときにすぐ取り出せるように、
置き場所や置き方が決められているか
- 3.清掃
ゴミや汚れのない綺麗な状態が保たれているか、
綺麗な状態の定義を決め掃除のルールが作られているか
- 4.清潔
整理・整頓・清掃を徹底して実行し、
定めた状態を維持して定期的にチェックできているか
- 5.しつけ
従業員が決められたことを守れるよう習慣化し、
それを確認できる仕組みが作られているか
なお、職場巡視で見るべきポイントはオフィスと工場で異なります。以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。
職場巡視を実施したあとに行うべき措置
職場巡視は、実施して終わりではありません。実施後は、報告書の作成や従業員へのフィードバックなどを行う必要があります。
ここからは、職場巡視の実施後に行うべき措置を紹介します。
課題の共有と改善
職場巡視のあとは、各自が気になった改善すべき点や良かった点について、衛生委員会で報告・共有し、職場環境の改善に向けたアクションを決めていきます。その際、「重篤な事故につながるもの」「事故が起きる可能性が高いもの」を優先して共有するよう心掛けてください。
また、「前回の職場巡視で指摘された点が改善されていたかどうか」についても確認しておきましょう。
全員で積極的に職場環境を改善していくコツは、問題点だけではなくよかった点も同時に共有することです。よかった点を共有することで、職場全体の士気高揚につながります。
職場巡視報告書の作成
職場巡視の実施後は、結果をもとに「職場巡視報告書」を作成します。職場巡視報告書に決められた様式はありませんが、日誌や報告書のような形式で記録することを推奨します。
具体的には、次のような内容を記載しておきましょう。
-
- ・巡視日時
- ・巡視担当者名
- ・巡視場所
- ・指摘内容
- ・指摘内容に対する対応策(だれが、いつまでに、何をするのか)
職場巡視報告書の作成は義務ではありませんが、まれに労働基準監督署に職場巡視の実施内容を確認されることがあります。その際、適切に労働衛生管理を行っていることを証明するためにも、しっかりと記録を残しておきましょう。
厚生労働省からは、職場巡視報告書の様式が配布されています。
“参考:厚生労働省「安全衛生職場巡視実施報告書」”
また、Dr.健康経営でも職場巡視報告書のフォーマットを配布しておりますので、ぜひご活用ください。
従業員へのフィードバック
職場巡視の結果は、実施担当者や経営層だけではなく、従業員にもフィードバックしましょう。職場巡視の結果を知ることは危険予知につながり、問題の改善促進や労災の防止効果が高まる可能性があります。
ただし、単に結果を共有して改善を現場任せにしてしまうことは推奨できません。規模の小さな事業場には労働衛生の専門家が在籍していないケースも多く、問題が放置されることが多いためです。
大切なのは、現場と企業が協力しながら職場改善に取り組むことです。現場の意見をよく聞き、必要であれば産業医を含む関係機関と連携しながら、安全かつ健康に働ける環境づくりに取り組みましょう。
産業医が職場巡視を行うときのポイント
産業医が職場巡視を行うときは、以下の2つのポイントを押さえておく必要があります。
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- ・産業医の職場巡視は条件を満たせば2カ月に1回以上でOK
- ・オンラインで職場巡視をすることはできない
それぞれの詳細をみていきましょう。
産業医の職場巡視は条件を満たせば2カ月に1回以上でOK
2017年に、産業医が行う職場巡視の頻度が「毎月1回以上」から、「2カ月に1回以上」へと変更になりました。
産業医巡視の頻度が変更された理由としては、過重労働による健康障害やメンタルヘルスケアの重要度が増し、産業医の業務時間が増加したことが挙げられます。業務負担が重くなった産業医の巡視時間を軽減するために、頻度が2カ月に1回以上に変更されたのです。
しかしながら、巡視の頻度を2カ月に1回以上へ変更するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
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- ・事業者から産業医に対し「所定の情報」を毎月提供できること
- ・巡視の頻度変更に「事業者の同意」が得られていること
以下では、ここで挙げた2つの条件を詳しく解説します。
※出典:厚生労働省:「労働安全衛生規則等が改正されました」
所定の情報とは
産業医に提供しなくてはいけない「所定の情報」とは、具体的に以下の3つを指します。
-
- 1.衛生管理者が少なくとも毎週一回行う作業場等の巡視の結果
- 2.労働衛生委員会等の調査審議を経て、事業者が産業医に提供したもの
- 3.休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合における、その超えた時間が100時間を超えた労働者の氏名および当該労働者に係る超えた時間に関する情報
これらの情報を産業医に提出することが、職場巡視の実施頻度を「2カ月に1回以上」へと変更できる1つ目の条件です。
3つ目の過重労働時間についての報告は、産業医巡視の頻度の見直しとともに変更があった項目です。この情報は職場巡視とは関係なく、産業医への情報提供が義務付けられるようになりました。
ほかの2つの項目は義務付けられていませんが、事業者が産業医に情報を提供することで、産業医の事業場への理解を促進することが可能です。よりよい労働環境を一緒に作っていくためにも、適切な情報共有を行いましょう。
事業者の同意とは
産業医の意見を参考に衛生委員会などで調査審議を行ったうえで、職場巡視の頻度変更に関する同意を得ることが、2つ目の条件です。
この同意は、一回行ってしまえばそれで終わりというものではありません。当該調査審議では、巡視頻度を変更する一定期間を定め、その期間ごとに産業医の意見に基づいて同意を更新していかなくてはいけません。
つまり、一度巡視の頻度を「2カ月に1回以上」と決定しても、定期的にその決定で問題がないのかを話し合う必要があるのです。より現場のニーズに合った頻度の巡視をするため、一定期間ごとに同意について見直しましょう。
オンラインで職場巡視をすることはできない
産業医面談や衛生委員会への参加など、産業医の業務は近年オンライン化が進んでいます。そのため、職場巡視をオンライン化したいと考える企業も存在しているかもしれません。
しかし、職場巡視はオンラインで行うことができないため注意が必要です。
職場巡視を実施するときは、産業医が実際に労働現場を見て回り、従業員とコミュニケーションをとりながら問題点や解決策を探っていく必要があります。オンライン面談だけでは、職場の問題を肌で感じたり従業員とスムーズにコミュニケーションをとったりすることは難しいため、どうしても現場に直接出向く必要が出てくるのです。
ただし、現場の状況を把握する補助ツールとしてWeb会議システムなどを活用することは可能です。例えば、「衛生管理者が職場巡視をする際の様子をテレビ電話で見せてもらう」「気になった個所をテレビ電話で映してもらう」などの活用法であれば問題ありません。
まとめ
職場巡視は、従業員の作業内容や職場環境を巡回しながら確認する作業のことです。従業員が安全に働き、かつ最高のパフォーマンスを発揮できる職場づくりに欠かせない作業なので、ぜひ正しい実施方法を押さえておいてください。
「課題の改善策が見つからない」
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