健康経営・職場改善
健康経営銘柄と健康経営優良法人の違いとは?2023年の結果も解説
企業が従業員の健康促進や労働環境の改善のために健康経営に取り組むことで、従業員の活力や生産性、業績向上が期待できます。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」は、企業が健康経営を実践していることを評価する制度ですが、それぞれに異なる特徴があります。
この記事では、「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の違いやメリット・デメリット、選定基準、さらに2023年度の認定事例についても解説します。
目次
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の違い
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の目的は、両方とも「健康経営」の推進です。
現代は人生100年時代と言われており、健康的に活力を持って働ける企業は、投資や人材採用の面でも魅力的です。
立ち位置としては、健康経営銘柄は健康経営優良法人の一部です。健康経営優良法人は、大規模法人と中小規模法人の2つの部門に分かれており、最新の統計では大規模法人部門には2,676法人、中小規模法人部門には14,012法人が表彰されています。
健康経営銘柄は、その中でも特に優れた企業が、東京証券取引所に上場している企業の中から選ばれます。
したがって、申請資格に関しては、「健康経営銘柄」には東京証券取引所に上場している企業のみが対象となり、「健康経営優良法人」には制限はありません。
両者とも、秋に経済産業省によって実施される「健康経営度調査」というアンケート調査に回答した法人のみが申請できます。この調査は、従業員の健康管理に関する取り組みやその成果を把握するために行われます。
以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
健康経営銘柄 | 健康経営優良法人 | ||
目的 |
健康長寿社会の実現に向けて、健康の保持・増進を経営的な視点で実践する「健康経営」の推進 |
||
開始 |
2014年度 |
2016年度「健康経営優良法人認定制度」 |
|
概要 |
健康経営優良法人に認定された大規模法人部門の「上場企業」のうち、特に優れた企業が選定される |
大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれる
※大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」/中小規模法人部門の上位500法人は「ブライト500」 |
|
申請できる企業 |
東京証券取引所の上場企業のみ |
制限なし |
|
認定・選定機関 |
経済産業省と東京証券取引所が共同で選定 |
日本健康会議が認定 |
|
2023年実績 |
31業種から49社 |
大規模法人部門2,676法人/ |
また、以下は経済産業省の資料です。詳しくは引用元をご覧ください。
“引用:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」”
「健康経営銘柄」は、上場会社の中で健康経営が優れた企業が選定される制度です。一方、「健康経営優良法人」は、中小企業や団体が健康経営に取り組んでいることを認定する制度です。
両者とも、健康経営に積極的に取り組んでいる企業が、社内の従業員の健康管理や労働環境改善に対して高い評価を受け、その結果、企業の業績向上にも寄与することが期待されています。
ホワイト500とブライト500の違い
健康経営銘柄と健康経営優良法人に関連して、「ホワイト500」、「ブライト500」という言葉があります。
「健康経営優良法人」に申請した企業の中で、大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」と呼ばれ、中小規模法人部門の上位500法人は「ブライト500」と呼ばれています。
従業員数や、資本金の額又は出資の総額によって、大規模か中小規模かが決定されています。また、それぞれの業種によっても基準が設定されています。ここでは人数での区分をご紹介します。
- <大規模企業>
- ・製造業その他:301 人〜
- ・卸売業:101人〜
- ・小売業:51人
- ・サービス業:101人〜
- <中小規模企業>
- ・製造業その他:1人〜300人
- ・卸売業:1人〜100人
- ・小売業:1人〜 50人
- ・サービス業:1人〜100人
「ブライト500」は、2020年度から導入された制度で、地域において健康経営を積極的に展開し、優れた成果を上げている中小企業を認定しています。
この取り組みには、地域内で模範となる健康経営企業を選び出し、影響を与えるという目的があります。
「ホワイト500」と「ブライト500」の違いについて、詳しくは以下でも解説しています。
健康経営優良法人とホワイト企業の違い
では、ホワイト500などの健康経営優良法人と、「ホワイト企業」の違いはなんでしょうか。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」は、国から選定される制度です。健康経営に関する評価や認定を受けることで、企業の業績向上や社員の健康管理の促進が期待されます。
一方、「ホワイト企業」とは、一般的に従業員への待遇や福利厚生が充実しており、働きやすい環境にある企業のことを指します。ホワイト企業は、労働条件や労働環境が良好であり、従業員の働き方や生活の質を重視しています。
したがって、「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」は、主に健康経営に関する国の評価や認定を受ける企業を指し、業績や健康管理の面での優れた取り組みを示します。一方、「ホワイト企業」は、従業員の待遇や労働環境の充実に焦点を当てた一般的な企業の分類です。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」のメリット
企業イメージの向上
健康経営に取り組んでいることが広く知られる機会になるので、企業のイメージが向上し、社会全体において企業の信頼性や魅力が高まります。
企業ブランドの強化によって、以下の2点も叶えられる可能性があります。
投資家から高く評価される
社会的責任や情報開示に対する取り組みが重視される現代において、健康経営はステークホルダーからの信頼を得るための重要な要素です。
優秀な人材を確保できる
求職者にとっても、健康経営は注目ポイントです。特に最近は、働き方改革の影響で、ワークライフバランスや福利厚生に関する情報に敏感な求職者が増えています。
生産性の向上
もし従業員が健康でない場合、欠勤が多くなり職場の生産性が下がるかもしれません。
食生活の改善や運動習慣を促進する施策などによって、従業員の健康状態が改善されれば、おのずと一人一人の集中力も上がり、生産性が向上するでしょう。
職場環境の改善
健康経営には、従業員が働きやすい職場環境を実現するために、「残業時間の削減」や「肉体的に負担がかかる業務を見直す」などの取り組みが含まれています。
さらに、経営陣が積極的に「健康経営に取り組む姿勢」のメッセージを発信することで、現場のマネージャー層の意識にも良い影響を与えることができます。
自治体や金融機関から優遇される
自治体や金融機関が健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業に対してインセンティブを提供していることも、そのメリットの一つです。
自治体からは、公共調達において加点措置が行われたり、金融機関からは融資や金利の優遇が受けられたり、保険会社からは保険料の割引が提供されるなど、さまざまな場面で優遇措置があります。これにより、健康経営に取り組む企業は経済的な利益を享受することができます。
これらのインセンティブは、健康経営を推進する企業に対してさらなる動機付けや支援を提供するものであり、経済的な側面からも健康経営の取り組みが奨励されることを示しています。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」のデメリット
結果が出るのに時間・コストがかかる
健康経営銘柄に申請しようと健康経営の取り組みを始めても、結果がでるまでに時間・コストがかかることが挙げられます。
-
- ・従業員の健康状況の把握
- ・職場の環境整備
- ・健康経営施策の浸透 など
企業として利益に直結しない見られ方をするので、従業員から不満の声もあるかもしれません。
「時間と人材コストをかけて、健康経営施策に取り組んだけれど、従業員になかなか浸透せず、途中で諦めてしまった」という事例は少なくありません。
効果が分かりにくい
健康経営の評価や数値化はむずかしく、効果が明確に見えづらいというデメリットがあります。部署ごとに業務の都合や従業員の事情が異なるため、全体的な傾向も把握しづらいでしょう。
また、こちらも参考にしてください。
健康経営に取り組む企業の傾向
健康経営に取り組む企業に共通する傾向を紹介します。
令和3年度の「健康経営度調査」を分析したところ、下図の通り、健康経営度の高い企業では有給取得率、有給取得日数が高い傾向が見られました。
“引用:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」”
また、健康診断の実施率についても、健保組合の平均と比べて高い傾向にあることがわかりました。
このように、健康経営優良法人は、有給取得率や健康診断実施率などの数値実績も伴っているのです。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の選定基準と主な変更点
2023年の健康経営銘柄の選定プロセスは下記です。
“引用:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」”
健康経営銘柄に選定されるには、「健康経営度調査」への回答が必須です。例年以下のようなタイミングで進みます。
-
- ・健康経営度調査への回答:8月〜10月
- ・フィードバック:翌年の2月内定
- ・健康経営銘柄・健康経営優良法人の発表:翌年の3月ごろ
下図は、経済産業省の「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」のそれぞれの選定フローです。
健康経営銘柄取得を検討する場合は、早めに社内で「必要な情報」「必要な体制」「必要な施策」などを整理して、企画を通しておきましょう。
また、2023年度から申請料金の有料化したことも大きなポイントです。
健康経営優良法人は、これまで経済産業省が主催・運営する国の事業でしたが、2023年から、民間事業者に補助金を交付して運営を委託しています。その運用コストを回収するため、認定申請料が有料となりました。
<認定申請料>
- ・大規模法人部門…8万8,000円(税込)/件
- ・中小規模法人部門…1万6,500円(税込)/件
認定審査を受けるためには、申請後に届く請求書を確認し、指定された期日までに指定口座への振込をする必要があります。
詳しくは下記も参照してください。
2023年度の結果【健康経営銘柄49社一覧】
直近の第9回「健康経営銘柄2023」では、31業種から49社が「健康経営銘柄」として表彰されました。
具体的な企業名はこちらです。
“参考:経済産業省「「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!」”
健康優良法人2023の結果
2023年度の健康経営優良法人は、こちらでご確認いただけます。
“参考:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2023 一覧」”
大規模法人部門で2,676法人、中小規模法人部門で14,012法人が認定されました。
認定基準は大きく「経営理念(経営者の自覚)」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」に分類され、必須項目と選択項目によって構成されています。
健康経営優良法人2023(中小企業部門)の申請の推移を見ると、昨年度と比べると1.4%程度の上昇率があり、今後も伸びが期待されています。
健康経営銘柄2023の具体的な取り組み事例
「健康経営銘柄」と「健康優良法人」では、具体的にどんな取り組みが表彰されるのでしょうか?
最新のノミネートの一部を紹介します。
ANAホールディングス株式会社
ANAグループは2016年に「ANAグループ健康経営宣言」を行い、社員一人ひとりが心身共に健康で活き活きと働ける環境づくりのため健康管理、疾病予防、メンタルヘルス、安全衛生活動に力を入れています。
今回は「ANAグループ体操」や、「カゴメと協力した野菜の取り組み」など積極的に施策を実施していたため、健康経営銘柄2023に表彰されました。
“参考:ACTION!健康経営「2023健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」”
その他の健康経営銘柄2023の取り組みについては、以下でも紹介しています。
健康優良法人2023の具体的な取り組み事例
東イン株式会社
隔週水曜日は早く帰って健康に良いことをする日=「健康推奨日」として定め、従業員に何かしら運動に特化したことをしてもらう日としています。
また、健康推奨日にはプロの鍼伮師に来社してもらい、施術を通して身体のメンテナンスの重要性を伝えています。
“参考:ACTION!健康経営「中小規模法人部門 取り組み事例集(健康経営優良法人2023)」”
株式会社長田工業所
総務社員自身がメンタルヘルス不調になった経験から、メンタルヘルスの大切さを実感し、健康施策に取り組んでいます。
生産性については、コロナ禍であるにもかかわらず、昨年比で14.7%も改善しました。
“参考:ACTION!健康経営「中小規模法人部門 取り組み事例集(健康経営優良法人2023)」”
他の事例については、下記の記事を参照してください。
まとめ
昨今、健康経営に本気で取り組む企業が増えています。この記事では、「健康経営銘柄」と「 健康経営優良法人」の違いについて、様々な角度から紹介しました。
まずは、あなたの会社の規模や取り組みを検討し、ホワイト500、ブライト500なども含めてどこを目指すか、目標を設定することがおすすめです。
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