職場で起きるモラハラとは?事例やリスク・予防方法や対処方法を解説

日付2021.11.20
更新日:2022.02.28

モラハラという言葉を知っていますか。職場内でのモラハラは増加傾向にあり、放置することでさまざまなリスクが発生します。そのため、どのようなことがモラハラになるのか、モラハラが起こった際の対処法などをしっかりと理解しておくことが必要です。

この記事では、モラハラについて詳しく知りたい方に向けて、モラハラの概要や事例、モラハラの予防方法や対処方法などを詳しく解説します。この記事を読むことでモラハラへの理解が深まり、モラハラの防止につながります。

モラハラとは?

モラハラとは、どういった行為を指すのでしょうか。モラハラという言葉自体は知っていても、具体的な内容を詳しく知らないという方もいるでしょう。以下では、モラハラの概要やパワハラとの違いを解説します。

モラハラは精神的な嫌がらせや暴力

モラハラは略された言葉で、正式名称は『モラル・ハラスメント』です。言葉だけでなく、態度や身振りなどで相手を追い詰め、精神的なダメージを負わせ相手を傷付けるような行為をモラハラと呼んでいます。

モラハラの特徴は、周囲の人が気付きにくい点です。モラハラの場合、暴力や暴言など目に見える形で行われることが少なく、言葉や態度など周囲からは見抜けない事例が多くなっています。そのため、モラハラが行われていても気付けずに発覚が遅くなり、事態が悪化する可能性があります。

モラハラは、人と人とが関わる場所ならどこででも起こり得る問題です。学校や家庭内でのモラハラがクローズアップされるケースが多いですが、職場におけるモラハラも大きな問題として注目されています。

パワハラとの違いは主に3つ

モラハラとパワハラを混同している方も多いでしょう。しかし、両者には違いがあります。

まず、パワハラは正式には『パワー・ハラスメント』という名称になります。パワー、つまり立場や権力を利用したハラスメントという意味があるのです。パワハラは、上下関係のある上司や部下などの間柄で起こります。パワハラの場合、暴力や暴言などが目に付く行為が多いため、周囲が気付きやすいことも特徴です。

一方モラハラは、立場や権力などにかかわらず起こります。上司や部下という関係だけでなく同僚同士などの対等な関係や、部下から上司というように立場が下の者から上の者へ行われるケースもあります。暴力などのように目に見えないいじめ、嫌がらせ行為が多く、気付かれにくいハラスメントです。

職場におけるモラハラの事例

実際にどういった行為がモラハラとされるのか分からない方も多いでしょう。職場で起こるモラハラには、どのような行為があるのでしょうか。以下では、職場で起こりやすいモラハラの事例を5つ解説します。

言葉の暴力

まずは、言葉による暴力です。嫌味や侮辱など相手に精神的なダメージを与える言葉をわざと使うことを指します。例えば、仕事のスピードや内容に関する嫌味、仕事とは直接関係のない体型や容姿、性格などを非難したり侮辱したりします。

他にも、「あの時失敗したせいで迷惑した」など過去の失敗をいつまでも責め立てる、人前で侮辱したり「邪魔、いない方がマシ」などの暴言を吐いたりすることもモラハラの1つです。被害者は言葉の暴力を受け続けることにより、「自分に悪いところがある」と自分を責めてしまう傾向があります。

仲間外れ

仲間外れにすることもモラハラに当たります。例えば、同じ部署内でのランチに1人だけ誘わない、会社の行事である飲み会に誘わない、社内イベントに関する連絡をしないというように、意図的に仲間外れにしようとする行為です。

また、業務上関係のあるミーティングがあるのにもかかわらず声をかけないなど、仕事に直接的に影響を与えるケースもあります。誘われない状況が続くと、「自分は必要とされていない、職場に居場所がない」というように感じてしまい、精神的なダメージにつながります。

無視

仕事は1人ではなく、チームで行うものです。良好な関係を保つために、毎日の挨拶や軽い雑談などをするケースも多いでしょう。関係を良好にするための挨拶などを無視することもモラハラの1つです。

例えば、「おはようございます」や「お疲れさまでした」というような挨拶しても返事をしない、業務上必要な連絡をしても無視するといった行為が挙げられます。部署内の全員で関わらないようにする、集団で無視するなど、存在がないものとして扱われることで、精神的な負担につながります。周囲からも気付かれにくく、「勘違いではないか」などと言われさらに追い詰められるケースもあるようです。

仕事の妨害

仕事の邪魔になるような行為もモラハラです。例えば、仕事に関わる重大な情報や連絡事項などを意図的に共有しない、業務上必要なデータや物を与えずに仕事をさせるというような行為です。

上記のような直接的に仕事を妨害する行為だけでなく、膨大な量の仕事を押しつけて本来の業務を圧迫することもモラハラに含まれます。逆にわざと仕事を頼まない、仕事を奪うなどもモラハラです。

仕事の妨害によりスムーズな業務遂行が困難になり被害者の評価が悪くなる、仕事に圧迫されて精神的な負担が大きくなるなど、さまざまな影響が出ます。

プライベートの干渉

職場でプライベートのことを吹聴したり、干渉したりすることもモラハラです。例えば、仕事にはまったく関係のない私生活の部分、恋人の有無や家族のことをしつこく追及する、「結婚しないの?」などデリケートな部分に干渉してくることが挙げられます。

趣味を持っている人も多いでしょう。人それぞれ趣味は異なりますが、「そんなことに金を使って」や「気持ち悪い」など趣味をバカにしたり侮辱したりする発言もモラハラになります。その他にも、勤務時間以外に頻繁に連絡してくる、プライベートな話題を吹聴されるなども含まれます。

職場でモラハラをしたりされたりする社員とは?

職場でモラハラをする、もしくはモラハラをされてしまう社員は特徴があります。モラハラしたりされたりする社員には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、それぞれの社員の特徴を詳しく解説します。

モラハラをしてしまう社員の特徴

モラハラをしてしまう社員は、仕事の勝ち負けにこだわる傾向が強いです。仕事の勝ち負けにこだわる社員は、自分よりも成績が良い社員やノルマを多く達成している社員などに対して嫉妬心を抱きます。その嫉妬心が成績の良い社員に向く、もしくは自分よりも成績の悪い社員をはけ口にしようとモラハラを行ってしまいます。

自分中心に物事を考える、自己中心的な社員もモラハラを起こしやすいです。また、自己中心的かつストレスが溜まりやすい方は、そのストレスの矛先を他者に向けてしまう傾向があるため、モラハラをしやすいでしょう。

その他にも、仕事上だけではなくプライベート、例えば家族関係や恋人などに関して悩みや不安を抱えているケースもあるようです。

モラハラをされてしまう社員の特徴

モラハラをされやすい社員の特徴としては、自己肯定感の低さが挙げられます。理不尽な理由や特に非がないような状況で責められても、自己肯定感が低いと「自分に悪いところがあるからだ」と思い込んでしまう傾向があります。モラハラを受けても言い出せずに我慢してしまうため、よりエスカレートしてしまうケースが多いようです。

気の弱い社員もモラハラの標的にされやすいでしょう。自分の意見をはっきりと主張できない、言い争いが苦手で引いてしまうなど、大人しい性格の方は反抗しないため、モラハラのターゲットになりやすいです。

このような特徴がある場合、上司や同僚などに相談できずにモラハラが露見しにくく、気付いた時には深刻な状況になっているケースもあります。

職場でのモラハラを放置することで起こりえるリスク


職場でモラハラが起こってしまった場合には、適切な対処が必要です。モラハラへの対応をせずに放置してしまうことで、どのようなリスクが起こるのでしょうか。ここでは、モラハラへの対処を怠った場合に起こり得る問題を解説します。

社員の退職

モラハラを受けたことが要因となり、社員が退職してしまうケースも少なくありません。モラハラを受けると、精神的な苦痛・負担が大きくなります。そのため、職場に行きたくない、モラハラをする加害者に会いたくないという思いにつながり、退職を決意してしまうのです。

また、モラハラを受け続けることで仕事に対するモチベーションが下がってしまったり、会社への信頼や愛着を失ってしまったりすることで転職を考えるケースもあります。

モラハラ被害者が退職すれば、一時的に事態が解決したように感じますが、加害者を改善しなければ本当の意味での解決にはつながりません。今後、別の誰かが被害者になる可能性が残ってしまいます。

うつ病などの精神疾患を発症

モラハラを受けたことが原因となり、精神疾患を発症する可能性もあります。モラハラは精神的な苦痛やダメージを与える行為です。被害者はモラハラによって精神的に追い詰められることで、さまざまな精神疾患を発症する場合があるため注意が必要です。

精神疾患の主な例としては『うつ病』が挙げられます。その他にも、『心的外傷後ストレス障害』や『ストレス性機能障害』『心身症』といった疾患を引き起こすケースもあります。

精神疾患が発症すると仕事を続けることが困難になり、休職や退職につながります。また、重度のうつ病などになり社会復帰が難しくなるなど、被害者の人生に大きな影響を与える可能性があるでしょう。

企業としての責任を問われる

職場のモラハラ問題に適切な対応を行わずに放置していた場合、企業としての責任を問われるケースがあるため注意が必要です。

モラハラに関する直接的な法律やルールは、労働基準法では定められていません。しかし、企業には労働者が健康かつ安全に働けるように配慮する義務があります。

また、中小企業では2022年4月に『パワハラ防止措置』が義務付けられる予定となっています。パワハラ防止措置は大企業においては2020年6月から施行されており、2022年には中小企業まで対象範囲が広がります。

パワハラ防止措置により勧告を受けた企業で、改善が認められなかった時には社名を公表できるとされており、社会的な信頼の失墜につながる可能性があるでしょう。

職場でのモラハラ対処方法

職場でモラハラが起こってしまった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。モラハラ問題は、モラハラを行った社員、モラハラを受けた社員双方への対処が必要です。ここでは、モラハラを行った社員、モラハラを受けた社員への対処方法を解説します。

モラハラ社員への対処方法

まずは、モラハラを行った社員に自分のしていることがモラハラなのだと気付かせることが重要です。モラハラをしている社員は、自分の行為がモラハラだと気付いていないケースが多いため、客観的な意見、周囲からどう見えているのかなどを伝えて、自覚を持たせる必要があります。

面談などを行うことで、自分の行いを自覚し反省する場合もありますが、自覚するように説明をしても通じないケースも多々あります。そのような場合には、配置転換を行うなど加害者と被害者を物理的に引き離す措置が必要です。

しかし、配置転換を根に持って行為がエスカレートすることもあるでしょう。加害者に反省の色が見えない、改善せずに悪化したなど、度が過ぎる場合には法的手段を検討することも一つの方法です。

モラハラに合った社員への対処方法

モラハラを受けた社員へは社内でケアを行うことが重要です。モラハラが長く続けば深い心の傷として残る可能性も高く、精神疾患の要因にもなるため精神的なケアは欠かせません。

なおこの時、企業としてモラハラの被害を受けた社員のプライバシー保護を徹底する必要があります。プライバシーを十分に保護した上で、被害者が悪いわけではないこと、スキルや能力面に問題があるわけではない旨を伝えましょう。

モラハラを受けた社員は、「自分が悪い」「自分の仕事に問題がある」など、自分自身を責め自信をなくしているケースがほとんどです。そのため、会社として被害者が自信を取り戻して、生き生きと仕事ができるように対応していきましょう。

職場でのモラハラを防止するには?

職場でのモラハラは社員の退職や精神疾患の発症などさまざまなリスクがあるため、未然に防止することが重要です。モラハラを防止するには、どのような対策を取ればよいのでしょうか。以下では、職場でのモラハラを防止するための対策を解説します。

モラハラに関して全社員に周知する

まずは、モラハラとはどういうものなのかを社員全員に周知しましょう。気がつかないうちにモラハラ行為をしていたり、被害に気付けなかったりするケースもあるため、何がモラハラになるのかをしっかりと認識させる必要があります。

例えば、モラハラに関するマニュアルを作成して配布する、モラハラやパワハラなどのハラスメントに関する研修を定期的に行うなどが効果的です。これにより、企業として何がモラハラになるのかを、社員全員に効率的に伝えられるでしょう。
また、モラハラは犯罪であるという事実を伝えて、重大さを認識させることも大切です。

モラハラに対する企業の対応を提示する

モラハラ行為が発覚した場合、企業としてどのような対応を行うのかをあらかじめ提示しておくことも大切です。例えば、懲戒規定を整備して内容を社員に周知しておくとよいでしょう。懲戒規定がなければ、モラハラが起こっても加害者の処分が難しくなります。適切かつ厳正な対応をするためにも、懲戒規定の整備は欠かせません。

企業としての対応を明らかにして社員に周知徹底しておけば、モラハラ行為が発生した場合の措置が取りやすくなり、被害者へのケアもしやすくなります。また、モラハラ行為の抑制につながる可能性もあります。

社員が気軽に相談できる窓口を設置する

モラハラに関する情報の周知や企業としての対応を明確にすることの他に、相談しやすい環境づくりも大切です。相談しにくい環境では被害者がモラハラを訴えることが難しくなります。モラハラ問題を1人で抱え込まずに済むように相談窓口などを設置しておくとよいでしょう。

相談窓口では、モラハラ問題だけでなくさまざまな相談に対応できるようにすると、より相談しやすくなります。例えば、モラハラ以外のハラスメントや仕事に関する悩み、出産・育児などに関する悩みにも対応できるようにすることで、誰でも気軽に相談できるようになり、職場環境が向上します。

社員のメンタルヘルスをケアできる産業医を導入する

産業医の導入も効果的な方法です。産業医とは、社員が快適に勤務できるように企業内に配置された医師のことで、健康面・メンタル面での相談やケアなどが行えます。

モラハラを受けている社員は社内の人には相談しにくいという気持ちを持つこともあるので、第三者であり医師でもある産業医ならば相談しやすいでしょう。産業医から企業へは必要最低限の情報が伝えられるため、モラハラへの対策を取りやすくなります。

ストレスからモラハラを行っている社員には産業医との面談を通じて指導するなど、医療の観点から社員・企業に対して適切なアドバイスができます。

定期的に労働者のストレス状況を確認するストレスチェックも重要です。ストレスは目に見えませんが、検査により本人に通知したり集団的に結果を分析し職場環境の改善につなげたりできます。

職場でのモラハラ対策には社内体制の整備が必要

モラハラは言葉や態度などで、相手に苦痛を負わせる行為です。モラハラにはさまざまなリスクがあるため、モラハラ防止が求められます。モラハラ対策としては、モラハラに関する社内周知や相談しやすい環境の整備などが挙げられます。

しかし、モラハラを受けている人は、同じ社内の人への相談はしにくいこともあるため、産業医の配置も検討してみましょう。第三者として立てる産業医なら相談しやすくなるため、重大な事態になる前にモラハラ問題を把握でき、企業としても適切な対処を取りやすくなります。また、モラハラ対策だけでなく、社員のメンタルヘルスケアとしても産業医の導入がおすすめです。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。