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COLUMN

2021.06.04.Fri

衛生管理者が知るべき、職場巡視ポイント(工場編)

工場の職場巡視では、準備が大切!

工場での職場巡視は、オフィスでの職場巡視とは大きく異なります。工場では大型の機械や有害物質を扱うため、安全を損なうリスクが伴います。工場の職場巡視では、事前の準備が非常に重要です。下記の3つの準備を行い、工場における様々なリスクをしっかりと把握した上で職場巡視を行いましょう。

① 職場巡視をするスケジュールの確認

広い工場や職場が分散している企業では、1回の職場巡視で全ての場所を巡視することが難しいです。そのため、衛生管理者や職場の責任者は、産業医とともに職場巡視の年間スケジュール(どのような順番で巡視するか)を作成し、計画的に職場巡視を行うようにしましょう。その際、産業医や他の職場巡視メンバーも確認できるよう、事業場の組織図や工場設備の平面図をあらかじめ準備しておきましょう。また、職場や従業員の間で起きている問題、労災が発生した場所があれば、事前にメンバー間で共有しておきましょう。

② 必要な資料や情報を共有する

職場巡視の前に、職場の概要が分かる資料を用意し、メンバー間で共有しておきましょう。

安全衛生委員会の議事録
・過去の労災の記録
・使用化学物質の種類や正常
リスクアセスメントの結果
・過去の巡視報告書
作業環境測定の結果
健康診断の結果

③ 作業服・装備を着用する

職場巡視の場所や見るべきポイントが決定したら、それに合った装備や服装の準備をしましょう。産業医に職場巡視してもらう際は、必ず現場の作業者と同様の作業服・装備に着替えてもらい、職場巡視をおこなってください。

工場の職場巡視のポイントは5つ!

工場の職場巡視では、以下の5つの作業を確認していくことが重要となります。
ここでは、それぞれの作業のポイントを説明します。

化学物質使用作業
粉塵作業
高温(暑熱)作業
重筋負荷作業
騒音のある職場

①化学物質使用作業

化学物質による健康障害は以下の2つに分けられます。

●皮膚または粘膜(眼・呼吸器、消化器)の接触部位で直接起こすもの
塩素やフッ化水素などが、皮膚に付着することで頭痛・発赤・水疱・潰瘍などができます。
目に接触すると角膜炎・結膜炎を起こし、ときに失明に至ります。
呼吸器に入ると肺炎・気管支炎・肺気腫などを引き起こします。

●皮膚・呼吸器および消化器から体内へ吸収・蓄積し、各臓器に障害を起こすもの
一酸化炭素や硫化水素・シアン化水素は化学窒息を起こします。
マンガンなどは中枢神経が障害され、手足の震えや麻痺が起こります。
石綿やクロム化合物などは、暴露から数年経過してからをがんを発症することがあります。

化学物質による健康障害を予防するためには、安全衛生の主な対策である「作業環境管理」「作業管理」「健康管理の3つの管理(3管理)が基本となります。また、作業者への教育の徹底や、作業主任者の選任とその職務を遂行させる体制作りが必要です。化学物質による労働災害の多くは、作業主任者が選任されていない、もしくはその職務を遂行していないことによるものです。

②粉塵作業

粉塵には、鉱物や金属の粉砕・研磨などによる発生、高温での金属ヒューム、動植物織物、カビ、花粉、細菌などがあり、粉塵を吸入することにより以下のような健康障害が起こります。

● 鉱物や金属の粉塵を吸入すると塵肺となります。進行すると呼吸困難となり、日常生活に支障をきたすだけでなく、結核や肺がんなどを合併することもあります。

● 鉛などの金属を吸入すると、中毒症状が見られたり、石綿やクロム酸などの発がん物質では肺がんなどが生じることがあります。金属ヒュームを吸入すると金属熱(アレルギー反応の一種)が見られます。

● 動植物などの有機物の粉塵を吸入すると、気管支喘息、過敏性肺臓炎、花粉症などの呼吸器疾患が起こります。

粉塵による健康障害を予防するためには、化学物質と同じく安全衛生の3管理が基本となります。体積粉塵清掃責任者、保護具着用管理責任者などを必ず選任しましょう。

③高温(暑熱)作業

高温環境による健康障害は、熱中症、熱傷、循環器障害や腎疾患などがあります。また、火照りや口や喉の渇き、判断力や筋力の低下、作業ミスの増加、労働災害の発生、生産効率や業務量の低下をも引き起こします。
熱中症の発生事例では、休憩時間が取られていない、塩分や水分の補給が適切でない、作業者の健康状態が把握されてないなど、高温環境下での作業の危険性について認識のないまま作業が行われているケースが多くみられます。

【熱中症について】
高温多湿の環境下で、発汗などにより水分と塩分のバランスが崩れたり、体温上昇によって脳機能などの障害を起こします。重症度に応じて1度〜3度に分類されており、従来の熱射病は3度に相当し、死亡に至る可能性があります。特に糖尿病や高血圧の持病のある作業者では、熱中症発症のリスクが高いため注意が必要です。

【熱中症予防のポイント】
WBGT値(湿球黒球温度計を用いて測定)を求めることにより暑熱状況を把握
● 計画的な熱への順化期間(熱に慣れ、環境に適応するための期間)の設定
自覚症状の有無に関わらない水分と塩分の定期摂取
● 熱中症の発症リスクの高い疾患を踏まえた生活や健康管理

④重筋負荷作業

腰痛の発生件数は増加傾向にあり、業務上疾病のおよそ6割を占めています。不自然な姿勢や瞬間的に力を入れた際に発生するものが多くみられます。一日中同じ姿勢で行う作業、同じ動作の繰り返し作業、重量物取り扱い作業など、重筋負荷作業のリスクアセスメントを行い、それぞれに個別の対策が必要になります。
以下の3つの対策を参考にしましょう。

● 設備改善
重量物や取り扱いにくい荷物を持ち上げたり、移動させたりする作業には、機械の力を利用した自動化や省略化を検討しましょう。

● 作業方法の見直し
機械を利用できない作業は、腰に負担がかからない姿勢や動作に変更しましょう。また、どうしても腰に負担がかかる場合はコルセットなどを使用してください。

● 作業環境の見直し
温度、照明、作業床、作業空間などの改善を心掛けてください。

腰痛はさまざまな原因で発生しますが、作業方法の改善だけでなく、日頃からの体調管理や体力づくり、食生活・飲酒・喫煙・ストレス管理など、作業者の総合的な健康管理ができる体制を整えましょう。

⑤騒音のある作業

騒音は安全作業の妨げになるだけでなく生理機能にも影響します。騒音によって騒音性難聴となり、一時的または慢性的な聴力低下を引き起こす場合があります。
騒音障害防止には、騒音発生源対策・伝播経路対策・受音者対策があります。騒音レベルを低くするためには、消音型の機械を使用する、音源を密閉する、防振ゴムを取り付ける、消音ダクトをつける、室内に吸音処理や防音室を設けるなどがあります。
また、防音保護具の耳栓イヤーマフを使用することで、耳に入る騒音レベルを低下できます。

もっと職場巡視を知りたい方へ

参考図書『まるわかり職場巡視 工場編』では、巡視に必要な以下のチェックリストが掲載されています。工場の作業に合わせて参考にしましょう。

● 化学物質の種類ごとの巡視チェックリスト
● 粉塵の種類ごとの巡視チェックリスト
● 高温(暑熱)作業での巡視チェックリスト
● 重筋負荷作業での巡視チェックリスト
● 騒音のある作業での巡視チェックリスト

『まるわかり職場巡視 工場編』 加部勇 著/産業医学振興財団

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